第20章-17 誕生
4話連続投稿の1話目です。
「「ふぅ~……う~ん……」」
「テンマ、うるさい」
「マーリン様、落ち着いてください」
プリメラが頑張っている部屋の前で俺はアムールに怒られ、じいちゃんはハナさんに注意されていた。
ハナさんにプリメラが産気付いているといわれてこの部屋まで連れてこられたのだが、中に入ろうとしたところ産婆さんに「汚れた格好で入ってくるな!」と追い払われ、そのまま風呂場へと直行し身ぎれいにした(なぜかハナさんに連れていかれ、風呂に投げ込まれた)後で、再度この部屋へと戻ってきたのだが、今のところ人手は足りていると産婆さんに入室を断られ、俺と同じように風呂に入ってきたじいちゃんたちと合流してこの場で待っていたのだが、どうしても落ち着くことができず、じいちゃんと部屋の前の廊下をうろうろしていたところだったのだ。
ちなみに、ジンは極度の疲労から空き部屋で泥のように眠っており、ディンさんは俺の代わりに王城へ報告に向かってくれた。
「テンマ様、プリメラ様に何か異変があれば、部屋の中がもっと慌ただしくなるはずです。その様子がないということは、順調ということでしょう。それに、何か手伝いが必要ならば声をかけるといわれていますから、今は大人しく待ちましょう。その間に、情報交換をしておいた方が良いと思われます」
「それもそうか……ところで、ハナさんとアムールは、いつ王都に来たんですか?」
アイナに言われてやることができた俺は少し落ち着くことができた。そうすると、何故ここにハナさんとアムールがいるのかと言う疑問がわいた。すると、
「テンマ……今更それを言う?」
アムールに呆れられた。ハナさんも、口には出さなかったが、アムールと同じように呆れているみたいだ。
「私たちは、今日の昼前には王都に到着していたわよ」
「到着ついでに、王都の西側に入り込んでいた反乱軍を蹴散らしてきた!」
「どういうことだ? 反乱軍に侵入されていたのか?」
アムールの説明を聞いた俺は、王都内の西側に反乱軍が侵入し、それを南部子爵軍が追い払ったと思ったのだが、実際には少し違うそうだ。
「私もあとで詳しく聞いたのだけど、西の門を突破されたのは事実らしいけど、侵入されたと言う程じゃないみたいよ。何でも、ジャンヌたちが侵入者を力ずくで追い出したんですって。私たちはちょうどそのすぐ後に戦場に到着し、反乱軍に横から襲い掛かった感じね。三万くらいいたらしいけど、油断しまくっていたから楽に蹴散らすことができたわ」
などと、ハナさんは笑っていたが……
「ジャンヌが力ずくで追い払った? ……ジャンヌ! ちょっと詳しい説明をしてくれ!」
俺たちから少し離れた所で、アイナの手伝いをしていたジャンヌを呼び寄せると、アムールが「それはもう、ジャンヌが敵を千切っては投げ、千切っては投げの大活躍だった!」などと笑っていたけれど、寄ってきたジャンヌは慌てながら否定していた。
ジャンヌの説明によると、屋敷で待機していると西側の偵察に行っていたテッドが慌てた様子で、西の方から反乱軍が現れて、警備隊とぶつかりそうだと知らせに戻ってきたらしい。しかも間の悪いことに、その少し前に北側の方で反乱軍との戦闘が始まったせいで、他の場所から援軍を送るのが遅れそうだということだった。
確実に北側は反乱軍の陽動で本命は西側なのだろうが、警備隊の戦力では防ぐことは難しいはずだ。そこでプリメラが、オオトリ家で確保していたゴーレムを西側に送ることを決め、ジャンヌがオオトリ家代表として向かうことになったそうだ。
何故ジャンヌだったのかと言うと、オオトリ家では命令系統のトップが俺、二番目がじいちゃんかプリメラで、その二人に続くのが俺の奴隷であるジャンヌとアウラになる為、動ける状態にある中でトップのジャンヌが代表になることになったそうだ。
ちなみに、その流れで東側の話も出て、赤い古代龍が現れたりそれをベヒモスが撃退したり、ナミタロウが古代龍に変身したりと言った話を聞かされたのだが……色々と頭の痛くなる話だったので、話半分くらいの感じで聞いておいた。ジャンヌはその時にサソリ型ゴーレムが壊れてしまったことを謝っていたが、こう言った時の為のゴーレムなので気にしないように言っておいた。そのおかげで、東側の防衛に成功したわけなのだし。
「それで、プリメラさんに言われて西に向かうことになったのだけど、ソロモンは怪我で動けないから、移動しながら馬を探そうってなりかけた時に、ケリーさんが「こいつの方が速いから」ってジュウベエを連れて来て来たの」
ご丁寧に、以前ジュウベエに付けたことのある馬車の接続部を改良していたらしく、そのおかげですぐに西門の方へ到着するが出来たようだ。ちなみに、ジャンヌに同行したのはアウラにケリー、それとマークおじさんだそうで、その四人にゴーレムを加えて、即席ではあるものの援軍としての体裁を整えたらしい。
「ジュウベエが頑張ってくれたおかげで、そんなに時間もかからずに西側の近くまで行けたのだけど……ちょうどその時に門が破られて、反乱軍が侵入してきていたの。それを見たジュウベエが急加速して……」
どうもジュウベエは、急いでいるうちに興奮してしまったようで、敵の姿を見て抑えが効かなくなってしまったらしい。そのままでは馬車(牛車)が横転してしまう可能性が高かった為、前に乗っていたケリーが急いで接続部分を壊して難を逃れたそうだ。
反乱軍は門の通用口で固まって居るところを、威力だけならBランク以上の魔物にも通用するジュウベエの突進をもろに食らい、その直撃を受けたほとんどが戦闘不能に陥ってしまったそうだ。そこにジャンヌたちがゴーレムを出して門の守りを固めた為、反乱軍が侵入できたのはほんの一瞬のことだったらしい。
そんなジュウベエの突進とゴーレムの登場で勢いを止められた反乱軍に、ハナさんたち南部子爵軍が横から突撃したそうだ。その先頭に居たのはハナさんとアムール、そして壊れてはいるものの、桁違いの戦闘能力を持つライデンだったらしく、それだけで反乱軍は形勢を一気にひっくり返されたとのことだった。そして止めに、ジャンヌがミノタウロス型ゴーレムを出したことで敵は戦意を失い、続くアウラのサソリ型ゴーレムの登場で一気に逃げ出したのだそうだ。
ミノタウロス型は、頑丈で力は騎士型を上回るがその分動きは遅く、おまけにバランスを崩しやすいので、人のような小さな動く的を狙うのには向いていないはずだが……と思っていたら、何とミノタウロス型は、ほぼ動かずに相手の戦意を奪うという戦績を挙げたらしい。
何でも、ミノタウロス型を出す前にケリーが移動中に作ったという巨大なハンマー……のように見えるものを杖のようにして立っていただけで、勝手に相手がびびったとのことだった。ちなみに、ケリーが作ったのは、丸太の先に数枚の分厚い木の板を釘で打ち付けただけの代物だそうで、とてもではないがハンマーと呼べるなものではなかったらしく、実際には武器と間違えられたらいいな程度の、ミノタウロス型に見合う大きさの杖なのだそうだ。ただ、それなりに重量はあるので、いざという時は振り回すだけでも、人間相手なら十分凶器となっただろう。
「こう言ったら不謹慎かもしれないけど、門をくぐる時にミノタウロス型ゴーレムは大きすぎて門を歩いて通れなかったから、ハイハイみたいな恰好で通ったんだけど……思わず笑ってしまいそうになっちゃった」
ジャンヌは気まずそうにそんなことを言ったが、実際に俺もそんな光景を見たら笑ってしまうかもしれない。
「まあ、なんだ。つまりアムールが言う『ジャンヌが力ずくで追い払った』って言うのは、正確には『ジャンヌが連れてきたジュウベエとゴーレムが力ずくで追い払った』ということか」
「まあ、そんなことだろうと思った」と言うと、アムールはニヤつきながら、
「言葉が足りないだけで、間違ったことは言っていない。むしろ、連れてきたジャンヌの手柄でもあるから、言葉が足りなくても正しいとも言える」
などと言っていた。確かに報告書などではわざと言葉を抜いて報告することもあるので、アムールの言うことも間違いではないだろう。
「まあ、細かいところはいいけど、ブランカとか他の南部子爵軍はどこに居るんだ? 西門の辺りか?」
ジャンヌが「細かくはない!」とか言っていたけれど、話が進まなくなるのでひとまず無視しておいて、他に気になったことを聞いてみると、
「他の人たちは、逃げる反乱軍を追いかけていったわよ。今頃反乱軍は、うちの人とブランカたちに蹂躙されているんじゃないかしら? 何せ、赤い龍王を倒してテンションが馬鹿みたいに上がっているところに、ちょっと危ない薬を服用して抑えが効かなくなっているのが多かったからね」
また面倒臭そうな単語が出てきたが、それ以上に服用した薬と言うのが気になった。
「ああ、薬と言っても、とても強いお酒みたいなものよ。沢山服用すれば危険ではあるけれど、少量なら痛み止めとして使われるくらい、南部では知られているものね。まあ、たまに馬鹿が調子に乗って使い過ぎて、中毒症状を起こすけれど……今回は使う量を事前に決めた上に、皆で量を確認してから飲んだから、危ないことにはなっていないわよ。まあ、私とアムールは使っていないけどね」
「飲酒運転、ダメ、絶対!」
アムールとハナさんも、他の人たちと同じく怪我の痛みはあったそうだが、移動手段が戦車を装着させたライデンだった為、安全第一で使用しなかったそうだ。
「ライデンの修理もなるべく早いうちにしないといけないな」
今はディメンションバッグの中に入っているライデンも、かなり破損が激しいので流石に大人しくしていた。だが、バッグを覗き込んだ俺に気が付くと、「早く直せ!」と言わんばかりに鋭い視線を向けていたので、怒って暴れる前に修理しないといけないだろう。
そんな感じで情報交換(あまり俺の方の話は出来なかったが)をして、ハナさんに余裕が出来たら南部子爵軍が倒した赤い龍王の回収の為に、いくつかのディメンションやマジックバッグ、それに人員代わりのゴーレムを貸してほしいと頼まれたのでそれを了承したところ、
「テンマ様、中の気配が変わりました! いよいよかもしれません!」
ドアのすぐ前で待機していたアイナがそう叫ぶと……
「産まれた?」
部屋の中から微かに赤子の泣き声が聞こえ、すぐに騒がしくなった。
「産まれたか!」
「よっしゃーーー!」
呆然とする俺を他所に、じいちゃんとアムールが大声を出して騒いでいたが……
「お待ちください! 何か様子が変です!」
すぐにアイナが待ったをかけ、二人を大人しくさせた。
確かに子供が産まれたのなら、中から誰かが出て来て様子を知らせてもよさそうなものだが、部屋の中は泣き声の後の騒がしさのまま……いや、それに驚きの声のようなものが混じって聞こえてくるだけだ。
そして、最初の泣き声からしばらくして、
「双子だったのか?」
泣き声がもう一つ増えた。
二人目の泣き声のすぐ後に、中の産婆さんから入室の許可が出たので入ろうとすると、
「旦那さん以外は少し待っときな!」
と一緒に入ろうとしたじいちゃんとアムールは入室を拒否された。そのことに対して抗議する二人だったが、プリメラの衣服が乱れているのに、旦那以外の人物を中に入れられるか! と一喝されてしまい、大人しく従っていた。
「ありがとう、プリメラ。お疲れ様」
プリメラのそばに寄り、声を変えると同時に回復魔法を使った。それにより出産の痛みはかなり楽になったみたいだが疲れはあまり取れていないようで、自力で体を起こすのは難しそうだった。
「テンマさんも、お疲れさまでした。必ず勝って戻ってくると信じていました」
そう言って笑うプリメラの下に、産婆さんが産湯を終えた双子を連れてきた。
「おめでとうございます旦那様、奥様。可愛い男女の双子です」
そう言うと産婆さんは、女の子をプリメラに抱かせ、男の子を俺に抱かせてきたが……俺とプリメラはこんな小さな赤子を抱くのは初めてだったので、おっかなびっくりと言った感じで、産婆さんから説明を受けながら我が子を抱いた。
「小さいな」
「小さいですね」
こんな大きさで大丈夫かと思うくらいだが、産婆さんに言わせると双子ということで平均より少し小さいように思えるが、大体これくらいの大きさらしい。
その後、プリメラが衣服を整えてから中に入ることを許されたじいちゃんがひ孫となる双子を抱き、続いてジャンヌたちとハナさんが抱き上げたが……それ以上は赤子の負担が大きいということで、今日の抱っこの時間は終わりとなり、マークおじさんたちは明日以降に持ち越しとなった。そして、持ち越しが決定したタイミングで、ディンさんが王城から客を連れて戻ってきた。
「テンマさん!」
「ティーダ、王城を離れて大丈夫なのか?」
「はい! 東側の敵は王族派と中立派が奮闘し、ベヒモスとナミタロウにより壊滅、南に回った赤い龍王は南部子爵軍が撃破し、北側は未だに戦闘中ではあるものの、西側に現れた反乱軍が敗走しましたので鎮圧は時間の問題です。そして何よりも、テンマさんがゾンビどもの親玉を打ち取っています。この戦争、我々の勝利が確定したと言っていい状況です!」
確かにティーダの言う通り、王都周辺のゾンビどもがほぼいなくなった以上、後は反乱軍の本体とも言えるダラーム公爵軍を壊滅させればいいだけだ。戦争がいつまで続くかは帝国側の状況次第だが、あれだけのゾンビが王国で倒されているのだ。帝国内にいるゾンビはそこまで多くはないだろうし、恐らくあの女は帝国の兵士だけでなく多くの国民もゾンビに変えていただろう。そうだとすれば、すでに帝国と言う存在は崩壊してこの世に存在していない、もしくは帝国と名乗れる程の規模ではなくなっているはずだ。
それに、まだ帝国内に王国に対する敵対勢力と言えるものが残っていたとしても、後は攻め入るだけなのでこれまでのように後手に回った戦いになることは無い。
「仮に反乱軍が粘ったとしても、俺が上空から消し去ればいいだけか」
「いえ、そこまでしなくても……」
俺が動く状況はあまり好ましくないのか、ティーダからはそれは勘弁してくれとでも言うような雰囲気が漂ってきた。
「それよりも、お子さんが産まれたと聞きました。おめでとうございます!」
話題の逸らし方が少し強引な気もするが、その言葉は本心からのものだと分かった。
「ああ、ありがとう。男と女の双子だったよ」
と言うと、
「双子ですか! ますますおめでたいことですが……あの、テンマさん、気を悪くせずに聞いてください」
と、ティーダはとても言いにくそうな顔をしながら、
「貴族の間では、最初に生まれた子供が双子と言うのは縁起が悪いと忌み嫌う者が少数ですが存在します。もちろん、僕はそんなことひとかけらも思っていませんし、それはおじい様を始めとする王家も同じ考えです。ただ、古い考えで凝り固まっている者の中には、過去に双子が原因で家が割れたり没落した事例を持ち出すことがあります」
と言った。
正直に言えばいい気はしないが、話している様子からティーダはそう言った考えを持っていないというのは分かる。それに、前世でも双子を不吉だと考える奴がいたというのは聞いたことがあるので、一応知識としては知っている。
「まあ、そう言い出す馬鹿はいるだろうな。今回の戦争で、オオトリ家は目立ちすぎたし、嫉妬する連中の中には、少しでも俺を貶めて憂さを晴らしたいという奴が現れても不思議ではないな……その結果がどうなるかは、俺でも分からないけどな」
ただ、そんな考えを持つ奴とは絶対に相いれないと思えるので、自分でもその対処にどう動くかはその時になってみないと分からない。最悪、そいつとその同類たちと戦争になったとしてもかまわない。
「関係のない者たちを巻き込まない限りは、王家としては個人間の争いということで様子を見るとは思いますが……立場上、王家として仲裁に動くことにはなるかもしれませんが、決して王家が双子のことに関して悪意を持っているわけではないと知っておいてください」
ティーダ……と言うか、王家は俺の子が双子だというのは屋敷に来てから知ったはずなので、今の考えはティーダ自身の考えなのだろうが、王様やマリア様たちの人柄からすれば、ティーダの言うことに間違いはないだろう。
「王家の意向については分かったが……それで止まるかどうかはその時次第だぞ?」
「ええ、決闘と言うのは本来第三者がどうのこうのと口出すようなものではありませんから、王家の考えを知っているだけで構いません。そもそも、相手の血統に難癖をつけるということは、敗北すれば最悪族滅すらあり得ると分かった上で喧嘩を売っていると思われますので、余程有用なところでない限りは、全て自己責任で構わないと僕は思いますけどね」
なかなか苛烈なことを言っているが、ほとんど俺と同じ考えなので安心した。それに、もし実際にそうなった場合、影で言っているならともかく俺の聞こえるところで言うということは、頭の中か人間性に重大な問題があるとも言えるので、早いうちに排除しておいた方がいいと思っているのだろう。どうやらティーダは、完全にシーザー様似のようだ。初めてあった頃と比べれば、格段に王族らしくなったといえるだろう。この様子なら、うちの子の世代も安泰かもしれない。
「それで本題ですが、正式に王国の勝利を宣言した後で、主だった者たちの論功行賞が行われます。その第一功、断トツでテンマさんです」
「自分で言うのもなんだけど、まあ当然といえば当然だな」
敵の首魁を打ち取り、防衛拠点の基礎を構築し、ゴーレムを戦力として王家や辺境伯家に配っているのだ。全体的に見て、オオトリ家並の貢献をしたところは見当たらないだろう。そうなると、第二項はハウスト辺境伯か、サンガ公爵家とサモンス侯爵家を合わせた三家、もしくは南部子爵家だろう。
「そして、第二功はベヒモスとナミタロウ、第三功がハウスト辺境伯家とサンガ公爵家とサモンス侯爵家の連合軍、第四功が南部子爵家、第五功が……テンマさん以外のオオトリ家です」
「はい?」
少し、おかしいのが混じっていた。まあ、第二功に関しては、おかしいといえばおかしいのだが、外部からの援軍と言う扱いにし、赤い古代龍と緑色の龍を倒したのだから当然とも言える。だが、俺以外のオオトリ家と言うのは少しおかしい気がする。そんな不自然なことをするよりも、俺と合わせてオオトリ家を第一功とすれば分かりやすく、報酬の話もやりやすいはずだ。
「テンマさんの疑問も分かります。ただこれは、戦功を挙げた順に当てはめた時の話なので最終的には、第一功はオオトリ家、第二功は三家の連合軍、第三功は南部子爵家、第四功は王都の東側で戦った中立派の連合軍と言った感じになります」
第五功以下は上と違い明確な差があるわけではないので、王城の上層部で資料を基に話し合うとのことだ。まあ、もろもろの事情から、北の公爵家になるだろうとのことだったが……北側に現れた反乱軍の一部を防いだとのことなので、妥当なところではあるだろう。
「これほどの規模の戦争は、王国どころか大陸の歴史上でも初めてのことなので、オオトリ家の名が三つも残ることは、その……王家としては、色々と都合が悪くて……ですね……申し訳ありまりせん」
まあ、そんなところだろうとは思うけど、ナミタロウはともかくとして、何故ナミタロウの連れてきたベヒモスまでもオオトリ家の一員扱いになるのかと思っていると、ティーダは俺の疑問に気付いたようで、それについても答えてくれた。
何でも、ナミタロウは初めて出た武闘大会のおかげで、世間では俺の眷属扱いとなっており、そのナミタロウが連れてきたベヒモスは、すなわちオオトリ家の連れてきた援軍となるそうだ。もっと言うと、そもそも俺が居なければナミタロウとベヒモスの参戦はあり得なかったので、オオトリ家の関係であるとしか報告書には書けないそうだ。後、ベヒモスを第二功とすると、王族派の誰かがベヒモスと褒美について交渉しなければならず、絶対に誰が行くかで大揉めしそうなので、そういったこともあってオオトリ家としてまとめたいらしい。
「まあ、それは仕方がないと言えばそれまでか。どの道、ボンのことで一度はベヒモスに会う予定だったしかまわない。ただ、一応希望は聞いてみるから、それが分かったらオオトリ家の分とは別に用意してくれよ」
「ええ、よろしくお願いします。それとですね、とても言いにくいことなのですが……テンマさん、貴族になって貰えませんか?」
「えっ!? 嫌だぞ」
予想外のお願いに反射的に断ってしまったが、断られたティーダは頭を抱えてテーブルに突っ伏してしまった。