幕間⑤
「どーしてこんな面倒事抱えちゃうの? 自分の事ながら意味わかんなすぎ」
リナは一人で自由に生きていた時より大勢のモンスターと共に行動している事を疑問に思っていました。
理解していようとも、どうしても彼女は助けを求める存在を見捨てる事が出来ない。
絶対にしない! と頑固たる意思を持っても先にリナが折れてしまう。
結局の所、嫌だと否定したとこで彼女の本質は善人なので――――。
「ほんとーにこんな所にモンスターいるの? 嘘つかれた?」
こうしてまた面倒事に首を突っ込んでしまうのです。
事の発端はたまたま寄った村が昔話でよく聞く鬼のようなモンスターの集落だった。
鬼達はリナを目にすると一様に彼女に急接近した。
殺される! と思ったが鬼達は敵意を出す事や攻撃の構えすら取らない事にリナは「敵とは思われてない?」と疑問に思ったのも束の間。
『ニンゲン、オマエハナニモノダ』
『まるでテンシサマみたいだなァ、オマエはオレタチのテンシサマか?』
『なぁぁに言ってんだ! 俺達に天使サマなんて明るい存在いる訳ねぇぇだろ! こん方は悪魔だぜ! きっと俺達が困ってるのを知って助けに来たんだぜ!!』
『オオオオオアクマ! アクマ! アクマ!』
「ちょっ、アタシは天使でも悪魔でもないんだけど!!? アタシはただの人間! モンスターじゃない!」
勝手に盛り上がり歓喜に満ちた咆哮を上げながら叫ぶ鬼達にリナは怒った。
だが鬼達は彼女に怒りに耳を貸さず、口々に彼女に助けを求めた。
曰く。自分達とは全く違う同族が居る。
曰く。鬼で、男なのに小動物が好き。
曰く。男な癖に女みたいに振る舞ってる。
曰く。争いが好きな鬼の一族な癖に――――平和主義である。
鬼達は口々にその異端者をリナに伝え、自分達と同じ普通の鬼に戻してほしいと縋った。
初対面で、名も知らない相手にそれを伝える。リナはそれだけでアタシに頼む程切羽詰まってるの? と疑念を抱いた。
そうしてリナは鬼達の集落から離れた洞窟に立ち尽くし、現在へと戻る——。
「確かめるのも大事だけど、アレって詐欺よね~。ま~詐欺だったら許しを請うまで過酷な事させよっと」
どういう事をさせようかな~っと考慮しているリナの耳に土を踏む音が聞こえた。
「ん?」
視線を洞窟の中へと向ける。そこから何かの影がリナに向かって来ていた。
そこでリナは「これで嘘はつかれていないっと」と呑気に逃げずに考えていると、その影が姿を現した。
それは未来よりはるかに見栄えが悪く、所々糸が出ている可愛らしい服を身に着けた鬼の姿だった。
『あら! 人間が来るなんて本当久々だわぁ~初めまして! あたしはルーゴ! あなたの名前は?』
「…………なに、それ」
リナはポツリと言葉を溢した。
恐怖からの言葉ではく驚愕だけが含んだ言葉として。
彼女の瞳には光が宿っていた。そして捲したてるように言葉を鬼へと投げつける。
「なにその服~~~!!!! え、お姫様じゃん!!!! あっ、待って名前? リナよ! ねえその服凄く可愛いんだけどあんたが作ったの?」
『え!? 分かるのぉ!!? でもあたし練習しても全然上手くならなくて……本当ならちゃんとした服でお出迎えしたかったのよぉ! でも可愛くないのばっかりで、これしかなかったのよぉ……』
「え~~!!? 全然そんな事ない! 一目見て何を元に作ったか分かったし、しかも自作でしょ? うっっそ凄すぎ」
『え、え? 嘘、そんないい言葉貰っちゃっていいのぉ? 嬉しくて涙が出ちゃうわぁ』
これがリナと後に「ヴィルゴ」の名を冠する鬼との出会い。
別名——可愛い物大好き同盟の始まりでもあった。




