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第四十三話

 事件が起きて数日が経ち、廣谷はスマホを開きニュースを確認する。いまだに怪我の話が上がっており、廣谷は「まだ収まらないのか」と呟いた。

 

「この状態じゃ下手に外に出れない。……仕方ない、ダンジョンでも行くか。まだ僕の場所までは誰も来てないはず」


 廣谷はスマホで自分がいるダンジョンの40階を検索にかける。件数なし。その文字が現れ、廣谷はまだ40階には誰も来てない事に安堵する。

 

「能力見られて、それで今回の事件の犯人が僕だと思われたら終わる。気を付けて進まないと」


 そう言って刀と銃を持ち、武器アプリで買ったヘッドフォンを耳にかける。


「これが武器なのか怪しくなってきた。どちらかというなら道具じゃ……?」


 アプリで買ったヘッドフォンは危険なモンスターの声を遮断するという物で、廣谷は耳にかけて喋る。

 ヘッドフォンをつけているのに、声がちゃんと聞こえる事に廣谷は驚き、シロに話しかけるとシロの声も、翻訳の声も通常と同じように耳に入ってきた。

 廣谷は、本当にあいつの声を遮断してくれるのか? 危険のラインに入るのか? と不安になりつつ、スライムを持ってシロと共に40階の扉を開ける。

 ランタンを腰に差して、影が増えた時に対処がしやすいようにシロの先を歩く。

 片手で刀を持ち、もう片手でいつでも銃を取り出せる状態にして先に進む。

 そして数分歩いていると影のモンスターが現れる。廣谷は火の銃を取り出し、影に向かって撃つ。

 影は前回と同じように燃えて地面に溶ける。だが二回目の攻撃がある事を分かっている為、廣谷は警戒を解かずに周囲を見渡す。

 そして自身の影が盛り上がったのが廣谷の視界に入った。


「そ、こ!」


 廣谷は出てきた影に向かって刀を突き刺す。目を合わせないように視線を少しずらした状態で何度も何度も刺す。

 影は最後の抵抗の悲鳴を上げるが、廣谷の耳には入らなかった。影はその事に気づいたのかその場で暴れはじめ、廣谷はもっと深くに刀を突き刺す。

 その一撃で影はピクリとも動かなくなりその場で溶け、小銭を残して消えていった。


「よし……これならなんとか能力使わずに進める」


 声が耳に入って来ない事に気づいた廣谷は安堵のため息を吐く。そして小銭を拾いポケットの中に入れる。

 誰かがこの階層に来て、能力を使っている姿を見られた時の事を考え、廣谷は極力能力を使わない事を決めた。

 そうして刀についた黒い何かを払ってから廣谷は先に進んだ。

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