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二重王国物語  作者:
序章
1/5

世界には最初、1つの国があった。

その国の領土とは即ち世界であったが、たった一つの王によって、山を越えた先、海で隔てられた地でさえ等しく統治されていた。貧富の差こそあれど餓える者も虐げられる者も在りはしない。泰然とした平和がそこにあった。

しかし同時に、其処には"変化"がなかった。それは即ち水が流れないのと同義である。変化がなければ水―人は腐る。腐敗はやがて国中へと広がり、結果として貴族の反乱という形で現れた。火種は国の中心から瞬く間に世界へ広がり、国を縦断して2つの国を創った。

後のリュネブルク王国とヴァロア王国である。

その後の2国は互いに正義を掲げ、争いあう。

削られる大地。減り続ける国庫。次々と死んで行く人、人、人。

絶え間なく続く戦いにより消耗していく2国は端から徐々に崩壊し、やがて数多の小国が生まれた。しかし、例え自国が崩壊しようと彼等が止まることはない。奪われた国民の血を相手の血で購えるまでは。


今も続く争いの名はリュネロア統一戦争。

始祖の血族同士が己の正義を掲げて殺し合う、"聖戦"である。




†迷子になった彼女の選択†


初めは1つ。


数年後には2つ目が、キラキラ光るそれが転がり込んで、相変わらず目がチカチカするくらい綺麗なそれに、私の視線は釘付け。

けれど、初めにあった1つは何処かに無くしてしまったから、結局1つ。

それだって、恐る恐る手を伸ばしては引っ込めて、へっぴり腰に指先で摘まんでは壊さない様そろそろ下ろして、ろくに触われなくて、まるで小さな子供みたいで。

そんなあたしを、上手に出来ないあたしを、君は仕方ないなあって笑うんだ。

それにふて腐れたあたしは顔をしかめてそっぽ向くけど、本当はとっても暖かくて。込み上げる熱に戸惑いを隠せず泣きそうで。嘘みたいに、愛しくて。

でもやっぱり、伸ばせる手は持ってなかった。


こんな情けない私だけど、2つ3つと増えたんだ。

どんどん、どんどん。目まぐるしく目が回りそうな程に。

溢れそうなくらい貯まったそれは、気付けば人のそれより沢山で、なのに、わざわざ洗った私の手は、人のそれより小さくて。支えるのも精一杯で。

重ねてくれるあなたの手が無かったら、とっくの昔に全部落としていただろう。

でももう、ない。この指先から落ちた1つは見えなくなった。

其々光を発する中で、特に輝いていたそれは、手も伸ばせぬ愚か者の心に存在を刻み付けて、消えてしまった。

それは私の絵具。それは私の光。私の世界は急速に色を失う。

他では代わりにならなかった。


だから、覚悟を決めよう。

今まで集めた大切な全てを投げ棄てて

見会うようにと洗い流した手を染めて

爪先から見えない指先まで張り詰めて

例えお前に触れた先から朽ち果てるのだとしても

あの時伸ばせなかった手を伸ばそう




それこそ此の身が尽きる、その時まで

ずっと


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