第八十五話※微グロあり(虫)
中央に戻った二人と一匹は休憩を挟むことなくすぐさまⅧの「スコルピウス」の道へと進んでいく。道中会話はなく少し気まずい空気を含んだまま先へ先へと歩を進める。
——スコルピウス、さそり座……どうだ……さそりで来るか……? さそり以外か……?
シロの上で廣谷は考えていた。スコルピウスと名付けられたモンスターは何なのかと。これまで出会った十二星座達の中アリエス、タウルス、ゲミニ、ヴィルゴの名を与えられたモンスター達は、与えられた星座との関連性が廣谷には想像つかない。ヴィルゴの性格がかろうじて星座に関わっているだろうと思う程度。逆にカンケル、レオ、リブラの名を与えられたモンスター達は、与えられた星座との関係性は一目で理解出来た。出来はしたがスコルピウスの名を与えられたモンスターが何なのかどうかを判断出来る材料には全くと言っていいほどならない。廣谷に出来ることはどんなモンスターが来ても大丈夫なように心構えをすることだけ。
スコルピウスの道へ進んでから時間にして七、八分。廣谷の視界に試練の扉が映った。扉を開ければスコルピウスと出会うことができ試練が始まる。
「試練の内容とか、スコルピウスの見た目とかは……」
「教えませんよ」
「だよな……」
扉を開ける前にスターへ視線を向けスコルピウスについて何か教えてくれるかどうか微かな希望を抱き問いかけたが、悲しきかな。視線を合わされず食い気味に回答拒否されてしまった。教えてもらえないのであれば対策も練れないし、もはや廣谷に出来ることは本当に心構えだけしかない。「はぁー」廣谷は何度も深呼吸をし「何が来ても驚かない、何が来ても驚かない」と自分に言い聞かせ――扉を開け放った。
「——ッうわああああああああああああああ!!!!!!?????」
『えっなになになに????』
扉を開け廣谷の目に映ったモノ――――巨大なサソリと、地面を埋め尽くす茶色の、うぞうぞとうごめく『ミルワーム』の群れ。
――これは聞いてない!!!!! 聞いてない!!!!!!! きっっっっしょくわる!!!!!!
スコルピウスが何なのか以前の問題。ミルワームの群れ(普通の比べて妙に大きい)が地面を覆い隠しうごうご、うごうごと動き回っている。グロテスクなその光景に廣谷は思わず後ずさる。気持ち悪い。気持ち悪い。きもい。気色悪い。廣谷の思考が全てミルワームに寄せられてしまう。
「ウワ…………」
「わ、ふ……」
『わ、わぁ…………』
廣谷の隣からスコルピウス内の光景にドン引いているスターとシロの声が聞こえ、同じく後ずさる音がした。
『えーなに~? あ、キミってもしかして~みんなが言ってた新しい主~?』
「ウ゛ワ゛…………」
ドン引いている廣谷一行にスコルピウスはずるずると廣谷に向かって陽気な声で話しかけた――ミルワームを食しながら。その光景に廣谷の背筋がぞわぞわぞわっと悪寒が走る。
――むり。きもちわるい。
「あ、の、それ、何」
『何って、ご飯だけど。あ、食べる~?』
「いい!! いらない!! いらない!!!!!」
『美味しいんだけどなぁ~もぐ』
「う゛っ……」
うごめくミルワームを口に入れむしゃむしゃと食す光景がグロく廣谷はここから去りたいと思った。だが、まだ試練を受けていない。始まってすらない。
「す、スコルピウス。この方がし、試練の挑戦者です」
「ムーンスタァァァァ!!!!!」
「すぐ終わらせればいいのです」
「なっ、なっ……」
『じゃあ新しい主だね~~! スコル頑張っちゃうぞ~~むしゃ……それじゃ試練だね~~』
――一回それ食べるのやめてくれ!!!
試練なんて諦めてしまえばいいのでは? と廣谷が思うのと同時にスターが廣谷の腕をがしりと掴み、スコルピウスに向かって廣谷が次なる主になる試練をしろと遠回しに訴えた。裏切りのような行為に廣谷は思わず叫んでしまう。試練の主であるスコルピウスはそんな二人の掛け合いを呑気に眺めてから、嬉しそうに手(?)を上げる。
『スコルの試練は~~~ズバリ!!』
――虫は嫌だ虫は嫌だ虫は嫌だ虫は嫌だ!!!!!
廣谷の願いは。
『スコルのご飯なんだけど~死んじゃった子がいるんだけど、アレ捨てて来てくれない~~?』
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
悲しきかな。叶うことはなかった。
喉がはちきれんばかりの叫び声を廣谷は上げた。上げざるを得なかった。




