第16章 魔法薬剤
ルーンは10個の問題が書かれた紙を丁寧に折りたたんで、鉄の箱にしまった。これ、俺がこの世界で一番大事な研究テーマになるな。
窓の外じゃ、朝の最初の光が霧を抜けて屋根裏に差し込んでる。新たな一日が始まったけど、ルーンの冒険はまだ始まったばかりだ。
「ヒルベルトは23の問題で数学界を変えたし、アインシュタインは相対性理論で物理学をひっくり返した。この10の問題、ひょっとしたら二つの世界をつなぐ架け橋になるかもよ。」
立ち上がって、工場に出勤する準備。出る前、最後に鉄の箱をチラッと見た。
「魔法と科学、意識と物質…この世界の真相って何だよ?
明日、魔法材料なしで魔法使えるか試してみよう。あと、よく使う材料を買い置きしとかなきゃ。」疲れ切ったルーンは寝る前、ボーッと考えてた。
「魔法の実験は絶対必要だ。化学の実験と同じで、何度もやってみないと本当の仕組みはわかんねえ。」
ヴィラのノートに載ってた基礎の魔法薬剤を思い出しながら、頭整理。どれも独特な効果があって、ルーンが特に気になったのは、即戦力アップ系の薬剤:
精神強化薬剤:一時的に精神力ブースト。けど、クセになるらしい。
魔力回復薬剤:使った魔法エネルギーをサクッと回復。
体質強化薬剤:身体能力を上げて、高度な魔法の基礎を作る。
「これ、魔法版のエナジードリンクじゃん。でも副作用もガッツリありそう。テキトーに飲むのはヤバいな。」
ルーンは「体質強化」薬剤の詳しい説明をノートでチェック。これは普通の人の身体を短時間でパワーアップさせる薬剤で、昔の魔法師が助手育てるために作ったらしい。
「将来の力を前借りして、今の強さを引き出す…まるでドーピングだな。でも、この危険な世界じゃ、こういう選択肢も必要かも。」
レシピは割とシンプル:
鉄蒺藜の根茎 + 狼の血 + 銀葉草のエキス = 体質強化薬剤
問題は材料集め。鉄蒺藜は荒野に生えてる植物で、狼の血は新鮮なのが必要。銀葉草は結構レアな魔法植物だ。
「鉄蒺藜なら城の外で探せるかな。狼の血はハンターに頼むか運試し。銀葉草は…マジで手に入れるの大変そう。」
ルーンは頭で計算。工人の日給なんてスー硬貨数枚。こんなんで材料揃えるの、めっちゃキツい。
「金稼がないとな。ゴミ場で働くだけじゃ、1年かけても材料代貯まらねえよ。」
朝、雨がガラス窓をバチバチ叩いて、薄暗い光の中で水の筋がビーッと流れてる。
ルーンは机に座って、目の前に二つのものを広げた——血のシミだらけの暗赤色の日记と、ボロボロの『神秘学入門』。
この神秘学の本、工場の図書室の隅っこで偶然見つけたやつ。初心者向けだけど、この世界の超常的な力について基本的なことわかって、だいぶ助かった。魔法回路、霊視、儀式の魔法陣…こういう概念が頭の中でだんだん繋がってきた。
「本によると、古代の遺物には大体、残留魔法の波動が残ってる…」ルーンは日记をパラパラめくりながら、神秘学の知識と照らし合わせる。「日记の元持ち主が書いてた『大事なアイテム』、たぶん何かヤバい魔法道具だな。」
日记の記述をガッツリ読む。元持ち主の乱雑な字でこう書いてた:
「デヴィルが銀の護符を見せてくれた。見たことないルーンがビッシリ刻まれてて、触った瞬間、意識の奥で何か目覚めた気がした…」
ルーン、眉ひそめた。『神秘学入門』によれば、意識に影響するアイテムって超危険で、邪神崇拝や禁断の魔法に関わってる可能性大。
さらに読み進める:
「今日、また古董店行った。デヴィルが言うには、この護符、沈んだアトランティス文明のものらしい。ルーンを解読できれば『真の知識』が得られるって…でも、代償については何も言わねえ。」
「沈んだ文明…真の知識…代償…」ルーン、ブツブツ呟く。このキーワード、神秘学の本にあった警告を思い出す——禁断の知識追い求めると、ヤバい代償払うってさ。
日记の後半、どんどんグチャグチャになって、恐怖と狂気が滲み出てる:
「奴らに見つかった! 黒いローブの連中…護符を狙ってる…いや、俺を欲しがってる! あの呪われたアイテム手に入れてから、俺、奴らの儀式の一部になっちまった…」
「隠さなきゃ…絶対渡さねえ…黄昏の召喚…深淵の囁き…」
ルーン、日记をパタンと閉じて、考え込む。この世界、想像以上に危険だって、この間の勉強でよーくわかった。邪教、禁断の儀式、古代の邪神…こんなの、普通の人間じゃ太刀打ちできねえ。
「でも、俺が何もしなかったら…」窓の外の雨見ながら、「そのうち、ルーン・ウィンスターがまだ生きてるってバレるぜ。」
それに、日记の最後のページによると、邪教の連中、なんかデカい儀式を計画してるらしい。止めないと、もっとたくさんの人が犠牲になるかも。
ルーン、立ち上がって頭整理。いま持ってる情報0情報は:
元持ち主が古董店でヤバい魔法アイテム手に入れた。
そのアイテムが邪教の注目集めた。
邪教は元持ち主を儀式に使うつもり。
古董店のデヴィルって店主、もっと詳しいこと知ってるかも。
「まず、デヴィルがまだ生きてるか確かめなきゃ。」ルーン、独り言。「もし邪教に消されてたら、线索はそこで途切れる。でも、もし生きてたら…」
窓に近づいて、どんどん強くなる雨を眺める。東区の通り、雨のカーテンでめっちゃ暗い。遠くの工場の煙突、白い煙吐いてて、なんか不吉な雰囲気。
ルーン、大きく息吸って、決心した。外出の準備始める:
まず、『神秘学入門』にあった基本の護符——塩一摘み(低級な邪霊を追い払うらしい)、銅貨一枚(金属が一部の魔法を乱す)、それと水の小瓶(臨時の護符書くのに使える)。
しょぼい護符だけど、ないよりマシ。本格的な魔法の力がない今、慎重さが一番の武器だ。
ルーン、ボロボロの黒いコート着て、日记と護符アイテムを内ポケットにしまった。出る前、鏡の前でちょっと止まる。
鏡の中の若者、数日前よりやつれてるけど、目にはなんか強い光が宿ってる。この間の勉強でわかった。この危険な世界じゃ、知識が力なんだ。
「もう巻き込まれちまったんだ。後戻りなんてねえ。」鏡の自分に言い聞かせる。
ドア開けたら、湿った冷たい風がビュッと入ってきた。廊下、霉と機械油の混ざった匂いが充満。これ、工人寮の定番の臭いだ。
階段下りるとき、足音わざと小さくした。元持ち主の記憶だと、この時間、ほとんどの工人はもう働きに出てるけど、用心するに越したことない。
案の定、二階の角で、掃除中の老ジョージにバッタリ。老人の背中、曲がってるけど、ルーン見たら心配そうな顔した。
「ルーン、最近、顔色悪いぞ。」ジョージ、箒置いて、「どこか具合悪いか?」
「いや、ただ寝不足なだけ。」ルーン、なんとか笑顔作る。
ジョージ、近づいて、声低くして:「お前、最近、変な本読んでるって聞いたぞ?」
ルーン、心臓ドキッとしたけど、平静装って:「ただ歴史に興味あるだけっすよ。」
「いいか、」ジョージ、急に真剣な顔。「知りすぎるのは危ねえ。特に東区…最近、なんか落ち着かねえんだ。」
「何かあったんですか?」ルーン、すかさず聞く。
ジョージ、周りチラッと見て、誰もいないの確認してから:「鉄匠巷で、この前、また人が消えたんだ。それに…」ちょっと間、「黒いローブの怪しい奴がウロついてるって話だ。」
黒ローブ! ルーン、瞳がギュッと縮んだ。日记に書いてたのと同じだ。
「了解、気をつけます。」頷いて、階段下りようとする。
「待て、」ジョージ、呼び止めて、ポケットから小さな布袋出す。「これ、持ってけ。」
ルーン、受け取ると、中に黒い粉。ほのかに硫黄の匂い。
「除邪の粉だ。」ジョージ、説明。「効くかどうかわかんねえけど、持ってた方がマシだ。」
ルーン、ちょっとビックリ。老ジョージ、見た目よりいろんなこと知ってるみたい。
「ありがとう。」心から礼言う。
ジョージ、手振って:「さ、早く行け。暗くなる前に戻れよ。」
寮のドア開けたら、雨が肩をバシャッと濡らした。コート引き締めて、東区の奥へ急ぐ。