第17章-1 疑惑
「あ~疲れた……まあ、セルナさんの時よりは楽だったけど」
「お疲れさまでした」
今日……と言うか昨日、無事にアルバートとエリザは夫婦となった。二人の結婚式は、サンガ公爵家が中心となって行うはずだったのだが、最初はアドバイスだけだったはずの俺も何故か途中から駆り出され、最終的には責任者の一人とされていたのだ。主に演出と料理を中心とした裏方の……
「それにしても、お色直しが終わった後のアルバートの顔は傑作だったな」
「お義姉様はノリノリだったみたいですけど、お兄様は恥ずかしそうにしていましたね」
アルバートの結婚式では、全体的にセルナさんとアンリの結婚式をグレードアップしたような感じにしたので、最初の入場の時、エリザは両親と入場してバージンロードの半ばまで一緒に歩き、そこから待機していたアルバートと立会人の前まで歩いて行き、誓いをかわして夫婦と認められた後で一度退場。そして一回目のお色直しを済ませて再度入場したのだが……ここで俺は悪ふざけをしてしまい、二人の入場は入り口からではなく天井から……つまり、ゴンドラに乗って降りてきたのだった。
この登場の仕方に、アルバートは打ち合わせの段階から反対していたが、エリザは王国初(と言うか、恐らくこの世界初)の登場をとても気に入り、アルバートの反対を強引に押し切って採用したのだった。ちなみに、この登場の仕方は公爵家と伯爵家の関係者も大変気に入っていたので、反対したのはアルバート一人だけだった。
そんな奇想天外な登場の後は、新郎新婦の紹介、ゲストの紹介の後で食事となり、食事の途中でウエディングケーキ(お詫びの意味も込めて、セルナさんの時の倍近い大きさのもの)の入刀を行った。
食事の後にもう一度お色直しもしたが、アルバートの強い希望によりゴンドラからの登場ではなく普通に入り口からの入場となり、ゲストや友人の祝辞や関係者の挨拶などを行い、アルバートとエリザが退場して結婚式は一応の終了となった。まあ、その後で二次会や三次会に突入する予定になっていたのだが……予想以上に参列客が残った為、ギリギリまで俺も裏方の仕事を手伝う羽目になってしまったのだ。ちなみに、参加したゲストはサモンス侯爵やハウスト辺境伯と言った高位貴族に、王族から王様とマリア様、シーザー様とイザベラ様が参加した。本来王家からは、こう言った場合はどちらかのペアが参加することになっているそうだが、結婚式の内容が気になっていた両ペアが互いに引かなかった為、異例の事態となってしまったのだとか。その為、出席するかもと思われていたティーダはお預けとなり、ルナは仲間が出来たと喜んでいた。なお、俺は友人枠ではなく身内枠とされたのでプリメラと共に参加し、じいちゃんやジャンヌ、アウラにアムールは、カイン(+シエラ)やリオンと同じ友人枠。エイミィはエリザの身内枠での出席となった。
「それでプリメラ、物は相談なんだけど……俺たちの時は、ゴンドラだけは止めておこうな」
「そうですね。見ている分には楽しいのですけど、見られる側に回るとなると、かなり恥ずかしいと思います」
と言う感じで、俺とプリメラの時はゴンドラでの登場はしないことになった。この決定をアルバートが知ったら何か文句をつけてくるだろうが、主役の二人がやりたくないと言えばやらされることは無いだろう。
それにしても、一か月前から料理……特にお菓子の準備をしておいて正解だった。セルナさんの時は冒険者やギルド関係者が主な参列客で、貴族の参加者は知り合いだけだったので、足りなくなったら我慢しろと言えばそれで済んだが、今回は貴族が主な参列客であり、料理が足りないというのはサンガ公爵家の恥になると思ったので、足りないよりは余る方がいいと判断し料理を予定量の倍、お菓子に関しては三倍用意したのだが……お菓子の方はギリギリだった。残ったお菓子から、ルナとクリスさんとティーダの分を貰うと、事前にサンガ公爵と約束をしていたのだが、何種類か足りなかったくらいだった。
ちなみに、俺とプリメラがいるのはサンガ公爵家の離れで、この離れには来客が使う為に用意された部屋がある。プリメラは母屋にある自分の部屋を使う予定だ。
アルバートとエリザの結婚式は王都で行われたので、俺も自分の家に帰ってもよかったのだが……結構遅くまで宴会が続いたし、サンガ公爵から今日行われる公爵家の話し合いに参加してくれと頼まれたので帰るのが面倒になり、離れの部屋を借りたのだ。
「それじゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい」
日付が変わって大分時間が経っているので、そろそろ話し合いに備えて寝ようということになり、プリメラは自室に戻って行った。
「さて……公爵様、のぞき見は趣味が悪いと思いますけど?」
「いや~……ちょっと近くを通りかかったら、テンマ君とプリメラの声が聞こえてきたからね……つい」
つい……でのぞきをやられても困るのだが、それよりも離れの部屋はサンガ公爵の自室からはだいぶ離れており、ちょっと通りかかるというのは普通に考えればあり得ない。
「まあ、公爵様に夢遊病の徘徊癖があるというのならありえない話ではないですが……」
「認知症と言われるよりはましだけど、私は夢遊病も認知症も患っていないからね。今はまだ……」
先のことまでは分からないということだろうけど、そう言う話をするとどうしても自分の将来のことを考えてしまうので、あまりしたくはない話ではある。
「それで本題と言う程ではないけど、公爵家の話し合いに参加させてごめんねって言おうと思ってね」
明日の話し合いにはサンガ公爵やアルバートを始めとした公爵家に籍を置く人たち(エリザも含まれる)に、籍は抜けたけど実の娘とその旦那である二つの伯爵家の当主……つまり、公爵の義理の息子でアルバートの義理の兄が参加するのだ。そこに、今の段階では実の娘の婚約者と言う立場の俺が出るのは少し場違いのような気もするが、そのことと何か関係があるのだろう。そう指摘すると、
「まあ、はっきり言うとそうだね。これは二人の上の娘とその旦那には言っていないことだけど、近々……と言っても、あとニ~三年はかかると思うけど、私は公爵家の当主をアルバートに譲るつもりなんだ。そのことを話し合いの初めに報告しようと思っている」
何でそんな重要なことを、二人の義理の息子には言わずに、娘の婚約者である俺にだけ言うのかと聞くと、
「それは、二人が信用できない……と言うとちょっと違うね。私には、伯爵家当主の二人と、その家臣たちを完全に信用することは出来ないんだよ」
かなり驚きの発言だが、その理由を聞くと納得できた。その理由とは、
「あの二人は伯爵家の当主である以上、何かあればサンガ公爵家のことより自分の伯爵家を優先させるからね。それは貴族としては当然正しい行為だし、公爵家もやってきたことだから非難することは出来ないけど、いざと言う時にただ黙ってやられるのを待つわけにはいかないからね」
というものだった。今はまだサンガ公爵が健在なので、二人の義息子は大人しく従うし協力もするとは思うけれど、アルバートに代替わりすればどうなるか分からない。何せ、これまでは年下で身分も自分より下の貴族だったのが、一日にして自分たちが頭を下げるべき上位者に変わるのだ。表に現れなくても、心の奥では黒い感情が生まれてしまうかもしれない。
「もしもの時のけん制が俺ですか?」
「利用するようで申し訳ないけど、規格外の力を持つテンマ君がアルバートの友人であり、同じ母を持つ妹の婚約者だと理解すればそういう考えは生まれないかもしれないし、家臣たちも暴走しないかもしれないからね。一番早い公爵家の乗っ取り方法が、子供のいないうちにアルバートと同じく正妻の娘であるプリメラを排除することだから、例えアルバートの排除に成功しても、プリメラはアルバートよりも難しいと分かれば、少なくとも身内が原因による二人の危険はぐっと減るから、どうしても出席してほしかったんだよ」
娘を嫁にやるくらいには義息子たちの人柄を信頼してはいるが、貴族としては一抹の不安があるということで、念には念を入れるのだとサンガ公爵は言った。俺としても、俺が出席するだけでプリメラへの危険が減るというのなら、それくらいは喜んで出席すると伝えると、公爵はかなり喜んでいた。
「それではお休み。話し合いの場では、難しいことは考えずにプリメラの横に座っていればいいから。それと、私が義息子に不安があると思っていることと、近々アルバートに爵位を譲るつもりだと言ったのは秘密にしておいてください」
そう言って公爵は、軽い足取りで戻って行った。冷静になって考えてみると、なし崩し的に公爵の共犯にされたようなもので、下手をすると義理の兄になるかもしれない伯爵二人を敵に回すこともあり合える話だったが……受けてしまったものは仕方がないし、何よりもプリメラと、そのついでにアルバートの安全が強化されるのならば安いものだと考えることにして、俺は布団にもぐった。
「ヘンドリック殿、バルカス殿、今日は参加してもらってありがたく思う。そしてまだ婚約者の段階ではあるが、テンマ殿にも参加してもらうことになった。各自昨日のパーティーで挨拶は済ませているとのことだから、今回は省かせてもらう。それでは、今から公爵家の将来についての話し合いを始める」
ヘンドリックという男性は公爵家長女のレイチェルさんの旦那で、サルサーモ伯爵家の当主。バルカスと言う男性が公爵家次女のアンジェラさんの旦那で、カリオストロ伯爵家の当主だ。どちらも体格がよく、どちらかと言うと武官よりの性格だそうで、そう言ったことからも文官よりのアルバートと反発してしまうのではないかという心配があるそうだ。昨日のパーティーであいさつした限りでは、武官文官だからと言って態度を変える感じではなく、実力を示せば誰であろうと評価すると言った感じの印象を受けた。まあ、一度しか会っていない上に三十分ほどしか話していないので、本当のところはどうなのかは分からないが、アルバートやプリメラによれば大体俺の感じた通りの人物らしい。
「まず初めに公爵家からの報告になるが、近々私は爵位をアルバートに譲ろうと思っている」
サンガ公爵の言葉を聞いて、俺と二人の伯爵以外は驚いていた。伯爵たちには爵位を譲ることは教えていないとのことだったが、もしかするとアルバートの結婚の直後に呼ばれたからか、俺が同席していることから予測したのかもしれない。
「突然のことで驚いているかもしれないが今すぐと言うわけではなく、数年以内にはと言う感じだ。そして結婚を機に、今後はもっと責任のある仕事をアルバートに任せて行こうと思う」
「次期サンガ公爵の名に恥じぬよう、精いっぱい頑張ります」
アルバートの決意表明の後で拍手が起こり、無事に宣言が終わった形だ。ここまですんなりいくのなら俺は必要なかった気もするが、あくまでも保険と言う形だったので何事もなく終わったと喜ぶべきなのだろう。
「報告も終わったところで話し会いに入るが……」
完全に終わった気でいた俺は、公爵の言葉を聞いて勘違いしていたことに気が付いた。公爵は話し合いに参加してくれと言っていたが、先程の初めのあいさつでは『報告』と言っていた。つまり、本番はここからということなのだろう。
そこからは、軍事的なものと経済的なものに分けての話し合いが行われた。
軍事に関しては、外部者の俺がいるからか細かいところまでは詳しく話さなかったが、唯一連絡隊だけはかなりの情報が公開された。まあ、人員やルートに関しては秘密ではあったものの、サンガ公爵家の連絡隊の責任者がプリメラということもあって、機密情報以外なら俺に知られても大丈夫だと判断したのだと思う。
「つまり二人は、草原では四足、森や障害物のある場所では二足の獣や魔物に気を付けるべきと言うわけか。その両方に対応できるようにさせないといけないな」
サンガ公爵は伯爵たちの話を聞いて、連絡隊への注意点などをまとめていた。
「テンマ殿、冒険者から見て、他に気を付けることなどはあるかね?」
いつもとは違う口調の公爵に違和感を覚えるが、他家の貴族がいるからこんな感じなのだろうと思うことにした。
「森の中でこそ、四足の敵に気を付けるべきだと思います。二足の魔物……ゴブリンやオークは武器を扱うことが出来るので、確かに障害物のある所では気を付けるべき存在だと思いますが、公爵家や伯爵家の騎士の練度からすればそこまで警戒する程ではないと思います。それよりも、俊敏で気配を消すことに長けている獣型の魔物に注意を払い、奇襲を受けないようにすることが肝心かと。ただそれ以上に、虫や草に気を付けた方がいいとも思います」
自分たちの意見を否定された形の伯爵たちは、一瞬だけ俺に向ける視線が鋭くなったが、話の続きを聞いてすぐに元に戻った。
「虫や草とは、どういうことだ?」
「オオカミやゴブリンと言った敵は、周囲に気を配っていれば発見はそう難しくはありませんが、虫や毒草と言ったものは、知識のあるものでも気が付きにくいものです。攻撃性のある毒虫などは、少し近づいただけでも飛び掛かってきますし、まとわりつかれれば退治するのも手間がかかります。毒草に関しては怪しいものは口にしなければ基本大丈夫ですが、中には触れただけでかぶれるものや空中を漂う胞子に毒を持つ種類もあります。これは虫にも言えることで、気が付かないうちに毒を貰ってしまったり、毒に気が付いても対処法を知らなければ後遺症が残ったりします」
他にも毒蛇なども気が付かれないように忍び寄ってきたりするので、ある意味魔物よりも厄介なのだ。
「そうすると、最低限の毒や治療法の知識も必要となるのか……これは思った以上に大変だな」
サンガ公爵の想定する連絡隊は、ある意味少数で動く独立部隊のようなものなので、必要な知識が多くなるのは仕方がないだろう。
「プリメラ。今テンマ殿が言ったような事案は発生していないのか?」
「今のところはそう言った報告はありませんが、それはまだ実験段階の部隊である為、整えられた道しか使用していないからだと思われます」
整備された道なら、魔物が近づけばすぐに気が付くし、毒を持つ虫や草は定期的に排除されているとのことなので、そう言った問題は今までなかったそうだ。
「これが大人数で動くのなら、その中に数人の衛生兵が配置することも出来るが、少数だと難しいか……連絡隊の部隊数を減らして、その分一つの隊の隊員を増やした方がいいかもしれないな。貴重な意見をありがとう」
サンガ公爵は少人数での部隊運用の難しさを嘆きながら、対応策に頭を悩ませていた。伯爵たちからの反発があるかと心配したが、公爵と同じように悩んでいたので、対人戦以外は経験が少なかったのかもしれない。
そして、俺の仕事はこれで終わることになった。この後で経済面での話し合いになったが、俺に口出しできるところは無かった。一つだけ俺関連の話題があったが、それは伯爵たちがグンジョー市の『満腹亭』で出されているテンマ印のお菓子のレシピを教えて欲しいというものだったのだが、俺が断る前にそれは出来ないとサンガ公爵が間に入った為、話題はお流れとなった。ただ、話題が流れる前に、それまで静かにしていたレイチェルさんとアンジェラさんがアルバートに定期的にお菓子を送るように頼んでおり、それをアルバートが承諾したので、二人にとっては満足の行く結果となったようだった。まあ、
「プリメラ……あれって、最初からお菓子を送ってもらうのが目当てだよな?」
「多分そうだと思います。レシピが手に入れば最上で、お菓子が手に入れば上出来と言った感じではないでしょうか?」
よくある、『本命の前に無理目な注文を出す』という交渉方法だろう。もっとも、アルバートを狙い撃ちにした力業のような気もするが……アルバートが当主になる為の重要な仕事になると思うので、精いっぱい頑張ってほしい。
そんな感じで終わった話し合いだったが、終わってすぐにエリザが、
「そう言えばテンマさん。何かこの人と良からぬことを企んでいるみたいですけど、それは教えてもらえることなのでしょうか?」
などと、人聞きの悪すぎることを言いだした。
「アルバート……俺を巻き込むなよ……」
「いや、待て! 私も知らないぞ!」
心当たりがなかったので、何かアルバートがやらかして俺を巻き込んだのかと思ったが、アルバートにも心当たりがないようだった。
「お義姉様、何かの勘違いではありませんか?」
プリメラが間に入ったがエリザは引く様子を見せず、
「だってこのところ、アルバート様はテンマさんと何か内緒話をしては浮かれていますし、昨日も何やらニヤニヤニヤニヤしながら、「テンマの……」とか呟いていましたし!」
他にも俺と顔を寄せ合いながら、「それは私好みだ」とか「もう少し丸みを帯びていた方がいい」とかアルバートが言っていたというのだ。そして、そこまで言われて俺は原因が分かった。
「アルバート、今渡した方がいいか?」
「そうしてくれ。本当はもう少し落ち着いてからがよかったのだが……こうなってしまっては仕方がない」
俺とアルバートの会話を聞いて、皆も俺たちが何か企んでいたということに気が付いたみたいだが、それと同時にエリザが少し勘違いしていることにも気が付いたようだ。
「テンマ君、それはここで出せるものなのかい?」
当主としての仕事が終わったからなのか、サンガ公爵の口調がいつもの聞きなれたものに戻っていた。
「出せないことも無いですが、庭で出した方がいいと思います」
「それじゃあ、庭に行こうか!」と先陣を切る公爵に、その後に続く伯爵たち。それから俺とアルバート、そして女性陣と言う感じで続いたのだが……エリザはまだ疑っているのか、じっと後ろから俺とアルバートを見ていた。俺とアルバート以外で一番早く原因に気が付いたプリメラは、何とかエリザをなだめようとしている。そして、そんな様子を見ているお義母さんとお義姉さんたちは、楽しそうに笑っていた。
「ここら辺に出しますね」
皆が見守る中でお披露目されるのは、
「馬車?」
アルバートとエリザの結婚祝いに用意していた濃い青色を基調にした馬車だ。全長が四mくらいで幅が二m無いくらいの大きさがあり、二人まで座れる運転席とその後ろに四人ほどが乗ることのできる箱馬車になっている。あくまでも『外見は』……の話だが。
「テンマ、中を見せてもらってもいいか?」
「どうぞ」
アルバートが嬉しそうに聞くのでドアの開けると、エリザの背中を押すようにして中には入っていった。すると、
「え……えっ!」
「思っていた以上の出来だ」
混乱するエリザをよそに、アルバートは満足そうにトイレや脱衣所を見て回っていた。
「アルバート、一体何をして? ……テンマ君、一つ頼みがあるんだけど」
「お父様。兄様とお義姉様はあくまでも結婚祝いに馬車を贈ってもらったのですから、何もないのに貰うのはおかしいです。諦めてください」
馬車の中から出てこないアルバートとエリザを不審に思ったサンガ公爵が中を覗いた瞬間、真面目な顔で俺に馬車をねだろうとしたが、言い切る前にプリメラが窘めた。ただ、プリメラに言われてもあきらめきれなかったらしい公爵は、俺にすがるような目を向けてきたが……俺が首を横に振ると同時にアルバートが待ったをかけたので、悔しそうな顔をして諦めていた。