第10章-5 三馬鹿のオチ要員
「大体わかったが……貴族の次期当主をこき使うのはテンマぐらいだぞ」
アルバートは俺の説明を聞いた後で、呆れながらため息をついていた。それに対して今回の本命であるカインは苦笑し、リオンは対応を二人に任せてマークおじさん達に混じってバーベキューを楽しんでいる。
「まあ、虫除けになるのは構わないよ。元々父さんからエイミィの事は聞いていたし、何かあったら助ける様にも言われていたからね」
カインはそう言いながら、エイミィの頭を撫で始めた。エイミィは突然年上の男性に頭を撫でられて驚いていたが、嫌がっている様子はなかった。その様子を見たティーダは焦りながら、何故か俺の方を見ていた。
「カイン、なんでその子を撫でているんだ?もしかしてタイプか?」
そんな状況で現れたのは、三馬鹿のヘタレ脳筋ことリオンだった。その言葉に、俺とティーダは「よくぞ聞いてくれた!」と心の中で喝采を送りながら、カインの返事に注目した。
「違うよ!ただ、こんな年下の子と接する機会はほとんどないからね。妹みたいだなって……うちは弟がアレだから」
「あ~……何というか、すまん」
「全くだよ。今度僕お見合いする予定だし、仮にエイミィに手を出そうとしたら、色々な意味で終わっちゃうから……社会的にも物理的な意味でも……」
リオンの質問にご立腹のカインだが、その言葉には聞き逃せない言葉があった。
「へっ?カイン、見合いすんのか?」
「そだよ」
間の抜けたリオンに対し、あっけらかんと答えるカイン。その言葉に俺達一同はかなり驚いていたが、中でも一番驚いていたのはクライフさんだろう。驚きすぎて、目ん玉が飛び出そうになっている。恐らく、趣味と実益を兼ねて貴族の情報を集めているのに、自分の知らない情報がこんなところで飛び出たからなのだろう。余りにも珍しい光景なので、スマホがあったら連写して保存し、さらにバックアップをとっておきたいくらいだ。
「そろそろ将来の事も考えないとね。理想はサモンス家を継ぐ時までに子がいる事だけど、最低でも結婚くらいはしておかないとね……何かあって急に当主になった時に、伴侶がいないと色々面倒な事になるらしいし」
本当は遅いくらいなんだけどね……とか付け加えながら、いつもの調子で至極真面目な話をしていた。
「ようやく、お前もそう考える様になったか」
カインの考えに、一番先に反応したのはアルバートだった。何故その様な言い方をするのか不思議に思っていると、
「テンマ様、アルバート様には婚約者がおります。確か、伯爵家のご長女だったと思います」
クライフさんが、名誉挽回とばかりに即座に耳打ちしてきた。確かにアルバートの立場からすれば、婚約者の一人や二人いてもおかしくはないが、婚約者がいるのに三人で連んでバカな事をやっているのかと思うと、見た事もないアルバートの婚約者に少し同情してしまった。
「取り敢えず、二人の将来設計の事は置いといて……エイミィとの顔合わせは成功……と言うか、いざという時の後ろ盾になってくれるという事でいいんだな?」
この三人に対して遠まわしな言い方は面倒臭いので、ストレートに聞く事にした。先程からリオンが一言も喋らないのが少し気になるが、三人を呼んだ目的が達成されるのかの方が重要なので無視して聞いてみると、アルバートとカインは思っていたよりあっさりと頷いた。
「私個人としてもサンガ公爵家としても、テンマの弟子の味方をする事を約束しよう。ただし、公爵家に害が及ばない範囲でだ」
「サモンス侯爵家は、もちろんエイミィの味方になるよ。エイミィがテイマーズギルドに所属している上に、父さんが代表に収まっている以上、エイミィはある意味『王族派』にいるみたいなものだしね」
二人共多少含みはあるものの、エイミィの後ろ盾を約束してくれた。無論これは、俺が王族派を離れない限りという条件での事だろうが、それがあれば二人がエイミィの後ろ盾になる口実ができるからだろう。そうすれば他の貴族に何か言われても、「龍殺しと賢者を王族派に繋ぎ留める為だ」と言えるだろうしな。
「それで、リオンはどうするの?」
「納得いかねぇ……」
カインの言葉に、それまで動きを見せなかったリオンが、ゆっくりと口を開いた。しかも、否定する様な言葉だ。
「いや、無理にとは言わないが、ハウスト辺境伯家としても益のある話だろう?」
アルバートの言葉を聞いたリオンは、アルバートとカインを睨む様に目を見開いた。
「そっちじゃねぇ!うちとしてはテンマとの関係を考えたら、その子の後ろ盾になるのはこっちが頭を下げてぇくらいだ!俺が言いたいのは、何でアルバートだけじゃなくて、カインにも見合い話が来てるのかって事だ!俺のところには一つも来ないのによぉ!」
「そっちかよ!」
リオンの心の叫びを聞いて、俺は思わずツッコミを入れてしまった。確かに俺とハウスト辺境伯家との関係(あくまでも世間が思っている関係)を考えれば、エイミィの件はリオンからすれば改善の一助になる可能性があるので、断るのはおかしい話だ。それにしても、「叫びたくなる程、リオンにはお見合い話が来ないのか?」と思っていたら、何故かアムールがリオンの前に立ちふさがった。
「それは仕方がない。こっちの二人は黙って静かにしていれば問題ないけど。リオンは黙って静かにしていても暑苦しい!何も知らない女が見たら、どっちを選ぶかは歴然としてる!」
ビシッとリオンを指差して、事実を突きつけるアムール。その言葉にリオンはショックのあまり石の様に固まり、カインは腹を抱えながら座り込んで大爆笑し、アルバートは手で口を抑えて笑いをこらえている。そして当然のごとく、その周りで話を聞いていた俺達(マークおじさん達を含む)は、大声で笑った。流石にクライフさんとアイナはおおっぴらに声を出さなかったが、笑いをこらえるのに必死の様子だった。
「ま、まあ、リオンがモテないのは仕方がないとして、どうやって三人とエイミィを結び付けさせるかだな……嫌がらせをしている奴らに、エイミィと三人の関係を分からせないと意味がないしな」
強引に話を本題に戻した俺は、未だにアムールの口撃で動けなくなっているリオンを放ったらかしにして、アルバートとカインに聞いてみた。二人も笑いを収めるのに苦労していたが、息を切らせながら真剣に考え始めた。そして出した答えは……
「俺達三人で、将来の同僚・家臣候補を下見するという名目で学園に行こう。学園長には本当の事を話す必要はあるだろうが、他の職員ならばそれで誤魔化す事が出来るだろう。その見学の最中に、たまたま野外で授業をしていたティーダ様のクラスを訪れて、エイミィの存在に気づいて話をするという方向に持っていこう」
「その時に、僕が父さんの話を出してエイミィを助ける様に言われているといえばいいよ。エイミィを通じてテンマを引き込みたいと言外に匂わせておいて、それに気がついたアルバートとリオンがそれを阻止しようと、両家も自分のところにエイミィを引き込もうとする。それで三竦みになる形を作って、最終的に三家がエイミィの力になる事で、揃ってテンマに恩を売る形で収める感じにしようか」
二人共、時間をかけて詳しく話し合ったわけではないのに、どういう感じでどの様に持っていくかの道筋を立てた。もう少し煮詰める必要はあるだろうが、このままでも十分通用しそうだった。
「だけど、急に現れて争い出して、その上自分達で問題を解決したら、流石にわざとらし過ぎないか?」
エイミィにはかなりの権力を持った味方が複数いると分からせればいいだけなので、例え嫌がらせをしている生徒にバレてもいいとは思うが、生徒の中には将来本当に同僚や部下になる者もいるかもしれないので、三人の仲が悪いとか、生徒達の目の前で喧嘩をしていたとかを実家に伝えられたら、それを証拠として、王族派を切り崩そうとするかも知れない。三人に近い者なら気にしないだろうが、末端に行くほど信じてしまうものが出るだろうし、王族派の将来に不安有りと、改革派に寝返る者も出てくるかも知れない。
その事を話すと、二人はそれはまずいと他の案を出そうと考え始めたが……
「じゃあ、喧嘩する必要なくない?三人が、エイミィちゃんと仲がいいと思わせればいいだけなんだし」
と意外な事にルナの口からそんな言葉が出てきた。確かに、仲がいいところを見せるだけなら喧嘩をする必要はないが、問題はそれをどうやって実現するかだったが……
「お兄様に止めさせれば?元はお兄様のせいなんだし、責任を取らせないと」
と、またまたルナから提案が出された。確かにその場で三人を止める事ができる人物がいるとすれば、皇太孫であるティーダしかいない。
「悪くないんじゃないか?三人が険悪になりそうなタイミングでティーダが止めれば、三人の喧嘩から、ちょっとした口論くらいに見えるだろうし、それくらいは貴族にとって日常茶飯事だ。それに、ティーダが年上の三人、それも将来の王族派の重鎮候補を抑えるだけの器量があると、その場の生徒に思わせる事ができるかもしれない」
「その上、そんなテンマに恩を売りたい三人と、それを抑えるだけの器量を持ったティーダ様がエイミィの後ろ盾になっていると思わせるのか……生徒達がその事を理解できなかったとしても、生徒がその話を実家に伝えるだろうから、生徒の親がエイミィに手を出さない様に、もしくは仲良くする様にいう可能性が高いというわけか」
「エイミィに媚を売る生徒が出てくるだろうけど、嫌がらせをする生徒はほぼいなくなるだろうね。かなりぶっ飛んだ性格をしていなければ、の話だけど……一応聞くけど、クラスの全員が嫌がらせをしているわけではないんだよね?」
「はい。多くはないですけど、クラスにもお友達がいます」
カインの質問に、それまで黙って聞いていたエイミィがそう答えた。それならその子達やティーダが間に入る事で、悪い考えを持っている生徒は近づけないだろうとの事だった。その子達にそんな力があるのかと思ったが、現時点でエイミィと仲良くしようという事は、本心からそう思っている子もいるだろうけど、俺という後ろにいる保護者を意識している子(貴族出身者)もいるだろうから、それにティーダの後ろ盾が付けばそう簡単に手は出せない、と説明してくれた。もちろん、この話はエイミィに内緒でだ。
とにかく、これでリオン達への用事は終わったので、お土産を渡して帰ってもらおうとしたのだが、暇だし美味しいものが食べられるからという事で、三人はそのまま居座る事になった。エイミィ達も学園の寮の門限まで時間があるという事で、おじさん達に混じってバーベキューを楽しみ、食べ終わったあとは庭で遊んでいた。
「め~~~!」
「にゅわっ!」
その遊び相手はメリー達で、今しがたルナがメリーに体当たりをくらって転がされたところだ。ちなみに、メリーはエイミィとティーダとルナを見て、迷う事なくルナに突進していった……三人の中で、誰が一番弱いかを判断した結果だと思われる。最も、転がされたルナはおもしろそうに笑い、お返しとばかりにメリーにぶつかりに行っていたので、案外気が合うかも知れない。
「ふがっ!」
……今度は顔面に体当たりを食らっていたけど……
「先生、沢山搾れました!」
しばらくの間ルナとメリーを見ていると、エイミィとティーダが牛乳の入ったバケツを持ってきた。二人はジュウベエ達の所に行っていた様で、マーサおばさんに頼んでヒロの乳を搾ったらしい。
牛乳というのは牛の母乳なので、本来は妊娠していないと出ないはずなのだが、この世界の牛は食べた餌の栄養を体内に蓄え続けるそうで、許容量を超えると自然と外に出そうとするのだそうだ。その結果、自分で自然と断食で栄養を消費するか排泄物(未消化分)が増え、メスはそれプラス乳として出すらしい。
「お疲れ様。それは火入れしないといけないから、飲みたかったらアイナに言えば大丈夫なやつを持ってきてくれるからな」
いくら『浄化』魔法で殺菌が可能だといっても万能ではないし、万が一の事があるかもしれない、なのでわざわざ危険を冒してまで殺菌前の牛乳を飲ませる事はない。まあ、俺とかじいちゃんとかなら、腹を壊す事はないだろうがな……実際、以前飲んだ時も大丈夫だったし。
「体を鍛えていれば自然と耐性もついてくるから、そうしたらもっと美味しい状態の牛乳を飲ませてやるよ。それか、自分で『浄化』の魔法を使える様になるかだな。まあ、あくまでも自己責任になるけどな」
もっと美味しい牛乳と聞いて、二人は羨ましそうな顔をしていたが、条件を満たすまでは絶対に飲ませないと言うと、『浄化』の魔法を覚えると意気込んでいた。確かに魔法を覚える方が、体を鍛えるよりも早いかも知れない。
「なら、俺は大丈夫だな。体を鍛えているし、ちょっとやそっとじゃ、腹なんか壊さないぜ!」
と、リオンが横から話に入ってきたが……
「ダメに決まってるだろ。そもそも、二人にダメだと言った以上、この場で見せつけながら飲む様な事はしないぞ」
「流石にそれはないよリオン」
「大人げないやつだな」
俺が断ると、カインとアルバートも同意していた。リオンだけではなく、この二人も白毛野牛の牛乳には興味があった様で、聞き耳を立てていたみたいだ。
「アイナ、アウラ、火入れした牛乳を持ってきてくれ」
エイミィ達だけでなく、アルバート達も牛乳が飲めると聞いて俺の近くで待機し始めた。皆が集まっているのを見たルナが、暴れるメリーを無理やり抱きながら俺のところへとやって来て牛乳が飲めると聞くと、喜びのあまりメリーから片手を離してしまい、メリーは地面に落ちてしまった。
落ちたメリーは地面で何度かバウンドして転がり、リオンの手前で止まった。
「おっ!こいつがテンマの新しい家畜か!意外と綺麗な毛だな!」
足元に転がってきたメリーを撫でようとリオンがしゃがんだ瞬間、悲劇が起きた。
「めっ!」
「うぐっ……あが……」
その悲劇は、『リオンが股を開いて中腰になった事』と『メリーが昨日今日と、無理やり抱き上げらてストレスが溜まっていた事』、そして、『メリーの頭の高さに、リオンの股間があった事』で起きた。つまり、リオンは股間にメリーの頭突きをモロに食らったのだ。
「「「「うわ……」」」」
その場にいた男性陣(俺とティーダとアルバートにカイン)は、目の前で起きた悲劇を目の当たりにして、リオンの心配をするより先に自分の股間をメリーの射線から外す様に移動した。
「めっ!めっ!めっーーーーー!」
メリーはさりげなく離れた俺達を気が付く事なく、更なる追い打ちとしてリオンに体当たりをかましていた。ただ、幸いな事にリオンはうつ伏せの状態で倒れていたので、股間に追撃(前足で蹴られていた)を受けるのだけは免れていた。
「うわっ……股間がヒュンってなった」
「リオンさんを助けないと!」
「大丈夫ですティーダ様!やつは人一倍丈夫ですし、あれ以上頭が悪くなる事はありません。むしろここで不用意に近づいたら、こちら(の股間)が危険です!」
ティーダだけはリオンを助ける為に動こうとしたが、アルバートがリオンを貶しながら近づく事の危険を説き、カインはさりげなく俺の後ろに避難していた。
「め~……めっ!」
メリーはしばらくの間リオンを蹴飛ばし続けたあと、最後に頭を踏みつけて「これで勘弁してやるよ!」みたいな鳴き声を出して去っていった。
「行ったか……」
「リオン、大丈夫かい?」
「え~っと……生きてますか?」
「念の為、ポーションをぶっかけてみるか?」
メリーがリオンから離れたのを確かめてからリオンの状態を確認すると、リオンは息をしていないのではないか?というくらい微動だにしなかった。俺は首で脈があるのを確認して、マジックバッグから古いポーションを取り出して、リオンの頭から股間にかけて中身をふりかけてみた。
「うっ……こ、股間が……」
「潰れたか?」
ポーションの冷たさで意識を取り戻したリオンは、起き上がろうとして股間の痛みを思い出した様だ。そして、俺の言葉を聞いてリオンは慌てて自分の股間を確かめていたが、潰れていなかった様で安心していた。
「安心したらまた痛みが……」
「そらよ」
再度股間を押さえ始めたリオンに残っていた古いポーションを手渡すと、「薬じゃなくて魔法で治してくれ」とか言われたが、リオンの股間なんか触りたくないので即断った。流石のリオンも、渡したポーションをこの場で股間に振りかけるのは戸惑った様で、かける代わりに飲み干していた。
「あ~……効いてきた気がする……」
古いポーションではあったが、マジックバッグに入れていたので劣化はしていなかった様だ。なので、これを古ポーションと名付け、リオンに侘び代わりとしてあるだけ渡した。
「意外と残っているもんだな」
古ポーションは、小瓶(二百ml程の大きさ)で二十本程あり、リオンは受けとった後すぐに、五本程すぐに飲み干した。沢山飲んだからといって回復が早まるわけではないが、病は気からと言うし、飲んだ分だけ回復が早まるとリオンが勘違いすれば、少しは痛みが紛れるかも知れない。
「テンマ様、牛乳とチーズをお持ちしました」
リオンが古ポーションを飲み終わったタイミングで、アイナとアウラが台所からヒロの牛乳と、その牛乳から作ったチーズを持ってきた。このチーズはおじさん達が知り合いに頼んで作ってもらった試作品の第一号の内の一個で、俺の取り分(材料提供者分)としてもらったものだ。あまり熟成させていないが、材料の牛乳の質がいい上にチーズ自体の癖が少なく、現状でもかなり高品質なチーズになっている。
「先生、すっごく美味しいです!」
「保存状態がいいせいか、うちで飲んだものより美味しく感じます」
「ぷふぅ~……おかわり!今度はホットで!」
「こっちも!」
ルナとアムールの遠慮のないリクエストを聞いたアイナは、俺に確認してからおかわりを取りに行った。その時にエイミィとティーダもホットミルクを飲みたそうにしていたが、アイナが確認してきた時に数人分を鍋に入れて持ってくる様に言ったので、皆の分もおかわりはあると言うと二人は喜んでいた。
「チーズはワインが欲しくなるな」
「チーズも美味しいけど、牛乳はこれまで飲んだ事のないレベルだね。さすが白毛野牛」
「……」
三馬鹿の方はエイミィ達とは違い、牛乳とチーズをよく味わって感想を言い合っていた。しかし、感想を言っているのはアルバートとカインの二人だけで、リオンは微妙そうな顔をしながら時折頷くだけだ。それはアイナが持ってきたホットミルクを飲んでも変わらなかった。何故なら……
「腹がたぷたぷで、味がイマイチわからん……」
古ポーションの飲みすぎによる弊害+バーベキューの食べ過ぎで、これまで何度も飲んだり食べたりしてきたいつもの牛乳とチーズと、白毛野牛の牛乳とチーズの違いがわからなかったからだ。
流石にこればかりはどうしようもなく、飲み終わった後でアルバートとカインが牛乳とチーズの購入したいと話を持ちかけてきたが(最も、チーズは量が少ないので即座に断った)、リオンだけは牛乳とチーズの価値がイマイチわからず、後で調子が戻った時に味を確かめる為に牛乳を少量しか購入せず、家に帰ってから後悔したそうだ。
なお、リオンは翌日にうちにやってきて牛乳を買いたいと言っていたが、牛乳の余剰分は前日にアルバートとカインに買い占められて残っていなかった上、新しい牛乳をヒロが出さなかった為(マーサおばさんの見立てでは、数日間は出さないだろうとの事だった)に、リオンは泣く泣く牛乳を諦めて帰っていった。