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Episode17

いくら自分が成人前で、この令嬢も成人前だとしても、相手は公爵家のご令嬢だ。見つかったらまずかろうことくらはわかる。


「じゃあ 邪魔したな」


形ばかり詫びをして、シリウスが踵を返したそのとき。


「………さま?」


微かに、声が聞こえて、シリウスは再度固まった。客間女中かと思い、慌ててもと来た道を走り出した。その後ろ姿を令嬢は笑いながら見つめている。鷹はシリウスの肩の上でその光景を眺めていたが、一瞬その目を見開いた。客間女中、ではない。あれは。


――――――――そうか。吉凶児(・・・)だったか。なんということだろうか。鷹は痛ましげな顔をしたが、それは本当に一瞬でシリウスが気づくこともなかった。



「貴族のご令嬢ってみんなああなのか?」


突然現れたシリウスに驚くでもなく、警戒するわけでもない。普通に話しかけて、屈託なく笑ってくる。たいした度胸だ。公爵家の令嬢ともなるとやはりふつうの貴族とは違うのかもしれない。鷹をみても取り乱しもしないどころか目を輝かせていた。


「ふつう、怯えたり取り乱したりするものだと思うのだが……やはり大魔法使いと謳われるカストル殿が守っているという安心感なのだろうか」


それだけ、カストルの名は大きい。子どもというのは人外のものが視えやすく、そして好かれやすい。子どもは七つまでは神のもの。いつ、冥府に渡ってもおかしくない。これは身を守る術もなく、誰も守ってくれないからだ。だから、王都では神隠しと称してよく子どもが消えたりしていた。魔獣や、人間(・・)の仕業かはさておき、よくそういったことは起きている。だからだろうか。この屋敷にはカストルが結界が張っていた。悪しきものが入ってこないように。怖いものが視えないように。並みの魔法使いでは破れないような強固なものだ。この屋敷の中にいれば絶対に魔獣は入ってこないし視えない。彼女が鷹を視ることができたのは、シリウスと一緒だったこと、鷹が悪意なく、害をなさないものでありカストルと少なからず、繋がりがあるからだろう。


「まぁ視えたって気にしなければいいだけの話だが…女、子どもはそうはいかないか…やはり素晴らしいなカストル殿は」


さすが、偉大な魔法使いと鷹は我知らず誇らしい気持ちになる。まぁ、人族の女こどもなんて見たこともあったこともほとんどないが。ただ、シリウスは正反対の感情のようで渋面を作っている。


「まぁいつか努力すれば実は結ぶだろうさ大きかろうが小さかろうが…それにしても」


「一言余計じゃないか?それにしても…?」


鷹は意地の悪い笑みを浮かべた。鳥の顔はこんなに表情豊かだったろうかとシリウスは時折、首を捻る。


「可愛かったなぁ あのご令嬢 美しいという形容のほうがあっているか…お前もまんざらではなかっただろう?」


シリウスは無言で鷹を肩から払い落とした。燃やすぞこの鳥類。

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