第11章-1 あれから三年
諸事情により更新が遅れておりました。申し訳ありません。
マグコミ様で『異世界転生の冒険者』の漫画版が、本日更新されました。プロローグ的な第0話もありますので、興味のある方は一度ご覧になってみてください。
「この子が生まれてから、もう三年か……」
屋敷の書庫で絵本を夢中になって読んでいる虎耳の子供を見ながら、俺はそんな事を呟いた。
「ん?」
「何でもないぞ。それよりも、そろそろおやつの時間だから、お母さんのところに行ってきな」
「うん!」
元気よく返事した子供は、絵本を机の上に放り出したまま走って行った。それを俺は元の位置に戻してから、おやつが用意されているであろう食堂へと向かった。
食堂ではすでに子供がおやつにかじりついており、その横には子供の母親も座っている……ついでに子供の周りには、いつも通りおやつをねだるシロウマルとソロモンと、その他数人が椅子に座っている。
和やかな時間が過ぎる中で、いきなり乱入者が食堂に現れた。
「ヨシツネ~! 一人でちゃんと本を読めたか~?」
「ふぃっ!」
乱入者はヨシツネと呼ばれた子供の父親のブランカだ。泣く子がさらに大泣きしそうな強面を破顔させて、我が子であるヨシツネに近づこうとするが、ヨシツネはその顔を見て変な声を上げ、慌てて母親であるサナさんに抱きついた。
「はいはい、怖くないわよ~。顔は怖いけど、怖くないわよ~」
と、よくわからない事を言いながら、サナさんはヨシツネの背中を撫でている。ヨシツネは目に涙を浮かべてはいるものの、何とか堪えている状態だ。対するブランカは、我が子に笑顔を向けただけで泣かれそうになるという状況に凹んでいた。
「いつもの事なのに……いい加減、ブランカは慣れるか、常時仮面をつけるべき!」
ヨシツネの対面の席に座っておやつを頬張っていたアムールが、ブランカを指差しながらそんな事を言っている。
その間にも、ヨシツネはブランカから距離を取ろうとサナさんから離れ、俺の後ろへと避難した。
「ぷふっ!」
そんなヨシツネの行動を見て笑うアムール。そんな中ブランカは、ゆらりと立ち上がってアムールに近づいた。アムールはヨシツネに気を取られているのか、ブランカの接近に気が付いていない。そして、
「ふぎゃぁあ!」
ブランカは自分に対して突き出されたままのアムールの指を、しっかりと握って逆に曲げた。指関節を極められたアムールは、悲鳴を上げながら必死にテーブルをタップしている。
「そんな事をするから、あなたはヨシツネに怖がられるのよ」
ブランカの行動に、呆れ声で苦言を呈するサナさん。ブランカはこの言葉にハッとなったかの様に顔を上げヨシツネを見るが時すでに遅く、ヨシツネは更に距離を取るべく部屋の隅まで逃げていた。
「ちがっ、違うぞヨシツネ!」
何が違うのか分からないが、ブランカは必死になってヨシツネの誤解を解こうとしていたが、近づく前にサナさんに捕まった。
「あなたは外に出ていてね」
「う、あ……はい……」
サナさんに追い出されたブランカは、憔悴しきった様子で食堂を出て行った。ヨシツネはブランカがいなくなったのを二度三度と確かめた後で、サナさんのそばへと移動した。そんなヨシツネの様子を見て、アムールは指の痛みにこらえながら笑っていた。
このヨシツネは、俺が優勝した次の年の大会直前に生まれたのだ。
見た目はアムール達(サナさん、ハナさん含む)に似ておらず、かと言ってブランカに似ているわけでもない(その事に一番安堵したのはアムールで、ちょくちょく話題に出してはブランカに拳骨を食らっている。ちなみに、二番目に話題に出しているのはハナさんだ)。では誰に似ているかと言うと、アムールの祖父で、ハナさんとサナさんの父親に当たる『クロウさん』に似ているのだそうだ。クロウさんはケイじいさん(山賊王)の実の息子ではあるが、その容姿と性格はどちらかというと母親似で穏やかな人だったそうだ。なお、ヨシツネの名付け親は俺だったりする。
何故俺なのかというと、王都から南部までブランカ達を迎えに行った時に丁度生まれ、そのまま名付け会議に参加するも、ブランカとサナさんが納得する名前が会議では出ず、次第にネタの様な名前(そのほとんどがアムールの案)が出始めた頃、サナさんが「お父さんに似ているし、それに因んだ名前でもいいかも」と言った際、その『クロウ』という名前から真っ先に俺が思いついたのが『義経』だった。
その名前を何となく小さな声で口にしたところサナさんの耳に入ってしまい、何故か候補に挙げられたのだ。さらにその名前の理由を問われた時に咄嗟に、「クロウを『苦労』に掛けて、この子には『常に良い』事が起きます様にで、『ヨシツネ』」みたいな事を言うと、何故かハナさんとサナさん、それにブランカまで頷いて、『ヨシツネ』に決定したのだった。
何故三人が頷いたのかというと、クロウさんはケイじいさんみたいな武闘派ではなかった為(最もケイじいさんは完全な武闘派ではなく、文官の様な事も一通りできたそうだが、傍から見るとケイじいさんはその体格と逸話から完全な武闘派と判断されていたらしい)、一族をまとめる際に比較されて苦労していたのだとか。
まあ、ナナオの街を作り上げ治める様になってからは、一族の皆もクロウさんのありがた味が分かる様になり、誰もクロウさんを舐める様な真似はしなくなったそうだが、それでもその事を知っている三人には、クロウさん似のひ孫に付けるにはぴったりだと思ったらしい。
そしてこの話の最中、ロボ名誉子爵は早々に戦力外通告をされて追い出されており、アムールもネタの様な名前を出した時点で追い出された。
ヨシツネはそういった話をサナさん達から聞かされていたせいか、俺に懐いてくれている。しかしその反面、実の父親であるブランカには苦手意識……と言うか、怖い人だと思っているらしい。
その理由は、ヨシツネが生まれてから毎年の様に観戦している、『武闘大会』にあると俺は見ている。
ヨシツネが生まれた年の大会では、ブランカは個人戦二位、ペア戦二位、チーム戦二位と言った成績を残している。ペアではアムールと組み、チームでは南部の上位者達と組んでの参戦だった。
普通ならどれかで優勝できそうなものだが、個人戦では俺が、ペアでは俺とじいちゃんが、チームではじいちゃんとアムールを加えた『オラシオン』が一番人気で、ブランカはどれも二番人気だった。そして、大会はその人気通りになった。ちなみに次の年の大会は、個人戦三位、ペア戦二位、チーム戦不参加だった。
そして今年、俺はペア戦には出場できなかったので、ブランカとアムールのペアが一番人気だったのだが、結果入賞ならずだった。なお、個人戦はまたも三位、チームは南部上位者達で組んで三位。
何故この結果でヨシツネに怯えられたのかというと、ブランカの戦い方に問題があったからだ。
元々ブランカは武闘派で血の気が多いところがあり、戦いを楽しむタイプの男だ。しかもそれに加え、ヨシツネにいいところを見せ様と気合を十二分に入れて大会に望んでいた。
その結果、大会中のブランカは、対戦相手が向かい合っただけで戦意を喪失しかねない程の雰囲気を身にまとっていた。そしてそれは試合にも現れ、相手に同情してしまうくらい苛烈で一方的な戦いだったのだ。それは、ペアでもチームでも同じだった。
これらの大会で一番名前を売ったのは、恐らくブランカだろう。恐怖を撒き散らしたという意味で……しかし、それでもそれぞれの決勝で俺に負けてしまった。
内容的にはかなり接戦ではあったものの、結果だけ見れば完敗だ。何せ、三戦三敗なのだから。
その悔しさを胸に挑んだ次の大会では、個人戦の準決勝で俺と当たり敗北。ペアの決勝で俺とじいちゃんと当たり敗北。チームは他のメンバーが揃わず出場見送り。
そして、今年こそはと挑んだ大会では、ペアで俺が出場しないというチャンスが訪れた。これは別に俺がブランカの為に出場しなかったわけではなく、予選直前になってじいちゃんがぎっくり腰になってしまったからだ。流石に後数分で始まるという場面で相方の入れ替えは認められず、無念のリタイヤとなったのだった。なお、これに関して何故か運営側への苦情が殺到したらしく、その余波が王族にも行き、じいちゃんは王様達……特にアーネスト様にグチグチと嫌味を言われていた。
そんな中行われた大会では、準決勝で全身真っ黒な鎧で固めた騎士に敗北する事となる。予選から話題になっていた騎士ではあったが、正体不明でパッとしない戦い方をするという事で、大波乱が起きたと大騒ぎになったのだが……俺のよく知っている人物だったし、『鑑定』により俺はその正体を知っていた。
その正体とは、黒獅子と呼ばれ国最強の騎士と言われているディンさんだった。何でも、「久々に血が騒いだので、無理して出場した」との事だった。
気を取り直して出場したペア戦では自然とブランカ達が一番人気となった。ブランカは俺が出場しない事を残念がってはいたが、それでもチャンスが来たと気合を入れていた……のだが、ブランカ達が本戦の一回戦で当たった相手が悪かった。
その当たった相手とは、虎仮面と仮面騎士を名乗る二人組だった……まあ、その正体はハナさんとクリスさんだったわけだけど……予選の時から薄々気が付いてはいたが、勝機到来と浮かれ気味だったブランカとアムールは不意をつかれた形となり、あえなく敗北。内容的には、クリスさんがアムールを抑えている間にハナさんがブランカを倒し、二対一でアムールをボコるという展開だった。二人はそのまま決勝まで進み、優勝を掴み取った。
そして、チーム戦では準決勝で『オラシオン』と当たり敗北と、不運と油断が重なったのだった。もしペア戦で事前に相手の正体に気が付いていれば、逆転の目はあったかもしれないのに……
「それで、あなたはそこで何をしてるんですか?」
ブランカが出て行った事で、おやつタイムを再開したヨシツネを中心として和やかな雰囲気が戻りつつある中、そうではない雰囲気の二名がいた。その内、日の高い時間帯からお酒を飲んでいる女性……今年度ペア戦の覇者の片割れであるクリスさんに声をかけた。ちなみにもう一人はアムールで、未だにブランカにやられた指を抑えて苦しんでいる。もしかしたら指の骨に異常があるのかもしれないので、後で魔法でもかけておこう。それまでは自業自得という事で、反省しておいてもらおう。
「ろくなのがいないのよぉ~。優勝したら引く手あまたと思っていたのに、ろくな話が来ないのよぉ~~!」
「またですか……」
今回の大会でクリスさんが参加した理由とは、ズバリ恋人探しの為だった。何でもここ数年、同期や同僚の結婚が相次ぎ、いよいよ騎士団の独身女性の最年長に近づきつつあるのだそうだ。ちなみに、今のところの最年長は四十代だそうだが、その女性は旦那さんと死別したからだそうでカウントされず、他にも未婚の女性はクリスさんの上に四~五人いるのだが、全員恋人がいるのだとか。
「何で私のところにくるのが、おっさんばっかなのよ! たまに同年代が来ても、評判が悪かったりお金目当てだったり、親の介護要員だったり……ホントろくでなしばっかじゃないの!」
「体目当てがいないだけ……失礼、そもそも、あなたには誇るほどのものがありませんでしたね」
どう声をかけようかと迷っていると、俺の後ろからすっと現れたアイナが、クリスさんに言ってはならない事を言ってしまった……まあ、わざとなのだけれども。
「アイナだって、似た様なものでしょ! 何上からものを言ってるのよ!」
「失礼な、あなたよりはありますよ」
「変わらないわよ! それに、恋人もいないじゃない!」
「……ふっ」
クリスさんの指摘に対し、鼻で笑うアイナ。それを見たクリスさんは、信じられないものを見る様な目をしている。
「ま、まさか、あなた……」
「こういう事ですよ」
アイナが見せたのは、左手の薬指に嵌められた指輪だった。
「アイナ……」
声が小さくなったクリスさんに対し、珍しくドヤ顔を披露するアイナだったが……
「いくら恋人が出来ないからって、自分で自分用の婚約指輪を買うって発想はないわぁ……」
クリスさんはドン引きしていた。
「流石の私でも、そこまで堕ちていないわぁ……アイナ、あなたは疲れている、ぐべぇ!」
クリスさんが言い終わる前に、アイナは手に持っていたお盆をクリスさんの顔面に叩きつけた。
「流石に今のはクリスさんが悪いよ……ちなみにだけど、アイナに恋人が居るのはホントだよ。名前は出さない約束だけど、会った事あるし」
クリスさんが暴れだす前に、俺は先手を打ってアイナに恋人が居る事を暴露した。
「そ、んな……神は死んだ……それとも、神もろくでなしだったのか……」
絶望の表情を浮かべ、床に倒れこむクリスさん……というか、その言葉の使い方は間違っている気がするし、そもそも恋愛を司るのが愛の女神なら死んではしない。むしろ、今の発言で敵に回したかもしれない。
死んだかの様に床に倒れたクリスさんと、勝ち誇った顔でクリスさんをつついているアイナを無視して、俺はおやつの続きをする事にした。
ちなみに、アイナの恋人とはディンさんの事で、年齢差と役職の関係上から結婚に踏み切れていないらしい。そして、アイナに恋人がいる事にダメージを受けたのはクリスさんだけでなく、離れたところで聞き耳を立てていたアウラもだった。後、何故かジャンヌも。
「ごちそうさま」
そんな中、ヨシツネはおやつを食べ終わって、書庫の方へと向かっていった。
「そういえば、今年はいつまで滞在する予定ですか?」
「そうね……後一週間もしないうちに、南部に帰ろうかと思っているわ。今年は、帰りにヨシツネに色々なものを見せようかと思っているし、姉さんの優勝祝いもあるから」
ハナさん達と知り合ってから、王都に来る時はうちを利用する様に言っており、去年とおととしは大会後一ヶ月近く滞在していたのだが、今年はハナさんがペアで優勝したという事もあり、いつもの半分くらいしか滞在出来ないとの事だった。
念の為、ペアの片割れであるクリスさんを連れて行かないのかと聞いたが、クリスさんが近衛隊に所属している為、おいそれと単独で他の貴族の領地に行くのは難しいのだそうだ。これはクリスさん本人が言った事らしい。
(あれだけの実績を残したのなら、南部では恋人くらいできるだろうに……)
実力者を好む性格の者が多い南部なら、大会の優勝者はアイドル扱いされてもおかしくない。しかもそれが、自分達のトップと組んだ者ならばなおさらだろう。
「本当にクリスは、どこか抜けてますね。本気で恋人が欲しいのならば、今南部にいけば選り取りみどりでしょうに」
俺の考えを読んだのか、アイナがクリスさんを残念な子を見る様な目で見ている。ちなみに、これまでにその視線を一番受けているアウラは、未だに固まったままだ。
「ただいま帰りました」
アイナと床で倒れているクリスさんを観察していると、玄関の方から声が聞こえてきた。
「エイミィが帰ってきたみたいだな。という事は、他の二人も一緒か」
俺がそう呟くとほぼ同時に、食堂のドアが勢いよく開かれた。ドアを開けたのはエイミィではなく、エイミィについていっていたルナだ。
「ルナ様、はしたないですよ」
アイナはそう言って嗜めるが、ルナはあまり気にしていないみたいだ。最近、変なところが王様とライル様に似てきていると、マリア様達は嘆いていた。
「お兄ちゃん、お腹がすいた~」
たったったっと俺の方へやってきて、テーブルに置かれていたおやつを狙うルナ。
「着替えて、手を洗ってきてからだ」
俺はおやつの乗った皿をルナから遠ざけルナを注意すると、ルナはぶつくさ言いながらも自分用に確保している部屋へと向かっていった。
「先生、今帰りました。依頼は無事成功です」
「それは良かった。おやつがあるから、先に着替えておいで。ティーダもな」
そう言うと、エイミィとティーダも自分達の部屋へと向かっていった。
エイミィとティーダは、今年から冒険者の本登録が出来る年齢になったので、無理のない範囲で依頼を受けているのだ。まあ、エイミィはともかく、ティーダが依頼を受ける時には近衛隊の誰かが先行してギルドに行き、安全で依頼主の身元がはっきりとしている依頼を選りすぐっておくのだ。ティーダは嫌がってはいるが、それが冒険者になる時にシーザー様達から出された条件なので渋々ながらしたがっている感じだ。
その他に、身近な冒険者関連の話では、俺とジンがSランク、ブランカがAランク、アムールがBランクに上がっている。
ジンはここ数年の大会の成績と冒険者としての実績に加え、『暁の剣』がセイゲンのダンジョンの最下層と思われる階層へ到達した事が評価され、ブランカとアムールも大会の成績とこれまでの冒険者活動が認められてのランクアップだ。
そして俺はと言うと、現在大会で不敗記録を更新中な事と、過去のドラゴンゾンビ撃破に加え、三年前の地龍討伐、及び二年の走龍討伐、未発見だったダンジョンを攻略した事が評価されたからだ。
走龍はナナオに遊びに行った時にたまたま遭遇し、単独で討伐したもので、未発見のダンジョン攻略は、去年他の依頼でこれまたナナオを訪れた際に、少し離れたところにある山の中腹に地下十階程のダンジョンを発見し、そのまま攻略したのだ。
ダンジョンとしては若い部類(それでも数十年は経っていると思われる)でさほど強い魔物はおらず、最下層にいたボスの魔物(人型のゴーレムだった)も大した事がなかったのだが、未発見のダンジョンという事で鉱石などの資源が手付かずだった為、南部(特にナナオ)の景気が急上昇し、その余波が王都にまで広がった。そしてそれが、Sランクへの昇格の決め手となったのだ。かなり急ぎ足の昇級ではあったが、俺を上のランクに上げないままだと他の冒険者のランクを上げにくいという事になり、何か目立つ功績を作るたびにランクが上がっていったのだ。
「おっやつ~~」
真っ先に戻ってきたのは予想通りルナだった。身長が百五十cm代半ばと、三年で見た目(胸以外)は成長したが、中身は大して変わっていない……と言うか、ますます王様とライル様に似てきた気がする。そのせいか、マリア様とイザベラ様に会うたびに、どうにかお淑やかになる様に調教……もとい、教育できないかと相談されるくらいだ。まあ、聞かれるたびに「無理です、諦めてください」とは言っているが、二人は諦めきれない様だ。
「ルナ、またお母様とおばあ様に怒られるぞ!」
続いて戻ってきたティーダは、シーザー様を若くした様なイケメンへと成長した。身長も百七十cmに迫り、俺との差(ちなみに現在の俺の身長は百七十cm代後半)が縮まってきており、近いうちに抜かされそうだ。最近ではそのイケメンぶりに、学園や貴族の集まりにおいてモテモテだが、本人は未だにエイミィ一筋らしく他の女性に目もくれない為(ルナ談)、ティーダとルナを除いた王家の話し合いで、エイミィをどこかの貴族の養子にして婚約させるかという話が出たらしい(ライル様談)。ちなみに、その情報を俺に漏らした二人は、それぞれティーダとマリア様に折檻されたそうな。
「先生、これお土産です」
最後に戻ってきたエイミィは、依頼の為に向かった森で採れたキノコが入れられた籠を抱えていた。前に持って帰ったときは毒キノコばかりだったが、今回はちゃんと食べられる種類ばかりだったのであれからしっかりと勉強したみたいだ。
エイミィは身長が伸び百六十cmに少し届かないくらいだが、胸の方は同年代では大きいらしく、たまにティーダがチラチラ見ている。この成長にルナはかなり嫉妬している様で、最近では乳製品ばかり食べ、よくお腹を壊している。ちなみに本人はティーダの好意に気がついている様だが、今のところ仲のいいお友達といった感覚が強いらしい(ルナ談)。なお、この情報を俺に漏らしたルナは、ティーダに折檻されたそうな。
「ありがとう。まだ時期が早いけど、充分食べられそうだな。今日はこれを夕食に使うか」
キノコを使ったレシピをいくつか思い浮かべながら、エイミィからキノコを受け取ると、食べ物に反応したシロウマルとソロモンが籠の中身を覗きに来たが、すぐに食べられるものではないと判断したらしく、目標をエイミィ達のおやつに切り替えていた。
「テンマ様、アルバート様達がいらっしゃいました」
キノコの仕分けと下処理をジャンヌとアウラに手伝ってもらっていると、アルバート達がやって来たとアイナが知らせに来た。別に気を使う様な客ではなかったのでそのまま食堂に連れてきてもらうと、現れたのはいつもの三馬鹿だけではなく、アルバート達の後ろに三人の関係者であり、ここ最近で見慣れた人物がいた。
前回の話より三年が経ちました。テンマが正式に冒険者となって季節が一巡しようとしていたので、ちょうどいい区切りかな? という感じです。
三年が経った事で、テンマやエイミィ達年少組の成長や、アイナとディンがくっついたりといった変化がありました。ただ、ジャンヌとアウラとアムールは外見がほぼ成長していないイメージです。
これからも、なろう版と漫画版の『異世界転生の冒険者』をよろしくお願いします。