第16章-4 ご報告
「あの……サンガ公爵様?」
「水臭いよ、テンマ君! お義父さんと呼んでいいんだよ!」
テンションが高くなっているサンガ公爵は、浮かれているせいで俺やプリメラが何を言ってもまともに会話が出来ない状態だった。
「サンガ公爵、静まりなさい」
「……申し訳ありません、大公閣下。少々浮かれてしまいました」
どうやって鎮めようかと悩んでいると、アーネスト様が大きくはないが体に響くような声でサンガ公爵を止めた……アーネスト様が、王国でも最上位に近いお偉いさんだと認識できる、珍しい光景だった。
「公爵様、まだ婚約をしたというわけではないのですから、少し落ち着いてください」
「「えっ?」」
そう言うと、サンガ公爵とプリメラが驚いたような顔をしたが、気にせずにプリメラの前に立ち、手を差し出して、
「プリメラ、俺と結婚を前提としたお付き合いをしてもらえませんか?」
人生で初めての告白をした。さすがに、サンガ公爵の勢いに流されるまま婚約の話を進めるのはおかしいし、何よりプリメラの気持ちを聞いていないのだ。嫌われているとは思わないが……結婚相手として見てはいないということはあり得る。それに、こう言った結婚に関わることは前世を合わせても初めてのことなので、ちゃんとした手順を踏みたいとも思ったのだ。前世のハプニング映像では、このタイミングで断られるという悲しい映像を何度か見たことがあるので、プリメラの辺所を聞いて初めて婚約が成立すると思った方がいいだろう。
「はい、よろしくお願いします」
まあ、先程までの様子から、断られることは無いとは思っていたが……もし断られでもしたら、引き籠りになる自信があった。
「双方の同意があるし、双方の家長の許可もあるから問題なく婚約成立……と言ったところじゃが、これ以上進めるとマリアが拗ねるから、この後の話はマリアの前でした方がいいじゃろう」
確かにアーネスト様の言う通りで、マリア様なら自分の知らないところで俺の婚約の話が進んでいたと知れば、今後会うたびにネチネチと嫌味を言い続けられることになりかねない。
「プリメラ、すぐに王城に行くぞ。サンガ公爵も、一緒に報告をお願いします。あと、ついでにじいちゃんとアーネスト様も」
「「ついでかい! まあ、いいが……」」
流石に親友だけあって、二人の息はぴったりだった。
「そういうわけだから、少し出てくる。留守番頼むぞ」
ジャンヌたちに留守番を頼み、急いで王城に向かうことにした。ちなみに、王城まではそれぞれの馬車で移動することになった。その際、プリメラは俺の馬車に同乗することになり、何故かアルバートは俺の馬車の御者に移動していた。アルバートに何故御者をやるのか聞くと、「父上が浮かれすぎて気持ち悪いからだ」と返ってきて、プリメラが恥ずかしそうにしていた。
アムールSIDE
「計画通り」
「何が計画通りなの?」
私の思惑通りに進んでいることが嬉しくて、ついつい心の声が漏れてしまった。しかも浮かれすぎていて、ジャンヌがすぐそばにいることにも気が付かなかった。まあ、いい。
「はっきり言うと、私がテンマと結ばれるための計画の第一歩……第二歩か三歩かもしれない」
細かく考えていなかったから、今が第何段階なのかが分からない。
「まあ、いいや。とにかく、テンマと結ばれるにはプリメラが正妻の座にいる必要がある」
「何で?」
察しが悪い……いや、さすがにこれだけじゃ伝わらないか……まあ、ジャンヌは計画に必要だから、詳しく教えておこう。
「現状、私かジャンヌがテンマと結婚するのは無理……じゃないかもしれないけど、かなり難しい。何故なら、私とジャンヌはテンマと距離が近すぎる」
テンマが私を女性とみていないということはないと思うけど、それよりも家族という感情が先にあって、しかも恋愛感情よりも強い。それはジャンヌも同じで、結婚の可能性は低いだろう。
「思い当たるところがあるかも……」
「そこでプリメラが必要になる。適度にテンマと距離があって、テンマが女性と認識する相手で、何より扱い……優しい!」
「今、とても失礼な言葉が聞こえた気がするんだけど?」
「気のせい」
ジャンヌはいまいち信じていないみたいだけど、そこは口が滑っただけだから流してほしい。
「それでプリメラの役割だけど、テンマの性欲の解放……もとい、私の見方を『家族』から『女性』に変えさせること。プリメラと触れ合ううちに私の認識が変われば、私にもチャンスがある! ……はず。それでも難しかったら、プリメラの情に訴える」
幸いにも、テンマの女性への認識は、ククリ村のリッチのおかげ? で、大分軟化していると、おじいちゃんが言っていた。それに、私が無理にテンマの正妻の座を狙おうとしたら、サンガ公爵と王妃様から何らかの妨害があるかもしれない。まあ、私は別に正妻でなくてもいいから、あの二人を敵に回すよりは、味方……それが出来なければ中立に居てもらった方がいい。正妻よりも下の側室か妾だったら文句は言わないはずだ。一応、私は有力子爵の令嬢……と言うことになっている。それが下に付くのだから、プリメラの世間的な評価は上がりこそすれ、下がることは無いはずだ。それは、サンガ公爵家も同じのはず。
そのことをジャンヌに話すと、
「アムール……そこまで考えて行動することが出来たのね」
などと、とても失礼なことを言われた。
「ジャンヌ、失礼! これが上手くいけば、ジャンヌもテンマと男女の間柄になれるのに!」
そう言うとジャンヌは、顔を真っ赤にして慌てていた。
アムールSIDE 了
「アレックス、マリアたちを呼んで貰えんか? ちょっとした報告があってのう」
王城へ到着し、まっすぐに王様の仕事部屋に向かったが、その途中でも王様の仕事部屋にもマリア様はいなかった。
「叔父上、何がありましたか?」
王様は、俺たちを見ながら何の報告なのか聞き出そうとしていたが、アーネスト様は「マリアが来てから話す」の一点張りだった。
「クライフ、すぐにマリアを呼んできてくれ!」
王様が廊下に向かって叫ぶと、「すでにアイナを向かわせています」という返事があった。俺やじいちゃんは何度もクライフさんに背後を取られているので驚くことは無かったが、サンガ公爵とアルバートにプリメラは、突然背後から聞こえてきた声に驚いて振り向いていた。俺は振り向いていないので想像でしかないが、多分今クライフさんは、いたずらが成功して満足げな顔をしていることだろう。
「あなた、何か報告があるとアイナに……あら?」
テーブルに移動してたわいもない話をしていると、しばらくしてマリア様とアイナがやってきた。マリア様は、俺やプリメラがいることを知らされていなかったのか、部屋に入って来るなり驚いた顔を見せた。そしてその後でアイナを睨んでいたが、アイナは確信犯だったようでどこ吹く風といった様子だった。
「それで、テンマとマーリン様だけでなく、サンガ公爵一家が一緒ということは……とうとう、テンマも身を固める決心がついたのね! ……ではないわよね。テンマだし」
などと言いながら、マリア様は王様の隣に座ろうとしたが……
「今回、ここにいるプリメラと婚約する運びとなったので、ご報告に参りました」
「へ? あきゃ!」
「ふぉ! ふごっ!」
驚いたマリア様が椅子に座り損ね、王様を突き飛ばす形でこけるのを何とか回避した。その代わり王様は、椅子ごと床に転がった。
マリア様の驚き具合を見た時、今すぐ振り返って後ろを見ろという天啓を得た……気がしたので、振り返ってみると、そこにはこれまで見たことがないくらい驚いた顔をしているクライフさんとアイナがいた。
「それ、そ、それは、それは……ごほんっ! それは本当の話なのね?」
俺とプリメラが同時に頷くと、マリア様は体から力が抜けたかのように椅子に座り込んだ。それを見て再起動したクライフさんはお茶の準備を始め、アイナは……どこかに走って行った。
「ぬぐっ、腰、腰が……つぅ……」
誰も王様のことを気に掛けなかったせいで、王様は自力で這い上がって椅子に座った。
「それで、テンマ。何故婚約の話になったの? ああ、先に言っておくけど、反対する気はこれっぽっちもないから、そんなに固くならなくていいわ。ただの好奇心よ」
マリア様の言葉の前半は俺に向けたものだったが、後半はプリメラに向けたものだ。言葉の途中でガチガチに緊張したプリメラを見てのものだったが、それでも大した効果はなかったようだ。
「いやまあ、最近のやらかしもありましたし、元々プリメラのことは好ましく思っていましたから、いい機会だと思い告白しました。まあ、断られる可能性もあったので、婚約を受け入れてもらえた時はほっとしました」
少し笑い話を混ぜながら話をしていくと、次第にプリメラの緊張も解けたようで、マリア様の問いかけにも答えられるようになっていった。
「それで、婚約は分かったけど、結婚はいつにするの? こういういい方はよくはないけれど、プリメラの年齢のこともあるでしょう?」
プリメラの年齢は今年でニ十四なので、貴族としての結婚は遅いくらいだ。まあ、アルバートとエリザは二十六でまだ結婚していないので、前例が全くないと言う程ではない。
「それに関して、サンガ公爵様とプリメラにお願いがあるのですが、結婚は来年以降で、結婚の際にプリメラには貴族籍を抜けてもらいたいのです」
「それはどういうことかね? 結婚まで期間を置きたいと言うのは分かるし、元々プリメラは将来的に貴族籍を抜けるとは言っていたが、結婚するとなると貴族籍を持っていた方が何かと都合がいいと思うのだが?」
サンガ公爵の疑問に、王様やマリア様、アルバートにプリメラも不思議そうにしていたが、
「まず結婚が来年以降にと言うのは、プリメラはサンガ公爵家の新しい仕事に就いたばかりなので、今すぐだと任務に支障が出るということ、結婚の際に貴族籍を抜けてほしいのは、将来子供が出来た時に、その子に公爵家の相続権を与えたくないからです」
「ふむ、テンマ君が公爵家のことを考えてくれているのは分かったし、結婚時期については納得できるが、子供に継承権を与えたくないというのは無理だ。例えプリメラが貴族籍を抜けたとしても、子供に公爵家の血が流れている以上、継承権は与えられることになる」
「それでも、継承の可能性はぐっと下がりますよね。確か上の二人のお姉さんには、それぞれ複数の男子がいるそうですが、公爵家の継承権の前に、父方の実家の継承権が発生していますよね? 対してオオトリ家は、貴族ではないから継承権というものはありません。最悪、血のつながりのない養子が継いでも問題がない。そうなると、もしアルバートやアルバートの子供に何かあった場合、有力な継承者候補とみられる可能性があります」
サンガ公爵の家臣の中には、オオトリ家の力を取り込もうと考える者もいるかもしれないし、対立する貴族の中には、俺の子供を候補者に押し込んでサンガ公爵家を混乱させたり分裂させたりしようと考えるかもしれない。だが、プリメラが貴族籍を抜ければ、血はどうであれ、家柄は平民と言うことになる。
「もしもの場合、貴族籍で継承権のある子どもと、平民で継承権のある子どもだと、前者の方が後継者に相応しいと言い張ることが出来ますよね?」
できる限り自分の子供には、血なまぐさい世界から遠ざけたいと思うのだ。
「それは……無いとは言えませんね。それに、できないとも言えません。プリメラ、テンマ君はそう言っているが、君はどうしたい?」
「私も、テンマさんの言う通りだと思います。そもそも、私が貴族籍を抜けたいと言っていたのは、継承権を放棄する目的もありましたから」
考えようによっては、公爵家とのつながりを持ったままだが責任は負わないと言っているとも取れるので、かなり都合のいい事を言っているとは思うが……
「王国最強の戦力を持つ者と縁を持てると考えたら、安いものですね。逆に考えれば、公爵家が乗っ取られる可能性がかなり低いとも言えますし……問題はないですね。下から何か上がって来ても、黙らせることは簡単でしょうし」
サンガ公爵ならそう言うと思っていた。公爵の場合、俺による公爵家の乗っ取りよりも、プリメラの幸せの方が重要なのだろう。まあ、公爵家の経営など面倒臭そうなので、頼まれてもやらないが……俺のそういうところも想定しているのだと思われる。
「公爵がそれでいいのなら、王家が口を出すことではないな」
「そうね。テンマ、プリメラ、婚約おめでとう」
王様とマリア様も、当事者である俺とプリメラとサンガ公爵が納得しているということで口を挿むことはせずに祝福してくれた。
「それで、せっかくテンマが来たのだから、ついでに来年の大会の話もしておくか。テンマ、何かいいアイディアはないか? かっ!」
王様がいきなり仕事の話を始め、さらに俺に丸投げした瞬間、王様が奇声をあげて椅子から転げ落ちた。転げ落ちた先で足の甲を抑えているので、隣に座っていたマリア様が踏み付けでもしたのだろう。
「それなんですけど、結婚を控えているからとかいう理由で、個人戦だけにしようかと思います。正直、全部出るのもしんどいので」
「来年に限って言えば、その方法は通用するでしょうけど……その次は無理よ?」
「再来年は来年以降に考えます。もしかしたら、気が変わって全部出たくなるかもしれませんし」
それだと、来年も気が乗ったら出るかもしれないということになるが、来年くらいまでなら何とか覚えているだろう。多分。
「まあ、こちらも来年までには何らかの案を考えるし、そもそも冒険者を出場させないということはできないからな。無理はしなくていいぞ」
と、王様は言っているが、あまり俺だけが勝ちすぎるのも問題なのだろう。人材の発掘とか賭けの収入とか。ちなみに、配当金は売上金から二割を引いた額から算出するので、俺が勝とうが負けようが、国に入る金額に変わりはないが、俺が勝っても元返し(場合によってはマイナスの可能性あり)になるのなら買わないという者が増えた為、全体的な売り上げが減っているのだ。
「無理するのは俺じゃなくて、新しい売り方を考えないといけないザイン様じゃないですか?」
そう聞くと、王様はそっと俺から視線を外した。
「と言うか、忘れているみたいじゃが、テンマが抜けても『オラシオン』はチーム戦に参加するぞ」
俺が抜けても数は揃っているということなのだろうが……
「お主こそ忘れておるようじゃが、テンマが出場しないということは、スラリンたちは出場できないということじゃぞ」
「……あっ!」
じいちゃんはすっかり忘れていたみたいだが、スラリンたちは俺の眷属なので、テイマーである俺がいないとチーム戦に参加することが出来ない。それは、前にサモンス侯爵がガリバーと騎士たちでチームを組み、自分は控えに回っていたことからも分かるように、テイマーが同じチームにいれば、例えテイマーが控えに回っていても眷属は試合に出ることが出来るが、テイマーがチームにいなければその眷属は試合に参加するどころか、チームとして登録することは出来ない。つまり、俺が抜けると今年出場した『オラシオン』のメンバーで残るのは、じいちゃんとアムールだけということになる。まあ、来年俺が抜けた状態で『オラシオン』を組むことも出来なくもないが、その場合俺やスラリンたちの代わりに、ジャンヌとアウラとアイナを入れなければならなくなる。なおアイナは、未だにジャンヌとアウラの指導員と言う形で籍を残したままにしている。
「くっ……無念じゃ……」
残念そうにしているじいちゃんだったが、「それならアムールと組んでペアに出場してやる!」とかすぐに言っていた。この分だと、個人戦にも出場するかもしれない。
「そうなると、テンマ君とプリメラの婚約を発表した後で、さり気なく『結婚の準備などで、個人戦以外に出場しないかもしれない』と噂レベルの話として流した方がいいかもしれませんね。完全に出場しないとなると、王家から何らかの圧力がかかったのではないかと言う疑問を持たれるかもしれませんし、断言した話だと、テンマ君の気が変わった時に反発があるかもしれませんし」
「うむ、公爵の言う通りの形で進めるのが無難であろうな。テンマも、何か裏を取ろうと近づいてくる者がいるだろうが、別に相手にしなくていいぞ。あくまで『噂』レベルの話だからな」
知らない相手が聞きに来たら取り合わず、知り合いが聞きに来たら、「忙しくなるのは確かだけど、どうするかはまだ決めていない」とでも言えばいいだろう。手始めにジンたちに漏らしておけば、自然と広く知られることになるだろう。まあ、情報を流すのは婚約を正式に発表した後になるので、いつになるかは未定だが……ジンたちは意外と顔が広いので、きっと満足の行く仕事をしてくれることだろう。
その後、婚約発表の時期を話し合い、ジンたちの騒ぎが収まった後ということになり、年が明けた後のサンガ公爵主催のパーティーで発表されることになった。マリア様は王家主催のパーティーで発表したがったが、さすがにサンガ公爵を差し置いて行うことは出来ないとなり、公爵が発表した後のパーティーに、俺とプリメラが参加するということで納得していた。
「じいちゃん、マークおじさんたちにはどう伝えた方がいいと思う?」
「速い方がいいとは思うが……色々と思惑が絡まっておるし、公爵家が発表する前に教えて、何かの拍子に広まってはまずいからのう。申し訳ないが、年を越すまで我慢してもらおう。まあ、薄々は気付くじゃろうが、はっきりと言わなければ大丈夫じゃろう」
おじさんたちに黙っているのは心が痛むけど、もし何かあった時におじさんたちが非難されるのは避けたいので、発表した後で理由を話して謝ろう。
俺とプリメラの話が一段落着いたところで、サンガ公爵がジンたちの報酬の話を始めたので、俺たちはサンガ公爵を残して帰ることにした。
「帰ったら、アムールたちを口止めしておかないとな」
「そうじゃな……ん? あれは、ディンとアイナのようじゃな」
アイナは部屋から走り去ったのは、どうやらディンさんを呼んでくる為だったようだ。
「テンマ、プリメラ嬢と婚約したとアイナから聞いたが、本当なのか?」
本当のことだと返すと、ディンさんは俺とプリメラに祝福の言葉をくれたが、その後でまだ公表できないことだと言うと、アイナをたしなめていた。どうも、アイナはディンさんが鍛錬しているところに慌てて飛び込み、いきなりディンさんを引っ張って行ったそうだ。その場には他の騎士たちもいたそうだが、理由は誰もいないところで聞いたので、婚約の話は漏れていないだろうとのことだった。ただ、あれだけアイナが慌てるのも珍しいので、慌てていた理由を聞かれた時のことを考えると面倒だと言っていた。
「とりあえず俺たちは、陛下のところに行くとしよう」
「テンマ様、プリメラ様、お見苦しいところをお見せして申し訳ありませんでした」
アイナはディンさんと合流して落ち着いたのか、いつもと変わらないように見えた。まあ、顔が赤かったという違いはあったが……それでからかうと後が怖いので、黙ったままで別れることにした。
「それにしても、公爵邸に送らなくてよかったのか?」
「父上も一度テンマの屋敷に戻ってくるだろうし、何よりプリメラは、アムールたちと話さなければならないだろうからな」
「いや、まあ……その通りなんですけど……」
プリメラは緊張気味に言っているが……まあ、悪いことにはならないだろう。
と言う感じで軽く考えていたのだが……
「テンマ! プリメラと婚約したというのは本当か!」
「ちょっ! リオン、声が大きいって!」
三馬鹿の残りの二人が騒いでいた。そのせいで、ジンたちにもバレたようで、口止めをするのに苦労するのだった。なお、そんな騒ぎの中でも、クリスさんは起きなかった。