ある日、最愛の妻が浮気を告白した――しかも相手は男ではなく、21歳の女性だった。
ある日、妻は後悔に満ちた目で私を見つめた。
「ごめんなさい……これまでずっと、あなたを裏切っていたの。しかも……何度もその相手と関係を持ってしまったの」と、彼女は小さな声で言った。
その瞬間、体が凍りついた。彼女の言葉は刃物のように胸を突き刺した。
「美代!? どうしてそんなことをしたんだ!? 俺が仕事で疲れて帰ってくる間に、浮気して……他の男と関係まで持ったのか!?」
私は机を強く叩いた。鈍い音がリビングに響き、心と信頼は粉々に砕け散った。
だが、私が気持ちを整理する間もなく、美代は淡々と続けた。
「相手は男じゃないの……21歳の女の子よ。」
思わず変な声が出た。
「え……女の子と……21歳の?」
頭が追いつかず、言葉を反芻する。驚きと困惑が入り混じる。
「俺に嘘をついてるのか?」私は確認せずにはいられなかった。信じたくない気持ちと、真実を知りたい気持ちがせめぎ合う。
美代はうつむき、深く息を吐いた。
「ええ……嘘をついていた。でも、だからこそ正直に話したいの。本当は……私はバイセクシュアルなの。結婚する前から。昔は女性しか好きになれなかった。でもあなたに出会って、気持ちが変わった。あなたを愛している。そして……あの子のことも、愛しているの。」
私は言葉を失った。
「冗談だろ……?」
額を押さえながら、必死に理解しようとする。
美代は真剣な眼差しで私を見つめた。
「山田くん……あの子を受け入れてほしい。身勝手だとわかっている。でも嘘のまま生きるのはもう嫌なの。あなたは、私が心から愛している唯一の男性なの。」
頭が真っ白になる。怒り、混乱、悲しみ――あらゆる感情が渦巻いていた。
「つまり……彼女との関係も認めてほしいってことか?」
「強制するつもりはない。ただ、真実を知ってほしかった。あなたを裏切ったのは、あなたを愛していないからじゃない。むしろ逆よ。私はあなたを誰よりも愛している。」
私は深く息を吐いた。
決断しなければならない――どんなに苦しくても。
美代は私の頭に手を置き、そっと抱きしめながら、少し冗談めかして言った。
「考え方を変えれば、悪い話じゃないかもしれないわよ? 二人の女性に愛されるなんて、男性の夢じゃない?」
その言葉に、嫌悪と戸惑い、そして自分でも認めたくない微かな動揺が胸に広がる。
「……まずは、その人に会ってみる。でも、まだ何も決められない。」
数日後、私たちはカフェで向かい合って座っていた。
遠くから歩いてくる若者は、一見すると普通の青年のように見えた。しかしパーカー越しにも分かる体つきが、その人物が誰なのかを物語っていた。
美代は微笑みながら紹介する。
「山田くん、こちらが私の恋人のリサ。そしてリサ、こちらが私の夫、山田。」
私は黙ってうなずき、ぎこちなく微笑んだ。その紹介の仕方に、どこか不自然さを覚えながら。
リサは柔らかく微笑み、好奇心に満ちた目で私を見つめている。
胸の奥がざわつく。
緊張、不安、戸惑い――これから何が始まるのか、まったく想像がつかなかった。
私たちはいくつかの料理と飲み物を注文したが、場の空気は依然として静まり返り、どこかぎこちなかった。
私は椅子に腰掛けたまま、好奇心と戸惑いが入り混じった目でリサを見つめていた。美代は隣に座り、まるで私が「逃げない」ようにするかのように、ずっと私の手を握っている。
リサは小さく息を吸い、テーブルを見つめた。
「私……美代ちゃんと一緒に住みたいんです。だって……そばにいたいから。安心したいし、大切にされているって感じたい。今まで、そんなものを持ったことがなかったから……」
私は眉をひそめた。
「どうして美代と? 一人で暮らす選択肢はないのか?」
リサはうつむき、声を震わせる。
「正直……少し男性が怖いんです。家族のことでトラウマがあって。父は……いつも怒鳴って、暴力的でした。もう誰かを傷つけたり、傷つけられたりしたくない。だから……美代と一緒なら安心できるんです。」
美代は身を乗り出し、優しくも揺るがない視線で私たちを見た。
「山田くん、わかるでしょう? リサはただ安心したいだけ。私は、みんなが心地よくいられる形を作りたいの。彼女はあなたの代わりになりたいわけじゃない。でも、守られたいし、愛されたいの。」
二人を見つめながら、私は嵐の中心に立たされている気分だった。リサを守りたい気持ちと、自分自身の複雑な感情への戸惑いがせめぎ合う。
リサはおずおずと私を見上げ、かすかに微笑んだ。
「変だってわかっています。でも……三人で暮らせたらって思うんです。山田さんのやり方も大切にしながら。でも……私、間違えるのが怖い。それだけは知ってほしいんです。」
私は言葉を飲み込み、彼女の気持ちを咀嚼しようとした。その間も、美代ははっきりと主導権を握っている様子だった。この場の流れを決めているのは彼女で、私とリサはどこか受け身になっている。
美代は私の手を軽く叩いた。
「山田くん、ただ正直でいましょう。大丈夫、私がちゃんと導くから。」
私はゆっくりとうなずいた。安堵と同時に、もう元の世界には戻れないという感覚が胸をよぎる。
やがて美代は私に身を寄せ、いたずらっぽく微笑んだ。
「山田くん……リサをよく見て。あのパーカーの下のライン、きれいでしょう? 本当に何も感じない?」
私は言葉を失い、喉を鳴らした。体温が急に上がる。
美代はさらに囁く。
「もし将来、私たちが一緒に何かをするなら……リサも一緒よね?」
リサは顔を赤らめ、視線を落とした。
「もし……初めてを迎えるなら、相手は山田さんがいいです……それなら、私は大丈夫です。」
美代は挑むような目で私を見た。
「どうするの?」
私は胸の鼓動を抑えながら答える。
「……急には決められない。でも、きちんと向き合うなら……逃げない。」
――
その夜、三人で暮らす家のリビングは、照明を落としているにもかかわらず、どこか熱を帯びていた。私はソファに座り、気持ちを落ち着かせようとする。
「山田くん……まだ迷ってるの?」
美代は挑発するように微笑む。
リサは隣で顔を赤らめ、小さな声で言った。
「山田さん……私、少し怖いです……」
「……急ぎたくない。」
それが私の正直な答えだった。
美代は私の腕にそっと触れた。その仕草は優しいが、同時に決意を含んでいる。
「無理にとは言わない。でも、自分の気持ちから目を逸らさないで。」
リサも私を見つめる。その瞳には不安と期待が入り混じっていた。
その夜、私たちは衝動に身を任せるのではなく、長い時間をかけて話し合った。互いの境界、恐れ、望み――すべてを少しずつ言葉にしていく。
やがて緊張は和らぎ、三人の間に不思議な一体感が生まれた。美代が導き、リサが寄り添い、そして私は自分の立場を見つけていく。
夜が更けたころ、私たちは再びソファに並んで座っていた。疲労と安堵が混ざり合った静かな時間。
美代は穏やかに微笑む。
「ね、山田くん。形は普通じゃないかもしれない。でも、誠実でいられるなら……きっと悪くない。」
私は二人を見つめた。
確かに、私たちの関係は複雑で、世間から見れば理解されないかもしれない。それでも――初めて、自分の居場所を見つけたような気がした。
異なる想いを抱えながら、それでも互いを選んだ三人として。




