第七十三話
「残り5名の試練を無事達成すれば廣谷様は晴れて私のマスターになりますね」
「そうなるな、なあこの後に出てくる奴らについて教えてもらうのって――」
「それは出来ません」
「だよな……」
スターと雑談をしながら廣谷はいつものように中央に戻る。
冷めたように答えるスターに廣谷はやれやれと呆れた様子を見せつつ、別の話題に話を切り替えた。
「君はなんで女性の体をしてるんだ。君に性別なんてないだろ。ダンジョンだし」
「私を創り上げたリナ様が女性でしたのでベースにさせていただきました。そして廣谷様そのような私に性別がない。など決して発現しないで下さい。私でも傷つく場合があります」
「場合かよ」
悩むような仕草を作りつつ語った言葉に廣谷は冷めた瞳をスターへ向けた。
「私に命はありませんでした。ですがこうして生を得てダンジョンであった時とは違う思考を抱いています。故に感情を育てている赤さん状態――というものです。ですので、場合という発言になりました」
「赤さん」
「はい、赤さんです。リナ様が言っていました、赤子を可愛く呼ぶ名として赤さんと」
――さん呼びは可愛いのか……?
首を傾げる廣谷を気にする事なくスターは言葉を紡ぐ。
「私はこれから廣谷様、そして十二星座の皆様方と交流する事で私は人らしくなります。その未来を思考するだけで私は言葉に出来ない高鳴りを感じています。これは嬉しい――というものでしょう」
「まだ僕とヴィルゴオネエサマとしか話してないだろ。なんでもう感情を理解してるんだよ」
「建物歴が長いので沢山の人を見ていましたのでそれを想像し言葉にしました。適切な言葉だったようでよかったです」
頷くスター。廣谷は呆れつつだけどもたまにはこんなのも悪くはない——とほんの少し思っていた。
そうして試練はようやく半分を終え、切り返しのⅦの「リブラ」へ移行する。




