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第八十六話※微グロあり(虫)

 廣谷は呻いていた。

 廣谷は泣いていた。

 廣谷の顔はこれでもかと酷く憂鬱な顔へと歪んでいた。——理由は簡単。


「も゛う゛い゛や゛だ……」


 手袋をした状態で廣谷は巨大なミルワームをせっせせっせと焼却炉へと運んでいた。焼却炉はスコルピウスの部屋の奥にあり、廣谷はミルワームの群れに怯え叫び声をあげながら奥の焼却炉に進み、死したミルワームを何度もずるずると引きずり焼却炉に投げ捨てる作業を繰り返してた。ミルワームを運んでいると腐臭が、焼却炉にミルワームを投げ捨てれば焦げ臭い腐臭が廣谷の鼻と精神を傷つけていく。そして更に廣谷の精神を傷つけている要因の一つとして——この一連の作業は廣谷だけしかやっていないということ。シロもスターも、試練を与えたスコルピウスでさえ誰一()として廣谷を手伝うものはいなかった。

 最初はなぜ自分だけなんだ???!! とはんば発狂気味に廣谷がスコルピウスに問いかけたが、スコルピウスは試練だから~の一点。そんなことで廣谷が折れるはずもなく何度か抗議したが返事は変わらず「試練だから」——折れるしかなかった。


「いやだ……いやだ……」


 運んでは捨てて、運んでは捨てて――その作業の繰り返しを二十回程度やり終えてからようやく死したミルワームがなくなった。


『わーい! 死んじゃったご飯全部なくなった~~ありがとう~~!』

――むりむりむりむりむり。


 試練を終えた廣谷に対しスコルピウスは喜び廣谷は感謝の言葉を述べたが、廣谷にその言葉が耳に入ることなかった。精神ダメージが最大にまで達した廣谷はミルワームの群れを裂け出入口へと向かい、部屋の外へ逃げ出そうとした。


「おっと」

「っ~~~!!!!!!!!!????」


 逃げ出そうとした廣谷をスターは引き留めた。


「廣谷様。駄目ですよ」

「も゛うっ、試練は、終わっただろ!!」


 腕をスライムへ戻したスターは必死に出入口に手と足を延ばす廣谷の胴体にスライムの腕を巻き付かせ、逃げ出さないようにこれ以上先に進ませないようにした。

 じたばたと廣谷はスライムから抜け出そうともがくが、粘着が強く剥がれる様子がなく廣谷は瞳に涙を溜めた状態でスターに悪態をついた。そんな二人の様子をスコルピウスは羨ましそうな様子でじたばたと暴れる廣谷に話しかけた。


『試練は終わったけどさ~。最後に一つ聞かせてくれない~?』

「なんっ、だよ!」

『主の名前教えて?』

「姫条、廣谷!!」


 スコルピウスの質問に廣谷は食い気味に振り返ることなく答えた。もうないはずの臭いが鼻を刺激しているような、掴んでいないはずの感触が今も手に残っているような気がしてしまう。ここから離れればそれらはなくなるような気がする――と廣谷は思った。


『”姫条”……主~ありがとう~~もう行っていいよ~~』

「言われなくてもっ!! ッいった!!!!! スター! 離すなら離すって言え!」

「申し訳ありません」

「こっち見て言え」


 許可が下りたことでスターは廣谷の体からスライムを引き離した直後、廣谷はべしゃっと地面に体を打ち付けた。ずっと逃げ出そうと出入口へと体に力を込めていた為、引き留めていたモノがなくなった時に体の勢いを止められるわけもなく、バランスを崩した結果がこれである(体を打ち付ける)

 体を打ち付けた衝撃に廣谷は痛みに呻くより、先にスターに怒りをぶつけゆっくりと立ち上がりながら、廣谷に目もくれず試練の間から出て行くスターに何度も文句を垂れた。


『姫条、姫条か~~~……これって偶然? それとも必然?』


 扉が閉まった後スコルピウスは一()、大きな独り言を呟いた。

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