第1章-10 対オーク集団戦
変更点・国王の年齢を引き上げました。
鑑定の結果『オーク』の集団らしい。
オークとは豚人間、猪人間とも呼ばれている魔物のことだ。
人間と付いているが、豚や猪がそのままの形で二足歩行する感じで、手だけが人間に近い形をしている。
肉は食用になり味は普通の豚より美味しいため、町の肉屋でも売られている。
スラリンの入っている籠にシロウマルを入れ、バッグへ籠ごと仕舞い、飛空でオークの集団を見下ろせる位置まで移動する。
オークの集団がいたのは森から離れた所にある岩だらけの丘で、ちょうど谷間のようになっている場所だった。
オークたちは馬車を襲っているようだった。
戦っているのは、人間側が6人、オーク側が43体、オークの別働隊らしきものが6体いる。
6人は岩壁を背にし、馬車を囲むようにして戦っているが、数に勝るオークに徐々に押されている。
(オークにしては統率がとれ過ぎている。このままじゃまずい!)
天馬は馬車の上に降りると、
「助太刀します!」
と言い、マジックバッグから魔石を10個取り出すと、6人とオークたちの間に投げ込んだ。
天馬の乱入に驚いた両陣営だったが、次の瞬間にはさらに驚愕した。
天馬の投げ込んだ魔石が落ちた場所から、岩で出来た2mほどの大きさのゴーレムが10体、地面から現れたのだ。
「ゴーレム達よ!この人達を守りながら近づいてくる敵を攻撃しろ!」
天馬はそうゴーレム達に命令すると、6人に光属性の回復魔法『ハイヒール』をかけた。
6人の中で地位の高そうな男が天馬に礼を言おうとしたが、天馬はそれを遮り、
「上に6体のオークが回り込もうとしていました。先にそいつらを潰してきます」
と飛空で崖の上へと飛び上がった。
「この隙に態勢を立て直すんだ!」
一番地位の高そうな人が男が叫ぶと、他の5人は馬車から槍を取り出し、ゴーレムの後ろからオークを突いていった。
3分程で天馬が崖の上まで戻ってくると、オークは7~8体程が倒れて両陣営は硬直状態になっていた。
天馬が下に降りようとした時オークの群れの中に1体だけゴーレムよりも大きな個体がいた。
「あれは、オークキングか」
オークキングとはオーク種の最上位種で普通のオークがD~C-なのに対しC+~Bにあたる魔物だ。そして厄介なことに自分の配下にあるオークを1段階程強化する能力を持っている。
「グギャッ、グギャギャギャギャァァー!」
と、オークキングが雄たけびをあげると他のオーク達の勢いが増してきた。
天馬はマジックバッグから刀を取り出した。それは切っ先が両刃、所謂『小烏丸造』になっていて、刃渡り70cm程、反りは少なく鍔と柄が無い、柄の代わりに縄が巻かれている。
自分自身と刀に強化魔法をかけ、天馬はオークキングの手前に飛び込んだ。
「プギャッ」
「フガッ」
飛び込んだ付近にいたオークは天馬の左手から放たれるウインドカッターに胴体を切り裂かれ、右手で振るわれる刀の鋭い一撃で首を落とされて次々に絶命していった。
混乱するオーク達。しかし、さすがにキングと呼ばれるオークは即座に天馬に向けて一撃を繰り出した、振るう武器は先ほど切り裂かれたオークの下半身。
オークキングは自身の力を乗せた一撃で、目の前にいる敵は肉塊へと変わるだろうと確信し、気持ちの悪い笑みを浮かべていた。だがそれがオークキングの最後の記憶となった。
天馬は上段から振るわれる一撃に対して一歩踏み込み、首の横から右わき腹へと振りかぶる腕ごと袈裟懸けに切り落としたのであった。
天馬の足もとに笑い顔のまま転がっているオークキング死体を見て、唖然とするオーク達にゴーレムの後ろにいる6人達。
その中で天馬は、オーク達が正気を取り戻す前に素早く切りつけアースニードルを放っていく。オークが正気に戻る頃には数は半数以下に減っていた。
そうなると天馬による一方的な狩りとなり、碌な抵抗も出来ないままにオーク達は全滅した。
オークの死体をディメンションバッグに収めている天馬に、一人の男が近づいて来た。
「危ない所を助けてもらい感謝する。そなたのおかげで被害が最小限に抑えられた」
6人の中で一番身なりのいい男だ、天馬はとっさに鑑定を使う。
名前…アレックス・フォン・ブルーメイル・クラスティン
年齢…47
種族…人族
称号…クラスティン王国国王
「国王?」
天馬の言葉に国王を除く5人が警戒を強めた。
その中で一番真面目そうで、銀色の短髪に黒目の細マッチョと言った感じの身長180cm程の男が、天馬と国王の間に割り込もうとする。
「まあ、下がっておれ害意は無いようだ」
国王は、男にそう言ったが男は、
「しかし、陛下!そう装っているだけで、隙を見せた瞬間に襲い掛かって来るかもしれません!」
と言い剣を抜こうとするが、
「余の命令が聞けないのか」
と国王の静かだが威圧感満載の言葉に男は、
「し、失礼しました!」
と頭を下げた。
「まあ、よい。そなたが余の身を案じた事と分かっておる。しかしながら彼は余らの命の恩人ともいえる。礼を尽くさねばならない。それに、そなたが陛下と呼んでは彼の言葉を肯定しているようなものではないか」
その言葉に男ははっとなり、顔を青ざめた。
「過ぎたことだ。よい、許す。して、そなたはなぜ余が国王と分かったのだ?」
その言葉に天馬はまさか「鑑定で調べました」と言える訳もなく、必死に頭を働かせた。そして、馬車に描かれている紋章を見つけ、
「も、紋章からです。この国で紋章の図柄に獅子と龍を一緒に使う事が出来るのは王家と大公家の御当主のみで、現在大公家は一つしかなく、しかもかなりの高齢であると聞いています。なので、国王様だと思いました」
と早口になりながら誤魔化す様に答えた。これは、母さんとの勉強で得た知識だった。
「そう緊張せずとも良い。そうだったのか、よく勉強しているな」
と早口になっていたのは緊張の為と勘違いをしてくれた。
取りあえずオーク戦が終わりました。
そろそろヒロイン候補が出て来ると思いきや、出て来たのはこの国で一番偉いおっさん(国王)でした。
将来的に天馬の後ろ盾になる予定です。(予定は未定ですが)
書き忘れていましたが『飛行』と『飛空』の違いは、飛行は直線的な速度は『飛空』より速いのですが、上下左右への自在性となると格段に劣るため、森で活動することの多い天馬は『飛空』の方を好んで使っているのです。
シロウマルの成長が親の大きさに比べ遅い感じがしますが、魔物なので成長速度がおかしい、といった感じだと思っておいて下さい。
あとブックマーク登録が100件を超えていました皆様ありがとうございます。
今後とも「異世界転生の冒険者」をよろしくお願いします。