第3章-12 初めての奴隷……
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「少しいいか?」
俺はそう言って女性の顔色を見た後、念の為にもう一度、キュアとレジストをかけた。
ジャンヌと呼ばれた少女は警戒を解いてはいなかったが、俺が魔法をかけるのを止めはしなかった。
「どなたかは知りませんが、ありがとうございます」
アウラと呼ばれていた女性は横になったままではあるが、丁寧にお辞儀をしながらお礼の言葉を口にした。
「ねえ、ジャンヌ。一体何があったの?私は何だか記憶があやふやで、よく覚えていないのだけど……」
アウラの問い掛けにジャンヌは頭の中で整理するような間を取り、やがて、
「アウラが熱を出した後、魔物に襲われてこの場所に落ちてきたの……それとその時にあいつは死んだわ」
「……そう」
それだけで話が通じたようだったが、
「なあ、あいつって誰だ?」
ついつい横から口を挟んでしまった。当然ジャンヌは、
「あなたには関係のない事です」
と言ったので、その代わりにアウラが、
「私達の主の事です」
と言った。その時になって気付いたのだが、二人の首には奴隷の証とも言える、奴隷の首輪がはめられていた。
「私達は奴隷で、主は子爵の位を持つ貴族でした」
その時、あまり言いたくない事を思い出してしまった。
「あのな……言いたくはないんだけど……」
口ごもる俺を見てジャンヌが、
「言っておくけど私達が主を殺した訳ではないわよ!」
と言っていたが、
「いや、それはどうでもいいんだけど……二人共奴隷だろ、そうなると……え~と、その……」
「はっきりと言ってください!なんなんですか!」
ジャンヌが言葉に詰まる俺を見て、苛立たしげに急かしてくるので、
「二人の所有権は現在、俺に有るって事になるんだけど……」
と教えた。二人共その言葉は予想していなかった様で、固まってしまった。
「あのな、奴隷の主がダンジョンなんかで死んでしまった時、残された奴隷は第一発見者の物……つまり、戦利品扱いになるんだ。そうなると、二人は俺の奴隷という事になるんだけど……」
俺の言葉が聞こえているのか分からないくらいに、二人は微動だにしない。
二人の目の前で手を振ってみても反応がなかったので、パンッ、と目の前で柏手を打つと、
「なんでこうなるのよ……」
とジャンヌはへたり込んだ。アウラは目をきつく閉じてから、
「お願いがあります。どうか私達を引き離す事はしないでください。売り払うとしても二人一緒になるように交渉してください」
と、深々と頭を下げて懇願してきた。突然の事で俺は頭の中が混乱していたが、それを見たアウラが、
「実はジャンヌは元は貴族の出身であり、私はその付き人として、生まれた時から一緒に育ちました」
と二人の昔話を始めた。その話では、二人は不自由なく育っていたが、5年程前に争いに巻き込まれて、家は没落し家族は全員死に絶え、残った二人は奴隷として売られて、子爵に買われたそうだ。
幸いにしてその子爵は男色家だったので乱暴はされなかったが、もうすぐ売り払われるところだったそうだ。
セイゲンにはその途中にお忍びで寄り、護衛を付けてダンジョンに潜っていたのだが、調子に乗って奥に進むうちに強力な魔物に襲われ、護衛と子爵が殺されて、自分達は近くの穴に落っこちたそうだ。
後半部分はジャンヌにそう聞いた、と言っていたが俺は話の全部を信用していない。なにせステータスに重要な事が記されているからだ。
名前…ジャンヌ
年齢…14
種族…人族
称号…呪い子(聖女)・元子爵令嬢・奴隷
名前…アウラ
年齢…16
種族…人族
称号…メイド・奴隷
ジャンヌの称号にある、呪い子(聖女)、と言うところである。わざと隠しているのか、それとも本当に知らないのかは分からないが、全面的に信用するわけにはいかないだろう。
取り敢えずその話は保留にしておき、アウラに休憩を取らせる為に、話を中断して俺は周囲を調べることにした。
まずは二人が落ちてきたという穴を探すと、俺が入ってきた所から100m程離れた位置にあり、穴の所から壁が滑り台のようになっていた為、二人は大怪我を負わずに済んだようだ。
穴の位置はかなり高い位置にある。試しに飛んで様子を見てみると、
「なんか見た事がある所だなぁ……」
見覚えがあるような、ないような感じの場所だったが、同じダンジョン内なので似たような場所はいくらでもあるだろうと思い、考えるのを止めた。
その後は辺りを調べていったが、特に興味を惹くような物は見つからなかった。ただ、赤茶色の石がいたる所にあったので、この辺りには鉄を含む岩が多いのだろうが、今は特に必要ではないので無視しておくことにした。
そして、この場所でもワープゾーンを一箇所見つけることができたので、目印替わりにオークの持っていたボロい剣を近くに突き刺しておくことにした。
二人のそばに戻ると、二人は何か相談をしていた。こちらには気付いていないようだったので、わざと足音を立ててそれとなく知らせる事にした。
足音を聞いた二人は、話し合いを止めてこちらを見ていたので、
「とりあえずここから出よう」
そう言って二人に促すが、アウラはまだまともに立つことが出来ないようだった。
そこで俺はアウラを背負い、ベッドや鍋をバッグに入れた。そして、念の為にシロウマルを俺の背後に、ソロモンをジャンヌの上空に配置した。
スラリンは俺のバッグに入り、異常があればいつでも飛び出せるようにしている。
しかし、そんな心配は杞憂だったようで、何事も無くワープゾーンから地上に戻ることができた。
外に出たジャンヌの第一声が、
「一週間ぶりの空だぁ!」
だったのには驚いてしまった。なにせ、半死半生のアウラをそばに置いたまま、結界を一週間近く維持していたことになる。それは並みの魔法使いでは無理な事であったからだ。
まずはギルドに報告したほうがいいだろうと思い、ギルド目指して歩いていると、何やら辺りが騒がしい、不思議に思いながらギルドに近づくと、
「動くな!お前には貴族誘拐の容疑がかけられている!」
と騎士の格好をした男二人に呼び止められた、誘拐など身に覚えがなかったので、無視をしてギルドに入ろうとすると、
「動くなと言っているだろう!」
と手に持っていた槍を振るおうとしたので、
「エアインパクト」
風魔法による衝撃波をお見舞いしてやった。槍を振るおうとした男は魔法で、十mくらい後ろに飛んだ後、ゴロゴロと転がって行き、その先の壁にぶつかって動きを止めた。
「やっぱり貴様が犯人か!」
もう一人も攻撃しようとしたが、
「グルワァーー!」
シロウマルに体当たりを食らった上、伸し掛られていた。シロウマルは俺の指示があれば、いつでも噛みつけるように、口を半開きにして待っている。
シロウマルの体当たりで気を失うことのできなかった男は、間近でシロウマルの怒った顔を見てしまい、股の間を濡らしていた。
「シロウマル、そいつを引きずってこい!」
シロウマルに指示を出して、俺はジャンヌにドアを開けてもらいギルドへと入った。
ギルドでは、数人の兵士と騎士がテーブルの一角を占領して何やら話し合いをしており、まだこちらに気付いていないようだった。
なので、俺はシロウマルが引きずってきた男を、そのテーブル目掛けて投げつけた。
「な、何事だ!」
騎士達は慌てながらも即座に俺の仕業と分かったようだが、
「動くな!動いたら敵対の意思有りと見なして、即座に魔法を発動させる!」
大声で騎士達を牽制した。しかし、その場にいた兵士の一人が剣を抜いたので、
「エアブリット、エアインパクト」
魔法を二連射した。ブリットで剣を弾き、インパクトで兵士を吹き飛ばしたのだ。
そこまでして、ようやく騎士達は俺の言葉がハッタリでは無いと分かったようだが、
「貴様はサモンス侯爵に楯突く気か!」
騎士の一人が大声を出すが、
「なら、サモンス侯爵は俺の敵になるんだな!」
と言い返し、殺気を騎士達に叩きつけた。それだけで騎士達は足がすくんでいる。
「そちらから売ってきた喧嘩だ……死んでも後悔するなよ」
まさに一触即発、といった様相だ。ただし、実際に戦いになったら、一方的に蹂躙できるだけの実力差があるだろう。先程投げた騎士が、あいつらの中で最弱の存在でなければ、だが。
しかし、俺の蹂躙ショーは始まる事は無かった。騒ぎを聞きつけたサモンス侯爵が、ギルドに飛び込んできたからだ。
「待った、そこまでだ!双方、剣を収めるんだ!」
その言葉に騎士達は剣を収めるが、俺は侯爵の命令を聞くつもりはなかった。
「侯爵様、巫山戯た事は言わないでください。一方的に襲いかかっておいて、剣を収めろとは虫が良すぎませんか?」
正直に言って、俺はかなり頭に来ていた。なにせ、侯爵の騎士は俺の背にアウラがいるのに構うことなく攻撃しようとしてきたのだ。
俺の言葉に侯爵は苦虫を噛んだように顔を歪め、騎士達を睨みつけた。そして、俺に向き直り、
「重ね重ね申し訳ない事をした。私の指示がちゃんと伝わらなかった様だ」
そう言って侯爵は俺に頭を下げてきた……最近、お偉いさんに頭を下げられる機会が多いような気がする。
「とにかく話は後で聞きましょう。俺は先にやらないといけない事があるので」
俺は侯爵を放ったらかしにする形でギルドのカウンターへ向かって、そこにいた受付にジャンヌとアウラの事を話し、手続きをしようとしたが、
「申し訳ありませんが、そのお二人が子爵様の元奴隷で、子爵様を殺していない、と証明されるまで奴隷の権利をお渡しするわけにはいきません」
そう言われたので、俺の立会いのもと、最初の聞き取り調査が行われた。
「私達がその魔物に襲われたのは、三十階か三十一階あたりでした」
「被害にあったのは、子爵様に護衛としてついて来ていた騎士が三人、それに道案内の冒険者が1人です」
「アウラ……彼女が突然体調をくずしたので、行き止まりで休憩を取っている時に襲われました」
とギルド職員の質問に答えていく。そして最後に答えたのは、
「襲ってきた魔物は、とても大きなムカデでした」
その答えに、俺が最近仕留めた魔物を知っていた職員の視線が俺に突き刺さった。
「テンマさん、あのムカデの死体はまだ持っていますか?持っていたら出してください」
そう言われたので、ギガントデスムカデをバックから取り出すと、
「これです!私達を襲ったのはこの魔物です!」
ジャンヌがムカデを指差して叫ぶ。そして、そのムカデの腹部にナイフを刺して切り開いてみると、その腹の中から明らかに人の体の一部と思われるモノと一緒に、貴族の紋章が刻まれた金属板が見つかった。
「ちょっと待ってくださいね……ありました。エイサー名誉子爵の紋章ですね……ギルドにも子爵の登録記録があります。お二人が子爵の奴隷であった可能性が高いことになります」
ギルド職員は、俺達に少し待つように言って部屋から出ていった。
アウラの体調が心配であったが、今のところは安定しているようで、軽い疲労を感じているくらいに見える。
ここでもジャンヌとアウラは、俺に聞こえないように相談しているようだった。
そのまま5分くらい過ぎただろうか、ドアが空けて入ってきたのは神父のような格好をした男性だった。
男性は俺達に向かって軽く会釈した後、
「初めまして、私はこの街でファルマ教会の神父をしております、フロム・フェノーと申します」
と名乗った。どうやらジャンヌ達を審査するために来たようだ。とりあえずここは神父に任せて、俺はサモンス侯爵の話を聞くことにした。
侯爵は先ほどのテーブルの所で、何やら騎士達を怒っている様だった。
「侯爵様、お待たせしました」
俺の言葉に侯爵は騎士達を怒るのを中断し俺に向き直り、いきなり頭を下げてきた。
「テンマ殿、誠に申し訳なかった。私の監督不行届きだ。私はテンマ殿に協力してもらう為に、テンマ殿を探せと命じたのだが、ゲイリーとの諍いを知っている騎士が、テンマ殿が怪しいから連れてこいと勘違いしたようだ」
と再度頭を下げてきた。しかしながら、急に誘拐だのなんだのと言われても事情がさっぱりわからなかった。
「ああ、すまなかった。実はこんな手紙が、私の泊まっている宿に届いたのだ」
侯爵は本題を言っていなかったのに気付き、一通の手紙を懐より取り出して、俺に渡してきた。
中を開いて読んでみると、
『息子は預かった。返して欲しくば明日の夕方までに身代金、1000万Gを用意しろ。受け渡しはスラム街の中央区の噴水跡地にて行う。ただし、解放するのは金を確かめてからである』
そう手紙には書かれていた。なんとも古典的な文章(テンマの前世の感覚では)だな、と思ったが、侯爵にしてみれば相当な心配事であろう。
「それで俺に協力しろ、とはどういうことですか?」
「勘違いして欲しくないのだが、これは命令でなく、ゲイリーの父親としての頼みなのだ。私の知る限りで腕が立ち、尚且つ一番信用できるのがテンマ殿なのだ」
信用できる、とはサンガ公爵と知り合いだからだろう。とりあえず協力したほうが、今後の為になるだろう。
「いきなりな上に、無礼な振る舞いがつづ……」
「分かりました。協力しましよう」
「えっ、本当ですか!」
侯爵の話を中断させる形になってしまったが、協力するのだから特に問題はないだろう。
「しかし、今から動いては何かと準備不足なので、夜を待ってから行動を開始します」
「それはいいのだが……こちらは何をすればいい?」
侯爵は手伝える事がないか、と聞いたのだろうが、正直に言って侯爵の手駒で使えるのはガリバーだけであり、そのガリバーも今回のような裏方仕事には不向きである。なので、
「対策を取っている振りだけしていてください。なんなら俺を泳がせている最中だ、とそれとなく広めたほうが、誘拐犯の撹乱になるかもしれません」
言外に騎士達は邪魔でしかない、と言う意味を含ませて侯爵に進言した。
「……分かった。言う通りにしよう」
話し合いが終わったところでジャンヌ達の所に戻ると、丁度神父による審査が終わったところのようだった。
部屋に入るとギルド職員が俺に気付いて、
「ああ、テンマさん。このお二人には特に怪しいところは無いようなので、この時を持ってこのお二人の奴隷としての権利はテンマさんに移ることになりました」
そう言ってから、ギルド職員は証明書を渡してきた。
証明書はバッグに保管して、とりあえず部屋に帰ることにした。
道すがらジャンヌ達に話しかけてみたのだが、ええ、とか、そうですね、とかそんな生返事しか帰ってこなかった。
更に最悪なことに、部屋の前でエイミィとジン達に出会ってしまった。
「おっ、テンマ、珍しいな。お前が女連れなんて!」
「あれ?テンマさん。そのお二人は奴隷ですね……まさか、購入してきたんですか!」
ジンの言葉に反応したリーナが、二人の首に嵌めてある首輪を見つけた。
「先生……」
エイミィは何だか悲しそうな顔でこちらを見ている。ジンは、テンマも男だったんだな、と一人にやけていたが、リーナ達はジンとの距離を取り始めた。
なので遠慮なく、
「……スタン」
「アベッ……」
ジンに魔法をお見舞いしておいた……最近、本当にジンは、セイゲンのトップクラスの冒険者なのだろうか?と思うようになってきた……
「とりあえず、誤解の無いように説明しておくぞ……」
と俺はこれまでの経緯を簡単に説明していった。そこまでして、皆ようやく納得してくれたようだ。
しかし、なにげに先程のエイミィの視線は堪えた。悪いことをしているわけではないのに、何だか妹に軽蔑されたかのような気分になってしまった。
「じゃあ、部屋はどうするんですか?」
エイミィの質問にはしっかりと考えてから答えなければ、またあの視線にさらされてしまう。
「……それをこれから話し合うんだよ……」
これが無難な回答であろう。エイミィも特には気にしなかったようだ。
「じゃあ、これから色々とあるから、ここで失礼するな」
そうエイミィ達に言って、ジャンヌ達を連れて俺の部屋へと入っていった。
部屋に入ってテーブルに着くと、早々に話し合いを始めようとしたら、
「テンマ様、よければ私達を奴隷としてそばに置いてください」
「…………へっ」
いきなりのアウラの言葉に思考が追いつかなかった。
今、アウラは俺の聞き間違えじゃなければ、自分達を奴隷として置いてくれ、って言わなかったか……
「私達を、テンマ様の奴隷にしてください。これはジャンヌと話し合って決めた答えです」
どうやら俺の聞き間違えではなかったようだ……しかし、
「なんで、そう決めたんだ?」
疑問を抱かずにはいられなかった。ジャンヌは最初俺の奴隷になるのに抵抗があったようだったからだ。
「それが一番最良の選択だと思ったからです。もちろん、テンマ様が嫌だと仰るならば仕方ありませんが……」
アウラはそう言うが、何か理由がありそうだ。そこを追求してみると、
「確かに打算はあります。その一番の判断理由は、テンマ様が相当な実力を持った冒険者であり、侯爵様が頭を下げるくらいの力の持ち主だからです」
確かにアウラ達にしてみたら、自分の身を守るにはかなりの好条件かもしれない。しかし、俺は奴隷を持つなんてことは、これっぽっちも考えていなかった訳で……
「もし、テンマ様が引き取ってくれなければ、私達は娼婦同然の扱いをされるかもしれません」
……嫌なところをついてくる……確かにジャンヌとアウラは、傍から見ても美少女、といったカテゴリーに入るのは間違いがない。そして、そんな二人を男共は放っては置かないだろう。
「俺も男なんだが……」
アウラに抵抗してみるが、
「ええ、見ず知らずの変態に無理やり手篭めにされるくらいなら、自分達で将来性のある人を選んだ方が、数千倍ましです」
簡単にカウンターを食らってしまった……二の句が継げないでいる俺に、
「あっ、でもジャンヌに手を出すなら、本人に了承を得てからにしてくださいね。代わりに私は好きにしてくださって構いませんから」
……詰んだ、これは詰んでしまったようだ……俺はせめてもの抵抗として、
「この話の続きは、また明日な……」
問題を先送りにするしかできなかった……
アウラはニッコリと笑って、
「ええ、そうしましょう。ご主人様」
と勝ちを確信していた。
ちなみに、一切発言をしなかったジャンヌはというと、顔を赤くしながら、それを誤魔化すようにシロウマルをもふっていた……どうやら、シロウマルはジャンヌのテクニックに陥落したようだ……シロウマルよ、チョロ過ぎやしないかい?
そんな訳で、どうやら俺のパーティーに、奴隷という肩書きの仲間が、二人も加わることが決定されたようであった……この後、お仕事の予定が入っているのに大丈夫であろうか……俺……
そんな訳で、部屋をもう一つエイミィに借りようかと思ったのだが、アウラに反対された為、このままこの部屋で三人+三匹で暮らすことになってしまった。
ベッドは、まだ体調が万全ではないアウラとジャンヌに使わせて、俺は今日のところは床に寝床を作った。アウラが、自分が床で寝る、と言ったが断固として断り、それでも納得しなかったので、命令を使ってまで納得してもらった。
とりあえず今日の飯は、ダンジョンで作ったシチューの残りとパン、そして肉を焼いた物で済ますことにして、二人を早めに休ませて、俺自身は夜のお仕事に備えて道具の準備や大まかな作戦を立てることにした……時空魔法に時間の巻き戻しなどはないのだろうか……あったならば、即使ってジャンヌ達をギルドに預けて逃げるのに……
前世も含めて同棲なんかしたことの無い俺にとって、いきなり女性の奴隷が二人も増えることは、ドラゴンを相手にするのと同じくらい不安なことであった。