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第二十九話

「ふぁぁ……」


 ご飯の準備をしながら廣谷はスマホを覗く。タイツクを開きトレンドを見ていると『ダンジョン前』の文字。

 何だと思い見てみると、大勢の人がダンジョン前に集まっている。そんな投稿と写真があった。もう少し詳しく調べてみると、どうやらスライム部屋に行く目的で集まっている投稿を見つけた。


「スライム部屋……あ。俺のせいか」


 廣谷は配信の時にスライム部屋の事を行ったのを思い出す。多分このスライムが欲しいんだろうな。と廣谷はぴょんぴょん飛び跳ねるスライムを見て思った。


「まあ、俺には関係ない」


 そう呟きご飯を食べ始める。


 ご飯と準備を終え、廣谷は20階の壁からダンジョン内に入る。

 水の音がダンジョン内で鳴る中、何か騒がしい声が水のエリアに反響する。21階、22階と降りていくごとにその騒がしさは増していく。

 廣谷はそういえば、25階のエレベーター開通したの呟いたな。とぼんやり考え込む。


「あ? もしかしてこれ、探索者と鉢合わせる?」

「わふ」

『会うかも。匂いが近くなってきてるから』


 ふと、その考えが浮かび廣谷は立ち止まる。そこにシロが鼻を鳴らしながら鳴く。


「まじか。まる猫といい、これ面倒な事になるんじゃ……」


 うーんうーんと考え込み、部屋に戻るか、探索を続けるか天秤にかけ悩む。


「俺が引く理由はないな。鉢合わせたら鉢合わせたで」


 探索を続ける事を決め、廣谷は先に進み22階に降りる。騒がしさが増し、確実に近づいてきているのが分かった。

 そしてスライム部屋に近づくと、ドンッドンッと何かを叩きつけるかのような音が聞こえ始める。


「……適当にやりすごすか『宣言。僕達の姿は見えなくなる』」


 スライムが出たんだろうな。と思った廣谷は透明化を全員にかける。

 そしてスライム部屋が目視できると、部屋に人が沢山いる事に廣谷は気づいた。

 

「攻撃通用しない!!!」

「能力使え能力!」

「魔法系能力持ち来い!!!」


 沢山の探索者が能力を使い必死にスライムと戦っていた。特に魔法系の能力者は前線に立たされ、攻撃をしていた。そこに他の探索者がスライムに攻撃をしかける。


「硬いと言うか柔らかい!!」

「少しずつ小さくなってる!! いけっいけっ!!」


 騒がしさに廣谷は速く終わらないか見守る。下手に動いて怪我や見つかるよりも戦闘が終わるまで動かない事にした。

 そして――。 


「いけーーーー!!!!」

「やっ……たあああああ!!!!」

「うわっ小銭やべえ!! あ、なんかボール落ちてる!!」


 スライムが溶け、大量の小銭とボールがその場に現れる。それを見て、あのスライム召喚ボール、確定報酬なのか。と思った。

 探索者が小銭とボールに群がっている中、廣谷はシロとスライムをつれてその場を通り過ぎた。


「何とかなったか。さてと、早いうちに25階まで降りるか」


 背後に騒がしさを耳にしながら廣谷はスライムを持ってシロの上に乗り、その場から離れた。


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