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第18章-13 水の中の……

「とりあえず、そいつらは何をしたんだ?」


 アムールの質問より先に、何がどうなってこの状況が生まれたのか問い質すと、


「こいつらが襲い掛かってきて、私が返り討ちにした!」


 とのことなので、後ろの方に隠れていたジャンヌとアウラに尋ねることにした。


「つまりこいつらは、身代金目当てでジャンヌたちを捕まえようとしたわけか……スラリン、間違いないか?」


 念の為スラリンにも聞くと、スラリンは体を縦に弾ませて肯定した。


「そうなると、アムールたちの無実を証明する為にもギルドに連れて行かないといけないか……面倒くさいから、縛ってそこら辺に転がしておくか?」


「流石にそれは……オオトリ家の評判に関わってくるので、やめてください」


 転がすと言っても、ちゃんと牢屋のようなものを作ってその中に入れておくつもりなのだが、プリメラは悪評が立つからと反対した。


「仕方がない、ディメンションバッグに入れてギルドまで連れて行くか。アムールたちに襲い掛かったのが初犯でなければ、何らかの類似の事件がギルドに回っているだろう」


 それに、例え初犯であったとしても、実際にアムールたちと争いになったのは確かだし、ああ見えてアムールは子爵家の令嬢なのだ。貴族に手を出した以上(出していなかったとしても争いになった以上)、こいつらの取り調べは厳しいものになるだろう。


「もしこの人たちの犯罪が証明されなかった場合、セイゲンに長期滞在することも考えないといけませんね……」


 プリメラは諦めたような、もしくは呆れたような声で呟きながら、何故かスラリンをこねくり回していた。まあ、新婚旅行なのに、これだけトラブルが続けば仕方がないのかもしれない。八つ当たりで(と言う程ひどい扱いではないが)こねくり回されているスラリンには申し訳ないけれど、もう少しプリメラの好きにされていて欲しい。


 スラリンがプリメラに捕まっている間に、まだ気絶している犯人たちを縛り上げてバッグに放り込もうとしたところ、


「お~い、テンマ~!」


 ジンたちがやってきた。


「何か、受付でテンマとプリメラが変な行動をしていると聞いてよぉ。面白そうだから見に来たぜ!」


「面白そうなことなら、俺たちも手伝うぜ!」


 野次馬根性丸出しで来たくせに、わざとらしく爽やかさを演出しようとするジンとガラットに少しイラっとしたが、ジンたちならこいつらのことを何か知っていると思い相談してみることにした。すると、


「アムール、お手柄だな! こいつらは少し前にセイゲンに流れてきた余所者でな。元の場所でどうだったか知らんが態度と口と性格が悪くて、来て早々に問題は立て続けに起こしたせいで、ギルド長がキレる寸前だぜ。悪事の証拠が揃い次第、資格はく奪ではなく犯罪者として処分してやる! ……ってな」


「初犯じゃないとは思っていたが、他に何の容疑がかけられているんだ?」


 「やっぱりな」と思いながら、ギルド長の物まねをしているジンに他の容疑を聞くと、ジンの代わりにガラットとメナスが、


「まあ、軽いところで脅迫だな。他にも、恐喝と窃盗……新人の見つけたものを難癖をつけて取り上げるとかが確認されている」


「それと、あいつらが来てから数人の新人が姿を消したことから、殺人の容疑もかけられていたね」


 かなりあくどい連中だったみたいだが、殺人に関しては数人が姿を消したというだけで証拠がない為、あくまでその可能性があるということらしい。その代わり、脅迫・恐喝・窃盗については、ダンジョン内でのことなので確実な証拠はないものの、目撃者や被害者の訴えがあるのでギルドは『ほぼ黒』と断定しているそうだ。ただ、それだけだと犯罪者にするどころか資格のはく奪も難しいらしく、できても数週間の資格停止処分がせいぜいだそうだ。その資格停止中に他所の街に逃げられる可能性もある為、決定的な証拠が出るのを待っている状況であり、アムールのおかげで引導を渡すことが出来るだろうと、ジンたちは笑っていた。


「それじゃあ早速、ギルドに行こうぜ!」


 やけに上機嫌のジンとガラットが、冒険者たちを乱暴にディメンションバッグの中に投げ入れると、俺の背中を押すようにしてワープゾーンのある下の階に向かい始めた。

 そんなジンとガラットを、メナスは呆れたように見ながら歩き始め、プリメラはリーナたちと話しながら後をついてきた。


 

「聞け、お前ら! あの馬鹿たちがやらかしたぞ!」

「引導を渡したのはアムールだ!」


 ギルドに入るなり、ジンとガラットは大声で問題だった冒険者たちがアムールにやられたと叫んだ。するとそれを聞いた冒険者たちからは、喜びの声と落胆の声が聞こえてきた。

 流石にここまで来ると俺だけでなくアムールやジャンヌにアウラも怪しいと気が付いたようで、ジンとガラットを冷たい目で見ていた。しかし当の本人たちは、自分たちの評価が下がりつつあるのに気が付いていない。


「メナス、いったいこれは何なんだ?」


「まあ、簡単に言うと、あの問題の冒険者たちが、『いつ・どこで・誰に』捕まるかをかけていたんだよ。ちなみに、一番人気は『テンマがセイゲンに来た日にダンジョンで』だったね。二番人気は『テンマがその次の日にダンジョンで』だったよ」


 なお、人気は俺関連が上位を占め、六位辺りからじいちゃんになり、アムールが登場するのは十位を超えてからのはずだとのことだった。ちなみに、胴元はアグリたちらしい。そのことをいつもの定位置でじいちゃんとお茶をしていたアグリに問い質したところ、「利益は『テイマーズギルド』の新人教育に当てる」とのことらしく、俺は(一応)会員なのに普段何もしていないので見逃すことにした。


 勝手に賭けの対象にされ、しかも人気薄だったアムールはアグリに抗議しようとしていたが、その前にアグリがお菓子の詰め合わせを差し出したので、ころりと態度を変えていた。アグリはアムールの抗議を予想していたらしく、先に準備をしていたようだ。ついでに言うと、じいちゃんに出しているお茶菓子もアムールと同じ理由で準備していたらしい。なお、俺は『テイマーズギルド』の会員ということで、そんな配慮は必要ないだろうとのことだった。


「ついでに聞くが、メナスたちは当たったのか?」


「いや、当たるも何も賭けていないからね。ジンとガラットはどうやら当たったみたいだけど、私の場合はリーナが、「プリメラの機嫌によっては、賭けているのがバレると怒られるかもしれませんね~」……とか言うから今回は止めておいた……と言うのが表向きの理由で、本当は読みに自信が無かったから止めた」


 リーナが言ったからと言って、それで止めるよなメナスではないだろうという目で見ていると、俺の視線に気が付いたメナスがすぐに訂正を入れた。リーナもプリメラがそれくらいで怒るとは思っていないはずなので、賭けなかった本当の理由はメナスと同じだろう。


「それで、あの二人はどれくらい儲けたと思う?」


「さぁ? ただ、あの二人は一点買いじゃないことだけは確かだから、配当が大きくても大した儲けになっていない可能性があるね」


 あの喜びようを見る限りでは、『取って損』と言うことは無いのだろう。もしこれが俺がらみの配当なら、あの二人に遠慮なく集るところだが、今回は関係ないのでそれはアムールだけの特権だろう。

 それはアムールも分かっているのか、アグリからもらったお菓子を一つ口に放り込むと、すぐに二人のところへ向かって行った。アムールのことだから、下手をすると二人の儲けが吹き飛ぶくらい奢らせる可能性もあるが……俺には関係の無いことなので、二人の懐がどうなるのか蚊帳の外から楽しませてもらおうと思う。


「賭けに関しての話は終わったようじゃな」


 話に区切りがついたのを見たじいちゃんが、俺たち(アムール以外)を椅子に座らせた。


「ダンジョンの中にある湖の話は聞いておるな? 実はあそこに、ナミタロウがいる可能性が高いらしいのじゃ」


 まあ、セイゲンで一番大きい水場と言えばダンジョンの中にある湖なので、魚類のナミタロウが泳ぎに行ったとしてもおかしくはない。

 しかし、それの何が問題なのかと思っていると、


「ところがじゃ。ダンジョンの入り口から入っていくナミタロウを、誰一人として見ておらんそうなのじゃ」


 それだけなら誰かに……それこそ、ジャンヌたちのディメンションバッグを使ってダンジョンに入ったと考えられるが、少なくともジャンヌたちはそんなことはしていない(そもそも、俺やじいちゃんと同じくナミタロウに会っていない)らしく、ナミタロウの知り合い(ジンやテイマーズギルドの面々)も関わっていないそうだ。


「そのほかの知らない人に頼んだとも考えられるけど、そんなことをするくらいなら正面から入っていくような奴だよね、ナミタロウは」


 たとえ止められたとしても面白半分に強行突破するような生き物なので、ダンジョンの中にこっそりと入る為にわざわざ知らない誰かに頼むとは思えなかった。


「いくつか問い質したいところがあるから、とりあえずナミタロウ自身に聞きに行こう」


 そう言うとじいちゃんたちも頷いて立ち上がり、アムールを呼んでダンジョンに向かおうとした……ところ、


「テンマ、湖に行くのだったら、丁度テンマ向けの依頼が出ているぞ」


 アグリがそんなことを言った。一応新婚旅行なのだから、あまり依頼は受けたくないと言ったのだが、アグリは「テンマにしかできないことだから」とか、「同業者を助けると思って」とか言って俺を受け付けのところに引っ張って行った。その結果、


「ついでに依頼を受けることになった」


 アグリの勧める依頼を受けることになった。まあ、ナミタロウから話を聞くついでに出来ることだったので受けると決めたのだが、普通だと月単位の時間がかかりそうな依頼だった。

 依頼内容を皆にも伝えると、皆も俺にしかできない上にあまり時間はかからないだろうと納得していた。


 外はまた雨が強くなり始めていたがダンジョンまでは馬車で移動したので、御者のジンとガラット(ジンたちも興味があるとついてきた)以外はほとんど濡れることは無く、ストレスなく湖まで進むことが出来た。


「それで、どうやってナミタロウを探すのじゃ?」

「ナミタロウのことですから、呼んだからと言って素直に出てくるとは考えにくいですよね?」


 プリメラの言う通り、呼んでもふざけて出てこない可能性があるので、今回は二通りのプランを試すことにした。


「まずは芋ようかんを用意して、それに糸を巻いて……投げるっ!」


 まずは、ナミタロウの大好物を使っておびき出す作戦だ。これが駄目なら、もう一つのかなり乱暴な方法を取らなければならないところだが……


「もったい、なーーーい!」


 芋ようかん(えさ)が着水する前に、ナミタロウが水面から飛び出して食いついた。そしてナミタロウは、勢いがよすぎて俺たちのところまで飛んできた。


「よくもまぁ、ここまで飛んだもんじゃな……」


 じいちゃんの呆れ声に、黙って頷く俺たち。


「いやぁ……そんなに褒めんでもええやん。ナミちゃん、照れちゃう」


 ナミタロウはふざけながらも、ちゃっかりと芋ようかんを口に放り込んでいた。そんな様子を見た俺は、初めから乱暴な方法……雷魔法を湖にぶっ放せばよかったと少し後悔していた。


「そんで、ナミちゃんに何のようなんや? まだ王都に帰るには少し早いやろ?」


「おお、忘れるところじゃった! 実はのう、ナミタロウがダンジョンの入り口を通らずに湖に現れたと噂になっておってな。実際にはどうやったのかを聞きに来たのじゃ。それとテンマが簡単な依頼を受けたので、ついでにそれをこなしに来たのじゃ」


 一番正気に戻るのが速かったじいちゃんがナミタロウの疑問に答えると、ナミタロウは「何や、そんなことか」と、少し拍子抜けしたような様子を見せた。


「確かに、ワイは()()()()()()()()の入り口は通ってへんよ」


 ならどうやって……と思ったところで、ナミタロウの言い方に違和感を覚えた。


「ここのダンジョンの入り口は通ってへんけど、別のダンジョンから来たんや!」


 ナミタロウの衝撃発言に、俺たちは一斉に思考停止状態となってしまった。そんな俺たちを無視するかのように、ナミタロウはさらに説明を続けた。


「昨日、猛烈に泳ぎとうなってセイゲンから一番近い川にダッシュしたんやけど、その川で泳いどる途中にちょっとした深みを見つけてな。何かあらへんかと探したら、ワイがギリギリ通れるくらいの横穴を見つけたんや。そんで、中に入ってみたらダンジョンやってな。そんなら、ついでに攻略したろ思って泳いどったら、ここにたどり着いたわけや。ついでに言うと、この湖の一番深いところに繋がっとったわ。それと、こいつはお土産や!」


 そう言ってナミタロウは、自前のバッグから二m程の大きさの()()を取り出した。タコは弱っていたがまだ生きており、何とかして湖に逃げようとしていた。


「なんやこいつ、しぶといのう……ほいやっ!」


 ナミタロウは気合と共にタコの眉間にチョップをかまし、タコの命を完全に刈り取った。ちなみに、タコはナミタロウのチョップを食らい、胴体と足の間がぺちゃんこになってしまった。


「こいつ……前にこの湖にいた奴と同種だよな? 子供か?」


「子供かは知らんが、こいつくらいの大きさのタコは結構おったで。別に捕まえるつもりはなかったんやけど、こいつはワイを食べようと抱き着いてきたもんやから、ちょっとしばいたんや」


 あれ以来、この湖でタコの目撃情報は無かったが、目撃されていないだけで実際は見つからなかっただけのようだ。もしくは、こちらの湖はタコたちにとって別荘のような場所兼あのオオダコの縄張りのような場所で、本当の住処は別のダンジョンなのだろう。


「ある意味……と言うか、かなりの大発見じゃないか?」


 最下層で新しいダンジョンが発見されたというだけでもかなりの大発見だったのに、さらにもう一つ未発見のダンジョンが同化していたなど、ここ以外ではまだ見つかっていないかもしれない。


「あっちのダンジョンもかなり広くてな。一日じゃ回り切れんみたいなんよ。それに、あまり面白くないし……あれやったら、深海を泳いだ方が楽しい感じやな」


 あちらのダンジョンは全体が水に沈んでいる上に暗くて前がよく見えないらしく、何度も壁に当たりそうになったそうだ。それに、生き物もタコを除けばこの湖にいるものと変わり映えがしないらしく、特に新しい発見は無かったそうだ。ただ、通ってきた道に新しい生き物がいなかった可能性もあるし、鉱石などは調べていないので、お宝が眠っている可能性はあるそうだ。まあ、ナミタロウは探すのが面倒とのことなので、遊び以外では行く気がしないとのことだった。


「とにかく、湖と繋がっているダンジョンの報告は、ギルドと王様たちにしないといけないだろうな。もっとも、だからと言って攻略は進まないだろうけど」


 現状で水の中で活動できて、なおかつ報告も出来るのはナミタロウぐらいであり、俺やじいちゃんは魔法を使えば水の中でも調べることは可能だけど、前に倒したタコ以上の強さを持つ魔物が現れた場合はそこが墓場となる可能性がある。ぶっちゃけ、色々と面倒くさそうなので行きたくない。王様からの指名依頼であっても無理だ。


「それじゃあ、ナミタロウの謎が解けたところで、俺は自分の依頼をこなすとするか」


 ナミタロウと湖に繋がっているダンジョンの話が一段落したので、俺は自分が引き受けた依頼の準備の為に一つ上の階に向かった。準備自体は難しいことではないのだが少し時間がかかる為、俺がいない間にじいちゃんたちにタコの下処理を頼んだ。

 上に階に移動してから三十分程が経ち、準備を終えた俺は湖の岸に立ち……


「ゴーレム、前進!」


 百体を超えるゴーレムに命令を出した。ゴーレムは二列になって壁沿いを移動し、水の深さが先頭のゴーレムの腰を超えたところで停止した。

 中型(平均で二m程の高さ)のゴーレムが


「丁度十組目か……三十mも進まなかったけど、まあいいか」


 停止させていたゴーレムは、その場で座らせてから小型のゴーレムに核を回収させた。これで即席の岩の道が出来た。道となったゴーレムの核の回収が終わると、今度は岸で待機していたゴーレムの一体を岩の上を歩かせて、道の先端で体操座りの体勢をとらせた。そしてそのゴーレムの回収が終わると、次のゴーレムを進ませて、先端で岩の塊になったゴーレムを湖に落とさせた。そしてそのゴーレムには位置を横にずらさせてから同じように座らせて核を回収。その次のゴーレムに湖に落とさせて……と言うのを繰り返した結果、百体のゴーレムで五十m以上の岩の道が出来た。思ったより進まなかったのは、場所によっては岩を落とした時に足場が悪くて別の方向に転がって行ったり沈んだりと、予想外のことが起こったからだ。


 最初の百体を道にした後は、また上の階に戻ってゴーレムを作成し湖に送り込んだ。

 ゴーレムを作ってから道にするまで大体一時間かからないくらいだったので、二回目からは現場の監督をスラリンに任せ、俺はゴーレムを作ることに専念した。あまり作り過ぎても作業の邪魔になるので、ある程度追加を作ってからは回収した核が届くのを待ち、届いた分だけ作るのを繰り返した。

 作業を分担したおかげで、二回目からは最初の半分とまではいかないものの時間の短縮に成功し、およそ三時間ほどで向こう岸まで道を作ることが出来た。


「最後は土魔法を使っで穴埋めだな」


 道と言っても所々にテトラポッドを組んだような穴が存在するので、魔法で壁を削って作った石を使ってその穴を埋めることにした。これは、先に魔法で壁を壊してからゴーレムに穴埋め作業をさせたので、三十分くらいで終えることが出来た。


 四時間近くもプリメラたちを待たせることになってしまったが、皆は俺の心配をよそに馬車を拠点にして釣りをしたり食事をしたり、寝たり周辺の探索に出かけたりして時間を潰していた。


「流石に腹が減ったな……今何時くらいなんだ?」

「多分、夕食の時間としては大分遅いくらいだと思います」


 日が変わるまではまだ時間があるだろうけど、かなり遅い時間で間違いないとのことだった。集中していたので、その辺りの間隔がおかしくなっているみたいだ。

 俺が一人で遅い夕食にしようとすると、何故か皆もやって来て一緒に準備を始めた。俺以外は食事をしたはずなのに、時間が経ったせいで小腹がすいたとのことだった。

 結局、一人で食べるよりも皆で食べた方が美味しいということで一緒に食事をしたのだが……明らかに二度目の夕食(夜食)なのに、俺よりも食べたのが三人(+二匹)、食べようとしてリタイヤしたのが一人いて食後の休憩が伸びてしまい、地上に戻ったのは夜中になってからだった。ナミタロウはもう少し湖にいると言って水の中に消えたので、そのまま置いて帰ることにした。

 依頼の完了と水の中のダンジョンの報告はその日の昼に行い、さっさと報酬を貰ってダンジョンに関しての依頼は受けるつもりはなかったのだが、川の底にある入り口の場所だけでも教えて欲しいと頼まれたので、半日も過ぎないうちに湖に戻ることになった。

 場所を聞いて改めてギルドに戻り報告したところ、入り口のある場所がセイゲンの管轄内ということが分かり、ギルド長や職員が大喜びしていたが……そのすぐ後で水の中を攻略できる冒険者がいないことに気がつき落胆していた。


 挨拶回りや買い物を終えた俺たちはやることはほぼ無くなったので、報告した日から二日後に王都に向けて出発しようということになったのだが……報告した日の翌日から雨が強く降り始め、出発予定の日になっても降りやまなかった為、出発が二日ほど遅れることになるのだった。

 ちなみに、雨が降って喜んでいたのはナミタロウだけで、ナミタロウは大雨の中で激流となった川を流れに逆らって泳いで遊んでいたらしい。

 なお、滞在が延期した最中に、ダンジョンの中にある湖の水位がまた上がり、俺の作った道が完全に沈むことは無かったものの、下の階まで水が流れたそうだ。ナミタロウによると、川と繋がっているダンジョンの水が、川の水位が上がったことにより圧力で押し出されたのだろうとのことだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] それで止めるよなメナスではないだろうという目で見ていると、 →それで止める様なメナスではないだろう、と云う目で見ていると、
[一言] 川と繋がってるんなら その近辺で大蛸被害出て無いか確認するとこじゃ? ついでに警告もだしまくらんとアカンとちゃうか?
[一言] 私の場合     はリーナが この余白は何でしょう?。
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