第10章-4 エイミィ in 乙女ゲーム?
「隣の土地の大部分を芝生にしたいんだけど、やり方って知ってる?」
「わしも芝生の事はよく知らんからのう……屋敷の芝生もアレックスが手配した者が全てやっておったし、放ったらかしにしておっても、いつの間にか綺麗になっておったからな」
土を取りに行った次の日、土地を均等に均し終えた俺は、次の段階に進もうとしてやり方を知らなかった事に気がついた。
一応、前の持ち主が植えた芝生はできる限り回収したが、土地の大部分にとなると量が足りないし、そのまま植えて枯れてしまわないか心配になったのだ。
なので、じいちゃんに聞いてみたのだが、流石のじいちゃんも芝生の植え方は知らなかった。全て王様任せだったらしい。
王城に行って、クライフさんにでも聞いてみるかと思った時、門が開いて団体客が入ってきた。
「ん?マーク達じゃな」
やって来たのはマークおじさんとマーサおばさん達だ。おじさんとおばさん(+ククリ村の人々)はこの屋敷に自由に出入り出来る様になっているので、王都に移り住んだ時から俺が来るまで、じいちゃんの介護(じいちゃんは否定しているが、話を聞くと介護にしか思えなかった)をしてくれていたらしい。
「テンマ、マーリンさん、帰って来たと聞いて寄らせてもらいました」
マーサおばさんはそう言っているが、後ろにいるマークおじさん達を見てみると、ただ寄っただけではないという事がひと目でわかる。何せ、各々食材や酒といったものを抱えているのだ。明らかに宴会をする気満々である。まあ、皆にもお土産があるので、丁度いいタイミングではある。
「ちょど良かった。この土地に芝生を植えたいんだけど、誰か知ってる?」
「俺でよければやってやるぞ」
芝生の事を話すと、すぐに声が上がった。昔ククリ村でヤギを育てていたおじさんで、赤ん坊の時にヤギ乳をいつも分けてくれた人だ。確かククリ村の広場なんかに、花などをよく植えていた気がする。ちなみにシロウマルもヤギ乳で育った為、今でもヤギを見ると尻尾を振っていたりする。
そのままおじさんは土を摘んで調べ始めたが、すぐにダメ出しをくらった。何でも、今の土だと粘土質の為水はけが悪く、種を蒔いても根腐れする可能性があるらしい。これを防ぐ為には、砂を混ぜるなどして水はけをよくする必要があるとのことだ。それと今の様に平にするのではなく、ほんの少しだけ傾斜をつけて水たまりが出来ない様にした方がいいらしい。
種はおじさんの知り合いで取り扱っているそうなのでお願いする事にした。今蒔けば、ギリギリ雪が降る前に根付くらしい。ただ、ある程度根付くまではジュウベエ達を放してはいけないとの事だった。傾斜自体は一時間もあれば作る事は可能だが、砂はおじさんの知り合いに頼んだとしても、この土地に使う量を揃えるのに時間がかかるそうで、自分で調達した方が早いと言われた。
「じゃあ、中央辺りを丘の様にしてみようか。そっちの方が運動量が増えるだろうし」
丘と言っても、一mもないくらい高さにする予定だ。そちらの方が水の流れがよくなるだろうし、見て分かるくらいの傾斜の方が作りやすい。
それから簡単な見取り図を地面に書いて皆に見せたところ、何故かマーサおばさんを始めとしたククリ村の女性陣の反応が良かった。その事を聞くと、どうやら新しい土地の四分の一近くを畑にすると計画したのが原因らしい。
そもそもククリ村では自給自足が基本だったので、少量ではあるが各家々の家庭菜園で作物を作っていたのだ。それが王都に移り住んでからは土に触れる機会が極端に少なくなった為、小さな鉢に花を植えるくらいしか出来ずにストレスが溜まっていたのが、今回の計画で一気に解消されそうだと事だった。
俺としても主に畑に植えるのは唐辛子や胡椒の様な調味料になるもので、他は適当に季節のものを育てるくらいしか考えていなかったので、それらの面倒を見てくれる事を条件に貸し出す事を了承した。
了解を得たマーサおばさん達は、おじさん達を畑予定地に引っ張っていき、すぐにでも畑として使える様に耕させ始めた。おじさん達は面倒臭そうな顔をしながらもおばさん達が怖い様で、文句ひとつ言わずに大人しく命令に従っていた。そんなおじさん達に巻き込まれない様に、俺とじいちゃんは土に混ぜる砂を作る為に石を魔法で細かく砕いていたのだが、気がついた時にはいつの間にか四分の一の予定だった畑が、土地面積の三分の一にまで大きくなっていた。その事をマーサおばさんに問い質すと、各自がそれぞれ自由に使える最低限の広さを計算したところ、四分の一では手狭だったから……だそうだ。
まあ三分の一を畑に使われたとしてもジュウベエ達を放せる広さは十分にあるので、俺もおじさん達と同様に黙って従う事にした……今のおばさん達は、絶対に逆らってはいけない雰囲気を醸し出していたからだ。
畑の方はおじさん達に丸投げし、俺とじいちゃんは土の作り直しに取り掛かった。作り直しと言っても、今敷き詰めている土をゴーレム達に集めさせて、先程作った砂と腐葉土を混ぜるだけだ。特に砂を多めに混ぜる事で排水性が向上するので、全体の半分近くを砂に変えた。そのせいで余った土は、一旦マジックバッグに保存し、隙を見て森か草原に捨てに行く事にする。
以前の土を取り除いてから新しい土を入れるまで二時間程かかったが、ゴーレムを多数使用したおかげでほとんど疲れる事はなかった。
畑を作っていたおじさん達も、俺達とほぼ同じくらいの時間で終わっていたが、あちらは俺達と違って全て人力であった為、疲労困憊といった様子だった。最も、作業に従事させられていたおじさん達と違い、ほとんど指示を出していただけのおばさん達はあまり疲れていない様で、これから何を植えようかと相談していた。
「皆様、そろそろ休憩にしませんか?」
作業が一段落したのを見計らい、アイナが濡れた手ぬぐいを持ってやってきた。人数分をきっちりと冷やして持ってくるあたり、妹とのメイド力の差を感じる……まあ、元のスペックが違いすぎるので、当然といえば当然だが。
「比較対象がアレなのが悲しいですが、ありがとうございます」
そしてさらりと俺の思考を読み取るし……そんなに読みやすいのか?俺って?
ちなみにこの疑問だが、後に聞いたところ自分とアウラの間を目線が数度行き来した上に、アウラのところでかわいそうな奴を見る目になったから気づけたのだそうだ。何故メイドにそんな武道の達人の様な技術が備わったのか不思議ではあるが、王族に仕える身としては、大なり小なりこの様な技術が必要とされるのだとか。まあ、ここまで使えるのはアイナとクライフさんの二人というところが、唯一の救いだろう。こんなのがゴロゴロいたら、王城に気軽に行く事なんて出来ないからな。何がバレるかという点で……
遅めの昼食は、皆で食べられる様にバーベキューにしたそうだ。バーベキューと聞くと、肉や野菜を串に刺しただけの様に思えるが、二十に届く人数分を用意するのは手間がかかるし、肉や野菜にも下処理や下味が付けられているので、さすがうちのメイド長(仮)といったところだ……そろそろ(仮)を取ってもらいたいが、流石にアイナをマリア様が手放すとは思えないし、引き抜いたら引き抜いたで俺とアウラの気の休まる時間が減るだろうし、ジャンヌとアウラがアイナに認められる程に成長するまでどれだけかかるか分からない。そう考えたら、片手間でも現状(俺から見たら)完璧にこなしてくれているので、(仮)でも問題はないかな。
そんな事を考えながらバーベキューを楽しんでいると再び門が開き、またも数人の客がやってきた。
「ソ~ロ~モ~ぐふっ!」
やって来たのは、王都では数少ない年下の知り合い三人と、その護衛である近衛隊の副隊長とアイナの上司の執事だ。なお、ソロモンの名前を最後まで言えなかったのは当然ルナで、その理由は走り出した瞬間に、ティーダに後ろ襟を掴まれて首が絞まったからだ。危険な行為だがティーダは慣れている様で、絶妙な力加減でルナを止めていた。
「先生、お邪魔します」
三人組の最後の一人はエイミィだった。その腕には、いーちゃんとしーちゃんが抱かれており、背中にはくーちゃんが張り付いている。二羽は以前見た時よりも成長しおり、抱き抱えるエイミィは少しキツそうだ。しかし、すぐ近くにシロウマルがやってくると、二羽は羽をバタつかせてシロウマルの背中に飛び乗った。くーちゃんはゴルとジルを見つけると、前足を上げながら突撃していった。ゴルとジルも前足を上げて歓迎している様だった。
「久しぶり、エイミィ。それとこれ、南部のお土産ね」
軽くなった腕をほぐしていたエイミィに、サナさんに頼んだハンカチの柄を見せながら渡し、このハンカチの意味を教える。意味を知ったエイミィは困惑していたが、少しして綺麗に折りたたんでポケットに入れた。
「他にも、いーちゃんとしーちゃんにもお土産があるぞ」
名前を呼ばれたのを理解したのか、二羽はシロウマルの背中から降りて俺の方へとやってきた。ついでに、お土産という言葉に反応したシロウマルを従えて……
「ほら、森で捕まえてきたミミズだ」
お土産の正体を知ったシロウマルは、とたんに興味をなくしてバーベキューの肉をもらいに行ったが、二羽は喜んでミミズをつつき始めた。まだ畑にミミズを放していないが、いーちゃんとしーちゃんが食べたくらいでは、スラリンの捕まえた量の一割にも届く事はない。
流石にエイミィもミミズくらいでは動じる事はなくなった様で、ミミズを忙しそうに食べる二羽を、微笑ましそうに見ていた……まあ、イモムシのすりおろしに比べたら、ミミズの踊り食いなど苦ではないだろう。鳥の餌やりとしては当たり前の様な光景だし、ただ見ているだけでいいし。
その後は新たに加わった五人も食事に参加し(最も、クライフさんはほとんど給仕に回っていたけど)、いつも以上に賑やかな昼食となった。
「そう言えば先生、学園の授業が簡単すぎる気がするんですけど……」
エイミィが言うには、学園で今習っているところはかなり前にアグリ達に教えてもらったところらしく、はっきり言って拍子抜けなのだそうだ。
「えっ?それはおかしいな……」
「それは多分、テンマ様の勘違いが原因ではないかと思われます」
いつの間にか俺の背後に回っていたクライフさんが、耳元で俺の疑問に答え始めた。突然の事に飛び上がりそうになったが、エイミィの手前という事もあり、なんとかこらえる事が出来た。いつもの事だが、クライフさんは気配を消して俺の背後をとってくるので、心臓に悪い事この上ない。
「どういう事ですか?」
なんとかいつも通りの声で聞き返す事が出来たが、恐らく俺がかなり驚いている事は、この性悪執事にはバレバレだろう。その証拠に、とても満足そうな顔で俺の前に立っている。
「簡単な事です。テンマ様はマリア様にエイミィ様の学力を聞かれた時に、『平均はある』と言われたそうですが、テンマ様が学園を視察なさったのは高等部のみでございます。そして、エイミィ様の学部は中等部……つまりテンマ様は、中等部としての学力を聞かれたマリア様に対し、テンマ様は高等部に当てはめた場合の学力をおっしゃったのです。多少の誤差はあるでしょうが、流石に中等部と高等部では、学力に明らかな差が出ますので」
それを聞いた俺はかなり驚いた。確かに高等部の下位の生徒しか見ていないとはいえ、まさかエイミィの学力がそこまで上だったとは思わなかったのだ。何せ、俺が教えたのは掛け算割り算あたりまでで、それも魔法の片手間に教えたくらいだったからだ。
「おそらくですが、テンマ様が基礎を教え、セイゲンテイマーズの皆様が各自で応用を教えた事で、知らないうちに勉学の内容が中等部レベルを超えて、先へ先へと進んでいたのではありませんか?」
確かにクライフさんのいう事は一理ある。恐らくだが、「ここはもうやった?じゃあ、その先を教えようか」、「これが出来るんだったら、その応用も教えようか?」、「少し難しいかもしれないけど、この問題が出来るならこれもできるよ」……みたいな事がループしたのではないかと思われる。
実は最年長であるアグリは当然として、他のセイゲンテイマーズのメンバーも以外と頭がいいのだ。何せ、自分達で商売や特殊な仕事をしていたりする為、各々が普通とは違った経験を積む上に、困った時のアグリ頼みで自然と知識が身につくのだ。しかも頼られたアグリはただ自分が助けるだけではなく、何故出来ないのかなどを、自分の経験を交えて教えていたりするそうで、ある意味貴族でよくある専属の家庭教師がついている様なものなのだ。もちろんエイミィ自身の才能も当然あるが、そんなテイマーズに勉強を教えられた事で、当然のごとく中等部レベルを超えてしまったのだ。
「まあ、勉強が出来るのはいい事だ。出来て損はない!だから、復習しているつもりで、基礎を学び直せばいいよ」
「そんなものですか?」
「多分、そんなものだ」
最後は自信が無くなってきてしまったが、間違った事は言っていないはずだ……クライフさんとアイナが冷ややかな視線を送っているが、無視して「復習は大事だ」と大切な事なのでもう一度言っておいた。実際、学園での勉強が物足りないだけで、他に問題があるわけではないのだ。
「まあ、勉強の方はそれでいいとして、魔法の方はどうだ?」
「魔法の方が楽しいです!」
学園では色々な魔法が見られるので、見学するだけでも楽しいのだそうだ。それに加え、勉強と違ってやる事が多いので、物足りないという事は今のところないらしい。
「ただ、実践訓練は辛いです……」
「あのですねテンマさん、学園では武器を使った訓練があるのですが、エイミィはそちらの方は評価が低いのです。もちろん、低いといっても経験者と比べてという事ですし、魔法も含めた総合順位なら、間違いなくクラスどころか学年でもトップに入ります!」
ティーダが言いよどんだエイミィに代わって説明してくれたが、どうも実践訓練が辛いだけではない様だ。
「もしかして、クラスの中にエイミィをよく思っていない奴がいるとか?」
「「!」」
「しかもそいつらが、自分の成績は棚に上げて、実践訓練だけが不得意なエイミィの陰口を叩いているとか?」
「「!!」」
「ついでに、エイミィが王族と知り合いなのが気に食わないとか?」
「!!!」
「えっ?」
俺なりに考えられるテンプレを言ってみたが、尽く当たっている様だ……最も、最後の質問はティーダ自身は気が付いていなかったみたいだが、これもまたテンプレだろう。
「まあ、ポッと出の優秀な新入りに嫉妬する気持ちはわからんでもないが、当事者のエイミィとしてはたまったもんじゃないよな……手っ取り早いのはエイミィの実践訓練での強さを上げる事か」
「それなら、ティーダ様が今後エイミィに関わらないというのも……いや、何でもない」
ジャンさんは選択肢の一つとして上げただけだろうが、ティーダにすごい顔で睨まれてすぐに撤回した。
「まあ、選択肢の一つとしてはありです……けど、それは悪手ですね」
俺が選択肢として認めた発言をした瞬間、ティーダの顔が真っ青になったが、悪手だと言ったら元に戻った。
「なんでだ?」
「ティーダがエイミィから離れたら、嫌がらせをしている奴らはティーダがエイミィを見捨てたと思って、次から嫌がらせを強めますよ」
「あ~……確かに」
ジャンさんも、俺の説明を聞いて納得していた。何せそいつら(恐らく女子生徒達)は、ティーダに気があるか将来的に伴侶として権力を欲しているはずなので、水に落ちたエイミィをここぞとばかりに完膚なきまでに潰そうとするはずだからだ……目先のことに囚われ過ぎて、その結果がどうなるかは考えないだろう。それが出来るならそもそも、俺とじいちゃんの関係者であり、ティーダが近くにいるエイミィに嫌がらせはしないはずだからな。
「だから、一番いいのはエイミィ自身が強くなる事で、次は目で見える形でエイミィに嫌がらせをすると損をすると理解させる事かな」
「最初の方はわかるが……二番目はどうやって?」
ジャンさんが不安そうにしているエイミィとティーダの代わりに聞いてくるので、にやりと笑いながら……
「王都にはもう一人、エイミィと間接的ではるけど関わりがあり、なおかつ上位貴族の出身で、使いやすくて、学園で名が知られていて、呼べば超高確率でおまけがついてくる奴がいるんですよ」
エイミィとティーダは誰か分かっていないみたいだが、周りで聞き耳を立てていた皆は「あっ!あいつか!」みたいな顔をしていた。それは……
「三馬鹿の鬼畜担当!」
「カインな。エイミィが鬼畜で覚えたらどうするんだ?」
「大丈夫。いずれバレる!」
自信満々のアムールだった。確かにいずれはバレるだろうが、最初くらいはカインが頼れる奴だと勘違いさせてやろうぜ。カインの為に……
「ちなみに、ちなみにアルバートは没個性で、リオンはヘタレ脳筋。三人揃って三馬鹿!もしくは腐女子のアイドル!」
「は、はぁ……」
アムールの怒涛の説明に、エイミィは困惑顔だった。確かに言い得て妙だが、アルバートに関して言えば、没個性と言うよりは周りに比べて特に目立つものがないだけだと思う……顔はイケメンと言っていいけど、サンガ公爵と似ているせいで目立たないだけ……うん、確かに没個性かもしれない。アイドル発言とリオンに至ってはノーコメントで。
「とにかく、まずはエイミィの地力を上げる。これは主に体力作りに主軸を置いて、技術は二の次だ」
「初歩でも技術を集中的に鍛えた方が早くないか?」
「短期的にはそうかもしれないですけど、元々エイミィはテイマーで魔法使いだから、いーちゃんしーちゃん達との連携スタイルが定まっていない以上、技術より体力アップを先にしておきたいし、素人のエイミィに色々な戦闘技術を教えても、かえって弱くなる可能性が高いと思います」
「まあ、確かにその方が無難か」
ジャンさんの疑問にそう答えると、思い当たる節があるのか納得していた。忘れがちになるが、ジャンさんは近衛隊の副隊長なので新人の面倒などを見る事も多く、その分失敗例も見てきているのだろう。
「で、魔法に関しては、『強化魔法』を中心に鍛えていこうと思う。これを効果的に使えるだけで、強さが数段飛ばしで上がるからな。つまり、長期的には体を鍛える事で強くなり、短期的には強化魔法で嫌がらせをしてくる奴らを黙らせる。ついでに強化魔法を練習する事で、魔力の底上げも狙うという作戦だ。カイン達との顔合わせは、抑止力を見せる感じかな?」
なんだかエイミィが乙女ゲームの主人公の様な立ち位置になりそうだが、エイミィの安全確保も俺の仕事だろう。それに、三馬鹿とはお土産の件で会う必要があるし、エイミィはサモンス侯爵が所属するセイゲンテイマーズの一員なので、いずれ挨拶させようと思っていたのだ。唯一の心配は、エイミィが三人のファンに睨まれないかというところだが、年齢差や俺やサモンス侯爵との関係を知れば、手を出す可能性は低いだろう。なんだかんだであの三人のファンは、お行儀のいいお嬢様が多いからな……腐ってはいるが!
「と言うわけで、早速呼び出してみた」
「「「何がなんだか分からないんだけど!」」」
流石にトリオを組んでいるだけあって、ぴったりと息のあったツッコミだった。
「テンマさん、よくこんなに短時間で三人を探してこられましたね」
ティーダの疑問に対し、俺はある意味人外の執事を指さした。
「なかなか大変でしたが、私の情報網をもってすればお三方を探し出すなど朝飯前でございます……ところでテンマ様、いくら執事相手とはいえ、人を指差すのは感心しませんぞ」
執事の情報網とやらはとても気になるが、聞くと何故か後悔する事になりそうなので無視する。ついでに執事にしてはまともな忠告も、何か裏がありそうなので無視をした。
「テンマ、頼むから私達の事は無視しないでくれ」
そのまま忘れ去られそうな事を察知したのか、アルバートが本気の声と顔で懇願していた。