第五十三話 番外編②一方その頃
「わぅぅ、きゅぅん……」
寂しげな鳴き声がダンジョン内部に響く。とぼとぼと落ち込んだ様子でシロは進む。
廣谷が穴に落ちてから数日が経過していた。その間シロはモンスターを狩り、食べる事で命を繋いでいた。
『――わん!!!!』
『――は? っなんで!?』
『わ、わん! わっん、わんわん!! わおーーーん!!!』
あの時、廣谷らしくないなぁと思っていたのに、そういう事もあるよね! と納得してしまった結果引き起こされた廣谷の落下。
穴があったのは一目瞭然だった、だが廣谷はそれに気づかずがむしゃらに怒りのままに我を失っていた。
シロは何度も呼びかけていた。何度も、何度も、何度も――だけど声は届かなかった。落ちる直前の声も届いてなかったのかなぁとシロは思った。
「—————!!!!」
「ゥゥゥゥウ……ガルルルル、ガウッッッ!!!!!!」
叫び、襲い掛かってくるモンスターにシロも殺意をむき出しに唸り、駆ける。
「ハッ、ハッ、ハッ……けほっ、くぅん………」
傷つけ、殺し、食らう。生きる為に、彼に出会う前となんら変わりない行為をシロは行う。
殺せば殺すほど、傷つけば傷つくほど、純白で、ふわふわだった毛並みは見る影もなくなっていく。
——きれいにしてもらったのに。
そう思えど、生き残るより大切な事はない。シロは体を動かす。もしも彼が生きていたなら――と少しの淡い希望と、そうすれば動ける理由になるという思いで。




