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第2章-11 決着

本日、その2

 決闘会場は満員だった。二万人以上は入っているだろう。

 関係者の中には、明らかにホッとしている者達もいる。


 実はこの決闘会場は、今回の為に急遽街の外に造られたのだ。 造った、といっても街の魔法使いやギルドに依頼を出して、近くの丘を掘って固めただけのもので、見た目はサッカー場に近い。ただ、地下通路や控え室などはないので、客席の一部を柵で区切ってその中にあるテントを控え室替わりにしている。


 グンジョー市にも闘技場があるにはあるのだが、その闘技場は市民5万人に対し、収容数が5000人であった。そのため、少しでも市民が見ることが出来るようにするために、外に会場を作る、という決議が議会によってなされた。

 この決議は、公爵が裏から手を回したため、公爵がグンジョー市に来た次の日には提案され、可決された。

 さらに、ギルドの協力も得て、会場を三日で完成させるという異例の速さで進められた。


 決闘は正午を過ぎてからで、直接会場入りする事になっていたため、天馬は起きた後、ゆっくりとしていた。

 正午までは3時間近くあったので、騎士団本部の運動場で、シロウマルを相手に軽く戦闘訓練をすることにした。


 俺とシロウマルは、五十m程の距離をとって向かいあった。シロウマルはプリメラが合図を出した瞬間に、俺との距離を一瞬で詰めてきた。

 口を大きく開けて、俺に飛びかかるシロウマルだったが、俺はするりとシロウマルの顎の下に潜り込み、左前足を左手で掴み払う。それと同時に、喉部分の毛を掴んで下に引き落とす。

 柔道の投げ方に似た(かなり変則的だが)技をかけられたシロウマルだったが、咄嗟に後ろ足で地面を蹴って、前方にジャンプした。だが、俺はシロウマルの行動を読んでおり、着地地点に素早く詰め寄っていた。

 シロウマルは覚悟を決めた様で、防御をすべく身体に力を入れた。

 俺は右足が地面を踏み込むのとほぼ同時に、右の掌底が放った。シロウマルはすべての足で地面に張り付く様に踏ん張っていたが、掌底が右の肩口に当たった瞬間、シロウマルは衝撃に負けて宙を舞った。

 そのままシロウマルは五m程飛んで、何事もなかったかの様に着地を決めた。恐らくシロウマルはわざとに飛んだのだろう。その証拠に、シロウマルは着地と同時に俺へと飛びかかり、左右の前足を交互に振るう。

 俺が一瞬が前足に気を取られた隙に、すぐ目の前までシロウマルの顔が近づき、そのまま胸のあたりに頭突きを食らってしまった。今度は俺が十m程飛ばされてしまったが、こちらも半ば自分から飛んだ様なものなので、俺もシロウマルに負けじと綺麗に着地を決めた。

 プリメラ達観客は、俺が着地を決めた瞬間に大歓声を上げたが、それはすぐに収まった。何故なら、俺が、構えを解いてシロウマルに近寄り始めたからだ。俺の先では、シロウマルが頭突きを食らわせた地点で頭を押えてうずくまっている。


「えっ!あっ、終了です」


 プリメラが訳がわからない、といった表情で終わりを告げる。


「シロウマル、大丈夫か?」


「キュ~ン、キュ~ン」


 シロウマルが俺の声に反応し、弱々しい鳴き声を出す。そこに、プリメラが近づき、


「テンマさん。何が起こったんですか?」


 と聞いてきた。俺はシロウマルに回復魔法をかけながら、


「頭突きの瞬間に、シロウマルの頭にカウンターを入れたんですよ」


 ほら、と赤くなっている右手をプリメラに見せる。俺はシロウマルの頭突きを食らった瞬間、シロウマルの頭を殴っていたのだった。

 俺は、シロウマルの後に自分の手にも回復魔法をかけた。シロウマルと戦った時間は、実際には五分もかからなかったが、バンザ達を相手にした時より疲れた。


 俺は呆然とするプリメラをよそに、整理体操を始めた。汗をぬぐったその後に軽い食事を摂って、ひと眠りして時間を潰していく。


 一時間程で目が覚めると、軽く体をほぐして顔を洗い騎士団本部を出ることにした。会場までは三十分もかからないので、のんびりと歩いていく。

 その途中で何人かの人達から声をかけられた。そのほとんどが、賭けに関するものだったが意外にも、準男爵に賭けている人からも応援された。まあ、中には本気で馬鹿にしてくる者もいたが、ひと睨みするだけで黙るような者ばかりで、後で周りから笑われていた。


 会場に着くと受付をしていたギルド職員に、控えのテントまで案内される。俺のテントの周りは10m程観客席から離されていて、テントのそばには護衛の騎士が十人囲んでおり、関係者以外を近づけないようにしていた。


 俺のテントの周りには、知り合いや応援者が固まっておるみたいだ。テントに入るまでに、かなりの応援の言葉をかけられた。


 テントの中には何故か、リリー達とフルートさんが待っていた。


「あっ、やっと来た」

「遅いよ~!テンマ」

「1時間くらい待ってたよ!」


 とリリー達に続いて、


「テンマさん、今日は私達がサポートをさせていただきます」


 とフルートさんが言った。それぞれタオルや飲み物や傷薬などを持っている。


「リリー達はともかくとして、なんでギルド職員のフルートさんまで?」


 と本来、中立の立場のはずのフルートさん(ギルド職員)がここにいる理由が分からなかった。


「本来ならば、私はここにいてはいけないのですが、準男爵側よりクレーム(言掛り)がつきましたので、こちらに来ることができました」


クレーム(言掛り)?」


 俺が首をかしげると、


「向こうが言うには、テンマさんと仲のいい私が中立(ギルド)にいると、どんな不正をされるかわかったもんじゃない、だそうです。それで一時的にギルドを休職させられました。なので、思いっきりテンマさんに肩入れする事にしました」


 今の私は一般市民ですし、とにこやかに言っていたが、その背後には、どす黒い怒りのオーラと共に般若面が見える。かなりの怒りを溜め込んでいるようだ。リリー達もかなり怯えている。


「そ、そうですか。今日はよろしくお願いします。リリー達もな!」


「「「うん!」」」

「はい!」


 と四人とも揃った返事をした。

 

 それから間もなくして、反対側にあるテントの辺りから歓声が上がった。準男爵が到着でもしたのだろう。

 それから俺は四人と喋ったり、体をほぐしたりして時間を待った。


 正午に近づくにつれて、客席のざわめきが大きくなる。もうそろそろか、と思ったとき。


「まもなく開始の時間です。準備をして会場の中央に来てください」


 と係のギルド職員が知らせに来た。俺はバッグから刀を取り出して、テントの外に出た。その瞬間、客席から大きな歓声が沸いた。

 その歓声を背に、俺達は中央に歩いていく。グラウンドの中央には、久しぶりに見かける男性が立っていた。


「誓約書をこちらに」


「はい、ギルド長」


 ちょっとやる気無さ気のこの男性は、ギルド組合グンジョー市支部のギルド長を務める。マックス・ベルキャップという人族だ。


名前…マックス・ベルキャップ

年齢…41

種族…人族

称号…ギルド支部長・元Aランク冒険者


 ギルド長は普段はぐうたらで仕事中もぐうたらだが、有事の際にはとても頭の切れる男になる……らしい。


「はい、確かに」


 その後、直ぐに準男爵もやって来て同じように誓約書を渡す。準男爵には護衛のような、30人のガラの悪い男達がついてきている。

 一応鑑定を使ってみたが、Cランクが十三人、Bランクが十六人、Aランクが一人だった。


「誓約書の確認が終わりました。双方は代表者を残して壁際まで下がってください」

 

 その言葉にリリー達とフルートさんは、頑張って、と言って下がっていくが、準男爵側は全員が残っていた。


「レギル準男爵?早く護衛を下がらせてください」


 とギルド長が促すが、レギルは笑い顔で、


「何を言っているのかね、ギルド長。ここにいるのが代表のヴェンド隊だ。代表は一人でなければいけないとは書いていないぞ」


 と、とんだ屁理屈を言い出した。


「しかし、決闘ですよ。仮にも貴族として如何なものかと」


「貴様は、私を愚弄するのか!私は誓約書のルールに従っているだけだ!さあ、決闘開始の合図をしないかっ!」


 とまくし立てるレギル。ギルド長はどうしたものかとこちらを見る。その時、


「なら、私達が加勢するよ!」

「テンマと私達なら楽勝だよ!」

「そ~だそ~だ!そんな、子供の屁理屈言ってる奴になんかに負けるもんか!」


 とかなり頭にきているのであろう三人が、興奮気味に加勢すると言い出した。


「私も微力ながらお手伝いします!」


 と、フルートさんまでとんでもない事を言い出した。


「勘弁してくれよ……」


 ギルド長は頭を抱えている。レギルはそれを見て、


「小娘の三匹や四匹加わったところで、どうにかなるとは思えんがな」


 と下衆い顔で笑っている。観客からは大きなブーイングが起こり始めた。客席の一部では、ファンクラブの男達が殺気を放っている。


「皆、無理することはないぞ」


 俺はため息をつきながら、女性陣に話しかけた。


「大丈夫だから、後ろに下がってなって」


 と安心させるように言ったが、四人は頷かなかった。なので今度は魔力を込めた声で、


「第一、俺があんな奴らに負けるとでも思っているのか?」


 と少し強めに言った。四人は、ビクッと震えた後、渋々といった感じで壁際に歩いて行った。


「さあ、ギルド長。さっさと始めましょう。今から害虫退治をしないといけないので、早く終わらしたいんですよ」


 と軽い感じで言い切った。レギル達は顔を真っ赤にしている。

 ちなみに俺達の声は、ギルド長が持っている拡声器型のマジックアイテムを伝って、客席まで声が届いている。

 その言葉を聞いた俺のテント側の客席からは、大きな笑い声が聞こえてくる。


「わかった。只今より、冒険者テンマとレギル名誉準男爵との決闘を開始する……決闘、開始っ!」


 ギルド長は半ば諦めた(めんどくさくなった)様に合図を出した。


「死ねやっ!このガ、グヘァ」


 突進してきた男が後ろに吹き飛び、そのまま十m程転がって止まった。


「なにがあった!」


 叫ぶレギルを尻目に、俺は右手に魔力を集中させる。一人、また一人と吹き飛ばされる男達。


「魔法障壁を展開しろ!」


 そう叫ぶのはAランクの冒険者だ。


「おいおい。四人もやられてから障壁を張るのか?お前、なんちゃってAランクだろ」


 なんちゃって~ランクとは、冒険者の中で使われる、実力に見合っていないランクの者への侮蔑の言葉だ。主に、自分より強い者に引っ付いてポイントを稼いで、コネなどで試験をパスした者(試験官は冒険者が代理で行う事が多い)などにに使われる事が多い。


「ガキが、調子に乗りやがって!おいっ!魔法が使える奴はあいつに集中させろ!」


 その言葉に、男を含んだ二十人が魔法を俺に放ってくる。


(こいつら馬鹿だな。水と火の系統の魔法を同時に使ってどうする)


 この世界には属性の同時使用時に、いくつかの相性の悪い組み合わせが存在する。その中でも代表的なのは火と水、火と木の属性だろう。しかし、木の魔法はエルフくらいしか使えないので(エルフは火属性が苦手な者が多い)、一般的なのは火と水である。その他は相性が悪いといっても、微々たるものでしかない。


 その間にも魔法が俺の近くに着弾していく。俺はもったいないと思いながら、切り札を使う事にした。


「出ろ『巨人の守護者ガーディアン・ギガント』!」




 煙が辺りを隠している。


「馬鹿めが!ビビって棒立ちになりおって。お前ら!ご苦労だったな!」


 レギルは勝ちを確信したのか、冒険者達に労いの言葉を掛けていた。


「おい、審判!さっさと俺の勝ちと宣言せんか!」


 レギルがギルド長に何か喚いていたので、切り札をお披露目する事にした。少し力を入れただけで俺の切り札が、ゴウッと凄まじい音を立てて煙を吹き飛ばした。


「誰の勝ちだって?」


 無傷で煙から現れた俺の姿に、驚きの声を上げる人々。そしてそれ以上に、俺を守るようにして現れた二本の大きな腕に、会場はざわめいた。

 巨人の守護者ガーディアン・ギガントと言っても腕しかないが、その大きさは片腕だけで三m以上ある。 

 腕は、俺の両肩から斜め後ろ二mくらいの空中から生えている感じで、俺を隠すかの様に魔法を防いでいた。


 これはドラゴンゾンビの金属と魔核から作ったもので、造りはゴーレムに近いものだが、俺の魔力でしか動かないようになっている。

 なので、俺は腕が4本に増えたみたいなもので、最初の頃は操作に苦労した。今では、完全にとは言えないが、大雑把な攻撃や防御をする分には、何の問題もないくらいにはなっている。

 特性としては高い防御力と魔法耐性を備えていて、手などは取替が可能だ。


 その形状は、某カードゲームの封印された腕で、全体的には、某奇妙な冒険の精神エネルギーをイメージすると近いと思う。


「ば、化物だ!」


 Bクラスの一人が叫び怯えるが、レギルは、


「あんなものは虚仮威しにすぎない!全員でかかるんだ!」


 とけしかけようとするが、冒険者は動かない。


「あのガキを倒した者には、約束の10倍の金をくれてやる!」


 と言い出すと、「10倍……まじか?」との呟きが聞こえた後で、生き残り達が我先にと襲いかかってくる。


「俺がぶっ殺す!」

「いいや、俺だ!」

「覚悟しやがれ、このガキ!」


 とやってくるが、ブゥオンと右手が振るわれると、直撃を受けた男達はもちろんの事、その後ろに続いていた奴まで巻き込まれてふっ飛んだ。その光景に残っていた大半の男が逃げ出すが、その背中に向けて魔力の塊を打ち出し、狙撃していく。


 狙撃が終わった後に残ったのは、レギルとその傍らにいた、AランクとBランクの男が合わせて5人だ。


「さて、もうそろそろ終いだな」


 俺は腕を回しながら近づく。この時、背後の腕も連動して動いたため、ブゥオンブゥオンと風切り音が鳴っていた。

 

「なっ、何をしている!早くあのガキを始末しろ!」


 それでも5人は動かない。しかし、距離が近くなるにつれ、Bランクの一人が恐怖に耐え切れなかったようで、


「く、糞が!」


 と言って剣を振りかぶってきた。その剣を左のギガント(・・・・)で防ぐと、パキッンと高い音を出して剣が折れた。呆然としている男に、右のギガントでデコピンを食らわす。

 ベチコンッと音を立てて、男は飛んでいった……死んだかな?


「雑魚ばかりでなく、一番強い奴がかかってこいよ!」


 俺の挑発にAランクの男が、


「調子に乗るなよ!」


 と構えたが、


「いや、一番強いのはお前じゃないだろ。その後ろの……お前だ、お前。フードで顔を隠しているお前だよ」


 俺はさっきから、男たちの一番後ろに控えていた、フード姿の男を指差す。


「俺はBランクだぞ。なぜ、そう思う?」


「そんな事を言ったら、俺なんてCランクだ。強さにランクは関係ないだろ」


 と言うと、男はフードを脱いだ。その顔は目つきが鋭く、短髪で痩せた感じの男だった。


「お前、昨日俺の後を付けていた奴の一人だろう」


 と指摘すると、鋭い目を細めて、


「気がついていたのか。てっきり、気付いていないと思っていたのに」


「他の奴の尾行がお粗末だったから、囮だと思っていた。念を入れて気配を探ったら、たまたま気付いたのさ」


 と探索魔法が使えることを、悟らせないような言い方をした。


「大したものだ」


 と感心していたが、


「で、かかってこないのか?」


 との質問には、


「遠慮しておこう。正面から戦えば、俺では逆立ちしても敵わないだろう」


 と言っていた。謙遜しやがって、と俺が言うと、フッと笑っていた。


「キサマら!俺を無視するんじゃねぇ!」


 とAランクの男が、フードの男の肩を掴みながら吠えるが、 


「うるさい」


 との言葉と共に、フードの男に裏拳をくらって意識を飛ばされて倒れた。


「き、貴様、何をしている!裏切ったのか!」


 とレギルが騒ぐが、フードの男はギロッとひと睨みして、後ろの観客席の方へと去っていった。


「さあ、再開しようか!」


 と言って、残った三人のBランクの男達を殴り倒す。男達は、フードの男の裏切りに呆気にとられていたため、あっという間に倒れた。残るはレギルただ一人だ。

 俺はギガントを引っ込めて、指を鳴らしながら近づいていく。


「お、俺は貴族だぞ!手を出したらどうなるかわかっているのか!」


 と叫ぶが、


「大丈夫だ。この決闘が終われば、お前は貴族ではなくなるからな」


 俺の言葉にどういうことだ!と聞いてくるレギルの顔面に、右のストレートをお見舞いしたら、レギルは後ろに吹き飛び、四~五m転がって止まった。その瞬間にギルド長から、


「それまで!勝者、テンマ!」


 と勝者の名が宣言された。そして観客席から大きな歓声が上がる。その歓声に答えるように、右手を突き上げると、さらに大きくなった。


 その時、


「お見事お見事」


 と手を叩きながら、公爵が現れた。


「いや~、一時はどうなることかと思ったけど、圧勝だったね!」


 とにこやかに話しかけてくる。そして、控えさせていた騎士団の治療班に、


「それじゃあ、開始してくれ」


 と言って、レギル達に回復魔法を使うように指示する。そして、観客に向けて、


「これにより、このテンマの言い分が正しいものとする。意義があるものは申し出ろ」


 との言葉に、観客は静まった。しかし、そこに空気を読()ぬ者がいた。


「私は認めない!あんなものは無効だ!あんなものに頼るのが決闘であるわけがない!」


 レギルだ。自分の事は棚に上げてわめいている。これには観客も呆れて黙ってしまった。

 しかし、それをレギルは、観客が自分の言葉に耳を傾けている、と勘違いしてさらに続ける。


「決闘にあのような道具を使い、さらにこちらの陣営にスパイを送り込むなど、許されるはずがない!恥……」


「黙らぬか!」


 レギルの言葉を遮ったのは、公爵の短くとも迫力のある声だった。


「恥を知るのはお前だ!あんなものというが、あれはテンマの自作したもので、さらにテンマの魔力によって動いておる!なのに貴様という奴は、仮にも貴族であるにも関わらず、決闘に数十人の手下を使い、自分はその後ろに隠れておっただけではないか!貴様は貴族の名を穢した。その罪は重いぞ!死罪も覚悟せよ!おい、連れて行け!こやつはもう貴族では無い!」


 近くに控えていた騎士達にそう告げる。レギルは、公爵様!お許しを、と叫んでいたが、騎士達に両脇を乱暴に抱えられ、引きずられるようにして会場を後にした。


「誠に申し訳なかった。我が手の者が決闘を穢してしまって…」


 と公爵は俺に対して、頭を下げてきた。これには俺よりも、観客の方が驚いていたようだ。


「頭を上げてください、公爵様。レギルに罪はあっても、公爵様にはありません」


 と公爵のパフォーマンスに合わせて、俺は公爵がレギルに組みしていないと、観客(・・)に聞こえるように擁護した。


「そう言ってくれると助かる」


 と言って、公爵は頭を上げた。そして、おめでとう、と俺と握手を交わした。

 その時、小声で公爵に、


「演技過剰でしたかね?」


 と聞くと、


「あれくらいの方が、観客にも分かり易くていいでしょう」


 と笑って言った。その顔は、子供の悪戯(いたずら)が成功した時のような笑顔だった。

ヴェンド隊はただの噛ませでした。レギルは書いていくうちに、どんどんと馬鹿な奴になっていきました。最後は、テンマと公爵の三文芝居で締める事となりました。

追記・ご指摘にレギルが優秀と書かれているのに、こんな小物がこの国では優秀なのか、というご指摘をいただきました。

 そのことに関しては、レギルの能力と人間性は別物で、さらに今回は、バカ親の能力のマイナス補正が掛かってしまった、という感じでどうかご納得ください。

 正直に言って作者も違和感がありましたが、そういった人間もいるかな、くらいに考えておりました。しかし、ご指摘がありましたので、この場で説明(言い訳)をさせていただきました。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 俺が一瞬が前足に気を取られた 日本語が…。
[一言] どんなに仕事は出来ても、 クズで馬鹿で仕事以外の使い処がない、 どうしようもない者もいます。 その下に就くと使い潰されます(涙)
[一言] 読み書き計算が、出来るパソコンとしては優秀で、人としては論外って事ね
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