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第1章-22 新たな旅立ち

これで第1章を終了です。

 一方、森の中の天馬はまだ倒れていた。しかし、天馬のバッグが動いたかと思うと中からシロウマルが顔を出し、辺りを確かめて出てくる。背中にはスラリンも引っ付いていた。


 シロウマルは天馬の顔を舐めているが反応がない。

 どうしたものかとスラリンと顔を合わせていたが、不意にゾンビ達が向かってくる気配がした。


 シロウマルはスラリンと協力し、天馬を背中に乗せたあと、スラリンが天馬とシロウマルを固定する形で背に乗りその場を離れた。


 しかし、ゾンビから離れるように動いたため、砦からも自然と離れていってしまった。


 森の外周に沿って4日程走ったところで川を見つけ、その近くにシロウマルとスラリンは天馬を下ろすことにした。

 スラリンがたまにバッグから水を出して天馬に飲ませていたが、安全な所で天馬を休ませたほうがいいと判断したのだ。


 天馬の目が覚めたのはそれから3日後のことだった。


「ここは…父さん、母さん?」


 と、頭の中にモヤがかかったような状態で辺りを見渡す天馬。

 ぬぅ、と目に前に現れた白いものに思わずひっくり返りそうになる天馬。よく見るとシロウマルだった。シロウマルは尻尾を振りながら顔を舐め回してくる。


 なんとかシロウマルを引き離す頃には頭の中がスッキリとしてきた。

 ああ、父さんと母さんは殺されたんだった。そう思い気分がどん底まで沈みそうになった時、スラリンが少し離れていき何かを吐き出した……それはドラゴンゾンビの肩に生えていた黒っぽい金属だった。


「ええっ!何吐き出してんの!」


 沈みかけた気持ちがそれを上回る驚きにかき消され、天馬は変な声を上げていた。


 スラリンは顔があったならば盛大なドヤ顔を決めていたであろう。何だか、してやったぜっ、みたいな態度でいる……気がする。

 とにかくスラリンのおかげで少し気持ちに余裕ができた天馬は、探索を使ったがどうやらククリ村は探索の範囲より外れているみたいだった。


 周りに魔物や大きな獣の気配はなく、ここは安全地帯であるようだった。

 気を抜こうとした時、突如頭の中に浮かんでいたレーダーに反応があった。


「近い!こんなに近づくまで気配を完璧に断っているなんて、何者だ!」


 慌てて戦闘態勢を取り、身構えるがレーダーの反応はよく見ると川の中からだった。


「川の中から!魔物か!」


 そう構えると水が盛り上がり一匹の魚が顔を出した。


「敵対せえへんから、攻撃はせんでくれ」


「喋った!」


 驚きすぎて咄嗟にエアバレットを放ってしまった……が、


「とうっ!」


 との掛け声を出し華麗?にジャンプして躱す魚……その正体は3mをゆうに超える巨大な鯉でした。


「鯉!」


「その通り、鯉や。みんな大好きカープさんや!」


 とのボケに素で、


「いや、俺、どっちかというと鷹派なんで」


 と返してしまった。


「あんたぁ、なんてこと言うちょるん」


 と怪しい広島弁?で話してきたので、


「広島出身なのか?」


 と、とりあえず聞いてみたが、


「いや、新潟の出身!」

「広島違うんかい!」


 と奇妙な漫才することとなった。ただし、観客のシロウマルとスラリンは当然だが笑ってはくれなかった。


「ん、お前ってもしかして前に転生した、ナミタロウ?」


「おお、よう知っとたな。という事はあんたも転生者か!」


 どうやら創世神から聞いたナミタロウだったようだ。しかし、いくつか疑問が湧いたので聞いてみることにした。


「お前なんで喋れるの?それに何歳?死んだんじゃなかったの?」


「いっぺんに質問するな!答えてやるけど…」


 と言って質問に答えてくれた。

 喋れるのは前世でも長い年月を生きていたのである程度の知恵があったため、転生時にしゃべれるようにしてくれたらしい。歳は1000を超えてからは数えていないらしく、転生してすぐに釣られたが、釣り上げられた時に大暴れして逃げたそうだ。確かに創世神も死んだとは言ってなかった気もする。


「いや~、前世も含めて人と話すのは初めてやな~」


「俺も魚と話したのは初めてだよ…」


 と呟くが無視された。ナミタロウは聞いてもいないことを話してくる。曰く、前世では『みどり』とも呼ばれていたとか、山の上の池に住んでいたとか、釣り漫画に仲間が描かれていたらしく、その影響を受けたっぽい奴らを返り討ちにしただの、ソウギョの可愛い彼女がいただのと、どうでもいいことばかりだった。


「で、なんでテンマはこんな所にいるん?」


 と聞いてくるので、なんとなく村で起こった事を聞かせた。全部喋り終わる頃には、俺の中である程度の整理を付けることができた。俺の話を静かに聞いていたナミタロウは、胸鰭で目をぬぐおうとして……結局ぬぐえなかった。


「なんちゅう、悲しい話や。苦労したんやなぁ、おっちゃんの胸でお泣き」


 とエセ関西弁を喋りながら陸にあがろうとしてきた、俺はそれを小石をぶつけながら阻止して、


「ところでここはどこなんだ?」


 と聞いた。ナミタロウは「痛いやないか」と言っていたが無視をしといた。


「ん~、わいはこの辺に住みだしたの最近なもんで、そのククリ村とやらの場所を知らんからな~。ちょっと待っとけ、聞いてやるから」


 と空を見渡し、


「おーい、ちーちゃ~ん!」


 と雀のような小鳥に呼びかけていた。小鳥はナミタロウの目の前に降り立ちチュンチュンと鳴いている。ナミタロウは「ふんふん、ああそう、ああなるほどね」と相槌をうっていた。


「ちーちゃんありがと~。テンマわかったぞ、ここはククリ村から180kmほど離れた場所らしい」


「いまので分かったのか!」


 どうやらナミタロウは小鳥と喋れるらしい、怪しんでいたら神様からもらった能力だと言われた。


「ちーちゃんの仲間がさっきククリ村の方から帰ってきたらしいんやけど、一昨日の朝には砦にいた人たちは全員、何処か違う所へと行ったそうやで」


 と教えてくれた。

 

「そうか、これからどうしよう」


「とりあえず、人のいる所を目指すか、ククリ村の人達を追ったらいいんやないか」


 ともっともらしい事を軽い感じで返された。


 どうしようか悩んだ、父さん達のいないククリ村へは行く気が無く、さらに今回の原因の一助となった、ハウスト辺境伯の支配下にある所に居たくもなかった。

 そこで、ハウスト辺境伯領から出ていき、領外の大きな街を目指すことにした。そのことを話すと、


「そうか、それがいいかも知れんのう。辛い所から離れるのも一つの手や」


 と言われた……なんで俺、鯉なんかに相談に乗ってもらってるんだろう、と思ったのは秘密だ。


「もうすぐ日も暮れるから、今日はこの辺りで野営をして朝になってから出発をするといい。この川沿いに進んで行くと、いずれ辺境伯領を抜けるやろう」


 やけに詳しいんで聞いてみると、この川はず~っと下っていくと海に出るらしい。なんでもナミタロウは数十年に一度、川を下り海に出て他の川へと引越しをしているらしい。


 その日は川辺で野営をした。夕食は簡単に干し肉と野菜のスープにパンですませた。

 俺は体が肉を受け付けなかったので、スラリンに肉をあげていたら、なぜかナミタロウも欲しがった。あげても味がイマイチとか文句を言っていたので、小石をぶつけといた。ちなみにシロウマルは自分で鹿をとってきたので、血抜きと皮をはいで解体して軽く焼いてやった。


 次の日の朝、出発の準備をしているとナミタロウが餞別に魔核や魔石を数十個くれた。なんでも、たまに上流から流れてくるものをなんとなく集めていたそうだ。


「テンマ、元気でな。縁があったらまた会おうや」


「おう、ナミタロウも元気でな」


 と言葉を交わし俺は歩き出した。





「で、なんで付いてきてるんだ?」


 歩き出して30分未だにナミタロウが並行して泳いでくる。


「いやまあ…なんとなく?」


 というやり取りを川沿いから離れるまで十日もやり続けたのだった。


やっと第1章を終わらすことができました。だらだらと長くなった気がします、ごめんなさい。

 なぜかプロローグに名前だけ出てきたナミタロウが登場しました。

 会話に鷹派とありますがどれかと聞かれた場合の作者の答えです。

 方言についてはあまりツッコミを入れないでください、お願いします。



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― 新着の感想 ―
[一言] コイキング( ̄□ ̄;)!!←え?ポ〇モン?
[気になる点] 疑問に思ったことが既に書かれてた 親の死に方からこの話までの流れが雑に感じてしまう
[一言] いやいや…普通一度戻るでしょ。 テンマくん「この目で確認しに戻らないと…」 作者「ダメダメ次の話があるから早く次イッテ!」 テンマくん「………」
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