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第三話

「……ねむい」


 廣谷が目を覚ましスマホを開く。時間を確認してから起き上がる。

 そして日課のタイツクを開く。主にダンジョン情報の垢をフォローしており、流れてくる情報に廣谷は目を疑う光景があった。


『死を招く蜘蛛突破者!』

『能力不明の探索者!』


「え。うわ、うわうわうわうわ。拡散されてる。え、家特定されてないよな?」


 苦い顔をしながら廣谷はカーテンを覗く。家の前に人だかりがあり、廣谷は「うわ」と言葉を零した。


「家特定早いんだが。ベランダから出よう……」


 ダンジョンへの身支度をしてから靴を取り、ベランダから抜け出す。

 人だかりを一目見てから去ろうとした時――


「あ! あそこにいる!!」

「うわ」


 一人が廣谷に気づき声を上げる。それに連なるように沢山の人が廣谷を見て走ってきた。


「っ……冗談じゃない! 『宣言、僕の走る速さが上がる』」


 廣谷は宣言し、走り出す。


「速くなった!?」

「追いつかないー!!」


 背後からの声を無視し、廣谷はダンジョンまで走り中に入っていく。

 暫く走ってから廣谷は足を止めた。


「『宣言。速さ解除』……家に帰れなくなった」


 ため息を吐き廣谷は刀を鞘から取り出す。


「生活出来そうな部屋がほしい……」


 そう呟きながら廣谷は壁を見つめる。そして手を壁につけ宣言する。


「『宣言。生活できる部屋が出来る。僕以外自由に出入りできない』……なんて」


 流石にそこまで万能じゃない。と首を降り手を下ろす。そしてまた壁を見ると、先程まで触れていた壁が薄くなって先に道ができていた。


「え。まさか」


 手を薄くなっている場所に持っていくと、手がすり抜けた。

 その事に動揺していると話し声が聞こえた。

 廣谷は壁と話し声の方を交互に見てから唾を飲み込んで壁に入った。

 壁に入ってから少しすると複数人の探索者が見え始めた。そして薄くなった壁に気づかずそのまま先に進んでいった。

 それを呆然と見てから廣谷は手を出す。壁から手が出る。

 そして振り返る。奥に扉がついていて廣谷はそれを開ける。

 そこには廣谷の部屋そっくりな空間があった。

 

「っはは……これ、万能すぎるだろ……」


 あまりの万能さに廣谷の口から乾いた笑いが出た。

 部屋の隣にも扉があり開くとそこはキッチンだった。冷蔵庫があり、それを開けると見知った食材。

 見つけ次第扉を開ける。風呂場。トイレ。生活に十分な物が揃っていた。


「これ、僕が解除宣言しなければずっと生活できるんじゃ……」

 

 その事に気づきゴクリと唾を飲み込み笑みを浮かべる。


「一人の時間があって、好きな時にダンジョンに潜れる。僕以外はここに気づかない。ははっ最高」


 笑い、廣谷は刀を鞘に戻す。


「お腹空いた」


 何も食べずに外に出てしまった為、廣谷は鳴るお腹に手を擦る。

 キッチンに行き適当にご飯を作って食べる。

 味は変わらず、腹に溜まる。本物だとわかった。

 廣谷は食器を片付けてからスマホを見る。タイツクでは未だに廣谷の事が拡散され続けていた。

 画像に自分の姿があり、姿はバレている。廣谷は考え込んでから口を開いた。


「『宣言。身を隠せるマントが現れる』……これならすぐにはバレないだろ」


 黒色のマントが現れ、それを羽織る。フード付きなようで、それで頭を隠す。


「ダンジョンスローライフ。最初からこうしてればよかった」


 好きな事ができる嬉しさに気分が上がる。

 部屋から出て周りに人がいない事を確認してから廣谷は壁から出た。


「行ける所まで行ってみるか。それにしても、この宣言能力、万能すぎる……」

 

 手に入れたと同時に能力の情報が浮かぶ為、使い方は分かっていたが、ここまで出来るとは廣谷は思わなかった。

 絶対。それがどこまで通用するのか興味が出てきた廣谷は、実験台になりそうなモンスターを探しに行った。

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