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第六十二話

前提条件『台詞』[台詞]

[台詞]は『台詞』の翻訳。分かりやすく愛嬌があるようにしてます。え!? 最初からそうしろって?

やれるならやりたいだろう?

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『……其の気配。理解、双子の星の試練。叶えもうたか』[この気配。理解した、ゲミニ達の試練叶えたんだね]

「君が……カン、ケル……??」

『然り。我、蟹の星の名を継ぎし者。第Ⅳの試練を見極める者也』[そうそう、俺カンケルの名を継いだ、第Ⅳの試練の挑戦者を見極める者だ]


 ――個性が……強い……。

 カンケルの話す言葉一つ一つが古文のように堅苦しい。それでいて一つ一つが重い声圧。

 見た目は可愛らしい(?)可愛らしいカニだが、声圧と言葉で廣谷はギャップを感じてしまう。


『汝、試練を受けし者か? 或いは傍観せし者か?』[お前、試練を受けるの? それとも見るだけ?]

「え? あぁ、一応挑戦者だ。試練をやりきらないとここから出れないし、ダンジョンの主になってもいいな。って思ってきてる」


 何言ってるんだ? と一瞬思ったがすぐに質問の意味を理解し答えた。

 応える廣谷をカンケルのつぶらな瞳がじっと見定めるかのように無言で見続ける。無言の圧が廣谷にかかり、圧の重さで不快な気持ちになった。

 シワが残ってしまうほどに眉間にシワが寄る。相手がなんの力を持っているのか、何をしてくるのか。それが分からない今廣谷は下手に動けない。そもそも試練失格になってしまったら一生ここから出られず、シロにも会えないのがほぼほぼ確信しているので我慢した。

 カンケルはじっと廣谷を見続けたが突如視線の圧が消えた。見定めが終わったようだった。


『理解。貴殿を第Ⅳの挑戦者として受諾。我試練詳細語る也。端的に語る「我、発見せよ」』[理解した。君を第Ⅳの挑戦者として認める。俺今から内容語るよ。ずばり、俺を見つけて]


「……発見? えぇと、君を、発見? 何故?」


 ――言い方なんとかしてくれないか。飲み込みに時間がかかる。

 廣谷の疑問にカンケルは相変わらず古文のようでいて、重い声圧で語る。

 カンケルについたつぶらな瞳が全く似合わないと言い切れてしまうほど言葉が重い。


『我、特異力無色な存在と成る。故に同士、我発見困難』[俺の能力透明化なんだ。それで試練の皆から見つけられにくくて]

「は、はぁ……」

『故に貴殿、我発見、特異力対策。望む」[だから君に俺を見つけて、能力の対策をしてほしいな]

「あぁ最後はすんなり飲み込めた……というかそれなら僕の能力で出来るかもしれない」

『真か?』[本当か?]


 ――能力の対策より、発言の方を先になんとかしたらいいんじゃないのか……? ここのやつら、ちゃんと理解してるのか?

 能力よるカンケルの言葉使いを気にしてしまう廣谷。まだ宣言でカンケルの言葉使いを翻訳をしていないので、ゆっくり発言の意味を理解するという現状になっている――のだが。


「ちょっと能力使っていいか?」

『承知』[いいよ]


 挙手しながら廣谷は言う。カンケルの見えづらい体が微かに動いたような雰囲気を感じ、多分頷いたって事なんだろうと楽観的に考えながら廣谷は能力を使った。


「『宣言。君の言葉が分かりやすくなる』」


 流石に試練が終わるまでカンケルの言葉の意味を理解し、応えるのは無理だった。それに手段があるのにしないというのはあまりにも勿体無いと感じてしまった。


「……じゃあ、今から君の透明化の対策の能力を使う」

『承知。期待胸弾む』[いいよ。期待で胸が弾む]


 ――ちゃんと分かりやすく翻訳されてる……。

 言葉使いへの能力に安堵し、宣言する。


「『宣言。君は誰の目からも見えやすくなる』」


 宣言内容に不安を覚えていると、カンケルの姿が段々とはっきりとした形を作り出した。

 1分後、廣谷の目の前には紅ズワイガニのようなはっきり姿が写ったモンスターがいた。

 

『……! っ! っっ!!』


 カンケルは手足を動かし言葉にならない喜びを見せた。その反応からカンケル自身も己の姿をはっきりと見る事はなかったのだろうと廣谷は推測し、その喜びように心が暖かくなった。


『貴殿、感謝……感謝。第Ⅳの試練認定決定。我、迷宮管理者、貴殿を適任者とす』[君、ありがとう、ありがとう! 第Ⅳの試練は合格だ!! 俺、ダンジョンの管理者に君は適任だと思う! する!]

「あ、あぁ、うん……ありがとう」


 ――翻訳との差!!!

 廣谷は翻訳の元気一杯愛嬌全開の内容分に困惑した。

 カンケルのつぶらな瞳がキラキラと光を宿している姿は子供のよう。――カニだが。

 手足を振り回しはしゃぐ姿も子供のように見えた。――カニで、手のハサミが振り回されてる姿は恐怖だが。

 ただ、この心からの感謝に嬉しそうに喜ぶ姿は、例えモンスターであっても悪い気はしない。そう廣谷は思った。

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