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4. 風のあとを
その日から、少しだけ生き方を変えた。
歩くスピードをゆるめ、気になる音に耳をすまし、
ふと涙が出る映画を、素直に見つめるようになった。
植物の緑、海や空の青さまでも、自然の全ても味わうようになった。
そして気づいた。
いなくなった「わたし」は、ちゃんとここに戻ってきている。
風が吹くたび、
あの夢の中の草原の風を、胸の中で感じることができるようになった。
心と“わたし”が一体化した瞬間だった。
心とは自分であり自分ではない。けれど自分の一部である。そう思えた瞬間でもあった。
その後、“わたし”は心と一緒にこの世の全てを味わいながら生きていったのだった。