第3章-7 ゲテモノ祭り
グロイシーンがあります。苦手な方は、この話を読みながらの食事はお控えください。
本日の予定はダンジョン攻略だ。もちろんエイミィは連れてきていない。
今日は目当てのものがあったので、階層突破に力を入れず、11階層以下の場所で虫型の魔物を相手にしていた。
虫型と言っても種類は豊富で、ミミズの様な生き物から、風の谷に出てくるイモムシを小さくした様なもの、蜘蛛にカマキリ、バッタなどを見かけた。
しかも、中には食べても美味しいものもある。昔、ククリ村で食べた事のある虫型もいた。
個人的におすすめは、ミミズとイモムシの仲間と蜘蛛だ。見た目はグロイかもしれないが、調理しだいでは高級食品として扱われる事もあり、この世界では別に珍しい事でもない(もちろん好き嫌いはあるが)。
そして意外な事に、蜘蛛の中には甲殻類のような味と食感を持つものもいる。こいつは、父さんがよく捕まえてきていて、イモムシと共によく酒のつまみにしていた。
そんな事を考えながら階層を降りると、16階層はこれまでと感じが違っていた。
これまでの階は岩肌ばかりだったが、この階は木の根っこのようなものが張り巡らされており、所々に青々とした葉っぱが茂っている。天井までの高さも、これまでの倍近く有り、通路も広い。
警戒しながら先に進んでいくと、根っこの影や葉っぱに擬態していたものなどの小さな魔物が襲いかかってきた。最も魔物といっても、体長が大きくても50cmくらいなので、殴りつけるだけでも簡単に倒すことができた。
中には食べられる蜘蛛やイモムシもいたので、バッグに詰めて持って帰ることにした。
ある程度まで進むと、今度は朽ちた木も見かけるようになってきた。
その朽ちた木を壊していくと、お目当てのイモムシが出てきた。
それは体長が10cm程のイモムシで、シロコイモムシと呼ばれるものだ。
そのイモムシは白っぽい体をしており、栄養価が高く何より美味しい。
母さんはその外見で嫌っていたが、俺と父さんはたまに食べていた。
このイモムシが取れるとギルドで聞いたので、雛達の餌にちょうどいいと思い、捕獲にきたのだ。
俺はマジックバッグから空樽を取り出し、捕まえたイモムシを入れていく。イモムシは大量に見つかり、あっという間に50匹を超えた。
そこで樽に木を砕いてチップ状にした物を入れて、蓋をして紐で括った。
イモムシの採取中にミミズも数十匹取れたので、別の樽に木屑を湿らせたものを一緒に入れた。
これで今日の目的は果たしたことになる。しかしながら時間がかなり余ったので、この近くにあったワープゾーンから入口へと戻り、一旦地上に向かってから、今度は卵を見つけた所までワープした。
ワープしてすぐにしたことは、この場所を俺のプライベートルームにするべく、俺が降りてきた縦穴を埋めることだった。
さすがに全てを埋めるのは面倒なので、下から10m程を埋めて、下の場所も細い通路みたいになっている所はある程度埋めることにした。
これでたとえ縦穴を見つけてとしても、その先の空間にまで気付くものはほとんどいないはずだ。
この場所は秘密基地みたいな場所にするつもりで、鍛冶に使う炉や金床、火床を作っていく。これらは取り外し可能にして、普段は手首のマジックバッグに収めておく。
素人の作りなので、本職が見たら出来が悪いかもしれないが、そこは小烏丸作りの時のように魔法でカバーするつもりだ。
これだけ作るとさすがに時間がかかったので、部屋に帰ることにした。
部屋の前ではもうすぐ日が落ちる時間だというのに、エイミィが待っていた。
「先生!遅いです!」
特に約束はしていなかったが、エイミィは教えてもらおうと思っていたみたいだ。
「さすがに毎日は教えられないよ……でも丁度いいや、エイミィに渡すものがあったんだ」
そう言ってミミズの入った樽とイモムシの入った樽を渡す。
「これは雛の餌だよ。1週間はもつから他の餌と一緒に与えるんだ」
一応雛達はエイミィにあずけてある、刷り込みの一環として面倒を見させているのだが、もし勝手に契約をしたら魔法を二度と教えない、と言ってある。
エイミィも真剣に聞いていたので、ちゃんと理解しているものと信用している。
驚かれても困るので、先に樽の中身は教えている。保管にしてにも、毎日水をかけて乾燥させないようにして、涼しい場所に蓋をして置いておくように言ってある。
ちなみに、イモムシはエイミィにあげたものとは別に、俺の分も確保している。
「あの~先生?ミミズは分かるんですが、イモムシはどうやって与えるんですか?」
と質問が出たので、簡潔に、
「すりつぶして飲ませる!」
と教えた。イメージとしてはペンギンの親が雛に餌をあげる時に、一旦自分で食べて半分消化した状態……簡単に言えば『ゲ〇』のようにして与えるのに似ている。ただ、イモムシを生で食べて吐き出して与えろ、というのはいくらなんでも無理だろうと思うので(さすがに俺でも嫌だ)、代わりにすりつぶして上げることにしたのだ。
エイミィはわかりやすく嫌な顔をしていたが、いかにイモムシが栄養があり(どれだけあるのかは知らないが)美味しいかを語り、試しに食べてみるか?、と聞くと、
「遠慮します!触るのも無理です!」
と断られた。やはりイモムシは女の子にはキツかったか、と思い、
「そうか……残念だけどこの子達はお肉に……」
「やります!」
……最後まで言う前に決心してくれたようだ。
そんな事はさておき、餌のつくり方……イモムシのすりつぶし方を教えた。手順は、
1、頭の部分を切り落とす。
2、すり鉢に入れてする。
3、雛の口を手で開かせて、スプーンで飲ませる(口に流し込む)。
以上だ。簡単なもんだろう、と聞くと、
「ソウデスネ……」
とカタコトの返事が返ってきた。実際にエイミィにやらせてみると、目を背けながらだが一応出来ていた。
肝心の雛達はとても気に入ったようで、最初に口を開かせただけで二回目からは自分で口を開けて待っていた。
「何だか、複雑な気分です……」
エイミィはすりつぶしたイモムシを美味しそうに食べる雛達を見て、そんな感想を言った。
「じゃあ、明日からちゃんとあげるんだよ」
その言葉にエイミィは乾いた笑い声を出していた。
エイミィが家に戻るのを見届けて、俺は部屋で自分達の晩御飯を作ることにした。
今日のメニューは、蜘蛛の蒸し焼き、イモムシのバター焼き、イモムシのスープにミミズの素揚げだ。
メニューだけを聞くと、どんなゲテモノ料理だ!と思うかもしれないが、ちゃんと下処理をしている。
例えば、蜘蛛は頭を落として内臓を取り、塩をすり込んで綺麗にすると同時に臭みを取っているし、イモムシのバター焼きの方は表面を洗っただけだが、スープの方は丹念にすりおろして裏ごしもしている。味付けは塩コショウにバターと牛乳が少々、それにゆがいた野菜をすりつぶして裏ごしした物と混ぜている。
ミミズも縦に裂いて泥を抜き、塩水で綺麗にした後、高温で揚げて泥臭さを消している。
材料はゲテモノだが味はちゃんとしたものになっている。
ちなみに、これらは父さんとじいちゃんには好評だったが、母さんには不評だった(材料そのものが)。
シロウマルには保存していた生肉をやり、スラリンは蜘蛛の頭や内臓などの残飯を食べていた。
スラリンに申し訳ないと思っていたが、スラリン自身は気にしていないようで、自分からゴミ箱に入っていった……もちろんその後で俺の食べていたのと同じ物も食べさせた。
久々の味だったので、昔を思い出しながら食べていた。
テンマが昔を思い出しながらイモムシのスープを飲んでいた頃、ある男の元へ一通の手紙が届いていた。
それを一読した男は、血相を変えて走り出した。
男が目指すのは近所の屋敷だ。そこは半端な貴族では持つことはできないほどに豪華であるが、今はこの屋敷の主人に問題があったため、広々とした庭は荒れており、屋敷の壁もヒビが入っていた。
ただ、たまに外部から依頼されてきた者達が清掃をしていくので、お化け屋敷みたいになっていないのが救いか。
男は慣れたように門を潜り、屋敷に入っていった。
屋敷の中には客が来ていたが、何度かここで会ったことがある者だったので会釈だけをして、屋敷の主人の所に急いだ。
屋敷の主人の部屋の扉を開けるなり男は、
「た、大変だーー!生きていたぞ、テンマが生きていたーーー!」
そう叫んだ、その言葉に中にいた二人の男のうち、豪華な服を着ていた方が、
「それは誠か!」
そう言って、男の両肩を掴んで揺さぶった。
「へ、陛下!ご無礼をお許し下さい!」
その男はこの国の王であるアレックスだった。床に跪こうとした男……マークを立たせて、自身はこの屋敷の主であるマーリンに向き直った。
マーリンは家族を失った悲しみと長期間の療養で、最近では半分ぼけたようになっていた。
今もマークの言葉にあまり反応を示さなかったが、アレックスが体を揺さぶりながら、
「マーリン殿!テンマが生きているそうですぞ!」
と何度か声をかけると、
「テン、マ……テンマ、テンマ、テンマ……テンマじゃとぉ!テンマが生きているじゃとぉ!」
いきなり大声を上げて椅子から勢いよく立ち上がり、マークに詰め寄って、
「テンマはどこじゃ!どこにいるのじゃ!」
と襟を両手で掴み、つるし上げようとする。
そこに国王の付き添いできていたクライフとジャンが、慌ててマーリンをマークから引き離す。
「落ち着いてくださいマーリン様。これではマーク様が話すことができません!」
「そうだぜマーリン様。つぅかなんて力だよ!本当に老人の力かよ!」
二人がかりで何とかマーリンを引き離す。
その時になってマーリンが正気に戻ったようで、
「ありゃ、なんでお主らがここにいるのじゃ?なんかテンマと聞こえたような気がしたのじゃが……」
と周囲を見回して首をひねっていた。
マークはマーリンが手を離した後、しばらくの間むせていたが、呼吸を整えてマーリンに手紙を差し出した。
「これは俺の古い親友が送ってきたものなんだが、その中にテンマと言う白銀の狼を連れた少年が自分の宿に泊まっている、って書いてあった。場所はグンジョー市だ」
その手紙は1ヶ月程前の日付で書かれていて、マークがククリ村より王都へ移り住んでから、思い出したように書いた手紙の返信だった。
「グンジョー市じゃな、今から行ってくるぞ!」
マーリンは着替えるのも面倒とばかりに寝巻きを脱ぎ捨てて、パンツ一丁の上からローブを羽織り、窓から飛び出ようとする。
「マーリン殿、待ってください!」
慌ててアレックス達が全員で(物理的に)引き止めたが、マーリンはそれでも激しい抵抗をしていた。
「そうですよ、マーリン様!テンマ様に会った時にそんな格好では嫌われてしまいますぞ!」
クライフの必死の進言により何とか落ち着いたマーリン、アレックスはここぞとばかりに、
「マーリン殿の気持ちはわかります。私だって一刻も早くテンマに会いたいのです。ですが、今から行ってもすぐに夜になり危険が増します。なので今日中に城の者達に準備をさせますから、明日の朝に出発をしましょう。それまでにマーリン殿も準備を整えていてください。くれぐれも、テンマに会った時に、テンマが恥ずかしい思いをしないような格好でお願いします!」
そう早口にまくし立て、さらにテンマを使って思い留めるように言った。
マーリンは渋々だったが、テンマのためなら、と納得していたが、念のため、同行する予定のマークが先に荷物をまとめて、マーリンの監視に付くことになった。
クライフは先に城へと戻り準備をするそうだ。アレックスもテンマの生存情報に興奮し、一緒に行こうと準備をしようとしたらしいが、周りから強固に反対された為、やむなく断念せざるをえなかった。
「待ってろよーー!テンマーーー!じいちゃんがもうすぐ行くからなーーーー!」
夜の王都にマーリンの遠吠えがこだまするのであった。
次の日の朝、マーリンの屋敷の前に集まったのは、テンマを迎えに行く者は、マーリンにマーク、クリスにエドガー、そして護衛の騎士が6人程だ。騎士はもっといたのだが、
「そんなにいらん!何かあったら、ワシの魔法が炸裂するわっ!」
邪魔する者は全て破壊する、と言わんばかりのマーリンの言葉に、最低限度の護衛だけを入れた10人だ。
そのほかには、アレックスやクライフにジャン、マークの妻のマーサにククリ村から移ってきた者達が集まっていた。
皆口々にテンマの生存を喜び、早く会えるようにとマーリンに声をかけたり、各々が持ち寄った食料などを手渡していた。
そろそろ出発予定の時刻となったので、マーリンは馬車に乗り込んだ。
この馬車は、馬二頭引きの箱馬車で、前半分が座席、後ろ半分が荷台になっている。
その他に馬が四頭用意されており、こちらは基本的に騎士達が交代で乗り、周囲の警戒や威嚇、又は馬車の馬の予備となっている。
馬車の御者はマーク達が交代で務めることになっている。
今回の道中の騎士達の隊長はエドガーが任され、副隊長にクリスとなっていた。
「マーリン様。途中でセイゲンに寄り、補給をしようと思うのですがいかがいたしましょう」
エドガーは200km程先にある、セイゲンの街に寄って休憩をとってはどうかと提案したのだが、
「その道を通るより、こっちのみちの方が近いじゃろう」
マーリンは、地図上でグンジョー市までほぼ一直線になっている道を指でなぞった。
「この道は少し険しくなっており、危険が増えると思いますが……」
「構わん!ワシも魔法で手伝うから問題はないじゃろう!」
エドガーの言葉を遮り、マーリンはそう発言した。
「分かりました。マーリン様が手伝ってくださるのなら、危険はないものと同じでしょう」
エドガーは自分の計画をあっさりと変えて、マーリンの指示に従った。事実、その道に出るのは盗賊や、せいぜいBランク程の魔物なので、マーリンがいれば危険はかなり低くなる。
「では、出発するかのう」
その言葉で一行はグンジョー市を目指した……そこにはすでにテンマがいないとは知らずに……
この2週間ほど後になって、グンジョー市のドズル……満腹亭のおやじさんより、マーク宛の手紙が届けられたのだった。
所変わって一週間後のセイゲンでは、テンマが朝からエイミィの魔法の練習を見ていた。
日に日にエイミィの魔力は上がっていき、この調子なら近いうちに、ロックバードの二匹くらいなら問題なく使役できるだろう、と感じるようになった。
だがテンマは、あえてその事をエイミィには伝えなかった。その理由は、まだ基礎ができていないエイミィを調子に乗らせないためだった。
まあ、それ以外にもテンマの基準が厳しい、というのもある。なにせ自身は神達によって能力を大幅に引き上げられている上に、これまで知り合ってきた者がマーリンを筆頭に実力者が大勢いたせいで、エイミィくらいの歳の平均的な強さがわからないというのもある。
まあ、強いに越したことはないだろう、というのがテンマの考えだった。
もしエイミィが15歳まで毎日のように、テンマの訓練を続けたのなら、間違いなく一流に手が届く冒険者としてやっていけるであろう、というくらいの成長を見せていた。
「先生!そろそろ次に進みたいです!」
エイミィは若干現在の訓練に飽きてきていた。
現在の訓練は第二段階……桶の水で柱を作ることだった。
エイミィは今では桶の中で、50cm程の高さの水柱を作ることが出来るようになっていた。
今はかなり安定して作ることができるので、次に進みたいと思ったのだろう。
テンマは少し考えて、そろそろいいだろう、と次の準備に取り掛かった。
方法は桶をくっつけるようにして二つ並べて、その一つに半分ほどの水を入れ水柱の状態から隣の桶へ水を移す、というものだ。
俺は見本として、片方の桶からもう片方の桶へと水を移動させていく。何回かしているうちに調子に乗ってしまい、水がイルカの形でジャンプして隣の桶に移る、というのを何度かやっていた。
初めはエイミィも喜んでいたが、次第に顔が暗くなっていき、
「先生……私も同じことができないとダメですか……」
と不安がっていた。さすがにやりすぎだったので、改めて水柱の状態から隣の桶へとアーチを架けるようにして移動させて、
「ごめんごめん、これができるようになればいいよ」
と謝りながら言った。エイミィはかなり安心したようで、張り切って練習を開始した。
さすがに難易度が一気に上がったので、エイミィは水柱まではできてもそこから動かすことができない。
それどころか動かすことに気を取られて、作った水柱が崩れてしまうことが多くなった。
「いきなりとなりの桶に移そうとしないで、まずは水柱を動かすことに集中して!」
「はい!」
威勢のいい返事をするが、まだまだ時間がかかりそうだ。そう思いながら、背中の卵に魔力を注いだところ、
バキッ、バキバキ、バリンッ
そんな音を立てて卵が割れた。慌てて背中の袋を下ろして、中の様子を見てみると、
「キュイッ!」
そんな可愛らしい声を出す、白く小さなドラゴンがいた。
「ドラゴン!」
その言葉にエイミィも袋を覗き込んだ。
「わ~、可愛い~」
エイミィが触ろうと手を向けると、
「ギュイッ」
ドラゴンは威嚇を始めた。どうやら、このドラゴンはエイミィを警戒しているようだ。
その代わり俺が撫でようとすると、嬉しそうに俺の手に頭をこすりつけてくる。
なので俺は、すぐにこのドラゴンを眷属にすることにした。魔力を与えるとドラゴンからも魔力が返ってきて、何かが繋がった感覚ができた。
「よし、お前の名前は『ソロモン』だ」
「キュ~イ~」
ソロモンも名前を気に入ったようで、嬉しそうに鳴いた。その声を聞いたシロウマルがバックから出てきてソロモンに顔を近づけると、
「キュイッ」
そんな声を出してシロウマルの顔を登り、背中にまたがった。シロウマルも嫌がる素振りを見せずに、ソロモンを落とさないように歩いている。
ソロモンの背中には翼があるのだが、生まれたばかりでまだ飛ぶことはできないようだ。
名前…ソロモン
年齢…0
種族…ドラゴン
称号…テンマの眷属
HP…1000
MP…2000
筋力…E-
防御力…D-
速力…D+
魔力…B
精神力…D-
成長力…S
運…A
スキル…異常耐性5・光魔法4・魔力操作3・破壊力増強3・火魔法2・水魔法2・風魔法2・雷魔法2・魔力増強2・生命力増強2・回復力増強2・夜目2
ギフト…獣神の加護
生まれたばかりでも、なかなかの能力を持っている。さすがはドラゴン、と言ったところか。
ソロモンはシロウマルにだいぶ懐いているみたいで、背中にしがみつくようにしてバランスを取っている。
また、シロウマルもソロモンを気に入っているみたいで、時折バランスを崩すソロモンが落ちないように、体全体を使ってソロモンがバランスをとりやすいように気を使っているようだ。
スラリンとはどうなるかと思い、ソロモンを近くに連れて行ったが、スラリンにも問題なく懐くものの、背中には乗れないのでシロウマルの方へ行こうとする。
その途中で卵を入れていた背負袋を見つけて、俺の方へ引きずりながら持ってきて袋の中に入り、
「キュキューイ」
甘えるように鳴いた。どうやら、俺にこのまま背負えと言っている様だ。
要望通りに背負うと、袋の口から顔を出して満足そうに鳴いていた。
「先生!もう触っても大丈夫ですか?」
エイミィはまだ諦めていないようだ。なので、ソロモンにエイミィの事を教えてから触っても大丈夫か聞くと、
「キュ~……キュイッ」
どうやら許可が下りたようだ。現にエイミィがソロモンの頭を撫でても、今度は威嚇はしなかった。
エイミィはかなりはしゃいでいたが、俺はソロモンの知力の高さに驚いていた。
ダメもとで話しかけたのだが、ソロモンは生まれたばかりだというのに、俺の言葉を理解したことになる。シロウマルですら、俺の言葉をある程度理解するのには1年はかかった。
それから考えると、ドラゴンの凄さの一端がわかるというものだ。しかしそうなると、別の疑問が出てくる。それはスラリンのことだ。
スラリンは俺が眷属にした時から、すでに俺の言葉を完全に理解していた。突然変異種とはいえ、魔物の中で最下層に属するスライムが、だ!
ある意味で、最も得体の知れないのは、このスラリンかも知れない、と俺は思ったのだった。
勘付いていた方もいると思いますが、新たな眷属はドラゴンでした。
名前はパッと頭に浮かんだので、簡単に決まりました。
その後、眷属の頭文字がSで揃っている、と思ったのですが、タニカゼを忘れている事に気がつきました。タニカゼを純粋な眷属と判断するかは難しいところですが。
これで予定していた眷属は出揃いました。この先、話の流れ次第では増えるかもしれませんが、今のところその流れに持っていくつもりはありません。
これからも、異世界転生の冒険者をよろしくお願いします。