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歯車は回る
――歯車は回る、ぐるぐると。
一人の人間が行き倒れ、椅子に一つ空白が生まれる。
行き倒れた彼は、権力を持つ人間だった。
空いた椅子を、権力をその手に納めようと彼らはひた走る。失われた歯車の代わりになるためなら、彼らは他者を蹴落とす事も躊躇わない。
――ほら、競争に負けた人間が殺されていく。
ある者は、敗者の額に弾丸を撃ち込んだ。
勝者の顔は、腐り果てて肉が崩れている。一対の黒い穴から、赤い涙を流していた。
喜びと虚しさ、満たされない欲望。
ある男は、仲間だった者を斬首台の上に縛り付けた。
彼の首から上はない。信じていた仲間に裏切られ、切り取られたからだ。
裏切り者の声を聞いて、彼の心は笑う。
ある者は、椅子を壊そうと斧を手に取った。だが、それを見た周りの者は、彼の両手を無慈悲に斬り飛ばした。
皆、その椅子が欲しいのだ。
ほら、また一人、椅子から突き飛ばされて奈落に落ちていくよ。歯車は、止まることを知らない。
――ねえ、誰か歯車を壊して見せてよ。