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傭兵都市・アヴァロン

灼炎竜(イグニート)だって!?」


 紅の鱗を纏った巨竜。村一つをたった一体で壊滅出来るとさえ言われている。正にランクSの怪物だ。


「じゃがまぁ、わっちは完璧に扱いきれてはおらぬ」

「そう……なのか?」

「うぬ。換装は本来、自分の形態を魔獣へと変えて能力を向上させるものなんじゃが……わっちは、一つの部位しか出来ぬ」

「全身は出来ないのか」


 素朴に問うと、バツが悪い様な表情をしてから笑顔でリュカは誤魔化した。


「出来るには出来るんじゃが……まあ、今は進む事に専念しようではないか」


 多分、力が低下するとか。もしくは、魔力が枯渇して動けなくなる、等ではないだろうか。と、ヤクモはゴブリン戦で魔法を使わなかったリュカを思い出して、納得した。


 しかも今の状態でもかなり強い。何の心配も必要ないだろう。


「だなっ。進もう」


 道程はまだまだ長そうだ。山岳地帯での野営は、小隊規模以上でなければ自殺行為とリュカは言った。


 自然の脅威もそうだが、魔獣に襲われた際──狂乱必死(デス・パレード)になりやすいらしい。


 後退か前進か。この二択しかない状況に於いて、野営とは自ら隙をつくるものだとか。だからリュカは今日中にマファバを突破すると言っていた。


 ヤクモも渋る様子一つ見せず、二つ返事で承諾。初めは自然の雄大さに、感慨深い物を感じていた。それこそ、岩肌を登る鹿だったり野鳥だったり、手付かずの自然を目と耳と鼻で楽しんでいた訳だが──


 それも五時間と歩けば見慣れ見飽きて、以降は黙々とただひたすらに歩き続けた。そうして、八時間余りがすぎ、日が落ち始めた頃、ヤクモの目の前には平野が広がっている。


「ひゃあ、疲れた」

「どっから声出しておるんじゃ。ほれ、もうひと踏ん張りじゃ」


 リュカは【換装・エアリア】を使い、ヤクモを抱えてアヴァロンに向けて飛ぶ。


「びゅがががざんんん!! ぼうぢょっど、おぞぐなりまぜんがががが!?」

「は? 何言っとるんじゃ?ちゃんと言葉を喋らなきゃ分からぬぞ」


 ──でしょーね。だけど、喋れないんですよ。いや、喋ってはいるんですよ。


 と、ヨダレも涙も撒き散らしながら、ヤクモは心で思うのだった。


「着いたぞ」

「此処が……アヴァロンくぁ」

「なんじゃ? 膝がガクガクではないか」

「ほっとけぃ」

「ふふ。まあよい、ゆくぞ」


 だが、瞳に写るアヴァロン(それ)は、ヤクモが思っていた街とは異なっていた。


 ──異なりすぎていた。


「リュカ……これって。アヴァロンが最初から、こんな感じの街……ッて事じゃないよね」


 建物は崩れ、至る所で煙があがっている。形をしっかり成した家よりも瓦礫が目立っていた。街の住人達も余裕がないのか、ピリついた空気を漂わせている。


 これがミシェルの言っていた魔獣の襲撃──


「じゃな。わっちが想像していたより、被害が甚大のようじゃ」


 リュカは「とりあえず、知人の場所に向かうのが先決じゃ」と言って歩みを進めたが、数歩足らずで目に留まるであろう、大きな瓦礫に躓く。


 ヤクモが手を取らなければ、転び怪我をしていただろう。表情や声には動揺を見せずも、内心では物凄く動揺している様子だ。


「大丈夫か?」

「すまぬ」

「いんや。これは流石に混乱しちゃうよ」

「うぬ」


 もはや何処が道で何処が道じゃなかったのかすら分からない。至る所には、魔獣の残骸や住人の骸がまだ倒れているし、血の匂いが惨憺たる状況だったのを物語っていた。


 暫く歩いて着いた、比較的大きなレンガ調の建物。ヤクモとリュカはその中へと入っていった。


「おーリュカじゃねぇかよ! 無事だったンか、おめぇーよ!!」


 豪気な声で出迎えたのは、ソファーに腰掛ける隻眼の男。一目見ただけで屈強な戦士だとヤクモは理解した。


「テメリオイ……お前は無事じゃないよーじゃがな。なにがあったんじゃ?」


 上半身に包帯を巻き付けてるが、至る所から血が滲んでいる。だが、男は「ガハハハ!!」と、力強く笑って見せた。


「頭領……あまりはしゃがれますと傷口が」


 男の後ろに立つ女性が落ち着いた様子で伝えると、リュカも頷き口を開いた。


「ミサの言うとうりじゃぞ」

「すまんすまん。まあ丁度いい。お前も三種族会議に出ろ」

「三種族で会議とは……これまた博打に打って出たの」

「まあな。んで、隣に立つ坊主はなんだ?許嫁(いいなずけ)か?」と、短く伸びた顎髭を撫で付けながらニヤリと笑って言った。


「なんで俺が許嫁なんですか!!」


 やってしまった。咄嗟に突っ込みが。初対面になんてことを。


「あほう。こやつは、カルマさんの息子じゃ」

「ほう。カルマのねぇ。坊主、名前は?」

「俺の名前はヤクモです」

「ヤクモか。お前も三種族会議に出席しろ。な?これは命令だ」と、膝を叩き、覇気の宿った目でヤクモを見つめる。


 なんとも大胆で、なんとも傲慢な。 だけれど、ヤクモはテメリオイの態度に上に立つ者の姿を垣間見た気がした。


「頭領……」

「大丈夫大丈夫!! ドワーフの爺さんもエルフの嬢ちゃんも、何も言わねぇって! ガハハハ」

これにて2章は終わり3章【魔獣激戦】に移ります。


面白い。続きが気になる。そう思っていただけたなら、ブクマや評価をお願いします。


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