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2.新生活

「…これでよかった」


なんて、独り呟いてみる。飲み明かして、その後皆の出発を見届けたのは今朝のこと。それから宿に戻ってきて、寝て覚めたのが今である。窓から刺す日の色が赤味を帯びてきているのを見るに、夕暮れ間近ほどの時刻であろうか。目覚めて既に一日が終わりかけていることに、小さな失意を覚えている。


「これで、よかったんだ…」


今度は目を覆いながら呟く。割り切れないのは当然か。俺達の関係は、ただ友と呼ぶには深すぎた。幼少から少しの隙間もなく時を共にしてきた俺達は家族同然だった。仲間が側にいて当然だった。だから、独りは慣れない。この寂しさは覚悟していたはずなのに、いざ直面すると、心に空いた穴の中に落ちてしまいそうな気分になった。

酒の毒に侵された重い頭を持ち上げ、吐き気を飲み込みながらベッドの向かいに位置する椅子に腰掛けた。

背もたれにもたれかかって、心臓を重くさせる孤独という名の毒を息に乗せて吐き出す。お陰で、心ここに在らずとさせる孤独感をほんの少しだけ忘れることができた。しかし、細やかなその場しのぎに過ぎないようで、乱れたシーツと掛け布団が視界に主張して、眠る前の記憶が思い起こされる。


皆を見送る時は晴れやかな表情を浮かべていた。なにせ、皆の活躍を簡単に、純粋に期待することができて、それが嬉しかったんだ。そして、久しぶりに皆と対等な気持ちで向き合うことができて、幸せだった。

その表情を顔に残したまま宿に戻り、手早く寝支度を済ませて布団に潜り込んだ。掛け布団が作り出す暗闇が、俺を暗い現実に目覚めさせたことを覚えている。

暗闇の中に皆の背を浮かべた。いつもならその背を追いかけて隣に並んでいたのに、あの時はただ、皆が遠ざかっていくのを眺めることしかできなかった。そうして独りになった現実を直視していると、皆への期待が孤独に変わっていくのが明確に感じられて、ただ寂しくなるばかりであった。

目頭の熱に、頬の冷たさに気付いた頃、己の孤独を認識して、布団に声を押し殺して泣いた。暖かったはずの布団を、冷たく濡らした。そして、これから俺を襲う、皆がいない生活の影に怯えた。

そんな情緒を抱え、どうやって眠りについたのかは分からない。


暗い回想もほどほどに、再び大きくため息をつく。やはり、ダメだな。心が落ち着くことなんてない。今はこの孤独に向き合うだけの気力が掴めない。皆がいないこの孤独の埋め合わせを、どうすればいいのか分からない。

しかし、まぁ、焦ることはないか。仕事を見つけるまでは暇なのだから、この生活への向き合い方をじっくりと探していけばいい。当面は感情に浸っていたとしても、誰も咎めることなんてできないだろう。あぁ、独りなのだから当然か。

落ち着かないから、簡単に着替えて、ひとまず部屋を出ることにした。行く宛などないが、ただ彷徨うだけでも、この部屋にいるより数段と良い。

外に出て、夕暮れの眩しさを再認識する。帰路につく人の流れに紛れて、独りルガリアの町に溶け込んだ。

ーーー

宿を出て少し歩くと、昨日に皆と訪れた飲み屋街に辿り着いた。辺りを観察していると、様々な人種がここに混在していることを知る。

多くは人間。一口に人間と言っても、生まれによって姿が異なる。人間が住む東の地の、北側から来たと思われる色白で背が低めな幼顔の人種や、俺たちと同じく南側から来たと思われる人種や、ルガリア周辺の浅黒い肌をした筋肉質な人種がいる。

そして、その人間族より少し数が劣るドワーフ。身長こそは小さいが、人間を遥かに凌駕する筋肉質な肉体がその存在を強調させる。このルガリア国の近くにドワーフの集落があることを本で学んでおり、鍛冶や金属加工の仕事を求めてルガリアに移住しているのだと知っている。

そして、極稀にエルフの姿も確認できる。肌の白さから一見は北の人種と見間違えてしまうが、北の人種ほど多彩な髪色ではないし、なにより特徴的な長い耳が確認できる。

そんな多様な人種が、種族の垣根を優に超えて交流している。ルガリアは、かつて勇者と呼ばれていた冒険家崩れや現冒険家が多く集まる『勇者の国』なのだ。同じ志を持つ者と結束し苦難を乗り越えてきた経験を有する者が多くいる。そんな経験が人種間を隔てる壁を破壊し、互いの短所を補い合いながら暮らすこの国を作った。


「チビのお前にはわからねぇか!」

「へっ!短小のお前に言われて響く言葉じゃねぇ!」


低俗な会話が耳に入る。会話の主を見やれば、そこには人間が二人とドワーフが一人、外に設置された小さな卓を囲んでいる。決して争っているわけではない。酒を片手に満面の笑みを浮かべて、皆が豪快に笑っている。

昨日は、あんな調子で飲んでいたか。クレイから始まり、フログがえげつない下ネタを言い出して困惑したが、俺も嬉々としてその話に乗っかった。盛り上がるにつれて度が過ぎてしまって、メリアに張っ倒された記憶がある。

僅かに頬が緩む。依然として頭は重たいし、吐き気が時々喉に主張している。

迎え酒でもしようか。今日節度を保って飲めば、明日にはこの二日酔いがマシになると思われる。独りでしんみりと飲む酒は、どんな味がするのだろうか。

賑わう飲み屋を見渡してみる。ほとんどが人に溢れ、とても落ち着いて飲めるような環境には見えないし、一人で入れる雰囲気ではない。

もう少し、歩みを進めた。そうしたら、こじんまりとした出立ちでいて、一際静かな店を発見することができた。

吸い寄せられるように店前に寄り、扉を開けて、店内を見渡しながらカウンター席に腰を下ろした。


「一人でも構わないか」

「何にする」

「ウイスキーを。ストレートで頼む」


店構えの通り店内は狭く、テーブル席が二つとカウンター席が六つ、ダークウッドの壁には剣と盾がかけられていて、暗い色合いが落ち着いた雰囲気を醸し出していた。

店主の額には歳を知らせる皺と大きな傷跡があり、広い肩幅も含めて店主の過去が連想される。強面な様相で、見かけだけで判断するのなら強そうだ。

手早く用意された酒に口を付けて、甘い香りを鼻に感じながら舌を泳がせた。上等な代物だ。飲み込んでもなお、穀物の甘さと香ばしさが口に残る。芳醇な香りが喉から鼻に抜けて、思わずため息が出る。酒と共に並べられたチェイサーを口に含めば、今度は舌に清涼感を与えて心地が良い。


「アンタ、ルガリアに来て間もないな。飲み方がなっちゃいねぇ」


そう言うと店主は、新たにウイスキーを小さな容器に注ぎ、その手に持った。

ルガリア流の飲み方、か。それとも作法なのだろうか。火酒に限らない飲み方が、この国にはあるらしい。


「いいか。一人で飲もうが複数人で飲もうが、一杯目なら必ず、酒を掲げる」


店主に持たれた酒が高く掲げられた。その手には無数の傷跡がチラついている。


「元は飲み相手の健闘を祈るものだった。ここはルガリア、色んな所から多くの戦士が集う『勇者の国』だ。今日を共にした仲間たちも、明日にはそれぞれの道を行く。そんな別れを惜しんで、酒を掲げながら『旅の無事を祈る。無事にどこかで会おう』と言い合ってきたんだ」

「今は形式的に行われているが、やらないと文句を言われるぞ」

「そうなのか」


言われた通りに飲みかけの酒を高く掲げた。そう言えば、昨日のクレイも言っていたか。

《健闘を祈る》

あいつはこの作法を知っていたのだろうか。いや、考え難い。あいつの本心から出た言葉であろう。やはりあいつも、この国に集った勇者の一人だった。

どうか、大義を果たしてくれ。そして再開して、何でもない日に笑い合おう。

掲げた酒が、天井から吊るされていた照明に照らされて煌めいていた。その酒を口に運び、味わう間もなく飲み込む。迎え酒のお陰かは分からないが、二日酔いの気の悪さが弱まっていくのを確かに感じていた。


「アンタも旅人なのか?」

「旅人だった。魔王討伐を目標にして、仲間達と旅をしていた。ちょうど昨日、そのパーティを抜けたんだ」

「なるほど。なら、アンタもこのルガリアに辿り着いてしまった旅人崩れという訳か」

「そうなるな」

「このままルガリアで暮らすのか?」

「ひとまずはそうする。一生ここにいるのかは分からない」

「そうか」


会話が途切れて、残りをいっぺんに飲み干した。やはり、美味い。これだけの代物には、やはり相応の値が付けられているのだろうか。

幸い、高い酒三杯くらいの金を持ち合わせていたから、気兼ね無く次の一杯を求める。


「不躾なことを聞くが、ここは高い店なのか?これだけ良い酒なんだ、相応の値がするだろう」

「いや、そこら辺の店と変わらない。これは趣味なんだ。訪れた奴とこうして会話をする、それだけで十分なわけだ」


提供された酒を再び口に含む。これだけの代物が、他の店の安酒と変わらない値段で飲めると言うのだから恐ろしい。


「それに、稼ぐ宛がここの他にあるからな」

「そうなのか?」

「あぁ。詳しい話はこれから来る奴に聞くんだな」


店の戸を誰かが開閉する音が聞こえた。


「噂をすればだ」


軽く振り返って見ると、色白で、背が低めであり、黄色い髪をした青年がこちらに向かって来ていた。


「お隣、失礼しますね」


青年は琥珀の様な瞳を有し、鼻が特別高いほどではないが、綺麗な鼻筋が顔を際立たせている。

北側の人間なのだろうか。


「マスター、いつもので」


店主は既に用意していた容器に酒を注ぎ、手早く男の前に差し出した。


「マスター、こちらの方は?」

「最近この辺りに来たばかりらしい。アンタ、名は?」

「クラウスだ」

「僕はリンデと申します。以後、お見知りおきを」


青年は酒を高く掲げてから、一杯目を口に含んだ。

リンデと言う名前に聞き覚えがあった。旅の道中、度々耳にしていた一昔前の勇者と同じ名前だ。黄色い髪に幼さの残る顔立ちをしていて、天を凌駕する程の剣才を持ち、雷の魔法すら使う。人々はその者を『迅雷の勇者』と呼んでいた。

噂に聞いていた勇者と同じ名前に、話に似た姿。聞かずにはいられなかった。


「まさか、迅雷の勇者と呼ばれた、あの」

「あぁ、懐かしい話ですね」

「そうです。私は元旅人のリンデ。かつて、人々から迅雷の勇者と呼ばれていた者です」


とてつもない大物だ。旅人であれば知らぬ者はいないと断言できる。クレイが知れば、きっと羨むのだろう。

それはともかくとして、一つ疑念が生じる。魔族支配を掲げていたリンデ一行は、魔族らが暮らす西の地に乗り込み、それから消息が途絶えていたという話だ。死んでしまったのだと考えられていたが、今、俺の隣に座っている。それは良かったとして、なぜルガリアにいるのだろうか。重大な損失があったのだろうか。まぁ、考えていても仕方がない。


「なぜここに?西の地に行ったんじゃないのか?」

「えぇ、行きました。そしてここに移住しました。戻ってくるつもりはなかったのですが、訳がありまして」

「そうだったのか…西の地の制圧はよかったのか?」

「はい。そもそも、皆さんは僕を誤解しています。僕は魔族の征服を目的にして旅をしていませんでした」

「と言うと」

「そうですね…少し、身の上話をいたしましょう」


貴重な話を前にして、酒を少し口に含んだ。場の空気が簡単に掌握されていくのが感じられる。場の流れを容易く変えてしまう存在感に、英雄の強大であることを認識した。


「私はエリス神国に生まれ、そこでとある騎士団に所属していました」


エリス神国は、東の地の北側に位置する大国である。全国民がこの世界を創造したと言われているエリス神を強く信仰しており、そのエリスを祖と名乗るエリス家が統治している。

少々過激な一面があり、宗派の違いを認めず、過去には他教徒を考え方の違いから殺めたという話もあった。そう言う背景もあり、エリス教徒に対して宗教の話は禁句であるとされている。


「そして、訳もなく魔族を憎んでいました。エリス教徒はこの世界を、人間のためだけに与えられた物として教えられるんです。だから、西の地を魔族から取り返さなければならないと強く信じていました」

「そうして騎士として西の地に足を踏み入れ、私は考えを改めることになります」



リンデは酒を口にする。口の中で波打つそれを飲み込み、話を続けた。


「そこには、人間と同じように生活し、笑い合い、僕たちに怯える魔族の姿がありました。悪しき存在と信じていた魔族たちは、人間と変わらない生活を送っていたのです」

「あの魔族が、人間と同じ?」


思わず口を挟んでしまった。なにせ、考え難いことだから。魔族は人間を殺すことに悦を感じ、人々を襲う、野蛮な存在なのだ。リンデの言葉を借りるのであれば、悪しき存在である。

リンデは前のめりになっていた俺を横にして、粛然とその口元に指を添えた。

空気を発する音が、俺の体を硬直させる。「黙れ」とでも言われているかのようだった。

「いいですか?」なんて微笑み、話を続ける。


「それからというもの、僕は魔族を殺める度に酷い罪悪感に苛まれてきました。それが堪らなくなって、騎士団から逃げ出し、東の地に戻り、旅を始めたのです」

「国にはもう、居られませんでした。当然です。憎むべき魔族に同情してしまって、仕事を放棄したのですから。だから、僕は宛もなく彷徨いました」

「そして、旅をしながら『魔族と人間族が手を取り合う術はないか』と考え続けていました」

「しかし、一向に良い考えが浮かばなくて、私は西の地で困っている人々を助け続けました。時に内乱を鎮め、時に人々を襲う魔物を殺し、時に人々を殺す魔族を殺めました」

「それが今の逸話となっているのか」

「はい」


リンデが旅をしていた理由はだいたい把握した。しかし、魔族と人間の平和を目指す、か。バカバカしい。平和を壊しているのは、魔族共であると言うのに。


「そうこうしている内に、魔王を殺さなければ平和は訪れないと結論づけました。もちろんエリス国が関係している部分もありますが、この諍いは、魔王が引き起こしているものに他ならないのです。だから、僕たちは西の地に赴きました」

「僕はそこで、一人の少女と恋仲になります」


酒を口に運ぶ手を止めた。

西の地に行って、そこで少女と恋仲に、か。つまり、魔族と恋愛をしていたと言うことになるが。


「その少女が居た村は、人間である僕たちを憎みながらも受け入れてくれるほど寛大な所でした。そこを拠点にして様々な情報を集めていたのですが、次第に平和な暮らしへの憧れが強くなっていきました。僕を慕う少女と多愛のない話をして、何でもない日を過ごす…それがただ、幸せでした」

「そして…」


リンデがいっぺんに酒を飲み干す。


「僕はその少女との間に、子供を授かったんです」

「はぁ」


思わず気の抜けた声が喉を通過していた。あの魔族と、下賤な魔族と、子を作る。考え難い。


「生まれてきた子供は、不思議と人間と同じ姿をしていました。青い肌ではなく、白い髪でもない。人間でした」

「僕たちは子の未来を案じました。この子は他と違うことにどれほど苦しむのか、人間が魔族から憎まれていると気付いたらどう感じるのか、そんな問題は想像に難くありません」

「だから、私はこのルガリアに移住したのです。子と共にね」

「…そうか」


少し、嫌悪してしまった。あの英雄が、魔族なんかと交わっていたのか、と。

俺は魔族が憎い、嫌い。幼少時に父を殺された件もあるし、旅の道中、出会ってきた魔族は人間に不幸をもたらす者ばかりであった。奴らは人殺しを楽しんでいる。略奪を嬉々として行っている。野蛮な生態だ。だから、旅を辞めた今でも魔族に対する憤りは消えない。魔族なんて滅んでしまえばいい。


「僕が西の地の制圧を目的にしていたと言う話は、とんでもない勘違いです」

「そうか、わかった。悪かった」


気が悪くなって、残りの酒をいっぺんに飲み干した。店主に次の一杯を求める。


「クラウスさんは、何を目的にして旅をしていたんですか?」

「魔王討伐だ」

「僕と同じなのですね!」

「違う。俺は、魔族への復讐を目的にしていた」


提供された酒を口に含む。酔いが回ってきて、ウイスキーの香りが薄れ、舌を熱くさせるだけになってしまっている。


「俺は幼い頃、父を魔族に殺された。そこから魔族への憎しみが強くなっていった。出会ってきた魔族はどいつもこいつも、人の不幸ばかりを考えるような野蛮な存在だった。そんな種族を、生かしておける訳がない」

「しかし仲間たちは、お前と同じように平和を目的にして魔王討伐を目指していた。その目的の違いに耐えられなくなってしまって、今、ここにいる」


再び酒を口にした。

しばらく沈黙が続く。互いの考え方が大きく違っていると分かって、かける言葉が見つからなかったのだと思う。

見兼ねた店主が別の話題を提供した。


「まぁ、堅苦しい話はなしにしよう。リンデ、お前の仕事を説明してやれ。アンタも仕事が必要だろう」


確かに、いずれは仕事をして生活資金を稼がなければならない。俺に向けて紹介させるということは、俺にも出来るような仕事なのだろうか。


「僕はとある自警団に所属しています。とは言っても、戦うことなんてほとんどないですよ」

「自警団なのにか?」

「はい。この国には腕自慢が多くいるので、兵団や騎士団は飽和状態にあるのですよ。それに、時々魔族が襲来することはあっても、ほとんどは平和なんです」

「それで収入が得られるのか?」

「まぁ、仕事を選びませんからね。警護、見回り、魔物討伐に、農家の手伝いだってやっています。どんな依頼でも、人道に反しない限りは遂行するんです」


なんでも屋のようなことをしているらしい。話を聞いている限り、どの依頼にも体力が必要そうだ。


「あ!明日、とある商店の物資を運ぶ依頼が入ってるんです。人手が足りていないので、クラウスさんもどうですか?」

「日雇いということか?」

「はい。もちろん、報酬もありますので。それに、誰かの役に立つ嬉しさは、旅をしていたあなたにもお分かりでしょう?」


断る理由もない。暇なのは明白であるし、金が稼げるのであれば好都合だ。それに、ここでの仕事を体験できるのは、この先の仕事選びに役立つと考えられる。なんて、合理的な理由ばかりを述べているが、本当は家で腐っていたくなかったからに他ならない。


「なら、ぜひ申し受けたい。時間と場所を教えてくれるか」

「それでしたら、明日、昼の鐘が鳴るまでにこのお店の中で待っていてください。僕が案内します」


ルガリアでは日の出、日が一番高くなる頃、日の入の頃に鐘で合図がされている。

集合時間には随分と余裕があるらしい。


「では。明日、共に頑張りましょう」


リンデが酒を高く掲げた。俺もそれに倣って掲げ、口に運んで残りを飲み干す。


「俺はこれにて失礼する。お代は」

「あぁ、僕が出しますよ。新たな仲間への細やかな祝いです」

「いいのか?」

「はい。使いどころがないのもありますし」



その好意に甘えて、重りのような頭に軽く体を揺られながら、宿に戻ってベッドに入った。

月明かりが微かに照らす部屋の中で、仰向けになりながら手を高く掲げる。


皆、早くも生活の目処が立ちそうだ。クレイ、俺は迅雷の勇者に会ったぞ。俺が聞いても仕方がない話を、お前に聞かせてやりたかった。皆の方は、滞りなく進んでいるか?あぁそうだ、まだ一日しか経っていないんだ。


手を布団の上に落とし、瞼を下ろして明日を望んだ。

布団を抱き抱え、その温もりを皆と重ねながら眠りについた。

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