第3章-14 G退治の報酬
おかげさまで300万PV突破いたしました。
ここに来てPVのペースが上がっており驚いております。
これからもよろしくお願いします。
今日は朝からダンジョンに来ている。ジャンヌ達も一緒だ。
ダンジョンと言っても攻略に来た訳ではなく、二人の実力を見る為だ。
一応二人にはここに来る前に鍛冶屋により、武器や防具を見繕っている。
ジャンヌには革の装備を一式となるべく軽い両手剣を、アウラには同じく革の装備に長さが2m程の槍に短弓なのだが、本人に譲れないモノがあるらしく、防具はメイド服の上に付けることができ、尚且つ傍から見てメイド服とすぐに分かるような装備を選んでいた。
その後、ダンジョンに入ったのだが、すぐに秘密基地に飛んだ。
二人は魔物と戦う、とばかり思っていたようで拍子抜けしたようだが、二人の相手としてゴーレムを召喚し、軽く手合わせさせてみた。その結果分かったことは、
「弱いな……いや、弱いというより、戦い方が分かっていないようだな」
という結論に至った。話を聞くと、二人は貴族の嗜みとして、もしくは最低限身を守れるように、程度の事しか習っておらず、魔法はたまたま才能があったのでその片手間に習ったくらいであった。
良くもまあ、ダンジョンで生き延びられたものだ、と逆に感心してしまった。
とにかく二人には、エイミィに教えたようなやり方で魔法を鍛えさせながら、ゴーレムとの対戦をやらせることにした。
本当は基礎から教えたほうがいいのだろうが、二人が教わった基礎にはおかしいところが無いようなので、実戦に近い形で鍛えることにする……ゴーレムには攻撃が出来ないように設定し、シロウマル達にも見ていてもらうことにした。
その間に俺は色々とやりたい事があった。
一つ目は武器の手入れだ。前にここでソロモン入りのゴーレムと戦った時に欠けた、アダマンティンの剣の修復をやっておきたいのだ。
次に、豚骨スープ作り。これはオークの骨が大量にあるので初挑戦だ。
最後に防具の作成で、昨日の続きをするのだ。最低でも片腕くらいは仕上げたいところだ。
順番としては、剣の修復から防具作成で、スープは煮込む作業が中心となるので、合間合間に作業すればいいだろう。
しかし、その考えは甘かった……いや、甘すぎた!
なぜなら、
「くっさ、何だこの匂い!臭すぎる!」
豚骨好きの俺でも耐えられないほどの匂いが、鍋の中から漂っていた。
当然、俺ですらそんな反応なのだから、ジャンヌ達はすでに端の方まで逃げている。シロウマルに関しては、鼻を押さえながら悶えていた。
「何が悪かったんだ?」
とりあえず鍋を氷漬けにして、匂いの発生源を止めて、風魔法で空気の入れ替えをした。
ちなみに、この空間は完全な密封では無く、所々に小さな空気穴を作っており、ダンジョン内のいたる所に穴を繋げてある。ただし、そのままだとスライムのような魔物が侵入してきたり、冒険者に発見される恐れがあるので、穴の途中に網目状のものを嵌めたり、穴を天井に空けたりして発見されにくいようにはしているが、今回の匂いで気付く奴も出てくるかもしれない。
まあ、そうなったとしても、よほど実力のある魔法使いが時間をかけないと発見することはできないだろうが……
余った骨や鍋の中を調べてみても、特に腐っているとか変なものを入れた、などはなかった。
しかし、よく見てみると、異常な程にドロドロとしている。試しに、一度鍋の中のスープを捨ててから再度水を張り、同じ骨を煮込んでみた。
そうすると今度は俺の知っている豚骨の匂いに近づいてきたようだ。
こうなると原因がわかってきた。要はオークの骨をそのまま煮込むと、俺の知っている豚骨スープの何倍も濃いスープが取れるようだ。更に気づいたことだが、オークの骨を煮込む時にどうやら骨の汚れを取り除くのを忘れていたことも原因の一つらしい。
なので、今度はそこに注意してスープを作ることにした……しかし、未だに皆は壁の所に集まっており、どうやらその場所で訓練を再開するようだ……
気を取り直して、剣の修復を続けることにした。剣が欠けた、と言っても5mm程度の事なので、剣を炉の火と魔法と錬金術を使いながら熱していき、欠けた所を何度も叩いて伸ばし、魔法で作った水球に入れて冷やしていく。
水球から取り出すと欠けた所がほとんど分からないくらいになっていたが、当然切れ味がなくなっていたので、研ぎの作業に移った。
しかしながら俺は、アダマンティンの剣に切れ味をあまり求めていなかったので、適当なところで切り上げることにした。
これで修復は終了である。
次の作業に入る前に鍋を覗くと、今度はいい感じになっていた。そこで、壁の方を見ると、先程まで鼻を押さえていたシロウマルがこちらを見ていた……微妙にしっぽも揺れている……今度は大丈夫のようだ。なので、あくを取って煮込み続けることにする。
作りかけの手甲を熱する間に、ジャンヌ達の様子を見てみると、どうやら手加減状態のゴーレム達には慣れたようなので、今度は軽い攻撃やフェイントも混ぜるように設定し直した。
それから1時間程作業を続けると、手甲はほとんど完成することができた。後は下地の部分と合わせてみて微調整を繰り返すだけとなった。
とりあえず下地と手甲を組んでみて左手に装着して見ると、そこまで大きな違和感は感じなかった……と、いうよりも、これまで手甲のような物は装備したことがなかったので、感じようが無かった、の方が正解かも知れない。
強いて言うなら、手首の辺りが気になったので、ほんの少しだけ調整しておいて、後は実際に使ってみてから考えることにした。
もうそろそろ、スープもいい具合かな、と鍋の方を見てみると、そこには1号と2号……もとい、シロウマルとソロモンが揃って鍋の中を覗いていた。
ジャンヌ達は豚骨の匂いが若干苦手のようで、未だに距離を保っている。ゴーレム達はジャンヌ達に合わせて休憩しているようで、四体揃って整列していた。
「ワウゥ?」
「キュイィ?」
俺を見ながら二匹揃って首をかしげる……可愛いとは思うが、二匹の口からヨダレが垂れているので台無しであった。
しかし、この鍋の中の骨はまだ使うので、先程の余分な骨を与えることにした。骨は水で洗って汚れやあくを流したものなので、先程のような強烈な匂いはしない。
二匹は喜んで齧り出したので、しばらく放っておく事にしてスープの味を確かめてみた。
「ちょっと臭みがあるかな……」
なので前世の事を思い出しながら、臭い消しの為の野菜を選んでいく。
バッグの中から臭い消しに使えそうな物として選んだのは、生姜にネギに大根の葉だった……他にもあるだろうが思いつかないので、この三種類のみにしといた。他にもあく取りで、卵の殻が入っているのを見たことがあるが、効果が今ひとつわからないのでやめておく。
臭い消しの野菜と一緒に、表面を焼いた肉の塊も入れて蓋をし、火を少し弱くした。
鍋は一旦置いておく事にして、ジャンヌ達の様子を見てみる。
ジャンヌ達に怪我は無いようなので、どこまで出来るのようになったか実際に見てみることにした。ただし、流石に腹が減っていたので、先に遅めの昼食を摂る事にした。
ジャンヌ達は、あのスープが出ると思ったらしく身構えたが、本日の昼食はマジックバッグに入れておいた屋台の食べ物ばかりだ。
メニューは、大量の豚・鳥・牛の串焼きに、干し肉を使っているスープと数種類のパンである。これにキャベツの千切りにちぎったレタスを添えれば完成だ。
俺は早速パンを横に切り開いて、その間にキャベツと豚串を挟んだ。後は串を抜き取れば、簡単な豚のサンドイッチの完成となる。ちなみに串焼きは全部塩味だが、俺特性のタレの入った壺もおいているので、照り焼き風のサンドイッチも味わえる。
俺に習って、ジャンヌとアウラもオリジナルのサンドイッチを作っている。更にその横ではシロウマルとソロモンが串焼きを狙っている。
ジャンヌとアウラは最初は屋台の食べ物に戸惑っていたが、一口食べて気に入ったらしく、色々な組み合わせを試している。シロウマル達には、別に取っておいた物を串から外して皿に盛ってあげた。
ジャンヌ達の食べっぷりを見ていて思ったのだが、この世界の女性は基本的によく食べる。男性がよく食べるのは分かるのだが、女性も負けてはいない。
おそらくは、前世より死が身近にあるのと、女の冒険者も当たり前のようにいるので、自然と食べる量が多くなるのであろう……ただし、前世も今世も共通しているのは、女性の体重に触れることは危険である、という事だ。
かなりの量を用意したが、流石に三人と三匹では残ることが無かった。
昼食後は休憩を取ることにして、くつろぐ為のソファー替わりのベッドを出しておく(もちろん数は二つだ)。
ちなみに今回の食事から、こっそりと俺の血を混ぜている。正直、気持ち悪いがジャンヌの呪いを解くのに必要だと思い我慢した……が、食べた後で、別に食事に混ぜなくても瓶に血を入れた物を、薬、と偽って飲ませれば良かったんじゃね、と思いつき、軽く落ち込んでしまった。
食事が終わった頃には、いい具合にスープも完成したようなので、骨などを濾して残った骨はシロウマル達のおやつにするためバッグに入れた。
そして、スープの中で一緒にゆがいでいた肉の塊を取り出して、調味液を入れている壺の中に漬け込んだ。これで何時間か漬け込んでいれば、チャーシューみたいなのが出来るはずだ。
チャーシュー(予定)の入った壺を狙っている奴らがいたが、スルーしてバッグにしまった……最近、ソロモンの行動がシロウマル化してきているのが、やはり気になる……
そんな事を考えながらベッドに横になろうとすると、未だに立ったままのジャンヌとアウラに気がついた。
「何してんの?」
俺の何気ない質問に、ジャンヌ達は、さっ、と距離をとった……その行動に俺は少し傷ついたが、よく見てみると、二人は汗だくになっていたので、その事を気にしたようであった。
流石に、女性に汗だくのままベッドを使えというのは配慮が足りなかった、と反省し、少し離れた所に土魔法を使って、屋根の無い小屋のような物を造り、中には水を入れた樽を置いて簡素な更衣室を用意した。二人にはタオルを渡して好きに使うよう指示を出して、その場所から離れた所に、もう一つ同じものを造って俺専用の更衣室にした。
休憩後は予定通りにジャンヌとアウラの訓練を見ている。しばらく見ていて思った事は、ジャンヌとアウラは共にセンスは悪くないが圧倒的に経験不足であり、実際に魔物を狩りながら戦い方を教えた方が上達が早そう、という感じだ。
なので、二人には今日中にいくつかの戦い方を教えて、明日以降ダンジョンの浅い階層で経験を積ませることに決めた。
ジャンヌには、袈裟斬り、突き、唐竹割りの構えからの素振りをさせ、その使い方と効果を教えた。
アウラには、とにかく槍の間合いを覚えさせて、突き、薙ぎ、払いの素振りを繰り返させた。
途中途中に休憩を挟みながら2時間程素振りを続けさせて、最後は二人で連携して攻撃する練習をやらせてみた。
この練習も1時間程やらせて今日は終了にした。
流石に二人共へとへとになっており、ダンジョンの外に自力で出たまでは良かったが、そこからは歩けなさそうになっていたので、バッグからリヤカーのような物を取り出して二人を乗せて、シロウマルに引いてもらう事にした。
このリヤカーは、グンジョー市にいる時に作ったもので小さめながら丈夫であるが、馬車を作った時に余った材料を元にして作ったので、これまであまり使う機会が無く、バッグの肥やしになっていたものである。
二人は恥ずかしそうにしていたが、歩けないのでしょうがないと言い聞かせて、多少強引ではあったが部屋まで運んでいった。
今日は早めの夕食、風呂、就寝で明日に疲れを残さないように気をつけた。
目覚めると日が昇ったばかりの時間帯であったが、昨夜は寝るのが早かったので目覚めはスッキリとしている。
ジャンヌとアウラはまだ眠っていたので、簡単な朝食を作っておく事にした。
朝食作りの途中でアウラが目覚め、朝食を作れなかった事の謝罪をしていたが、好きでやっているので気にしないように言った。
ジャンヌはなかなか起きなかったが、朝食が出来上がる寸前にアウラが強制的に布団から外に出した……寝起きのジャンヌは服が乱れており、眼福というよりは目のやり場に困る、といった感じであった。
朝食後は手早く食器を片付けてから、ダンジョンに向かった。
今日はワープを使わずに、1階層から攻略するので階段を利用した。ジャンヌ達にはあらかじめ、二人で魔物の相手をするように言っているので、俺はよほどの事がない限り手出しはしないつもりだ。
流石にゴブリン相手に心配することもなかったようで、ジャンヌとアウラは順調にゴブリンを屠っていく……最も、ゴーレム相手に練習をしておいて、ただのゴブリン相手に苦戦するようであったら、目も当てられないが……
二人の戦い方は、今のところは安定している。所々でアドバイスをして、悪かったところを修正させているのが良かったのと、二人の理解力が思っていたより高かったのが要因であろう。
今日はあまり深く潜らないようにして、ゴブリンだけを相手にしていたのだが、二人のペースが思ったより早かったので、6時間程でおよそ50体分の魔石が集まった。
まあ、初心者二人では十分な成果といえるだろう。何よりも二人に怪我がなかったのは上出来だ。
ダンジョンを出てギルドに向かい、受付で二人のギルドカードを発行してもらうことにする。
これまで二人は俺の奴隷と言う事で、登録は不要であったが、やはり登録は必要だと思うのでカードの発行をしようとしたが、迂闊なことにジャンヌはまだ本登録が出来る年齢ではなかった。
なので、アウラだけ本登録し、ジャンヌは仮登録となった。しかし、ジャンヌは後数ヶ月で15歳になるそうなので、その時にまた登録をし直す事に決めた。
次の日から、朝からダンジョンでゴブリン狩り。その後、秘密基地で俺相手の訓練、というのを1週間も繰り返せば、それなりに戦えるようになってきた。
特に二人共魔力に関しては、才能があったのが幸いして、中級者並の魔力まで近づいていた。
そこで、これまでの訓練に加え、簡単な攻撃魔法と回復魔法と補助魔法を覚えさせることにした。
魔法の訓練は単純だ。まず、ジャンヌとアウラのどちらかが壁役になる。
壁役がゴブリンを牽制している隙に、もう片方が壁役の後ろから魔法を放つ、以上。
攻撃魔法もボール系とブリット系を中心に教えており、まだ完全にマスターした訳ではないが、ゴブリン相手には十分な威力を出すことが出来るようにはなっている。
魔法のおかげで攻撃の幅が広がってきているので、もう少しゴブリンで攻撃魔法に慣れたら、違う種類の魔物を相手にさせてみようと思う。
攻撃魔法の練習を始めてから4日目、今日からダンジョン攻略をしながらの訓練に切り替えることにした。予定としては、今日中に10階層までの到達を考えている。
その前に二人の武器と防具を新調し、戦力アップを図る。ジャンヌの剣とアウラの槍は、俺が造った物を使わせる。素材はジャンヌ達がいた空間から採掘してきた鉄に、かなりの量の魔力を混ぜて造った、魔鉄、と言う物で、これは普通の鉄より丈夫なので、武具などのへ使用量を減らすことで、強度を損なわずに軽量化をすることが出来る。
武器の他には魔鉄で出来た手甲を渡した。後は前から使っていたものだ。二人は基本的に、軽装で戦うタイプなので革の防具が中心になるが、それに少し手を加えることにした。
具体的には、ムカデの甲にアナコンダの革を裏に貼り付けたものを革の装備の表面に貼り付けるのである。
ムカデの甲は硬さの割に軽くて薄いので、裏にアナコンダの革を貼っても大した厚さはなく、重さも気にならない。ただし装備の全部に貼り付けては、流石に動くのに邪魔になるので、胸当ての部分と背中の部分だけムカデの甲を貼り、後の部分はアナコンダの革を裏に縫い付けた。
アナコンダはダークラバーアナコンダの名前の通りに、革がゴムとよく似ているので、装備の裏地にすれば、幾分衝撃を吸収する効果が望めるだろう。
そんな感じの装備に変えたので、ゴブリンでは物足りないだろう。では、早速潜るとしよう。
1~5階層……こんな所で躓く訳が無く、ジャンヌ達は最短距離で階段を目指して、立ちふさがるゴブリンは魔法を使うこと無く屠っていく。
6階層……ジャンヌ達にとっては、ここからが二人で攻略する初めての階になる為か、先程より少し速度が落ちていた。しかし、魔物はゴブリンが多く、たまにスライムが出る程度なので、慣れると速度が元に戻っていった。
7階層……ここで、初めてジャンヌが怪我をする。ゴブリンを倒した瞬間に気が緩み、岩陰に隠れていたスライムに体当たりをくらってこけてしまい、その時に足に擦り傷を作ってしまった。
スライムはアウラが難なく仕留めたが、傷の手当てに戸惑った。一応、前に手当の仕方を教えておいたのでそれを思い出しながら、傷口の洗浄と消毒をして、ポーションや魔法は使わずに済ませていた。
8階層……今日はゴブリンとスライムが一緒の所にいることが多いようだ。これは珍しい事だが、所詮はゴブリンとスライムなので、一緒にいようが難易度は大して変わらない。ただ、ジャンヌとアウラは少し緊張しているようで、先程からオーバーキル気味だ。
9階層……ここでもゴブリンとスライムがセットになっているが、慣れ始めたジャンヌとアウラには格好の獲物と化している。ここまででおよそ5時間、そろそろ目標の10階層だ。この調子なら10階層に到達するのは確実だろう。
10階層……これで今日の目標は達成だが、まだ二人には余力がありそうだ。一応二人にも聞いてみたが、二人共やる気十分だ!
こうなったら予定を変更して、行ける所まで行ってみよう!
11階層……俺の考えが甘かった……この二人、イモムシ程度なら何とかなった……しかし、奴が出た……黒い奴だ。あの昆虫界きっての嫌われものの、黒い悪魔だ!
こいつは俺でも30階層で一度見たきりなのだが、ジャンヌ達はよほど相性がいいのか知らないが、これまでに10匹以上に出会っている(直視しなかったので多分だが)。
この悪魔の大きさは、およそ60cm程ある。実に気持ち悪い奴らだ。
こいつらはどこにいたんだ?と思ったので、探索を使って調べると、近くの行き止まりに無数の反応があった。恐る恐る覗いてみると、そこには何もいない。
もう一度探索を使ってみると、どうやら通路が途中で埋まっており、隠し部屋のようになっているようだ。黒い悪魔達はわずかな隙間から這い出てくるみたいで、通路の隅の方にはいくつかGが通れるくらいの隙間があいていた。
そこで、ゴーレムを10体程出して壁の前に待機させて、土魔法で壁を砂に変える。
壁が無くなる瞬間に結界を発動させて、俺達の前面に結界で通路に蓋をする形をとる。
この時に俺は大きな失敗をしてしまった……それは、結界が透明だった、という事だ。
壁の向こう側には悪魔の集団がいると分かっていたのに、結界を透明のままにしたせいで、悪魔の集団を直視してしまった……夢に出てきたらどうしよう……
ジャンヌとアウラに至っては失神寸前である。こんな光景は俺でも……いや、まともな神経の持ち主ならば見たくはないはずだ。
なにせ60cm級のG達が数百の群れをなして、俺達に突進してくるのだ……幸い、結界を破る程の奴はいなかったが、結界にぶつかって潰れる奴や、結界に張り付いて腹を見せつけるように動き回る奴など、二度と見たくないような光景が目の前に広がっていた。
俺はゴーレム達に命令を出して、悪魔の駆除にあたらせるが、それもまたグロイシーンの連発だった。
なので、最終手段として結界にGでも通れないくらいの穴を上の方に開けて、そこから氷雪系の魔法の『ブリザード』を放った。
前世で、Gは寒さに弱い、と聞いた事があったので使ってみたのだが、効果は抜群だ!
見る見るうちにG達の動きが鈍っていく……というより凍っていく……寒さに弱いとか言うのは関係ないようだ……
だが、Gには一番有効な手段ではなかろうか。
想像でしかないが、火で焼くと、死ぬまで動き回ったり、焼かれる匂いを嗅ぐことになる。
水攻めだと奴らは、油虫、とも呼ばれるくらいだから、効果は薄いだろう。
土だと潰れたGを見てしまうし、生き埋めにしようにも数が多すぎる上に、持ち前の素早さで逃げ延びる奴が多いだろう。
風で切り刻んでも、しぶといGの事だから、体が切り刻まれても一時は動いているだろうし、そもそも奴らの細切れ姿なんか気持ち悪くて見たくない。
そう考えると、凍らせるのが正解のように思えてきた……
全てのGが完全に凍りついたところで、ゴーレムを動かして凍ったG達をくだいてもらい、万が一にも溶けた時に、生き返る個体がいないようにした。
砕かれるG達はグロかったが、体液が飛び散ったりしないだけましであろう。
奥の空間にもゴーレムを派遣して、生き延びているGがいないか確認させた後で、空間の様子を探らせた。
その結果、意外なことが分かった。なんとこのG達の巣はミスリルの鉱床でもあったのだ。
恐らくは、G達のようにあまり魔力を持っていない魔物でも、何百も集まってその場に固まっていたせいで、魔力の密度が高くなり、その結果、元からあった銀が反応を起こし、ミスリルに変化したものと思われる。
複雑な気分だが、ミスリルは手に入れておきたいので、巣からGの残骸を掻き出して(ゴーレム達が)、一旦通路の隅に置き、巣の中の壁一面に土魔法をかけて砂状にして、残ったミスリルを回収していった。
集まったミスリルは、1kgのインゴットにしたものが34本になり、市場価格は1700万Gとケタ外れの金額になった。ついでに、銀も1kgのインゴット40本分が見つかった。こちらは、20~40万Gくらいの値がつくだろうが、こちらはミスリルの加工の際に必要になるので、ミスリルがある限りは売ることはないだろう……正直に言って、最近は金銭感覚がマヒ気味です……
とにかくこれだけあるのなら、小分けにして売り払ってもいいし、装備を充実させるのにも利用できる。使い方はおいおい考えるとして、再度ミスリルを探索を使って調べてみるが、探索には引っかからなかった。
もう採り尽くしたか、探索にも引っかからないような、砂粒くらいの大きさの物しかないのであろう。
なので、この場所をG達の墓場にするべく穴を掘り、ゴーレム達に命じて残骸を穴に捨てさせた。
全部運び終わったところで、砂を被せて土魔法で固める。
そしてみんなで外に出て、入口の天井部分を魔法で壊して空間を封印することにした。
役目を終えたゴーレム達を土に戻して核を回収しようとしたが、なんとなく手に取るのを戸惑ってしまった。だが、棄てていくわけにはいかないので、水で洗ってからバッグに入れた。
流石にこれから攻略をする気にはなれないので、今日はここまでにして、近くにあったワープゾーンから地上に出ることにした。
ジャンヌとアウラも、流石に最後のG達には精神的にやられてしまったようで、地上に出るまで一言も喋らずに、ぐったりとしていた。
ちなみにGからも魔石が取れるらしいのだが、Gから一つも回収していない。あれを解体する勇者などいるのだろうか、と疑問を抱きながらダンジョンを後にした。
ご感想の返信ができていなくて申し訳ございません。ご感想はきちんと全て読ませていただいています。
この場を借りてお礼を申し上げたいと思います。
皆様本当にありがとうございます。
これからも、異世界転生の冒険者をよろしくお願いいたします。