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第18章-17 見合い話

「さて、勝ったのは二足だけど、二足にも欠点があることが分かった。四つ足の欠点と合わせて、改良点すべき点を出してもらいたい。まずは四つ足から」


 ゴールしたのは二足なので、このまま二足を量産すればいいという気がするが改良するべきところが多いので、皆が感じたところを指摘してもらうことにした。


「動きがきもい」

「思ったより速くなかったのう」

「直進は出来るけど、急カーブが出来ないみたい」

「倒れたら立ち上がれないみたいです」


「私のところからは何も見えませんでした!」


 順に、アムール、じいちゃん、ジャンヌ、プリメラ、アウラだ。

 アムールの言う『きもい』とは、長方形の箱のような体に犬のような足で走る四つ足の動きが嫌だそうだ。じいちゃんとジャンヌの意見は俺と同意見で、この四つ足の一番の問題点だ。そして、新たな欠点として、立ち上がれないというものがプリメラから出た。

 立ち上がれない()()()と言うのは、プリメラからは四つ足が倒れているところがギリギリ見える場所だったので、確実とは言えないからとのことだった。


「二足が落ちてくるちょっと前でしたけど、四つ足の足が空をかいているような動きをしていました。ただ、もしかすると単に走り続けようとしていただけかもしれませんけど」


 どちらにしろ新しい欠点だと思った。立ち上がれないのだとしても、倒れたのに起き上がらないで足を動かし続けたのだとしても、こけたらそれで終わりということだ。


「それで、二足の方は?」


「遅いけどがんばった!」

「そうじゃな。遅い」

「やっぱりカーブが苦手みたい」

「体のバランスが悪くて、階段を降りることが出来ないみたいです」

「手足が短くて不格好です」


 アウラの指摘に、二足贔屓のアムールが噛みつこうとしたが、


「ああ、それで階段を転がり落ちたのか」


 俺には一番重要な欠点に思えた。正確にはプリメラの指摘した欠点と合わせて、『手足が短いせいで階段を降りることが出来ない』だが。


「手足が短いせいで、階段を降りようとすると簡単にバランスを崩してしまう。ただ、四つ足より手足が太いおかげで、階段を転がり落ちても動くことが出来たというわけだな」


「ふむ、なるほどのう……そうなると、四つ足よりも二足の欠点の方が改良しやすいかもしれぬのう」


 二体とも階段が苦手と言う欠点があるが、落ちて動けない四つ足よりも動ける二足の方が使える。それに、


「逆にその欠点を利用して、階段から転がり落ちる戦法が使えそうじゃない?」


 小型とは言えゴーレムが上から転がり落ちてくれば、それだけでも大ダメージが期待できるのに、さらに転がり落ちた先で暴れまわることが出来れば、敵としてはたまったものではないだろう。


「階段を転がり落ちる場面があるかは別としても、戦法が増えるのはいいのう。まあ、その分頑丈に作らねばならぬが」


「でも、小さいと上を飛び越えてしまわれませんか? 追手が飛び越えるのは無理でも、魔法とが矢とか槍とか?」


「二足がそれを阻む必要はない。魔法や矢の盾になるのは、クリスの仕事。きっとクリスが、その身で矢も魔法も防いでくれる」


 俺とじいちゃんの会話の途中で、アウラが疑問に思ったことを口に出したが、アムールに一蹴されていた。


「まあ、クリスさんの仕事と言うのは間違いないけど、正確には近衛兵や護衛のゴーレムの仕事だな。この二足の仕事は物理的な敵の妨害で、王様たちと敵の間に距離を作るのが役目だから、敵を倒したり攻撃を防ぐのは二の次三の次だな」


 最初から量産型は邪魔をする目的で作ろうと考えていたので、戦闘力はあまり重要視していない。本当におまけ程度だ。それに、全長が一mであっても、両手を上げさせれば五十cmくらいは高くなるはずなので、やり方によっては魔法も矢も防ぐことが出来るかもしれない。


「とにかく、指摘して出た欠点を改良したものを作ってみるしかないじゃろうな。出来たものを動かしているうちに、本来の用途とは違う使い方を思いつくかもしれぬしのう」


 そう言うわけで、なるべく欠点を改良できるように設計図を書いてみたが、じいちゃんたちが手伝えるのはここで一旦終わり、パーツを作るのは全部俺がやった。今回の量産型は一体一体作るのではなく、パーツごとに大量生産し、全てのパーツが揃ったところで組み上げることにしたのだ。作業の仕上げには魔法が必要になるので、俺の意外だとじいちゃんしか出来ないだろうが、仮組までなら魔法は必要ないので、プリメラたちにも手伝って貰うことになっている。



 量産型製作からおよそ一か月半。王都周辺は雪が降る日も珍しくなくなり、辺境伯領の国境付近での争いは王国側が競り勝って、帝国軍を辺境伯領から追い出したのだった。ただ、それは雪が降ったことで帝国が王国側での戦線維持が難しくなった為に引き上げた側面もあり、未だに帝国側の国境近くに敵軍は陣取っている。そのせいでハウスト辺境伯軍を中心とした王国軍は、年の瀬だと言うのに軍を引き上げることが出来ないでいた。


 そんな中行われた王様主催のパーティーでは、近年まれに見るくらいの少数参加となった。ざっと見た感じでは、前年に行われたパーティーの三分の一と言ったところだ。その理由として、王族派はいつでもハウスト辺境伯領へ加勢に行けるようにと自領に戻った貴族がいた為前年の半分ほどの参加で、改革派は帝国が攻め入ってきた時から王族派との対立が目立ち始め、そう言った諸々を理由に不参加(ただし、王都には滞在している)を表明した貴族が八~九割ほど出た。中立派は王族派と改革派の争いを警戒してか、色々と理由を付けて半数以上が不参加だったり自領に戻ったりしたそうだ。なので当然、そう言った空気の悪さを警戒した一般の招待客も少なかった。


 そんな中招待された俺はと言うと、


「早く帰りたい……」


 まだパーティーが始まっていない段階から、家に帰りたくてたまらなかった。


「まあ、気持ちは分かるが、こういう時に顔を出して王族との仲を宣伝する必要があるからのう。それに、アレックスたちに渡すものもあるじゃろう」


 今のところ改革派は大人しくしているが、春になって帝国がまた攻勢に出始めたら騒がしくなるだろう。その時の為にも、オオトリ家は王族との仲が良好だと再認識させる必要がある。まあ、実際に良好な仲だし、ことある毎に宣伝しているので今更かもしれないが、王都が手薄になっている時にこそやる意味がある。とは言え、俺には俺の事情があるし、オオトリ家と言うのならじいちゃんが代理として参加するだけでもいいとは思うのだが……じいちゃんもじいちゃんで、面倒臭いから参加はしたくないなどと言っているので、互いにけん制し合った結果、結局二人で出席することになったのだった。

 ちなみに、何故俺が出席したくないかと言うと、


「テンマ、助けてくれ……プリメラが妊娠したと分かってから、エリザが……頼む、回復薬を譲ってくれ……」


 プリメラの妊娠が発覚したからだった。

 量産型ゴーレムの製作前後に体調を崩し気味だったので心配していたのだが、その少し後からつわりと見られる症状が現れた為、マリア様の伝手で産婆さんを紹介してもらい診察してもらったところ、妊娠の可能性が極めて高いと言われたのだった。正直、あのままつわりに気が付かなかったら、いつものように薬を用意した可能性が高いので冷や汗ものだった。なお、そのことを産婆さんに話すと説教された。今後もプリメラが薬を必要とした場合はその産婆さんが用意するというので、お願いすることになった。


「流石のテンマも、妊娠中の知識は無かったというわけか」


 などとじいちゃんは笑っていたが、妊娠など縁がないものと思っていたので仕方がないだろう。何せ、ククリ村にいる時は村の人が妊娠することは無く、母さんの残した本に妊娠中の対応などが書かれてはいたものの、冒険者としてはあまり役に立ちそうになかったのでスルーしていたのだ。なので、只今勉強中である。


「そう言うじいちゃんも似たり寄ったりの癖に……ほら、栄養剤だ。飲め」


 回復薬よりも栄養剤の方がいいだろうと思ってアルバートに渡すと、その場で一気に飲み干した。栄養剤を飲んだ後は、プラシーボ効果が出たのか幾分元気を取り戻していたが、どうせすぐに元に戻るはずなので帰る前に何本か渡した方がいいだろう。


「そう言えば、父上から愚痴の手紙が来たぞ。何でも、重要な時に国境から離れられないのが残念だとのことだ。それと、私にはプリメラの負担になるような行動は絶対にするなと言う手紙があったな。そして、テンマにも手紙があるぞ」


 アルバートよりは、エリザの方が負担になりそうな気もするが……それも含めての()()なのだろう。妻の責任は夫の責任と言う感じかもしれない。


「ええっと……要約すると、『おめでとう。私は子が生まれるまでには戻れるはずだから、その時に改めてお祝いをしよう。あと、春になれば妻たちが遊びに行くはずだから、その相手を頼む』……みたいなことが書かれているな」


 他にも、色々と興奮気味に書かれていたり愚痴が入っていたりで文章はもっと長いのだが、簡単に説明するとこんな感じだろう。


「春になれば母上たちが来るということだが……三人揃ってということは無いだろうな。恐らく、順番順番で一人ずつやってくるはずだ。でないと、リンドウで指揮する者がいなくなるからな」


 サンガ公爵が戦場に出ている以上、お義母さんたちはリンドウを守らないといけないので仕方がないだろう。サンガ公爵も、争いが停滞すればリンドウまでなら戻ることが出来るかもしれないが、王都までは無理と考えておいた方がいいだろう。


「生まれてくる子が男の子だろうと女の子だろうと、相手探しが大変だろうな。誰を選ぶかという意味で」


「うちの状況を考えれば色々なところから話が来そうではあるが、余程相手が悪くない限りは口を出したくはないんだよな……俺としては家同士の繋がりよりも、子供同士の相性を重視したいかな。まあ、それもこれも、無事に生まれて無事に育ってからの話だな」


 王家を始めとしたオオトリ家の交友関係を考えれば、俺の子供に結婚相手を用意しようとする者が溢れるのは目に見えている。なので、それらの対策はしっかりと取らなければいけないとは思うが、それはプリメラと話し合う必要があるが、今のプリメラの状態を考えれば状況が落ち着いてからでも十分間に合うだろう。


「それにしても、プリメラはつわりがひどいという話だが、魔法や薬でどうにかならないのか?」


「産婆さんが言うには、妊娠中は薬や魔法はなるべく使わない方がいいという話だ。もちろん、緊急事態の場合には使用しないといけないそうだけど、今のようにきついだけなら魔法や薬によるリスクの方が大きいらしい」


 妊娠初期の段階で下手に使ってしまうと、魔力や薬が胎児に悪影響を及ぼす可能性があるらしいので、余程プリメラが危ない状態の時以外には使用しないように言われたのだ。そして、そのような状況で使用しないといけない時には、子供を諦める覚悟で使えとも。ただ、妊娠中期に入れば、魔力に関してはそこまで敏感にならなくてもいいらしい。もっとも、それでも強い魔力は胎児にとって毒にもなりかねないので、なるべくなら使わない方が安全ではあるそうだ。


「何と言うか……月並みのことしか言えないが、母親になるというのは大変なことだな」


「だから少しでもプリメラの近くにいたかったんだけど、そのプリメラにもパーティーに出席するように言われてな。何かあれば屋敷にはククリ村のおばさんたちも待機しているから、じいちゃんと行ってこいって言われた……」

「男は家にいてもいなくても一緒だから、外で仕事をして来いとのう」


 なので、さっさとパーティーを始めてもらいたいのだが、開始までもう少しかかりそうだ。


「まあ、今年は参加者が例年より少ないから、いつもよりは短いだろう……多分」


 そうあってほしいと願いながら、大人しく王様たちが来るのを待つことにした。


「それはそうと、エリザはどうしたんだ? それにリオンやカインも?」


「エリザはシエラ嬢と一緒に、来て早々に王族派のご婦人たちに捕まった。リオンとカインは挨拶回りだな。特にリオンは今回の戦場が辺境伯領だから、念入りに回っている。カインはそのフォローだ。私も一緒に回ってもよかったんだが、三人で回ると邪魔になるし、場合によっては圧力をかけていると取られかねんからな。私は二人が終わった後で挨拶に回るつもりだ」


 これがサンガ公爵ならば、向こうが挨拶に来るのを待つ立場だが、嫡男の立場だとそうはいかないらしい。それに、実家が今回の戦争のまとめ役とも言える立場なので、色々と気を使う必要があるそうだ。


 そんなことを話していると、ようやく王様たちが会場に姿を現した。

 王族からの参加者は、ミザリア様とルナを除いた全員で、エイミィも王城に来てはいるそうだが、パーティーには参加しないらしい。なら、何故王城に来ているかと言うと……


「ルナ様のお相手をしていただいてます」


 と、いつものように背後に忍び込んでいた執事(クライフさん)が教えてくれた。それに、ミザリア様とエイミィはこれまであまり接点が無かったので、交流を深める為に三人でお茶会を楽しんでいるとのことだった。


「陛下の周辺はまだまだ騒がしそうなので、テンマ様とマーリン様はこちらへどうぞ。アーネスト様が暇なので呼んで欲しいとおっしゃっていまして」


 ゴーレムということは伏せているがお土産を持って行くことは事前に知らせているので、王様に渡す前に内容を確認しておきたいと言ったところだろう。じいちゃんは嫌がっているみたいだが……どうせパーティーの途中でいつの間にか合流して、喧嘩しながら酒を飲むので早いか遅いかの違いでしかない。

 クライフさんに案内されたのは会場の端にある東屋の中でも身分の高い貴族専用の場所で、周囲に隠れるところのない秘密話をするのにうってつけのところだった。


「おお、テンマ。呼び出してすまんのう。それと、奥方の懐妊おめでとう」


 東屋に近づくと、俺に気が付いたアーネスト様が声をかけてきた……じいちゃんの方を一切見ずに。

 いつもならパーティーでは度数の低いお酒を好むアーネスト様が、今日は珍しくお茶を飲んでいるので、俺のお土産がただのお土産でないと感づいているみたいだ。


「早速で悪いが、口頭でよいのでお土産とやらのことを話してくれんか? 普段なら陛下に渡されるものは近衛が物を確かめるのじゃが、今回は()()()()手が空いておらんでな。わしが物を確かめることになったのじゃ。口頭なのは、パーティーでお土産をひけらかすような真似は、はしたないからじゃな」


 と言う理由を付けて、お土産の情報を少しでも外に漏らさない為の判断だろう。


「ディンさんからの報告で知っていると思いますが、量産型のゴーレムを百体ほど用意しました。ただ、このゴーレムは最初から体を作っているものなので、小型とは言えかなりのスペースを必要とします。一応、そのゴーレム専用のディメンションバッグを複数用意していますが、今後の量産次第では数が足りない恐れがあります」


 と、お土産の正体を話すと、アーネスト様だけでなくクライフさんも茫然としていた。何せ、普通ゴーレムはその作成の難易度もあって、一体作るのに安くても数十万Gくらいのコストがかかるからだ。まあ、俺の場合は重要なところはほぼ俺一人で作ったので技術料はタダだし、材料費も足りなくて追加購入した分もあるが大半は自分で採集して保管していたものを使ったので、およそ百体分の量産型ゴーレムにかかった金額は、足りなかった鉄(およそ二百kg)とディメンションバッグの製作に使った市販のバッグの代金で、合わせてニ~三万G程だった。


「鉄は半分くらいは使えなくなった武具を再利用し、バッグも中古のものを買ったのでそんなにかかりませんでしたね」


 代金の内訳を教え、その後でじいちゃんと制作時の失敗談などを笑いながら話していると、


「テンマ……くれぐれも他所で格安のゴーレムを大量生産できるなどと話す出ないぞ。絶対にじゃ! 下手をするとオオトリ家は、秘密裏に強大な軍を増やしている危険な家だとして、改革派どころか中立派や王族派からも睨まれることになるぞ! いや、睨まれるだけならよいが、オオトリ家を危険視した者がどう出るか分らぬ。矛先がテンマやそこの阿呆に向くだけならよいが、確実にプリメラや生まれてくる子供、もしくはテンマに近しく武力を持たない者に向けられるじゃろう!」


 いつもよりも厳しいアーネスト様の言葉に、毎度のごとく遠くからこちらを窺っていた貴族がざわつき始めた。大分離れているので俺たちが何を話していたかまでは聞き取れていないはずだが、恐らくはアーネスト様が声を荒げたことで激しい口論が起こったとでも思ったのだろう。まあ、アーネスト様が怒ったのは確かだけど……それは俺の危機管理が甘いことに対しての忠告なので、決して仲たがいやしこりが残るものではない。なので、王族派よりの貴族は安心してほしいし、改革派よりの貴族はぜひとも落胆してほしい……何が原因だったのかは話せないけれども。


「そんなに騒がんでも、わしは十分理解しておるわい。それに、テンマがずれているのは昔からじゃろうが」


「お主が理解していても、肝心のテンマが分かっておらんかったら意味が無かろう! それに理解しておるのなら、先に注意しておかんか!」


「いや、まあ、それはあれじゃ……ちょっと注意するのを忘れとっただけじゃ」


「お主も同罪じゃ! テンマとどっこいどっこい……いや、お主が教育に関わったせいでテンマがこうなったとしたら……お主が元凶ではないか!」


 調子に乗った俺が一番の元凶ではあるのだが……知らないうちにじいちゃんに感化されたと言われると、否定することが出来ないのは確かだ。それに、いつの間にか俺を叱っていたはずのアーネスト様は、いつものようにじいちゃんと言い争いをしている。


「よかったですね、テンマ様。あのお二人のおかげで、無駄に聞き耳を立てて窺っていた貴族たちが、いつもの口喧嘩だと判断したようですよ。当人たちにそのつもりはないのでしょうが……結果良ければですね。おっと、お茶のお代わりはいかがですか? 特別にすごく渋いものを用意いたしますが?」


()()ください。そのうち一つはほどほどの渋さの砂糖入りで、残りの二つは激渋の砂糖なしでお願いします」


 この後、クライフさんはさりげなく二人に激渋のお茶(一気に飲めるように、少し冷ましたもの)を渡し、その罪を俺に擦り付けていた。


「怒鳴ってしまったが、これらはありがたく王家で使わせてもらおう。それに、もしかすると追加を頼むかもしれぬが、その時は出来る範囲で引き受けてもらえると助かる」


「結局、受け取るんじゃな。あれだけ怒鳴りおったくせに、調子がいいのう」


「誰かが言わぬと、テンマとお主は暴走したままじゃろうが! 少しは自分が規格外だという自覚を二人が持てば、わしもこんなことを言わずに済むのじゃ!」


「それに関しては感謝しております。追加も出来る限り引き受けますので……マリア様に相談してから連絡をください」


 一瞬、『遠慮なく言ってください』と言いそうになったが、そうするとうちに直接やって来て注文しようとする人がいるので、確実に目立ってしまう。こういった管理はマリア様に頼むのが確実だ。マリア様なら誰にどれだけ持たせるのか決めても文句は言われないだろうし、マリア様がゴーレムを取りに来させるとしたらアイナかクリスさんなので、うちに来たとしても目立つことは無く、改革派に怪しまれたとしても不自然ではないと判断されるだろう。


「それがよいじゃろうな。わしの方から伝えておこう。それでは、この話はこれで終わりじゃ。テンマ、そろそろ陛下の周りが落ち着く頃じゃろうから、声をかけるのならば今がよかろう。あまり遅くなると、直接探しに来そうじゃしな」


 「それは面倒臭くなるのう」と言ってじいちゃんが立ち上がったので、アーネスト様と一旦分かれて王様のところに行くことにした。アーネスト様はそろそろ落ち着く頃と言ったがまだ貴族が周囲に陣取っていた。他の貴族に捕まるのは嫌だったので、回れ右でもう少し時間を潰したくなったのだがその前に王様に見つかってしまい、向こうから近づいてきたので我慢するしかなかった。

 ただ、まだ周りに人がいる場所で王様がプリメラの妊娠を話してしまったので、当初とは違う意味で目立つことになってしまった。まあ、特に秘密にしていたというわけではないのだが、プリメラの体調が落ち着くまでは近しい知り合い以外には知られないようにしていた(あのリオンですら誰にも漏らさなかった)と言うのに……


 一言文句を言おうかと思ったが、王様がばらした瞬間にマリア様が動いたので、これまたいつものようにどこかに消えていく二人を見送るしかなかったのだった。なお、そのことに関する謝罪はシーザー様からあり、続けてザイン様とライル様からもされたので、表面上は不快な様子を見せずに謝罪を受け入れる必要があった。まあ、いつものことと言えばそれまでだし。


 その後は出来るだけ王族の誰かが近くにいるようにしてくれたので、特に問題なくパーティーを過ごすことが出来たのだが……その翌日から俺とプリメラの子供あてに、お見合いの話が来始めるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 俺の意外だとじいちゃんしか出来ないだろうが、 →俺意外だと爺ちゃんしか出来無いだろうが、
[一言] 使用目的考えるとゴーレムってパンジャンドラム型でいいんじゃなかろうか?(棒 敵陣中央で自爆すればなお良し(明後日の方を見ながら
[気になる点] 正直、感想コーナーというより、修正指摘コーナーと化してることに改めて感想を読み直してビックリΣ(゜Д゜)している。 [一言] ああ、前回のプリメラの風邪引いたというところになんか引っ掛…
感想一覧
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