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第1話

息抜きに書いたものなので、すごいクオリティが低いです。プロットも作ってないし推敲もしてません。それ以前にコメディーを書くのは初めてなので、見苦しい作品になってると思います……。

 これは誰だろう?

 鏡に映る人物を見て疑問に思った。桃色の長い髪と、大きくて愛らしい瞳。雪原のように白い肌。

 僕は思わず見とれてしまった。

 すごい可愛い……。

 鏡に映る彼女へと手を伸ばすと、同じように彼女の手も動いた。

 あれ?

 手を振ってみる。彼女もこちらに手を振ってくる。笑ってみる。彼女が綺麗な笑顔を僕に浮かべてきた。

「うわあああーーー! 僕、女の子になってる!」

 鏡の中の彼女は、美少女には似つかわしくない顔で驚いていた。


 とりあえず僕は自分の部屋に戻ってきた。乱れた呼吸を整えるために深呼吸をする。

 落ち着くんだ。

 目を閉じて、何があったのか整理してみる。

 鏡を見た。女の子が映っていた。自分だった。

 駄目だ意味がわからない……。何で僕、女の子になってるの? 俺がお前であいつが俺でみたいに、二人で絡み合いながら階段から落ちて女の子になちゃった、みたいな展開ならまだわかるよ……いやそれでも全然意味わからないけどさ。でも突然前振りなしで見ず知らずの女の子になってるのはどうよ。

「はあ……」

 僕は溜め息をついた。

 神様……あなたは馬鹿ですか?

 どうすれば治るんだろう。あらためて自分の体を見てみる。細く白い指。華奢な体。抱きしめたら壊れてしまいそうな肩。そして、控え目に盛り上がっている胸。

 どう見ても女の子です。これで男の子だったら世の中はハードなGで溢れてしまいます。

 しかしこの胸は本物だろうか?

 僕も男です。女の子の体に興味がないと言ったら嘘になります。むしろとても興味があります。機会があれば是非に、と思っていました。

 ごくりと音を立てて唾を飲み込む。

 か、確認するためです。邪な事はこれっぽっちも考えていません!

 では、確認させて頂きます。

 ゆっくりと小さな胸へと手を……。

「祐一! 起きなさい!」

 階段を上る音と一緒に聞きなれた声が聞こえてきた。

 やばい、伊織だ。

 僕の両親は今仕事の関係上アメリカに行っている。僕は一人っ子なので、今はこの家で一人暮らしをしている。もちろん、男の僕が炊事洗濯などができるわけがなく、両親が家を空けてから一週間で餓死しそうになった。それを見かねた幼なじみの伊織が、僕の身の回りの面倒を見てくれるようになったのだ。

 伊織の足音が近づいてくる。

 どうしよう! どうやって言い訳する?

 私は祐一君の婚約者で……無理だっ!  実は生き別れの妹で……欲しいっ! じゃなくて無理だ! ああ、どうしよう。もう足音が扉の前まできてる!

 ええい、こうなったら!

「まだ寝てるし……。祐一、もう起きなさいって」

 扉が開く前に僕は布団にくるまった。とりあえずこれしか方法がなかった。

「ほら、起きなさいよ」

 伊織が体を揺すってくる。段々と揺れが大きくなってくる。

「もう起きなさいって! いつまで寝てるの! 布団剥がすからね!」

 やばい、バレる。僕は引っ張られる布団に必死にしがみついた。伊織も意地になって本気で剥がそうとする。数分二人で格闘したが観念したのか伊織の手が止まった。

「なんでそこまでするのよ……。ほら遅刻するじゃない」

 僕が黙っていると、また布団を引っ張ってきた。

「なんとかいいなさいよ!」

「……きょ、今日は休む」

 低い声を意識したが、とても男の声とは思えなかった。

「祐一……あんた今声おかしくなかった?」

「か、風邪なんだよ。頼むからほっといてくれ」

「風邪? でもさっきの女の子の声……」

「とにかくっ、お前は学校に行けって!」

 伊織の言葉を遮って僕は叫ぶ。

「……わかったわよ。朝食作っておいたから後で食べなさいよ」

 渋々といった感じでそれだけ言って、部屋から出て行った。

 やっと行ってくれたか。時々すごいしつこくなるんだよな伊織は。

 僕は布団から出る。上半身を起こして、顔に付いた髪の毛を優雅に払う。自分で言うのもなんだが、今のはとてもお嬢様ぽかったと思う。

 扉の前に、目を見開いた伊織がいました。

 僕の動きが止まる。お互い、何も言えずに固まりました。

「……あなた誰?」

 僕が知りたいです。

「……なんで祐一のベッドで寝てるの?」

「えっとね……それは僕が祐一だからだよ。えへへ」

 笑ってごまかした。伊織は眉をひそめる。明らかに伊織の目は信じてない。

「朝起きたらこうなってたんだよ。信じてくれ」

「信じろって言われてもねえ」

 下から上へ舐めるように見てくる。

「どう見ても女の子……しかもとびきりの美人」

「わかった。じゃあ、なんか質問してよ。それでわかるでしょ」

 伊織は考えるような仕草をする。

「祐一の好きな食べ物は?」

「タマゴボーロ」

「好きな飲み物は?」

「ふんわり抹茶ラテ」

「苦手な物は?」

「高野慎一」

「お金で買えない物は?」

「Priceless」

「……祐一だ」

 どうやら信じてもらえたらしい。伊織はもう一度僕の体を見つめてくる。

「本当に女の子だ。なんでこんな体になったのよ」

「僕も知らないよ! 神様に訊けよ!」

「私に当たらないで。でも、こんな漫画みたいなこと本当にあるのね〜」

 たしかに売れない漫画でよくある展開だ。体が入れ替わっちゃったとか、驚くと女の子の体に変身しちゃう体質とか。

 じゃあ、僕はなんでこんな体になったんだ。

「……もう駄目だ。死ぬ」

 窓を開けて身を乗り出す。

「ちょ、だめよ! なにしてるの!」

 後ろから伊織に抱きしめられる。そのとき、全身に電撃が走った。

 なんだ、この感覚は!?

 刺激は胸の辺りからきていた。頭を下げると、伊織の両手が僕の胸を鷲掴みにしていた。

 こ、これが女の子が胸を触られたときの感覚か!?

 す、すごいな。

「もう祐一、馬鹿なマネはやめなさ……」

 伊織の声が途切れた。そして確認するように僕の胸をにぎにぎしてくる。

「はうっ」

 聞いてる僕自身もどうにかなりそうな喘ぎ声が思わず出た。

「な、ななな」

「い、伊織どうしたんだよ」

「なんで、私より大きいのよーーー!」

 伊織の悲痛な叫び声は町内に響き渡った。


 伊織が学校に行ってから、僕は部屋でぼーとしていた。

 ベッドに寝転がって、天井に手をかざす。綺麗な手だよな。

 僕はいまだにパジャマのままだった。何故かは知らないけど、伊織に服を着替えるのを止められた。私が帰るまでじっとしていろとの事だった。

 暇だ。何もすることがない。

 部屋を見回していると、チャイムが鳴った。

 僕はベッドから降りて、玄関に向かった。

「はいはいー今開けますよ」

 鍵を捻って、扉を開ける。

「祐にい〜」

「はうっ」

 突然、来訪者が抱きついてきた。

「会いたかったよ、祐にいー」

 すりすりと、頭を胸にこすりつけてくる。

「おっきくなったね。特におっぱいなんかマシュマロみたい……っておっぱい!?」

 来訪者は僕から離れて、まじまじと僕の体を観察してきた。

 その来訪者の顔に僕は見覚えがあった。

 千夏!?

 千夏とは幼なじみで、昔はよく伊織と一緒に遊んでいた。でも、僕が中学に上がる前に引っ越してしまい、それからも手紙は交換していたけど会うことはなかった。僕は一歳違う千夏を妹のように思っていた。

 しかし、何で千夏がここに?

「あれ? 祐にいじゃない。祐にいどこー?」

 千夏は、僕の後ろに呼び掛けた。

「なに言ってるんだよ。ここにいるじゃん」

「いや、綺麗なお姉さんのことじゃなくて。ちょっと頭が狂ってる、祐にいのことだよ」

 綺麗なお姉さん?

 そうだった! 女の子の体になっていたんだ!

 僕は今まで現実逃避していたらしい。

「お姉さん、顔色悪いけど大丈夫?」

「だ、大丈夫。辛い現実を思い出しただけだから……」

 千夏は首を傾げる。

「ところでお姉さん、祐にいとはどういう関係?」

「え?」

「一人暮らしの祐にいの家に寝泊まりしてるなんてただならぬ関係だと思うんだけど」

 寝泊まり?

 そうだ、今パジャマじゃん! 伊織のやつが着替えるななんて言うから……。私服だったらまだ言い訳ができたのに。

「えっと、は、初めまして。祐一さんのいとこの撫子と言います」

「祐にいのいとこ? ふーんそれで、どうして祐にいの家に寝泊まりしてるの?」

 考えるんだ僕。

「それはですね、私の両親も祐一さんの両親と同じように海外に転勤してしまって、一人では不安だから祐一さんの家で暮らせと言われまして……」

 矛盾点はないと思う。千夏は疑念のこもった目で僕を睨んだあと、にっこりと顔を崩した。

「なるほどね〜。でも祐にいの家で暮らすほうが不安かも。ああ見えて、祐にいはエロいからねえ」

 エロい!?

 そ、そんなことないもん。

「とりあえず、お邪魔しましま〜す」

 千夏が僕を無視してフローリングの床を踏んでいた。

「ちょっと、今は祐一さん学校に行ってるのでいないんですけど……」

「別にいいよー。むしろ好都合にゃ」

 そう言って不敵に笑った。

 千夏は階段を猫のように走って上って行ってしまった。

 慌てて僕は追いかける。

 追いつくと、千夏が僕の部屋を漁っていた。

「な、なにしてるんですか!」

 僕の声に、机を漁っていた手を止めて振り返った。

「エロ本捜索〜」

「え、だめですよ! 勝手に人の物に触ったら!」

 近づいて止めようとするが、猫のようにかわされる。

「祐にいの物は千夏の物なのにゃ」

「その理屈は某アニメのいじめっ子以外使ったらいけません!」

「おっと、ここが怪しいにゃ」

 な、そこは!?

 千夏はベッドの裏側に手を伸ばした。

 だ、だめ!

 千夏の手にはエロ本が握られていた。もう手遅れか……。千夏はピラピラとめくり中身を確認すると、深刻な顔をしてぽつりと呟いた。

「……ロリコン?」

 ああああっーーー! 僕の秘密が……。

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