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激闘

書き直しました

名乗りを上げると、剣の切っ先を魔獣に向ける。ミシェルの指示に従うように、三十は超えるであろう騎士達が魔獣へと声を昂らせ特攻。そんな中、ミシェルは馬に降り、ヤクモ達に頭を下げた。


「あの時は本当に助かりました」

「いえ。と言うか、ビックリしましたよ。ミシェルさんが、まさか騎士団長だったなんて」


純粋な気持ちでそう言うと、少し照れた素振りをしてから口を開いた。


「私は元々、孤児だったんです。そして、私を貰ってくれた領主・ラインフェル夫婦は子に恵まれませんでした」

「思い出したぞ!!」


割って入るリュカは、喉のつかえが取れたかのような声を出す。


「お前さん、カルマさんの孤児院にいたヤツじゃな!?ラインフェルは確か……後継になる子を探しておった!!」

「なるほど。だから、ヒューランで見た事あるって言ってたのか」

「とはいえ二十数年も前の話じゃがな」


──おいおい。本当に彼女はいくつなんだよ。見た目は十代と言われてもおかしくない。云々思いながらも、二人の話に耳を傾けるヤクモ。


時折襲いかかる魔獣を軽く討伐しながら。


「じゃが、なぜお前さんが囚われて」


貴族。しかも騎士団長を務めるに至るまでの実力者を捕らえるメリットは思いつかない。


「そこら辺の話は、この戦いが終わってからにしましやょう。ただ、お恥ずかしながら……私は()騎士団長。私を支持して付いてきてくれた者は半数にも満たしません」


元々、騎士とは女性禁制。彼女じたいが、イレギュラーな存在であり、それを良しとしない者に囚われたのだろうか──

しかし、領主の娘となれば簡単なことじゃないし、騎士団長にまで成り上がるって事は相当なてだれのはず。一体彼女の身に何があったのだろうか。


「ですので……どこまで持つか分かりませんが、此処は代わりに引き受けます。ですので、私達が凌いでる間に怪物の討伐を!」

「何故それを?」

「ここに来る前に聞きました!ですので、早く!!ヤクモさん達なら、勝てるんですよね!?」

「……あぁ!勝てる」

「──なら!!」


短く頷いて、ヤクモはリュカと視線を合わせる。


「行こう」

「うぬ!!換装・エアリア!!」


そうして、ヤクモ達はテメリオイの元へと最短で向かう事が出来た訳だが──


「テメリオイさん。後は俺が何とかします」

「何とかって……聞いたぞ?坊主、お前にゃ武技が」

「大丈夫です。ましてや、体がボロボロじゃないですか」


テメリオイは既に満身創痍だ。口や目からも血が流れている。毛細血管や臓器がズタズタなのが一瞬で理解出来るほどに。それでも、テメリオイは声や体を震わせながら、ヤクモに歩み寄ろうとする。


その目は力強く、闘志も燃え尽きていない。


「しかし──」

「テメリオイさんは、後方から魔法士達への指示をお願いします」


テメリオイが本気だからこそ、ヤクモもまたブレのない真っ直ぐな視線を向ける。


「…………」


テメリオイが振り向けば、手を編んで心配そうに見つめるミュゼの姿があった。


「お願いします」

「……分かった。だが、くれぐれも無茶だけは」

「分かってます。では、奴の情報を分かる限り教えてください」

「……ぁあ!」



テメリオイから聞いて、現状で把握できるのは奴は各魔獣を取り込んでいる事。体で蠢く魔獣達が各々、攻撃をする意志を持っていると言うこと。そして、あの粘着質な体液が魔獣達を束ねている。明らかに情報は少ないが、状況が状況だ。


敵の動きや特徴を観察する暇なんかありはしなかったのだろう。


二刀を斜に構え、ヤクモは何倍をもある体躯目掛け駆ける。いくら錬聖がかかった防具であれ、あれだけの腕で打撃をされれば衝撃で体の骨は粉々になりかねない。

細心の注意をはらいつつ、今出せる最大の力を振り絞る事が重要だ。


「グギャグガァァァガガガガ!??!」


大地に影を伸ばし作り迫る大腕。鈍い音と魔獣の呻きを散らしながら振り下ろされた腕に視線を向け、駆けながらも間合いに入るタイミングを冷静に見計らう。


「……ッ!!」


直撃する寸前で交わし、踏み込み、一呼吸──シッと鋭い刃音を鳴らして刀を振り抜いた。突風と共に腕から手首が両断され、原型を留めることなくネチャリと広がる。この間、時間にして二秒と掛からず、腕が地に触れる間も与えなかった。


蠢く魔獣の呻き声がする中で、黒い粘り気のある物。スライムの体液が再び魔獣達を取り込む。


「ムァァアルァァァア」

「ヤクモさん!我々が後処理に回ります!ヤクモさんは、気にせずに奴を!」

「……ありがとうございます!」


前衛職の傭兵達は正直、魔剣をなりふり構わず使うに当たった邪魔ではある。が、彼等も同じ志を抱く仲間。無下にしては救われない。それにこれは良い練習だ。無闇矢鱈に煌炎を扱うのではなく、しっかりとコントロールする為の。


「るぁあ!!」


烈風と煌炎を振るえば、やはり力の制御が甘く刀身全体が燃え盛り広範囲に渡り、燃やし尽くしてしまう。


「まだ甘い……」


集中をするんだ。刃先一点に力を集中させるように。

幾度となく刀を振るった。烈風を使い体を削ぎ落とし。煌炎を用いて、肉を燃やす。繰り返し繰り返し。


「まだだまだ!!」


イメージを忘れず、精神を乱さず。目的を忘れず、標的を見失わず。並列して目指すは高み。


「……ッ!?これだ……ッ」


そして掴んだ、煌炎の真髄。盛る炎は一気に刃先に収束し煙が立ち上る。計り知れない高温は大気を揺らがせて、刃に近い種々は燃えることなく消し炭になってゆく。


「グガギカガガガァアマアマグ!?!」


地面をエグりながら、怪物は手のひらを広げてヤクモを襲う。奴も学習をしたのか、片腕に魔獣を密集させている。先程よりも分厚く、先程よりも大きい。さながら、巨大な壁。魔法士の攻撃も全く通らない。当然、勢いづいた攻撃はこの場合、前衛で防ぎ切るのは普通(・・)ならば無理だろう。退避する傭兵達。


「ヤクモさんも早く!!」

「俺がやつの攻撃を防ぐ」

「防ぐって……流石にッ」

「バカヤロウ!早くしろ死ぬぞ!!」

「……ご無事でッ!!」

「ああ。ありがとう」


後顧の憂いもない。口の端から細い息を長く漏らし、半歩踏み込み、烈風を鞘に終い、煌炎を斜に構え中腰となる。柄を強く握り、無我に近い状態に至るヤクモの目には、襲い来る手が非常にゆったりと写っていた。



今から行う斬撃は名もない一振だ。武技も扱えない、前衛職として欠陥品である刀鍛冶師が振るう、技・匠(・・・)とは程遠い一振だ。


──しかし。


此場に於いて最強の一振だ。


「行くぞ化け物」


煌炎が手の一遍に触れ、チッと高い音が鼓膜を掠める。刹那、爆発音が爆炎と爆風と同時に大気を震わせた。


「ググルガガガゴァァァカギガダタヤユ!!?」


片腕が爆ぜた怪物は、それでも牙を向ける。


「そうでなくちゃあな!?」


ヤクモが振るい続けた刀は、いく百の魔獣の肉を立ち。削がれた肉片の奥で見えた黒い怪物。すぐ様、守りに入り、魔獣達を密集し始める一瞬の隙を見て叫ぶ。


「ここ……だぁぁぁぁあ!!」


烈風の速さは、修復の一歩先を行く。


「ぎがゃががががぁぁあ!?」

「これで……おわりだ」


肉を断ち、届いた切っ先。煌炎が黒い怪物の腹部を貫き、火炎柱が天を穿った。


「あ……がっ……」


魔獣達は焼け落ち、怪物を覆っていた黒い鱗の様なモノが剥がれ落ち、本体がその場に倒れ込む。


「これで俺の勝……ッ!?」


上半身裸で倒れる男。その傍にゆっくり歩み寄り、ヤクモは膝をついた。


「貴方はクザ……さん!?一体何が……なんで、クザさんが!?」

「ははは……ざまぁねぇな。結局、俺にゃ何もかも(・・・・)守る力は無かった……。せめて、お前とお前の親父──カルマさんの家位は守って──」


半身が焦げ爛れ、満身創痍の状態。それでも、クザは息からがらに笑みを浮かべていた。彼は一体何を守ろうとしていたのか。

何故、父であるカルマの名を知っていたのか。募る疑問が救出と言う答えを出し、クザの手をつかもうとした矢先──


「坊主!!危ねぇ!!」


テメリオイの声が鼓膜に届く数秒前。ヤクモはクザに胸元を強く押されて後方へ吹き飛んだ。


「リュカ、あれは一体誰だ……!?」


クザの前に突き刺さる剣。その上空に浮かぶ白銀の騎士。正体が全く分からないヤクモが唯一わかる事がたった一つ。

紛れもなく、奴が敵であるという事だった。


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