四人は語る
テーブルの中央には、四枚の紙の札が置かれている。
それを一枚ずつ、四つの影は手に取る。そして、後ろに二、三歩ずつ下がる。
一際大きな影がテーブルに歩み寄り、両腕を誇らしげに開きながら語り始めた。
――私は、とても美しい。無駄に着飾った王族と薄汚れた浮浪者、私は彼らを別けたりはしないよ。
如何なる人物も、私の前で立ち止まる。彼らには、私を無視することは出来ないのだ。
花が散る。それがひらひらと舞う様は綺麗だろう?
木箱が燃える。その炎の前で、彼らは涙を流しているだろう?
――私は、美しいのだ。
彼は手に持っていた燭台に火を灯す。そして、札をその火にくべた。
彼が一歩後ろに下がると同時に、一番背丈の低い影がテーブルの前に立った。
――私は、みんなに嫌われている。
彼らは、私を取り囲んでナイフを振りかざす。
みんな、……私から逃げようと、殺そうとする。だから、私はみんなを追いかけて捕まえるんだ。
……理由なんてないよ。強いていうなら、私は必然だからかな?
――それでね、捕まえたらこうするんだ。
彼女は札の両端を持ち、無造作に千切り捨てる。札だった欠片が宙を舞う。
彼女はリズムを刻むように飛び跳ねながら、後ろへと下がっていく。
残骸が舞い散る中を、華奢な影は俯きながら歩く。
彼女は、口を開いた。
――恐らく、私は目を背けたくなるくらいに汚いだろう。
彼らは、私を己の欲望の為に利用する。使われる度に、私は更に汚されてしまう。
何故彼らは気付かない、私が汚れていくことに?
――愚かな彼らは、こんな感じに染まるでしょうね。
彼女は自分の指に、短剣の先を走らせた。赤い線が浮かび上がる。
溢れ出るそれを、札に擦り付けた。それは止まることなく湧き続け、床をも染めていった。
彼女が後ろに下がり、代わりに恰幅のいい影がテーブルの前に立つ。
――私を言葉で表すなら、それは物語の完成でしょう。
始まりがあれば、終わりが訪れる。それが、必然なのだから。
彼らの物語は永遠に残りますよ、その美しく醜い様はしっかりとね。
彼らの物語はとても醜い。
一方で、彼らの苦しむ顔は綺麗なんです。
――必然だからこそ、それは綺麗なのでしょう。
彼は札を投げ捨てた。ひらりひらりと、それは骸骨の絵を見せながら舞い落ちる。
彼らの足音が、虚しく響く。