第8章-2 セイゲン到着
「なんか、すごい久々に帰ってきた気がする……」
ユニコーンとの遭遇から一日と半日、俺達はセイゲンの街に着く事が出来た。あの遭遇以降、強力な魔物を見る事は無く、逆に余裕がありすぎて暇を持て余していたくらいだった。その為、ちょくちょくと寄り道をして、気分転換がてら、薬草などの採集をしていたのだ。そういったわけで、今の俺達は薬草の行商人が出来るくらいには、様々な薬草を確保している。
「でも、この様子だと時間がかかりそうだな」
ジンが、目の前に並ぶ列を見てボヤいた。本来ならCランク以上の冒険者は、専用の入口から入る事が出来るのだが、なんと俺達の中でその特権から外れている者が二人もいた。
「申し訳ない……」
「すまぬ、うっかりしておった」
謝ったのは、アムールとじいちゃんだ。じいちゃんはかなりの間、冒険者として活動していなかった為、ギルドランクが停止しており、手続きを終えるまでは一般人と変わらない状態で、アムールに至っては、そもそもギルドに本登録出来る年齢ではなかった(現在十四歳)。
その為、大人しく列の最後尾に並んでいるのだ。『暁の剣』は、せっかくここまで一緒に来たのだからと、わざわざ俺達に付き合ってくれているのだ。
「責めてるわけじゃないんで、頭を上げてください!」
「うわ……マーリン様に頭を下げさせたよ、こいつ……」
「私達もここまでかね……」
「テンマさん!どうか取りなしてください!私とメナスさんとガラットさんは関係ないって。悪いのはジンさんだけだと!」
「うぉいっ!」
ジンは慌ててじいちゃんに言うが、その後ろで他の三人がからかっている。三人の裏切りに対し、たまらずジンは抗議の声を上げる。そんな四人を見てじいちゃんが笑いだし、続いてブランカとアムールも笑っていた。
「そろそろ巫山戯るのは止めておけよ。周りが見てるぞ」
俺の声に反応する様に、周りでこちらを見ていた人達は一斉に顔を逸らした。流石にジン達も、これ以上注目されるのは嫌らしく、素直に大人良くなった。
皆が静かになったところで、採集した薬草を使ったお茶を用意する事にした。お茶といっても、数種類の乾燥させた薬草を軽く炙って煮出しただけの簡単なものだ。
「よっと……お茶菓子が無いのがさみしいけれど、何も無いよりいいだろ。鎮静効果もあるから、今のジンには丁度いいぞ」
コップに入れたお茶を手渡していき、皆で飲みながら一息入れた。それから待つ事およそ一時間、無事に俺達はセイゲンの街へと足を踏み入れた。
皆で揃ってギルドまで行ったのだが、何故か前から来る人達が不自然に進路上から外れていく。そして、道を譲るのは大体二種類いる。一つは、珍しいものを見る様な視線を向けてくる人。もう一つは、なんかやばいものを見つけた様な感じで、目を逸らしながら避けていく人だ。ちなみに、前者は一般人が多く、後者は同業者の様な格好をしている者が多かった。
ギルドまで着くと、ジン達はまず馬車の返却手続きに行った。ジン達の馬車は王都のギルドで借りたものだが、セイゲンのギルドに返しても問題はないのだ。これは、セイゲンと王都を行ったり来たりする冒険者が多い為、こういった制度が設けられているのである。なお、一方に馬車が偏りすぎた場合、ギルドからの依頼として張り出される事もあり、かなり割のいい仕事として人気がある。ただし、ギルドからの信頼度が一定以上あり、同時にそれなりの強さと経験が求められる為、依頼を受けられる冒険者は限られている。
「俺達は薬草を売ってくるよ」
俺とブランカとアムールは、冒険者復帰の手続きをするじいちゃんと別れ、ギルドの買取カウンターへと向かった。
薬草は俺とじいちゃん、暁の剣、ブランカとアムールの三等分にする予定で、俺達の取り分は効果の高い薬草をもらう事になっている。ただし、効果の高い薬草は価値も高いので、それぞれの売値を確認した上で、俺達の取り分と他の二組の取り分のバランスを取らなければならない。
「こちらが買取結果になります。それぞれの買取価格はこちらです」
薬草の合計売値はおよそ三万Gで、その内効果の高い薬草は二万G程だった。
「ありがとうございます。少し皆と話し合った上で、どれだけ売るかを決めたいと思います」
取り敢えず一度話し合う事にして、俺達は買取カウンターを離れた。
「こっちは終わったぞ。昔のランクのまま、特にペナルティなどなく復帰になるそうじゃ。どうやらアレックスが動いたようじゃのう。普通は初めからの筈じゃからな」
「こっちも終わったぞ。それでテンマ、どんだけの値が付いたんだ?」
いいタイミングで、じいちゃんと『暁の剣』が同時に俺達の所へとやってきた。すぐに買取価格の話をすると、近くにあった椅子や机を持って来て、どうするかの話し合いが始まった……が、五分もせずに結論が出た。
「じゃあ、普通のやつを全部売って、その金額に俺が三万Gを加えて、ジン達とブランカ達に渡すでいいな」
よくよく考えたら、今の俺はそこらの貴族よりも金持ちだったのを思い出したので、皆に提案するとすぐに了解が得られた。
俺の取り分とした薬草は、市場では二万G以上の価値があるし、これで薬でも作って売れば、儲けは三万Gを軽く超えるだろう。なので、ジン達に三万G出したとしても、決して損はしないはずだ。
話が纏まったので、買取りカウンターで売却手続きを終えると、その場で解散する事となった。
「じゃあな、機会があったら、また一緒に依頼受けようぜ!」
「その時は、もうドラゴンは引き寄せるなよ!」
「次は、私達もちゃんと誘うんだよ」
「またお菓子作ってくださいね~!」
『暁の剣』は、そう言って自分達が確保している宿へと戻っていった。普通の冒険者なら、長期間宿屋を確保するのは難しいが、彼らの様に稼ぎと信頼があると、そう難しい事でもないそうだ。
「おう、またな!」
「色々と世話になったの、今度一緒に酒でも飲もうの」
と別れたのだが、問題はブランカ達だった。
「まさか、宿屋に空きがないとは……」
「ほんと計算外」
ジン達と別れてから一緒に宿屋を回ってみたが、どこもかしこも空きがなかった。その理由は、王都での武闘大会が終わった事に起因しているそうだ。
大会が終わり、参加したがいいところなく終わった者や、賭けで負けてすっからかんになった者、オークションで金を使いすぎた者などが、王都からわりと近く、街中にダンジョンがあるセイゲンへと流れ込んだのだ。
そのせいで、元から空きの少なかったセイゲンの宿屋を全て埋めてしまったのだ。しかも、入りきらなかった冒険者達の中には、広場やダンジョンの中で寝泊りする者まで現れたそうだ。
街の人によると、毎年大会の後でセイゲンを訪れる者は多かったが、ここまで多いのは初めてだそうだ。宿屋を営む者や冒険者を相手にする商売をしている者にとっては喜ばしい事だが、それ以外の人々にとっては災難の方が多いらしい。なにせ、冒険者の中には、力(金)があれば何をしてもいい、もしくは許されるといった、犯罪者に近い思想の者もおり、その被害に遭うのは主に力のない者や立場の弱い者だ。
その為か、俺達を睨みつける様な目で見ている人もいた。
「ここまでないとなると、どこも全滅だろうな。仕方がない、俺が確保している所に行ってみよう。最悪、空いてなくても、俺の部屋に寝泊り出来る様に交渉してみるからさ」
「すまん、恩に着る」
「同棲っ!同棲っ!ぐぅ……」
ブランカは俺に頭を下げながら、隣ではしゃぐアムールの頭を押さえつけた。押さえつけられたアムールは、その弾みで舌を噛んだ様で、涙目で口を押さえていた。
アムールの口に回復魔法をかけてやると、近づいた瞬間に唇を奪われそうになったが、ブランカが捕まえてくれていたので、俺の唇は守られた。
「もうすぐ見えてくるか「いねぇんだから、俺が借りてやると言ってるんだろうが!」ら?」
もう少しでアパートに着くという所で、アパートの方角から怒鳴り声が聞こえてきた。嫌な予感を覚えながら急いで行ってみると、敷地の入口でアリエさんとカリナさんが男達に詰め寄られていた。
「だから、あの部屋の借主からは、前払いを貰っていると言っているだろう。つまり住人がいると言う事さ!わかったら他所へ行きなさい!」
「このクソババァが!」
男の一人が、あろう事か腰に下げた剣に手を掛けようとした。
「シロウマル、二人を守れ!」
俺はバッグの口を広げながらシロウマルに指示を出すと同時に、訓練用の棒を取り出して走り出した。
「グルルルルゥ」
「ひっ!」
「はい、そこまで。ここからは、借主の俺が話を聞こう」
元の大きさに戻っているシロウマルが、二人と男達の間に入り込み威嚇し、その隙に俺は怯んだ男達の後ろへと回り込んだ。ちなみに手に持った棒の先は、剣に手を掛けようとした男の首に突き付けている。
「て、てめぇ、街中でこんな事してただで済むと思うなよ!」
「何勘違いしてるんだ?俺は、善良な街の人を、悪漢から助けただけだぞ。もし憲兵に突き出したいのなら、一回やってみるといい。どういう結果出るか、楽しみだよなぁ」
ふざけた事を口にする男に対し、俺は出来るだけ低くて怖そうに聞こえる様な声を出して警告した。
「今回は見逃してやる。だが、またこんなふざけた事をするのならば……五体満足でこの街から出れると思うなよ」
俺の言葉が終わると同時に、ブランカがすごい形相で近づいてきた。男達は俺の言葉の後でブランカを見たせいか、震えながらその場を去っていった。
「あいつら、俺よりもブランカに殺されると思ったみたいだぞ」
「だとしたら失礼な奴らだ。俺ほど優しい男はいないと言うのに」
「ブランカ、自分の顔見た事ある?鏡あるよ、今見る?」
ブランカの軽口に、辛辣なツッコミを入れるアムール。ブランカの額がヒクヒクしている様に見えるが、自分の発言が原因だと分かっているみたいで、アムールに拳骨が落ちる事はなかった。ちなみに、近づいてきた時の形相は、空気を読んで作ったものだ。決してブランカの通常の顔は、泣く子がさらに泣き叫んでお漏らししてしまう様な顔ではない。
「テンマさん、お帰りなさい。そして、帰ってきて早々に申し訳ありませんね。そちらの方もありがとうございます」
「いえ、アリエさんとカリナさんが無事でよかったです。それとただ今帰りました。こっちが俺のじいちゃんで、こっちの二人が王都で知り合った冒険者です」
「マーリンといいます。孫がお世話になった様で」
じいちゃんが挨拶をすると、アリエさんが驚いていた。
「俺はブランカ。虎の獣人で王都の大会でテンマと知り合い、ここまで同行した」
「アムール。大会で大切なものをテンマに盗まれて、今恋人をやっている!」
「「えっ!」」
アムールの暴走に、アリエさんとカリナさんはとても驚いた顔をしている。そして俺の顔を揃って見たが、俺は首を振って否定した。
「むっ」
俺の態度にアムールは不満がある様だが、ここはきっちりと否定しておかないと、王都から厄介な人達が飛んできそうなので曖昧には出来ない。
「それで、さっきの様な奴らは最近多いんですか?」
「多いですね。知り合いの宿屋も話していましたが、我が物顔で振舞って、周りに迷惑を振りまく冒険者がいつもより多いです。しかも、昔からセイゲンで活動している冒険者とも諍いを起こしていると聞きます」
「治安もかなり悪くなっていますね。憲兵も巡回を増やしている様ですが、追いついていない状況です。夜間の外出はもちろんですが、昼間でも人気のない所に近づくのは危ないですね」
アリエさんとカリナさんは、同業者の話や最近の街の様子などを教えてくれた。
「あ~……もしかしたら、馬鹿共が増えたのには、俺も無関係じゃないかもしれないです」
俺は薄々感じていた可能性を、二人に話した。
王都の大会で個人戦とチーム戦で優勝し、大波乱を起こした事や、王都の犯罪者の取り締まりに協力した事により、賭けで大損した奴や、王都で悪事を働こうとしていた奴が、次の活動場所としてこのセイゲンの街を選んだ可能性がある事だ。
「だとしても、テンマさんには責任のない話ですよ。結局のところ、自分の身を崩す程の賭け事をするのが悪いのだし、そもそも犯罪者は罰せられて当然です。罰が怖いのならば、犯罪など起こさなければいいのです。そして、テンマさんには犯罪者を捕まえる義務はありません。国や統治者の仕事です」
アリエさんに言葉で、かなり気が楽になった。そのまま話し込みそうになっていると、視界の端でブランカが何か言いたそうにしているのが見えた。
「それとなんですけど、この人数で一室使う事は可能ですか?この二人、急遽セイゲンに寄る事になったんで、部屋の確保が出来なかったんですよ」
「え~っと、テンマさんとマーリン様、ブランカさんにアムールちゃんの四人に、スラリン、シロウマル、ソロモンの三匹が使うって事ですか?」
「少し難しいと思います。元々あの部屋は、成人の人が二~三人で使う事を前提にしているので、四人だとかなりギリギリで、それに三匹が足されるとなると、寝床の確保もギリギリかと……それに、一日くらいならともかく、あまり大勢で住まれると、組合の方から注意される事もあるので」
カリナさんは遠回しに言っているが、ブランカ達と使う事は出来ない様だ。しかし、ここまでは事前に予測していた事だ。なので次の手を打つ事にする。
「なら、借りている部屋の隣にあるスペースを貸して貰えますか?そこに俺の馬車を置いて、部屋として使います。もちろん、場所代として部屋を借りるのと同じ様に代金を支払います」
俺の提案に、アリエさんとカリナさんはすこし話し合っていた。
「それなら可能です。ただ、一度組合の方に書類を提出しないといけないので、それ用の契約書を書いて貰う事になります」
俺が提案した事は、実は王都で知った方法なのだ。
王都には、貴族や商人が乗ってきた馬車を止める駐車場がいくつか存在し、御者や警備の者が馬車で寝泊りする事があると聞いたので、ここでもその方法で行けるのではないかと思ったのだ。前に俺がセイゲンに来た時に、最後の手段として考えていた方法でもある。
ただアリエさんによると、宿屋が同じ様な方法で客を泊めるには、組合の方へ届出を出す必要があるとの事だ。馬車で来る客もいるので、許可自体は問題なく下りるそうだが、届出をしないと注意を受け、最悪罰金を受ける事もあるそうだ。
「今からなら間に合うので、申し訳ありませんが、こちらの書類に場所の使用目的と、最後の欄にサインをお願いします」
渡された用紙に言われた事を書いていき、最後に自分のサイン『テンマ・オオトリ』と書いた。
「オオトリ……テンマさん、苗字を持っていたんですか?」
カリナさんが不思議そうな顔をしたので、「優勝したので、褒美として貰いました」と言うと納得していた。
それから俺達は、カリナさんが組合に書類を届けに行っている間にアリエさんから鍵を貰い、馬車を置く場所を整理した。
「そういえば、エイミィと、いーちゃんしーちゃんはどこにいるんですか?」
「エイミィは学び舎に行っています。いーちゃんとしーちゃんも一緒に。毎日あるわけではないのですが、最近は前よりも熱心に勉強しているそうですよ」
そんな事を話していると、アムールが俺の背中に飛びついてきた。アムール自身は軽いので、飛びつかれても大した事はないのだが、かなりキツく抱きついているので、体が所々痛かった。
「エイミィって、誰?」
何か咎める様な言い方をするアムールだが、ブランカに頼んで回収してもらい、エイミィがアリエさんの孫でカリナさんの娘だと説明し、さらにテイムの方法を教えた事で懐かれていると言うと、一応納得していた。
その後、軽く部屋を掃除して、ブランカ達に使わせようとしていたら、アムールは部屋に荷物を置かず、外に置いてある馬車の中に荷物を出そうとし始めた。急いで後ろ襟を掴み、持ち上げて外へと運ぶと、とても不思議そうな顔をされた。
「何故?解せない」
心底納得の言っていないといった感じのアムールは、ブランカの説得(肉体言語含む)で大人しくなった。アリエさんは、そんな様子を見て微笑むだけだった。
荷物の整理が終わったタイミングでカリナさんは戻ってきて、無事に書類が受理されたと教えてくれた。後、出来るだけ問題は起こさせない様にと、組合の方から言われたとも。
「先生~!お帰りなさ~い!」
カリナさんから注意事項を聞いていると、エイミィの元気な声が聞こえてきた。その後ろには、前より成長した、いーちゃんしーちゃんが続いている。まだ二羽は長く飛べない様で、飛んでは走り、飛んでは走りを繰り返している。
「わうっ!」
いーちゃんしーちゃんを見つけたシロウマルが一声吠えると、いーちゃんしーちゃんは揃ってシロウマルの背中に着地した。
「ただいま、エイミィ。これお土産ね。これはエイミィので、こっちは皆で分けて。それと、これはいーちゃんしーちゃん用」
俺は王都で買った小物類や、いーちゃんしーちゃん用に取っておいた魔石や魔核を渡した。魔石や魔核は小さなものだがかなりの量があるので、二~三ヶ月は困らないはずだ。
「ありがとうございます!それで、ジャンヌさんとアウラさんは?それにそちらの方達は?」
エイミィは、俺の後ろの方にいたブランカとアムールを見て、頭にハテナマークを浮かべていた。
「ジャンヌとアウラは、王都に置いてきたよ。じいちゃんの屋敷の管理もあるし、王都にはアウラのお姉さんが働いているから安心できるし。それで、こっちは王都で知り合った冒険者で、ブランカとアムール。帰る方向がほとんど同じだそうで、セイゲンに少しの間滞在する事になったんだよ」
「そうなんですか。アウラさん、お姉さんに出会えて良かったですね。初めましてブランカさん、アムールさん、エイミィって言います。こっちは私の眷属のいーちゃんとしーちゃんです!」
「すごい、ブランカを見て怯まないなんて!」
アムールは、子供が初見でブランカを怖がらなかった事に驚いていた。そして、いつもの様に拳骨を食らっていた。
「明日はダンジョンに潜るつもりだから、今日は早めに夕食を済まして休む事にしよう。夕食までは自由時間という感じでいいか?」
俺の提案にじいちゃん達は頷き、夕食まで自由時間となった……が、
「まあ、初めての場所ならこうなるよな……」
俺以外セイゲンでまともに滞在した事がないので、皆で移動する事になった。流石に皆で移動すると、道行く人から注目されて、少し恥ずかしかった。
まず薬を売っている店を覗き、食料品を見て、最後に武具を見に行った。
「流石に王都よりも、防具関連が充実しているな」
売っている武器や防具は、その街々によってかなり特色が出てくる。例えば王都なら、貴族なども多いので派手目なものが多く、武器の方がよく売れる。セイゲンは飾り気の少ない機能性の高いものが多くて、防具の方に力を入れている鍛冶屋が多い。
これは王都は見栄を張る者が多い上、周囲には草原が広がっているので、様々な武器が使えるが、セイゲンはダンジョンがあるので、死角からの襲撃などを考慮した結果、攻撃を受ける前提の者が多いので、防具の方が重視される。
「何かいいものは見つかったか?」
「ない!テンマに作ってもらったやつの方が、数段上!」
「俺も見つからなかったな」
アムールは、自分の装備を見せつける様にくるくると回りながら言い、ブランカは即答した。
「まあ、今度俺の知り合いの所にも連れてくよ。でも、これで大体ダンジョンで必要なものは揃ったかな?」
少なくなっていた薬や、ダンジョン内で食べる野菜、武具の手入れに必要なものを買い集めたので、目的は達成している。ついでに今日の夕食は、アムールが買っている……まあ、屋台で食べきれないくらい買ってしまい、残ってしまったのだが……そのおかげで、今日の夕食は味の濃いものばかりだった。




