第1章-9
聞こえますか皆さん、こちら現場の天馬です。
ここククリ村にあるシーリア火山がついに噴火しました!
噴火規模は大きく、今回はこれまでに5~6回の噴火が確認されています。用意したリカルド防壁、マーリン防壁すら飲み込もうとしています。
現場からは以上…あーっともう一度噴火が…こちらに向かってきます!
みなさん私が無事だったらまた会いましょう!
「テンマっ!!聞いてるの!!!」
「はいぃっ!聞いてます!」
「うそを言わない!さっきから上の空じゃない!」
バレてた、皆さんさよ…危ない危ないまたトリップするところだった。
「テンマ、何で逃げなかったの!」
とまたループを始めそうだった。
そこへ、障壁…ではなく父さんとじいちゃんが助けに入って来た。
「シーリア、その辺で許してやれ。テンマの取った行動は危険だったかもしれないが、間違ってはいなかったんだ」
「そうじゃぞ、もしテンマが逃げていたとしても、ドラゴンスネーク達が森の奥へと帰っていくとは限らん。最悪、行動範囲を広げて狩りに入った村人やこの村自体を襲うかもしれん。それを未然に防いだんじゃから良いではないか」
「…わかったわ」
と渋々怒りを収めていたが、
「ただし、森の浅い場所の安全が確認されるまでは入ることを禁止にしますからね!わかった!」
「え~」
「返事はっ!」
「はいっ!分かりました、母さん!安全確認が終わるまで森には立ち入りませんマムっ!」
「よろしい!」
ボケはスルーされてしまった。
「とにかく早い内に、村の周辺や森の浅い所に危険な魔物がいないか確認した方がいいな」
「それは当然じゃが、ハウスト辺境伯にも知らせを出した方がいざと言う時の為にもなるじゃろう」
リカルドとマーリンはそう言うと準備のため家を出て行った。
次の日にはディメンションバッグに入れていた二頭の狼と六匹のドラゴンスネークの解体を父さんやじいちゃん、マークおじさんと共に行った。
狼は魔核と毛皮と牙と爪を剥ぎ取り、残りを火葬し地中深くへと埋めてその上に墓を建てた。狼の毛の色は光輝くような金色と銀色だった。ちなみに、シロウマルは白と思っていたがお湯で洗ってみると白銀と言った感じの色だった。
ドラゴンスネークの方は大きさこそ4~5mのものが六匹だったが、思ったより皮が剥ぎやすく素材も魔核、皮、牙、頭骨、肝臓、肉に分けるだけで特別な処理はいらないとの事なので、狼よりも早く終わった。
狼の素材は売らずに天馬のマジックバッグ(上級、1000kg位まで収納可能)に入れておき、ドラゴンスネークの魔核と肉1200kg(一匹の全体重約400kgで食用部位は200kg程)の内、400kgをバックに入れて保存し、400kgを村のみんなで分け、残りの肉は、近々来る予定の商隊に皮三匹分と他の素材と共に売った。売値は全部で30万Gになった。
ドラゴンスネークの肉は程よく脂がのっており、あっさりとした味で美味しかった。
この世界のお金の単位はG日本円で1G=10円くらいである。
硬貨は銅貨、銀貨、金貨、白金貨とあり、硬貨は普通の硬貨・大硬貨の2種類、白金貨のみ1種類の全部で7種類の硬貨がある。普通の硬貨はそのまま銅貨・銀貨・金貨と呼ばれる。下から1G、10G、100Gと桁が上がっていき白金貨は100万Gとなる。
一般的な4人家族ならば中央の都市で1ヶ月平均でおよそ金貨3~4枚(3~4万G)程度、田舎の村なら金貨1枚以下で暮らせる。ククリ村では1ヶ月平均で銀貨5~6枚程で生活ができる。ただし、食費等のほとんどが狩りの獲物で賄っているためである。
そう言う事があってから半年後。ようやく安全確認が取れ、天馬はまた森に入ることが出来るようになった。
この半年間で天馬は、錬金術の『錬成』と、創世魔法による『創作』の練習に力を入れていた。
その結果、『武器』の錬成と『ゴーレム』の錬成方法を身に付ける事に成功した。
武器の錬成は、『周囲にある物質を使い、思い浮かべた武器を創り出す』もので、正確にイメージをする必要があり、それが甘いと性能と強度に問題のある武器になってしまう。
まあ、元々が緊急時の使い捨てにするつもりだから問題はないが。
ゴーレムの錬成は、金属や魔核、魔石に魔力を込め術を施す事で核が出来る。
それを錬金術で作った体に入れることで、作成者の命令に従うゴーレムが出来上がる。
核は金属で作ると単純な命令しか実行することが出来ないが、魔核や魔石で作ると質や相性により擬似生命を作ることも可能であるが、その分難易度が跳ね上がる。
ちなみに魔核とは、魔物の特徴でもあり、体内にある魔力で出来た塊の事である。
小さい物では2~3cm程で、大きいものでは過去に1mという物が『古代龍』の体内から見つかったという記録がある。
基本的に、魔核や魔石で核を作った方が強いゴーレムが出来る。
天馬は久々に森へと足を運んだ。
ただし、シーリアに気を使って森の外周付近を散歩する程度のつもりだった。
「そら、取って来い、シロウマル!」
「キャンッ」
天馬の放り投げた木の枝にシロウマルが走り出す。
この半年で50cm程に成長した子狼は、白銀の体毛を煌かせ放られた木の枝をめがけて走り出す。
その様子を天馬とスラリンは共に見守っていた。ちなみに、スラリンは天馬が背負っている籠から顔?を覗かせている。
探索能力で半径5kmほどの距離を探っていた天馬だったが、レーダーの端に数十の反応があるのを捉えてシロウマルを急ぎ呼び寄せた。
長くなるので分けました。