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第七十八話

「風邪の治療方法。体を暖かくして眠る。あとは――食事、環境ですね」


 リブラの試練から出たスターは廣谷の様子を思い浮かべながら考え込んでいた。記録に残っているリナの様子を思い浮かべ、彼女が寝込んだ際に何をしていたか、何を呟いていたかを知ろうとする。


「……温かい食事。そうでした。人間は温かい食事が必要でした。危ない所でした。気づかなければ生肉を渡していた所でした。――あ。風邪に生肉は駄目でしたね。お腹を痛めてしまいます」


 リナの様子を見て、スターは反省の言葉を発した。

 中央の部屋まで行き、スターは立ち止まる。ほんの少し不安を感じているような表情をしており、スターは唸る。


「……なにが、いいのでしょうか。私には、よく分からない。スライム様の記憶に風邪の際にするべき情報がない。このままでは廣谷様が死んでしまいます。どうすればいいのでしょうか」

 

 俯き、スターは考える。何か策はないのか。何か調べられるものは――


「……廣谷様が使っていた、スマホ……」


 スライムの記憶にあった廣谷がよく触っていた何か――スマホのことがスターの脳裏に浮かんだ。もしかすれば、もしかしたら何かに使えるのでは? と思い至り、スターはリブラの試練まで走って戻った。

 そして扉を開け、驚いているリブラを無視し廣谷に近づきスマホを探す。


『え、ちょっと何もう戻ってきてるの?? 何? もう治療するの??』

「いえ。少し気になることがありまして。――見つけました」

『なにそれ』

「秘密です」


 スマホを見つけ、スターはリブラにお辞儀をして去っていく。その後ろ姿をリブラは不思議そうに眺めていた。


『……可笑しな子。本当にあの子がこのダンジョンなの? そうと思えないんだけど』


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