表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/55

三種族会議【前編】

読んでいただきありがとうございます。ブクマや評価をくれた方々のお陰で毎日投稿ができてます。

「わ、ワレいつの間に子を!?」


 ダンッと、机を叩いて立ち上がるドワーフの長・ダンズ。そりゃあ過去に「ワレにゃあ、奥さんの一人も出来ねぇだろうけどなや」とか「安心しろ! 俺も独り身だ」だとか、勝手に共感認識抱いてたのだから。

 テメリオイに子が居たとなれば、この反応である。実に面白い。笑いをこらえるので精一杯だ。


「いやいや、ダンズさん。これは頭領の冗談ですから……」


 額に手を添えて、ミサはやれやれと溜息をつく。


「ふへ……? じょ!? いや、しってたわ! ワレ、またふざけやがって!! 金槌で引っぱたいてやるぞ、まったく」

「頭領も、意味の分からない冗談おやめください」

「ガハハハ!! やっぱ駄目だった?」

「当たり前じゃないですか。ヤクモ君なんて固まってますよ」


 周りの目線が突き刺さるが、テメリオイ自体は大して気にもしていない。寧ろ、ひりついた空気の方が苦手だ。敵対心や野心を抱いて場に望めば、私利私欲が前へ出てしまう。此処では皆が対等。故の円卓。


 ──一国を担う王ではないのだから。


「おう、すまねぇな!」


 軽い謝罪を済ませたテメリオイは、コホンと軽い咳払いをしてから本題にはいる。


「──の前に! ヤクモ!」

「は、はい!」

「お前、自己紹介まだだったよな?」


 この為に拠点で自己紹介をさせてなかったのだ。リュカの仲間はテメリオイの仲間であり、なにより、カルマの息子なら殊更、大事にしなくては。


 その為にも、ここに居る継ぐ者達(オルデン)や他の人等にも名前や顔を覚えて貰わなきゃならない。と、まあぶっちゃけた所、ヤクモの名を聞けばダンズやフウは、渋々だとしても受け入れるだろうが──


「えっと、はい。そうですけど……」

「んじゃあ、自己紹介頼むわ!!」

「え……あ、ヤクモ=アルクルです。冒険者をしてますが、本業は刀鍛冶をしています」

「アルクル? あら、もしかして」


 エルフの長をつとめるフウが、何かを察したかのようにヤクモを見つめた。しかしいつもの事ながら、エルフ達が正装にしている着物、と言うやつは彼女達の美しさを際立たせるな。


 逆にダンズは素っ頓狂な顔をしている。本当に察しが悪いなこの方は。頭まで筋肉で出来てんではなかろうか。服だって毎度、半袖とかだし。


「……ぷ」

「おい、ワレ。何見て笑ってんだよ!」

「ゴホン! えーヤクモ君は! カルマの息子です」

「カルマ殿だと?それは事実なのか?」


 ダンズがヤクモに問う。キリッとしたその目に嘘は通用しない。普段察しの悪い男だが、仕事柄も相まって人を見る目はこの場の誰よりも長けている。変な誤魔化しをしようもんなら、金槌が誤った使い方をされてしまうだろう。


 テメリオイにも何度、飛んでくるはずがない金槌が飛んできたことか。ミサ曰く「当然の仕打ちですよ……」らしいが。


「えっと……はい。カルマ=アルクルは間違いなく俺の父です」

「ほう」と、ジッとダンズはヤクモを見詰める。


「本当の事を言ってるみたいだな。ヤクモ殿、さっきは威圧した態度をとってすまなかった」


 ここでやっとダンズは椅子に腰を落ち着かせる。絶対に立ってること忘れてたに違いない。


「いえ。俺がこの場に居るのが間違いなのは、合ってますので」

「元はと言えば、頭領が強引に! 連れてきたんですけどね」


 すーぐ告発するんだから。もう、本当にすーぐ。テメリオイは、声に出さずも苦笑いをしながら、鼻頭をかく。


「一つ俺からも良いですか?」

「お? 言ってみ?」

「皆さんは父と関わりがあるんですか?」

「いんや。俺には直接関わりがない。直接だったなら、ダンズかフウ……あ」


 テメリオイは大事な事を忘れていた事に気がついた。ダンズとフウの紹介もまだしていない。ヤクモに彼らの事をしっかり知ってもらう為にも、ちゃんと紹介しなくちゃならない。


「そうそう。そこのとっつあんが、ダンズで、エルフの色っぽいネーサンがフウね。はい、自己紹介終わり」

「自己ではありませんでしたけどね」と、ミサが的確な突っ込みを入れた所で、フウが口を開いた。


「カルマさんは、この街出身なのよ」

「そうなんですか?」

「うむ。この街ではあまり見ない正義心の強い男だったわいな」

「懐かしいわね。いつ頃だったかしら、彼が騎士になるといいだしたのは」

「つまり、だ。ヤクモ、俺達にとってカルマは英雄であり自慢なんだ。まあ、その偉業を知る人ってのは、この街以外じゃいねぇんだけどな。だからこそ、俺達だけは忘れちゃならんのさ」

「だからよぉ!?」


 高圧的な態度で会話を一蹴りしたのは、ラ・ムルテの頭をつとめる男・シリウス。コイツは危険だ。スコルピウスの次に人族で勢力のある集団ではあるが、手段を選ばない事でも有名。血気盛んはいい事なのだが、技量と欲望の対比が等しくないのだ。功を急ぎ過ぎるのは上手くない。非常にうまくない。


 一般人ならそれでも構わないが。人を動かす者がそれでは、いつか壊れてしまう。過去のテメリオイがそうだったように。


「過去の話とかよぉ!? どーでもいいんだよ。お前もおもうだろ? なあ!? リーハルド」


 隣に座る男・リーハルドは、シリウス達のような武闘派とは少し異なる。ペテルギウスは主に情報収集や商売の方を生業にしてるのだ。


眼鏡をクイッと上げ──


「いえ、僕はどちらでも……」

「まったく湿気てんな。此処で一番大事なんはなぁ……ヤクモといったな?」


 前のめりになると、鋭い眼光をヤクモに向けた。


「お前、戦えんのか? 生半可な覚悟じゃ、死ぬぞテメェ」

「それは……」

「他所様の街の事情に首を突っ込んだんだ。分かってるんだろーな」

「それは、わっちが!」と、間に入るリュカに大して、(げん)を強める。


「お前は黙ってろ、魔人──で、どうなんだよ?」

「……戦えます」

「だ、そうだ。じゃあ、話を続けてくれ」


 こりゃあ、シリウスも相当ピリついてるな。ちょっとふざけ過ぎたか。云々、少しだけ反省しながら、テメリオイは落ち着いた面持ちで、口を開く。


「皆もわかっている通り、アヴァロンが魔獣の襲撃にあい半壊状態に陥っている。正直、魔獣が街近辺まで近づいてくる──なんざは、日常茶飯事だ。けれど今回は違う」

「そうさな。奴らめ、統率力を持っていたわいな」


 魔獣とは、理性のない獣だ。本能に従順であり、故に共食いだってする。他種族と共存なんて以ての外だ。と、テメリオイは長きに渡る経験で理解していた。


 しかし、今回の襲撃(それ)は彼の考えを覆すものだったのだ。


「まるで……そう。まるであれは、意図しておこされた狂乱必死(デス・パレード)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ