いつの間にか船の上で
疲れた、それしか考えられない。
「つれないね、レディ。」
まあ、この男は一応この海賊団の頭。
つまり船長なわけなんだけど。
困ったのが趣味。
女性を口説くっていう。
まあ、金髪に碧眼で王子様然とした美貌に世の娘たち(こいつが部下に拐わせた)はほだされるんでしょうね。
もちろんあたしは違うけど。
「僕に口説かれて、一時間の間にキス一つ求めてこない女の子は君が初めてなんだけど、そろそろかい?」
まあ、乙女の純情を弄ぶ最低な奴。
「君の薄黄緑色は紫陽花が色づく前のようだ。きっとその髪は僕の愛に応えて薄桃色に変わ……「そんなことあり得ませんね。あたしの髪はこれまでずっとこの色でしたし。」
白に限りなく近い自分の髪は気にいっている。
「紫陽花は水を恋しがると言うけれど、君は僕を恋し「がることもありませんから」
どうして紫陽花なのかしら。可愛らしい花だけど。
それに……、
「あたしは向日葵の方が好きですね。」
「どうしてかな?」
「お天道様に真っ直ぐ向かっている気高さと言いますか、なんて言いますか。」
「僕も太陽に向かうことはできるよ。」
「まあ、職業柄無理でしょうね。お天道様に顔向けできるんですか?」
ああ、小さくなっちゃった船長。子供みたい。
「すみません、言い過ぎました。」
ああ、元に戻った船長。
ため息は長め。
だってこの青空の下、夏の空澄の下、大海原の上で聞かされるのは口説き文句。
ああ、なんて暑苦しいの!
コメディかどうか全く自信がない、勢いで書いた作品です(笑)