鏡夜は僕の。
玉倉さんのターンです。(キリッ!)
ヤキモチを妬く綺流社くん。
rose13 鏡夜は僕の。
鏡夜と一緒に校門を潜ると、あちこちで黄色い声が上がる。
「鏡夜君だぁ~!」
キャーキャーと騒ぐ声も、鏡夜は特に気にもしてないみたいだ。
でも、すごく可愛い女の子たちが鏡夜の名前を呼ぶと、僕の中でむくむくと嫉妬心が顔を出す。
「鏡夜は僕の!」って、大きな声で主張したくなる。
女の子たちの中の一人が鏡夜に触れた。
むかむかむかっ!
嫉妬心が爆発しそうになる。
「鏡夜はあたしの!」
不意に玉倉さんの声が聞こえた。
少し怒った声で、鏡夜の腕に自分の腕を絡めてぐいぐいと鏡夜を引っ張っていく。
「鏡夜はあたしのだから!もう鏡夜に近付かないで!」
その声を聞いたときに、かあっ、と頭が熱くなって気付いたら思わず叫んでいた。
「違うよ!鏡夜は僕の!」
すると、不意に鏡夜の低くて優しい声が聞こえてきた。
「…良くできました。」
その声は甘くて、熱をもった声だった。
心臓がバクバクする。でも、止められないから。
僕は玉倉さんの所へと歩く。
「…鏡夜は僕のだから。」
「…だから何よ。」
玉倉さんの声に、瞳に刺々しさが加わる。
「鏡夜があんたのだろうと関係無いわ。あたしは…」
玉倉さんが絡めている腕に力を込める。
「あたしは…本気で鏡夜が好きだから。」
「僕だってっ!…僕だって、鏡夜の事が本気で好きだ。」
僕が玉倉さんを見据えると、玉倉さんがたじろぐ。
「…で…?」
「…え。」
「なんでみんな鏡夜を好きになっちゃうのよ!あたしは…あたしは誰よりも先に鏡夜のこと好きになったのに!
誰よりも鏡夜の事見てたのに!」
玉倉さんが叫ぶ。
「なんで!?やっと見て貰えたのに!」
玉倉さんが僕の方へ近づいてくる。
「ねえ、なんで鏡夜のことを奪うの!?もう、鏡夜に近付かないでよ!あたしから鏡夜を盗らないでよ!」
玉倉さんが僕を押す。力で、後ろへと倒れる。
「あんたなんか、大っ嫌い!鏡夜だって…鏡夜だってそう思ってる!
本当は鏡夜だって…!」
「玉倉。」
鏡夜が僕を支える。
「…鏡夜っ!鏡夜だってそう思ってるよね?本当は鏡夜だってこんな子のこと、本当に好きだなんて思ってないよね!?
鏡夜が好きなのは、あたしだよね!?」
「………………………。」
「鏡夜っ!?」
鏡夜が苦しそうに言う。
「…ゴメン。玉倉…。」
鏡夜の手が震える。
「俺は…俺は綺流社以外、絶対に好きにならない。」
玉倉さんが大きく目を見開く。
「だから、お前も好きにならない。…絶対に。」
玉倉さんが泣きそうな顔をする。
「…ッ!」
玉倉さんは唇を噛み、走っていく。
「…追ってあげてよ!鏡夜!」
鏡夜に僕は叫ぶ。
「本当に、鏡夜の事が好きだったんだよ!」
叫ぶと、鏡夜が驚いた顔をする。
「…わかった。」
そう言うと、鏡夜は走り出す。
「…綺流社。」
正世の声が聞こえた。
「…正世。」
正世は淡く微笑んで言った。
「…おめでとう。…綺流社。」
…な、なんか可哀想ですね玉倉さん…。
正世も切ないです…。