第17章-7 夫婦喧嘩
「以上が、セイゲンで見つかった新しいダンジョンの報告になります」
「うむ、ご苦労だった。中断という扱いにはなるが、有益な情報を持ち帰ってくれたのだ。財務卿、報酬は満額で支払うように」
「承知いたしました」
ダンジョンから帰還した俺たちはすぐに王都に戻り、帰り着いたその日のうちに報告を行った。報告は、ダンジョンがディメンションバッグ化しているのではないかと言う仮定を基に、俺たちの独断で危険を冒すわけにはいかなかったという感じのものを出したが、この報告は王城にいる多くの貴族の反発を招くことになってしまった。
報告を聞いた貴族たちの中からは、「ダンジョン核を見つけたというのは嘘ではないのか?」とか、「何か価値のあるものを見つけ、それを独占しようと企んでいるのではないか?」といった感じの反応が結構あったらしく、すぐに『俺たちにダンジョン核を持って帰らせるべきだ』という提案が王様に出されたそうで、報告を出したその次の日に俺たちはまた王城に呼ばれることになったのだ。
そんな貴族が見ている中で、俺は王様前ではっきりとダンジョン核は取ってこないと断り、それが理由で依頼が失敗になったとしてもかまわないとも言った。
提案した貴族たちは、『オラシオン』が行かなくても『暁の剣』に行かせればいいと言ったが、ジンたちは俺とじいちゃん抜きでは無理だと断った。そのせいで提案を出した貴族の一部から罵声を浴びせられたが、俺はそれら全て無視して王様に再度セイゲンのダンジョン攻略の危険性を訴えた。
すると当然のように、「ただの妄想だ!」とか、「嘘がばれるのが怖いだけだ!」などと言う怒鳴り声が聞こえてきたが、「では、あなた方が全ての責任を取るのですね?」と聞くと、途端に静かになった。
責任を取るということは、何事もなかった場合は莫大な利益が手に入るように見えるが、実際には『セイゲンに住む人々の命や生活を実験に使った』という悪評がもれなくついてくるのだ。そのことに気が付いた貴族は、新しいダンジョンの攻略させるということは、旨味がないか少ない、もしくは毒でしかない話だと理解したようで、それ以降口を開くことは無かった。もっとも、そのことに気が付いていたほとんどの貴族は最初から反対か様子見の立場にいたので、それだけで騒いでいた貴族の実力が分かってしまう気がする。ただ、中には別の思惑があって動いていた貴族もいるだろうから、騒いでいた全ての貴族が駄目だということは無いだろうが、それでも色々と注意しなければならないことには違いないだろう。まあ、俺は覚えきらないだろうが……王様たちはちゃんとチェックしている気がする。
「では、セイゲンの新たなダンジョンに関してはこれで一旦終了とする。『オラシオン』に『暁の剣』よ。もしダンジョンで何か異変があった時は、そなたらに調査を依頼することもあるだろう。そのつもりでいて欲しい」
と言う感じで、ダンジョンの報告は無事に終了した。まあ、俺とじいちゃんは、ダンジョン攻略の代表者と言うことで、報酬について話があるので残ってほしいと言われた。正直言って帰ってゆっくりしたかったが、そうすると確実に我が家に突撃してくるので、大人しく従うことにした。
「では、魔法に長けたものがいない限り、ダンジョン核がある部屋に近づくことすらできないというわけか……しかもその部屋を隠してきたから、探すことも難しいと」
俺は、王様やマリア様、シーザー様たちに、先程の報告では話さなかった情報を全て吐かされていた。報告では、靄のせいで地図を作ることが出来なかったということにしていたが、実際にはガラットが作った地図があったが破棄したのだ。そして、龍の骨があった部屋に続く坂道は、完全には塞がなかったが途中途中に障害物になる岩を多数配置し、苔の苗床になっていたヘビのような魔物は通れるが、人が通るのは難しい道にしたのだ。あとついでに、部屋に続く最短ルートとなる道は土魔法で塞ぎ、かなり遠回りしないとたどり着けないようにしている。
「違う階層からあの部屋に続く道があるかもしれませんが、俺たちが通った道は使えなくなったと思った方がいいです」
「ソロモンの親かもしれない龍の骨か……クライフ、そんな資料は残っていたか?」
「全てを把握しているわけではありませんが……見たことも聞いたこともありません」
「つまり、王国が出来る前に死んだ龍という可能性があるわけね……そうなると、ソロモンは数百年以上前から卵の状態でいた可能性があるというわけよね?」
マリア様の言う通り、あの骨の龍がソロモンの親だった場合、ソロモンは数百年以上あそこにいたことになる。そんなことがあり得るのかという疑問はあるが、
「古代龍になると数千年は生きると言いますから、卵の状態も長いのかもしれません」
そう考えるしかなかった。それに、あの骨の龍がソロモンの親という前提で話を進めていたが、違う龍がソロモンの親だったということもありえるので、あまり気にしない方がいいのかもしれない。
「あの骨がソロモンの親じゃなかった場合、テンマはちょっと恥ずかしいことになるかもしれないのう」
ダンジョン核を持ち帰らなかった理由の一つが、ソロモンの親の墓かもしれないからということだったので、ソロモンの親ではなかった場合、俺は確実にジンたちにからかわれることになるだろう。
「まあ、そんなことは置いておくとして……最終的に得た素材は、ミスリルや金を含む鉱石にトカゲやカエルと言った爬虫類に両生類型の魔物、それと虫型の魔物にスケルトンの骨、そして苔を含む数種類の植物といった感じです」
ミスリルや金と言った鉱石だけでももう一度行く価値はあるが、ダンジョンの攻略が一区切りついた以上、俺にはやらなければならないことがある。それは、
「これでテンマは、プリメラとの結婚の準備に取り掛かれるのう。思ったより早く終わってよかったわい!」
ということだ。準備と言っても、プリメラ程やらなければならないことがあるわけではないが、二度の人生において初めてのイベントなので、出来る限りのことはしておきたい。ちなみに、プリメラは結婚を機に騎士を辞めるのでその引継ぎで忙しいらしいが、サンガ公爵やお義母さんたちが張り切っているそうで、準備の方は順調とのことだった。
「今からテンマの結婚式が待ち遠しいわね。それで、結婚式用の服はどうなっているの?」
「俺の分は知り合いに頼むことになっています。プリメラの方は、サンガ公爵家お抱えの職人です」
知り合いとはフェルトのことだ。フェルトの腕前はセルナさんの時に見ているので安心できる。ただ、プリメラと雰囲気がずれるとまずいので、製作前に関係者で集まって打ち合わせをした時に、フェルトと公爵家側の職人の意見がなかなか合わずに大変だったが、素材に蜘蛛の糸を使うと決まった瞬間に息が合い始めていた。
「私も打ち合わせに参加したかったけど、流石に無理だものね。衣装は楽しみの一つにしておきましょう。結婚式を挙げた後は、どこかに旅行に行くのかしら?」
「特に決まっていませんが、サンガ公爵領にある公爵邸にはお邪魔することになっています。ただ……」
「ただ?」
「何故か、オオトリ家の関係者総出での旅行らしいです」
新婚旅行という程ではないが、公爵領にも夫婦として行っておいた方がいいだろうとのことでプリメラと話し合って決めたのだ。だが、いつの間にかじいちゃんやジャンヌたちも行くことになっていた。しかも、それを許可したのがプリメラだそうで、俺には事後承諾と言う形で知らされたが、その時にはすでに断れる雰囲気ではなかった。
「それは……女性同士の仲が良くてよかったわね」
「ええ、そう思うことにしています」
マリア様も、新婚旅行(みたいなもの)に他の女性が付いてくるなど、どう言っていいのか分からないのだろう。それが仮に、俺が連れて行くと言ったのなら説教が始まるのだろうが、プリメラが言い出したということでそれしか咄嗟に出てこなかったのだろう。まあ、プリメラにしてみれば、ジャンヌたちに遠慮もあったのかもしれないが、『家族枠(じいちゃん)』と『メイド枠(ジャンヌとアウラ)』、そして『ついで(アムール)』という感じなのかもしれない。
「話を戻して悪いが、スケルトンの骨が素材と言うのはどういうことなのだ?」
「骨を粉にして油粕に木や草の灰と混ぜれば、いい肥料になると思うんですけど……別にスケルトンの骨でなくてもいいので、こだわる必要はないと思います」
それくらいしか思いつかないし、別にスケルトンの骨でなくてもいいのだが大量に手に入るので、大規模な農作をしているところでは需要があるかもしれない。
「まあ、いずれ頼むかもしれないが、今は必要ないな」
シーザー様は少し考えて、あまり魅力のない素材だと判断したようだ。まあ、俺かジンたちに取りに行かせるよりも、冒険者ギルドなどから骨を購入した方が安いだろうから当然の反応だろう。
他にも苔などのことも聞かれたが、苔はあの部屋でないと栽培出来ないのかもしれないと答えた。実はあの部屋から苔を土ごと持ち帰り、増やすことが出来ないか試しているのだが次の日にはしおれ始め、今ではほぼ枯れている状態になってしまった。他の植物に関しても、わざわざあそこまで行って手に入れる必要は無いので、価値はそれほど高くはない。
「いずれミスリルを掘りに行こうとは思っていますが、まとまった時間が出来たら行くという感じですね」
今のところライバルはジンたちだけで、しかもジンたちにはあまり奥に行くことが出来ないというハンデがあるので、例え数か月行けなかったとしても焦る必要はない。
そう言った話をしていると、
「お兄ちゃんお土産、いったっあああ!」
どたばたと廊下を走る音が聞こえてきたと思ったらドアが乱暴に開かれ、ルナが飛び込んできて悲鳴を上げた。それは、足音でルナの接近に気が付いたイザベラ様がドアで待ち構え、入ってきたルナの頭に扇子をふり下ろしてカウンター気味の一撃を与えたからだった。
「お土産か……あれしかないけど、文句を言うなよ」
イザベラ様に文句を言っているルナに、ダンジョンから持ち帰ったお土産となるお茶を、クライフさんに淹れてもらうことにした。
「ルナ様、こちらがテンマ様のお土産のお茶になります。少し癖がありますので、今お茶菓子を持ってまいります」
などと言って、クライフさんはお茶だけをルナの前において下がっていった。
「お菓子早く持ってきてね! ……ぶふっ!」
お菓子を待たずにお茶を一気に飲んだルナは、苦さに驚いてお茶を噴いた。そしてそのお茶は、ルナの様子をニヤニヤしながら見ていた二人|(王様とライル様)に襲い掛かった。
「「めっ、目がぁあああーーー!」」
ルナがお茶を噴きだす瞬間、二人にしかかからないように首の角度を変えた気がするが、被害を最小限に抑えたのは流石王族? というところだろう。
そしてこの後、悶える王様とライル様をほったらかしにして、誰が悪いのかの議論が始まった。候補その一は俺で、その二がクライフさん。そしてその三がルナだ。
その一の理由は、お土産と称して飲ませるように仕向けたこと。その二は、どんなものか説明せずに出し、味をぼかしそうなお菓子を出さなかったこと。その三は、ぬるめだったからと、腰に手を当てて一気飲みしたことだ。
「まあ、今回は三人とも悪いということね」
少しの間話し合った結果、三人とも悪いというマリア様の判決で終わった。まあ、ルナ以外ふざけていただけだったので、マリア様の決定に大人しく従って、注意されて終わり……だったはずなのに、ルナが自分は悪くないと言い張った為、マリア様が本腰を入れてルナと向かい合った。そして、ぐうの音も出ないくらい言い負かしていた。ちなみにマリア様曰く、俺の罪は苦いことを教えず、クライフさんの罪はちゃんとした注意をしなかったというものとのことで、正直言って大したものではなかった。それに対しルナは、王女とは思えない飲み方をした上に、口に入ったものを吐き出して被害者を出したということで、被害者であるとも言えるが加害者でもあるので、差し引きでマイナスとなったとのことだった。
「屋敷で皆待っていると思うので、そろそろ帰ります」
そう言って、ルナが怒られているのを見ながら屋敷へと戻った。
後日聞いた話では、納得のいかなかったルナは、ティーダにもルナの時と同じような感じでお茶を飲ませたらしいが、ティーダはルナの期待していたリアクションを取らなかったそうだ。そこで、次のターゲットとしてクリスさんを狙い、見事に爆笑をかっさらったとのことだった。ディンさんとジャンさんの……
「ただいま」
「お帰りなさい」
屋敷に戻ると、一番にプリメラが出迎えてくれた。その次がジャンヌとアムールで、さらにその次がシロウマルたちだった。そして食堂に行くと、
「遅かったじゃないか」
アルバートがいた。いつものパターンならカインとリオンもいるはずなのだが、今日は珍しく一人だった。
「どうした? 何かあったのか?」
「いや、特に用があったというわけではないが……無かったら来ては駄目なのか?」
何か様子がおかしかったが、時に駄目と言うわけではないので追い返すようなことはしなかったが……
「いや、何かやらかして奥さんに怒られて、妹夫婦のところに逃げてきた駄目兄貴みたいだぞ」
と、思ったことをストレートに言った。すると、
「図星か?」
静かになって動かなくなったアルバートを見て、ある程度の事情を知ることが出来た。
「そう言うテンマは、顔が赤くなってる。あと、プリメラも」
しかし、俺の指摘はアルバートだけを攻撃するものではなく、自分自身に返ってきただけでは終わらずに、プリメラにも被弾させてしまった。プリメラとはまだ結婚したわけではないが、アルバートとエリザが結婚してからは、流石に新婚のいるところには居づらいということで、うちと公爵家を行き来する半同棲のような生活をしているのだ。
「まあ、何があったのか知らないけど、後でちゃんと謝っておけよ」
咳ばらいをして恥ずかしさをごまかし、アルバートには一応釘を刺しておいた。多分と言うか、ほとんどと言っていいくらい原因はアルバートにあるはずなので、今後のことを考えて少し冷たく当たっておこうと思う。俺としてはエリザを敵に回すくらいなら、アルバートを突き放した方が気が楽なのだ。
「それで原因は……まさかとは思うが、『女』とか言わないよな?」
リオンならともかく……と続けようとしたところ、アルバートが一目で分かるくらい動揺し始めた。
「兄様……浮気するなんて最低です」
「ち、違う! 断じて浮気などしていない!」
プリメラの殺気の籠った言葉に、アルバートは一瞬どもりながらも、はっきりと否定した。ちなみに、プリメラの気配が変わった瞬間、真っ先にアムールが食堂から逃げ出し、その後にじいちゃん、シロウマルにソロモン、ジャンヌにアウラと続いた。内心俺も逃げ出したかったが、プリメラのそばにいるので下手に動くことが出来なかった。そしてスラリンはと言うと、
「な、なあ、プリメラ……アルバートにも言い分はあるだろうから、ひとまずお茶でも飲んで落ち着こう。丁度スラリンが持ってきてくれたから……」
一匹だけ冷静に、場の雰囲気を落ち着かせようとしていた。
お茶を受け取ったプリメラは少しだけ冷静さを取り戻したようで、椅子に座ってアルバートの話を聞く構えを見せた。そしてアルバートから語られたのは……
「まあ、どっちもどっちと言うか……とりあえず、浮気じゃなくてよかったというところ……か?」
つまり今回の家での原因は、アルバートがリオンに誘われて飲みに行った先(女性のいるお店)で、遅くまで楽しんでしまったことが原因だそうだ。そして、帰ってからエリザと話した際、何となく行き先をごまかしてしまったことでエリザが不機嫌になり、日を跨いでも戻らなかった為、屋敷に居辛くて家に来たそうだ。普通なら、エリザの方が実家に帰りそうなものだが、そこは二人の力関係が現れているというか、エリザが公爵家になじんでいるというか、その両方と言った感じだろう。
「エリザのことだから、素直に行き先を答えていればよかったのに。別に浮気をしてきたわけじゃないんだしさ」
「そうですね。お義姉様はそう言った男性同士の付き合いには寛容な方だと思います。だから、そう言ったお店に行ったことよりも、行ったことをごまかそうとしたことに腹を立てたのだと思います」
堂々としていれば、「リオンの奴は本当にそういった店が好きだな」で終わっていたのに、変に誤魔化そうとするからエリザが腹を立てたんだし、傍からすれば本当に浮気をしてしまい、それをごまかそうとして嘘をついたと取られるだろう。
「……よし! アルバートを、エリザに引き渡そう!」
「そうですね。こういったことは、早めに解決した方がいいでしょうし、何よりも兄様を匿っていると思われては大変ですからね!」
そう言うわけで、アルバートをサンガ公爵邸まで送り届けることにした。アルバートも、このままうちにいても解決しないと理解しているようで、時間をかけて馬車へと歩いて行った。
公爵邸に近づくと、俺の馬車を見かけた執事が走ってきて門を開けてくれた。要件を言っていないのに中に通すということは、俺が何しに来たのか見当がついているということなのだろう。玄関の近くまで来ると、ドアが開いてエリザが現れた。その後ろでは、様子を見に来たサンガ公爵が申し訳なさそうな顔をしている。
「テンマさん、プリメラ、わざわざ申し訳ありませんでした。行きますよ、あ・な・た」
エリザは俺とプリメラに礼を言うと、アルバートと腕を組んで屋敷の中に消えていった。
「仲直りできたようで何よりだ」
「そうですね。それでは、早く帰りましょう」
「いやちょっと、テンマ君? まだ仲直りできていないと思うからね。むしろこれからが大変だと思うんだけど……あとプリメラ、君の家はまだここだからね」
ドアの影に隠れてエリザをやり過ごしていたサンガ公爵が、飛び出してきて突っ込みを入れた。
「お久しぶりです、公爵様。挨拶が遅れて申し訳ありません」
「お父様、今日は色々とうるさくなりそうなので、オオトリ家の方でお世話になります。テンマさん、行きましょう」
俺が軽く挨拶をすると、プリメラは用事は終わったとばかりに馬車に乗り込もうとした。すると、
「私も久々にテンマ君と話がしたいから、少しお邪魔してもいいだろうか……と言うか、お邪魔させてください」
と言って、プリメラの腕をつかんだ。公爵も、この後アルバートがエリザに怒られて、その夜仲直りするまで想像できているようだ。ちなみに、お義母さんたちは領地に戻ったそうで、そういった意味でも新婚の二人といるのはつらいらしい。
「ちょっと指示を出してくるから、少し待っていてね」
うちに来ることを許可すると、公爵は嬉しそうに執事に指示を出しに行った。これが、アルバートが離れて行ったのだったら遠慮なく置いて行くのだが、公爵相手にそれは出来ないので大人しく待つことにした。プリメラは置いて帰りたそうにしていたけど、俺が大人しく待っていたので諦めたみたいだった。
「ふむ……来年には公爵家に孫が出来ておるかもしれんのう」
「そうですね。男の子でも女の子でもいいですから、早く内孫の顔が見たいものです」
その夜、酒が入って面倒くさくなった公爵は、同じく酒に酔ったじいちゃんと夜遅くまで同じような話を繰り返していた。
アルバートのことでストレスが溜まっていたのだろう。家で羽を伸ばしてストレスを解消しているみたいだった。まあ、公爵がリラックスするにつれて、プリメラが申し訳なさそうにし、ジャンヌたちに慰められていた。特にアムールはロボ名誉子爵がいつもあんな感じらしく、これまでで一番と言っていいくらい、プリメラに同情していた。
そんな二人を途中でほったらかしにして、俺たちはいつもより早い時間に寝たのだが……次の日、案の定二人は二日酔いになっており、サンガ公爵はプリメラにしこたま怒られたのだった。