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第2章-0 夢

第2章のプロローグ的なものです。

 僕の名前は、鳳天馬です。

 おじいちゃん達と暮らしています。

 お父さんとお母さんはいません、なんでも僕が三歳の時に交通事故で亡くなったそうです。

 でも、僕はそのことを覚えていません、小さい頃に男の人と女の人と一緒に居たのをうっすらと覚えているだけです。

 僕を引き取ってくれたのは、お父さんのお父さんらしいです。

 おじいちゃんの住んでいる所は、過疎化というもので僕と同い年くらいの子はいません。たまに村の人の孫という子が遊びに来ますが一年に数日だけです。


 おじいちゃんの家の近く住んでいる人達はおじいちゃんの友達ばかりです。僕のことをとても可愛がってくれています。中でもお向かいと両隣に住んでいるおじいちゃん達はよく面倒を見てくれます。

 僕のおじいちゃんは鳳虎徹と言います。よく鉄砲を担いで山に入っています。

 右隣の家のおじいちゃんは剣之助という名前で、僕は剣じいちゃんと呼んでいます。よく庭で刀を振っているちょっと厳しいおじいちゃんです。

 左隣の家は章太郎というおじいちゃんと玉緒というおばあちゃんが住んでいます。僕は章じいちゃんと玉ばあちゃんと呼んでます。章じいちゃんはよく板を殴ったり庭の木に帯を巻いて引っ張たりしてます。玉ばあちゃんはおいしい料理やお菓子を作ってくれます。

 お向かいは源蔵というおじいちゃんが住んでいて、源じいちゃんと呼びます。みんなはちょいワルじじいと言ったりします。

 時々けんかをしてますが、とても仲がよくみんなで僕の事を見てくれています。


 みんな暇な時にはいろいろな事を教えてくれます。

 おじいちゃんは柔道を、

 剣じいちゃんは剣道を、

 章じいちゃんは空手を、

 源じいちゃんは勉強をみてくれたり遊びを教えてくれます。 

 でも、4人ともよく玉ばあちゃんに「やりすぎだ」と怒られています。


 村では同い年の友達はいませんでしたが、小学校に入学したら『たかし』君という友達ができました。でも学校までは車で一時間近くかかるので、休みの日でないとたくさん遊べません。

 学校の友達は少なかったけど休み時間にみんなで思いっきり遊び、家ではじいちゃん達と稽古を頑張ったりして小学校の6年間を過ごしました。




 そして中学校に入学してすぐに俺は問題を起こしてしまった。

 問題といっても俺からすればただの喧嘩だ。俺一人に対し相手が十人くらいの、

 原因は新しいクラスの奴が『隆史たかし』に暴力をふるったから俺がそいつを殴ったんだ。

 そうしたらそいつの兄貴とか言う奴と、その仲間が俺にからんできたんで全員を沈めたんだが、手加減を間違えて怪我をさせてしまった。

 そうしたらそいつらの親が学校に乗り込んできて騒ぎになったらしい、らしいというのはその日は学校を休んでいて、じいちゃん達に説教を食らっていたからだ。


 まあ、親達は自分の子達が新入生一人を多人数で囲んで、リンチにかけようとして返り討ちにあった、とは知らなかったらしく家まで謝りに来たけど、じいちゃん達にしてみればじいちゃん達の弟子のような俺が、手加減を間違えた事が問題だったらしい。


 その時に聞いたことだが、実はじいちゃん達はその筋ではかなりの有名人らしい。

 じいちゃんは柔道及び柔術や合気道などの組み技で、剣じいちゃんは剣道及び剣術や棒術などの武器術で、章じいちゃんは空手やボクシングなどの打撃系と、そんな達人たちから教わった俺は中学生レベルなら勝って当たり前だったそうだ。

 三人はライバル関係でもあり他の二人に負けたくない一心で強くなったらしい。

 それを聞いた俺はどんな漫画の世界だと思った。

 ちなみに源じいちゃんは格闘技の才能がなかったらしく、代わりに頭を鍛えたと笑っていた。

 

 そんなわけでそれからは稽古に精神修行も追加された。

 内容は滝行、座禅、写経など、更に連休には山に放り出され「生き抜いてこい」とか言われたこともある。(後に玉ばあちゃんにバレて四爺は正座させられていた)

 などという中学時代を過ごしていった。しかもいつの間にか番長扱いされていた。無論彼女などできなかった。



 高校に入ってからは、部活の助っ人や臨時のバイト、友達付き合いに勉強にどんどん過激になっていく修行と忙しかった。

 勉強は源じいから教わっていた所ばかりだったので苦ではなかったが、修行に関してはじいちゃん達が張り切りすぎて、長期休暇に入るとたまに『百人組手(百回組手)』を実行することもあった、乱取りや地稽古まで組手と呼んでいたのだが組手の方が言いやすかったらしい。

 じいちゃん達がその筋の知り合いに声をかけて、柔道、剣道、空手の百人組手をやらされていた。

 まあ、一分間で相手を交代したり、相手によってはただの指導だったり、そもそも百人もいなかったりで、『百回連続の時間制限付きの指導』と行ったほうがいいんじゃないかと思った。 


 そんな青春の日々を過ごしていたが、やはり彼女はできなかった。隆史(こいつはいつの間にか彼女を作っていた)に相談すると「顔は悪くないし、成績はいいし、運動神経が良くて料理もできるのになんでモテないんだろうね。ハハハ」と笑っていた。ちょっと頭にきたので教科書の角で頭を小突いておいた。

 隆史が役に立たなかったので隆史の彼女の『美紀』ちゃんに聞いてみたところ、意外な原因が分かった。その原因はじいちゃん達とその知り合いでした。

 学校の近くでじいちゃんの知り合いの人達(厳つい強面の方多し)にたまに会うので挨拶をよくしているのだが、それを見た学校の生徒達が、俺がヤ〇ザと親しげに話していた、と勘違いした事が原因でした。

 おまけにヤ〇ザに間違われた人の中には腰の低い人もいて、俺にも敬語を使ったり頭を下げたりする人もいたので、組長の孫だの幹部の息子だのと、尾ひれどころか翼まで生えた噂が流れたそうだ。

 更に源じい以外のじいちゃん達がやや強面な顔に見えるのも、噂に拍車を掛けていたそうだ。


 大学にはなんとか推薦で滑り込めた。隆史や美紀ちゃんも一緒だったが、二人は普通に試験を受けたため羨ましがっていた……リア充ざまぁ、とちょっとだけ思ってしまった。

 大学では念願の彼女ができて男女の関係にもなったのだが一年ほどで別れてしまった。

 流石に凹んだ、かなり凹んだ、隆史たちに慰められなければ突発的に傷心旅行に行っていたかもしれない。青木ヶ原の樹海あたりに……観光でだけど。

 青木ヶ原の樹海は観光用の遊歩道やキャンプ場なんかがあるらしいし。


 効率よく単位を取っていったおかげで遊ぶ時間も増えたりして、それなりに充実した大学生活を送った。


 卒業後は村の役所に勤めた。仕事はそんなに難しくなく、周りも知り合いばかりだったので、俺としては楽な仕事だった。

 しかし勤め始めて3年、仕事で市役所まで出向いた日の帰りに悲劇が起こった。

 外に昼食を食べに出て信号を渡っている時に、猛スピードで突っ込んでくる車が見えた。

 俺はそれに気付き立ち止まったのだが、隣にいた小学生の女の子が気付かずに飛び出してしまった。

 車のクラクションの音、周りの悲鳴が聞こえる中、俺の体は無意識のうちに女の子を反対車線まで突き飛ばしていたその結果、俺の意識はそこで一旦途絶える。


 次に気がついた時には俺自身の葬式中で柩の上に浮かんでいた。

 喪服を着た人達が泣きながら集まっている。隆史と美紀ちゃんもいた、二人は婚約しており肩を抱き合いながら泣いていた。他の学生時代の友人達に同僚の先輩達も泣いていた。

 じいちゃん達を探してみるとじいちゃんの前には中年くらいの夫婦がしきりに頭を下げていた。そばにはあの女の子もいる。夫婦はじいちゃんに謝罪を繰り返していたがじいちゃんはそれを押し止めていた。


 じいちゃんが言うには、女の子が悪いわけではなく俺は当たり前の事をしたまでで運が無かっただけとの事、だった。

 夫婦と女の子は焼香をして帰っていった。女の子は焼香の時に俺にお礼を言っていた。


 俺としては自分が死んだことより、じいちゃん達の悲しんでいるのを見る方がショックが大きかったのでどうしたことかと思っている時に、


「鳳天馬君、君をスカウトしに来ました」


 と背後から声をかけられた。




 薄々と感じてはいたがこれは夢だ、前世の事を夢で見ているのだと気が付く。

 そう確信すると辺りが白くなっていく、

 そして俺をあやす女の人の声に男の人の声が聞こえてくる。


 近くからは女の人の声、少し離れて男の人の声。

 俺を抱いて声をかけているのはシーリア母さん、少し遠慮がちに覗き込んで声をかけてくるリカルド父さん。


 ああ、幸せだ。


 そう感じるが徐々に二人の顔が薄れ消えていく。

 そして意識が浮上していくのを感じる。夢から覚める時が来たようだ。


 この場所でいくら幸せを感じても、悲しみを感じてもそれは夢であり現実では無い。

 そうは分かってはいるができるならばもう少しだけ、母さんに抱かれ父さんに見つめられ続けたいと願いながらも、俺の意識は覚醒していくのだった。

 なんとなく天馬の前世の説明みたいのを入れときたくなったので書きました。

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