第8章-8 エビ祭り
本日(四月十日)、書籍版「異世界転生の冒険者」が発売されます。
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どうかよろしくお願いします。
追記・四月十二日に、書籍版「異世界転生の冒険者」の重版が決定しました。
「さて、湖についたわけだが……シロウマル、ソロモン、悪いが今日はお前達の出番は無いぞ」
湖についてすぐにウォーミングアップを始めた二匹は、俺の言葉を聞いて固まった。昨日さんざん暴れたソロモンはともかく、シロウマルはバッグで留守番していたので可愛そうだと思うが、今日は湖の底を調べるつもりなので、二匹には出番がないのだ。
落ち込みながらバッグへと戻ろうとする二匹は、名前の呼ばれなかったスラリンが俺の横でじっとしているのに気がついて不思議そうな顔をした。
「スラリンは、場合によっては手伝ってもらうから、そのつもりで頼むな」
それを聞いたスラリンは、わかったとでも言うかの様に体を大きく弾ませた。その様子を見て、抗議の声を上げるシロウマルとソロモン。あまりにもうるさかったので、結局湖の底には連れて行かないが、この階層を出ない限りは自由に過ごして良いという事で二匹は落ち着いた。
「よし、始めるか……まずは普通に、っと」
昨日思いついた方法は、いつも野営の時などにやっている方法で、自分の周りに結界を張って水に潜るというものだ。これが上手くいけば、水に入っても結界内に水が浸入する事はないはずだ。問題は酸素だが、そこは定期的に陸に上がればいいだけの事だ。少し面倒だが、陸上の生き物が水の中で過ごそうと思ったら仕方がない事だ。
で、試してみた結果……
「無理か……場所を固定したのは当然としても、自分を中心に張ったものまでダメだとは思わなかった……」
防御する時の様に、ただ出しただけのものは動かす事が出来ず、自分を中心に張ったものは移動する事は出来るが、地面に岩の様な障害があったり地面が盛り上がっていた場合、その場所に結界の端が引っかかって進まなくなってしまった。そこで少し工夫して、頭上に結界を張り、傘をさす様な形でやってみた。傘型の結界は、先にやった二つの方法よりも移動に優れていたが、移動するたびに足元に水が入ってくるので、常に足が水に浸かっている状態だった。それに進路上に大きな岩などがあった場合、その岩をいちいち乗り越えていかないといけないので、面倒ではあった。まあ、三つの方法の中では一番使いやすいので、これが第一候補ではあるが……不満は残ったままだ。
「まあ、二~三日程度しか使わないだろうから、そこまで凝る必要もないかな。少し休憩にするか」
一応結界の目処はたったので、一息つこうと火をおこしお湯を沸かす事にした。沸いたお湯をコップに移し口に近づけたが、お湯は思った以上に熱くなっており、何度か息を吹きかけて冷まさないと飲めない温度だった。
何となくぼーっとしながらお湯に息を吹きかけているうちに、ふと閃くものがあった。
「そういえば、風魔法の結界って、これまで使った事がなかったな」
魔法として使う以上結界にも属性があり、普段俺が使っているのは無属性か土魔法の結界だったので、他の属性の結界をすっかり忘れてしまっていた。結界には属性ごとに特徴があり、無属性なら透明な壁を作り出し、土魔法なら土や岩で出来た壁を作り出したりする事ができる。
他にも光属性の結界なら、自分の姿を見えなくする、もしくは見えにくくするといった効果がある。ちなみに光属性の結界は、ジャンヌ達がダンジョンで身を隠す為に使っていたものだが、あの時は魔道具の補助があったので張る事が出来ていた為、今の二人は使う事ができない。
風魔法の結界は防御力があまりない代わりに、自分の臭いを周囲に漏らさないようにコントロールする事ができる……というのが最大の特徴である為、結界の中では一番地味なものと言われている。なので、普通の冒険者で使う者はあまりいない。ただ、森を活動の中心とする者や、エルフといった森に住む者達が好んで使う為、全く見かけないというわけではない。
俺の場合、子供の頃から大老の森で活動していたが、自身の気配を消す事が出来る上に、臭いが届かない位置から魔法で獲物を倒す事が出来ていた為、覚える必要を感じなかったのだ。
「まあ、風魔法の結界は無属性の結界と大して違いはないから、何度か練習すれば出来るだろう」
全ての結界は、使う魔力の種類が違うだけで、発動行程にほとんど違いはない。なので思った通り、数回の練習で風魔法の結界を思った通りの形で使う事が出来る様になった。一応腰辺りまで深さの場所で確かめてみたが、風魔法の結界は思った通りの効力を発揮し、俺の服を濡らす事はなかった……ただ、流石に足元のぬかるみまではどうにもならず、靴が泥で汚れてしまった。
陸地に戻ってからバッグを探ってみると、だいぶ前に買った長靴が見つかったので履き替えてから、再度湖に入ってミスリル探しを始めた。足や腰までは良かったが、胸や頭の高さまで水が来るとドーム状の結界を貼っているとは言え、少し怖かった。十分くらいはギリギリ顔の下辺りまでの深さで足元を探り、少し慣れたところで結界が完全に水に沈む深さまで移動した。結界は俺を中心に半径三m程の大きさで、岩などの障害物に当たると、障害物を飲み込む様に結界の形を変えていった。
「まるで、泡の中にいるみたいだな」
しばらくは当初の目的を忘れて、水中散歩を楽しんだ。水棲の魔物が沢山いるので、俺を見つけた魔物が襲いかかってくると思っていたら、予想に反して全然寄って来なかった。時々近づいてくるのはいたが、結界の横を素通りするか、結界にぶつかって、驚いた様子で反転して逃げていった。
「案外、目が悪いのかもしれないな。もしくは、光の屈折なんかで俺が見えていないのかも」
油断は大敵だが、これなら周りを特に警戒する必要はないかも知れない。そう思ったのも束の間、俺は足元に隠れていたアングラーキャットを踏んづけて転んでしまった。どうやら、底でじっとしている事が多いアングラーキャットは、結界に触れても逃げる事はせずに、じっと隠れたまま結界の中に入ってきてしまった様だ。
俺も慌てたが、急に踏まれたアングラーキャットの方が驚いた様で、結界内で暴れて逃げ出そうとしたが、バッグから飛び出したスラリンに捕まり、止めを刺されていた。ちなみにアングラーキャットの死因は、スラリンが食事の時に使っているフォークによる一撃を脳天に受けた事だった。
「こういった事もあるのか。足元には充分気をつけろって事か」
スラリンが倒したアングラーキャットをバッグに入れながら、俺は独り言を呟いた。スラリンは俺の言葉を聞いて、気をつけろとでも言うかの様に、触手を伸ばして俺の足を啄いていた。
気を引き締め直してから、俺は当初の予定通り周囲を調べ始めた。
よく観察しながら足元や岩陰を探すと、浅瀬よりも多くの武具や防具が見つかった。ただ、それと同じくらい、人のものと思われる骨も発見された。
「多分、湖に落ちたんだろうな。魔物によって深場まで運ばれてから、食われたんだろうな」
俺は軽く手を合わせてから、散乱していた武具や防具を拾って回った。骨は全て拾うのは無理があるのでそのまま放っていく事にするが、もし拾得物に名前などが刻んであるのなら、ギルドに報告する事も考えなければならない。まあ、その拾得品をどうするかはギルドとの相談になると思うが、その様な遺物でも、ダンジョン内で拾った物は、基本的に拾った者の所有物となるので、よほどの事がない限りは没収される事はないだろう。
そんな感じで回収を続けていくと、三時間程で百kg近い装備品を拾う事ができた。その中にはマジックバッグなどもいくつかあったので、中身によってはかなりの儲けが期待できるだろう。しかも、今回調べたのは、湖全体の五分の一くらいの広さだったので、まだまだお宝は眠っている事だろう。
一応今回のダンジョン探索の期限は七日としているので、残りは三日と半日程だ。この調子だったら、期限以内には湖の底を全て見て回れると思う。ただ、見て回るだけになるだろうが……その時は、一度地上に戻ってから、再度ここに来ればいいだろう。流石にもう一度じいちゃんに怒られるのは嫌なので、黙ってダンジョン生活を延長する気はない。
「さて、始めるか」
陸に戻った俺はお湯を沸かし、休憩がてら拾得物の仕分けを行う事にした。シロウマルとソロモンは、俺が湖の底にいる間に、かなりの数の魔物を狩っていた。なので、何匹か適当に捌いて串刺しにし、別の竈で焼いてやる事にした。今は竈の周りでヨダレを垂らして待っている状態だ。一応火の管理はスラリンがしているので、焼けたら適当に食べさせるだろう。
湖の底で得た拾得物の内、ミスリル製のものは二十kg程あり、その他は魔鉄と鉄製のものばかりだった。ミスリルのものが多かった理由としては、ミスリル製の防具がフル装備で何点か見つかったからだ。恐らく、ランクの高い冒険者か、金持ちのものだろう。被害者としては無念だろうが、俺としてはありがたい事だ。
そして気になるバッグは、マジックバッグが二個とディメンションバッグが一個だ。共に状態は悪いが、壊れているわけではなさそうなので、問題なく開ける事が出来る様だ。
「一つ目は……主に薬と食料か。あまり上等な物は無いみたいだな。二つ目は……あまり変わらないな」
マジックバッグから開けてみたが、一つ目は大した事がなかった。二つ目も大体同じ様な物しか入ってなく、バッグの方がよほど価値があった。ちなみに、バッグの品質はあまり高くはなく、三十~五十kgくらいまでしか入らなさそうだ。
「そしてディメンションの方だけど……まじか!」
ディメンションバッグは、中が三m四方くらいの大きさのもので、これといった特徴のない肩がけの物だったが、その中にはミスリルのインゴットなどが入っていた。他にも、金のインゴットや銀のインゴット、魔鉄のインゴットなどがあった。バッグに特徴がないのは、中に高価な物が入っている事を悟られないための偽装だったのかもしれない。
「もしかしたら、盗んだ物かもしれないけど……俺には関係ないか」
ただの冒険者がこれだけのインゴットを持っていたというのは考えにくいので、もしかしたら商人のものかも知れないとも考えたが、最終的には商人がこんな所に来るわけが無いと思い、これらは盗まれた物だと思う事にした……まあ、ギルドでバッグの捜索依頼などは張り出されていなかったので、このまま俺の物にしても問題はないはずだ。
「マジックバッグは、売りに出したらそれなりの値段が付きそうだな」
これまで、マジックバッグを売ったり買ったりした事がないので、どのくらいの値段が付くか分からないが、低級の物とは言え、マジックバッグには違いないので、それなりの需要があるだろう。
「でも、別に金はいらないからなぁ……エイミィにでもあげるか」
いーちゃんしーちゃんの餌を保存するのに丁度いい思うので、多分喜んでくれるだろう……かなり汚れているけど……ゴミを押し付けられたとは、思わないよな?
そんな不安を感じたので、俺は魔法で出した水でバッグの泥を落とし、軽くもみ洗いをした。
幾分綺麗になった三つのバッグは、麻の袋に一まとめにしてからバッグに入れた。暇な時に細かな修繕を行うつもりだが今は後回しだ。
「スラリン、もう少し休憩したら、もう一度行ってみるぞ」
スラリンは、俺の言葉に対して体を弾ませて了承の意を示している。地上では、そろそろ日も暮れようかという時間帯のはずなので、食事の時間と休憩の時間を考えると、あまり長い時間湖の底を調べる事は出来ないだろうが、だからといって行かないのはもったいない。なので、今日調べた所を調べなおす感じで行く事にした。
「こうやって改めて見ると、結構小魚もいるんだな」
これまでは、アングラーキャットやワニモドキの様な魔物にばかり目が行っていたが、岩の隙間や裏などを覗いてみると、かなりの数の小魚などがいた。まあ、大型の魚(魔物)が生息しているという事は、その餌になる生き物がいるというのは当たり前の事ではあるが、ダンジョンという常識の通用しなさそうな空間だったので、実際に見るまでは思いつかなかった。
「エビも多いな……おっと!」
足元には、小さなエビが泥の中で動いていた。その中には、時折大型のエビもいたので、急遽目的を変更して、食事用にエビの捕獲を開始した。
見つかるエビは二種類で、一種は沼エビの様なエビで、大きさは三~五cm程。もう一種は、手長エビの様なエビで、ハサミを除いた大きさが十~二十cm程だ。ハサミは大体、体の半分くらいの長さがあった。
「泥が気になるけど、焼きや揚げ物で食べたら美味しそうだな」
俺は捕まえたエビを別の袋に入れながら、どの料理しようかと考えていた。見た目は普通のエビと何ら変わりがないので、味も期待ができるだろう。
捕獲開始からおよそ二時間で集まったエビは、沼エビがおよそ三百匹で五百g程、手長エビがおよそ百匹で十kgに届かないくらいだ。手長エビが思った以上に大量だったが、大きさが五十~二百gとまちまちなので、料理する時は大きさ別に分けないといけない。
エビは陸に戻ってから、真水を入れた桶で泥抜きをさせた。最低でも半日は泥抜きさせたいので、エビは明日の晩にでも調理する事にし、今日はパンなどで簡単に済ませる事にした。シロウマルとソロモンからは不評だったが、昨日の残りの焼き魚を出すと大人しくなった。
「やっぱり、浅場よりも効率がいいな。今日も大量だ」
次の日、起きて支度を済ませた俺は、今日も湖の底でミスリルを探している。今日は俺一人で潜っており、スラリンは陸地でシロウマル達の監督をしている。そうしないと、二匹で魔物の乱獲を行いそうだからだ。
スラリンがいない分だけ、周りの気配に気を付けなければならないが、一応防具はちゃんと装備しているので、よほどの事がない限りは大怪我をする事はない。
「エビも大量だけど、ここらへんで止めておかないと、シロウマル達の事は言えないな」
昨日と同じように、足元の泥の中ではエビが動き回っており、ザルで泥を濾す様に捕獲すると、ザルの中で元気よく飛び跳ねていた。昨日のエビもまだ食べていないのに、まだ捕る必要があるのかと言われそうだが、エビ天やエビのかき揚げを想像していたら、自然とエビに手が伸びていたのだ。
「よし!ミスリル探しに集中しよう!」
エビを忘れる為に、わざと声に出して気合をいれてミスリル探しを開始したが、大きなエビを発見するたびに手が伸びてしまうのは仕方がない事だろう。
その後、集中力が切れるまでミスリル(とエビ)を探し続けた結果、昨日を上回る量の拾得物を得た(エビも同様に昨日の量を上回っていた)。
「百五十kgの内、ミスリルは二十kgか……昨日が良すぎたから、少なく感じてしまうな」
本来、ミスリル二十kgというのは、普通の人にとってはひと財産と言える程の価値があるのだが、別に俺は金には困っていないし、そもそも手持ちの全てを合わせても目標の半分にも届いていないので、これだけかという思いの方が先に来てしまうのだ……ジン達に聞かれたら、思いっきり突っ込まれそうだな。
「まあ、そこまで焦る必要はないか。それよりも、今はエビだな」
俺は拾得物の仕分けを一旦止め、桶に手を突っ込んで手長エビを掴み上げた。手長エビはハサミで俺を攻撃してくるが、挟む力はあまりないのでほとんど痛みは感じない。
「まずはオーソドックスに焼いてみるか」
エビに軽く塩を振り、串に刺して火に近づけると、見る見るうちにエビは赤く変化していき、次第にいい匂いが漂ってきた。それに伴い、シロウマルとソロモンのよだれの量も増えてくる。
「そろそろいいかな。殻はあまり硬くない様だから、そのまま食べられるかな」
寄生虫などがいたら嫌なので、十分に火を通してから、俺は手長エビに齧り付いた。手長エビの殻は思った通り問題なく噛み砕く事ができ、焼かれた事で香ばしさが出ていたが、その反面舌触りが悪く、好みが分かれると思う。まあ、うちの食いしん坊達には関係のない事だったが。
手長エビの味に問題のない事がわかった俺は、思わずガッツポーズをしていた。前世ではエビは好物の一つだったので、再び味わう事が出来るのが嬉しかったからだ。ちなみに沼エビの方も焼いてみたが、こちらは手長エビよりも味が薄かった。ただ小さくて殻が薄い分、丸ごと食べても手長エビの様に気になる事はなかった。
「次は、いよいよ天ぷらだ」
エビ料理と言ったら、俺の中ではこれだ!というのがエビ天だ。エビフライも捨てがたいが、あれはなかなか手間がかかるので、今回は挑戦しない。その代わりに、沼エビを使ったかき揚げを作るつもりだ。殻の薄い沼エビなら、かき揚げに向いているだろう。
今回の天ぷらの衣には、卵なしで薄力粉と米粉を混ぜたもの使用する。油は植物油だ。
油を鍋になみなみと注いで火にかけ、手長エビの殻を剥いて下処理をしていく。もちろん尻尾の先を切る事を忘れない。衣作りには冷水を使い、大雑把に混ぜて出来上がりだ。
手長エビと衣の準備が終わったところで、タイミングよく油が熱くなったので、衣をつけた手長エビを投入した。
「ああ、いい音だ」
ジュウジュウという音と匂いに引き寄せられたシロウマルとソロモンも、今か今かと天ぷらが揚がるのを待っていた。
「そろそろかな?」
俺は衣がうっすらと狐色になったタイミングで、鍋からエビを引き上げた。引き上げた直後の天ぷらは、まだ油が衣でジュワジュワと音を立てていたので、投入した十匹のエビを全て引き上げ、少し表面が冷めるのを待ってから口に入れた。
「うまっ!」
天ぷらは思っていた以上に美味かった。エビには泥臭さはなく甘味があり、そしてプリプリとした歯ごたえがたまらなかった。何よりも、揚げたてというのが旨みを倍増させている様に思えた。
「ク~ン」
「キュ~」
俺がエビ天の味に感動していると、すぐ隣から鳴き声が聞こえてきた。ハッとなって横を向くと、これでもかというくらいヨダレを垂らした二匹の顔が、すぐ目の前にあった。
取り敢えず揚げたエビの中から、大きめのエビ天を口の前に持って行ってやると、二匹ともすごい勢いで噛み付いてきた。幸い、尻尾の方を持っていたので噛まれる事はなかったが、かなり焦ってしまった。
二匹目のエビ天は塩をつけて食べたが、やはり美味かった。こうなると天つゆが欲しいところだが、材料が揃っていないので諦めるしかなかった。
天ぷらはスラリンも気に入った様で、三匹にエビ天を食べさせている間にかき揚げに挑戦した。かき揚げに使うのは沼エビのみで、その沼エビも軽く表面を洗うくらいの処理しかせずに、ボウルに数十匹をまとめていれて、エビ天を揚げた時に残った衣を使った。
「お玉がないから、手でいいか」
手づかみでかき揚げのタネを油の中に投入し、箸で平たい形に整えたら、時折ひっくり返しながら全体が狐色になれば完成だ。
「うどんに乗せたり、タレをつけてご飯に乗せて食べたいな~」
かき揚げは殻ごと揚げたので、香ばしくて美味しかった。もちろん三匹にも好評だ。
せっかくなのでエビ天とかき揚げの量産に乗り出し、数時間後には二百を超えるエビ天と、百を超えるかき揚げを作った。
そのうちの半分近くはすぐに消費したが、残りは半分程天むすにして明日からのおやつ兼食事に、半分はじいちゃん達のお土産にする事にして、マジックバッグに保存した。マジックバッグがあれば、揚げたて作りたてが食べられるので非常に助かる。ちなみに、今日捕獲したエビは、泥抜きが足りないかと思ったが、そんな事はなかった。
「明日からも、ミスリル探しとエビの捕獲を頑張らないとな」
ここまでエビが美味しいのならばと、俺の中でミスリル探しと同じくらいまで重要度が上がったエビの捕獲の為に、近くに落ちている石を大量に拾い集め、湖の中で山になる様に投入した。これで上手くいけば、石の山が住処の様になるかもしれない。
「明日の後半に見てみるのがいいかもしれないな」
今度来る時には、カニかごの様な物を用意しようと思いながら、昨日休憩した場所へと戻る俺達だった。