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2. 夢の中の記憶
ある夜、奇妙な夢を見た。
草原の上に立ち、向こうから誰かが歩いてくる。
逆光で顔は見えないけれど、懐かしいような、不思議な安心感を感じた。
そのとき、穏やかな風が吹いた。風が見守ってくれているかのような温かさだった。
「ねぇ、思い出して」
その人はそう言った。
「君がいなくなったこと、君がずっと自分を探してること」
そう言って、笑った。
目が覚めると、なぜか涙が出ていた。
思い出せないはずの“誰か”の記憶は、夢の中で、確かに自分に語りかけていた。