追放、その後・・・
初めての作品になります。
同時に初めての投稿で解らないことばかりですが、今後よろしくお願いします。
4月16日 連載中の小説に登場人物が出張してもらう運びとなりましたので、一部表記を揃えました。
クヌートは賢者である。
幼少期から神童として名高く、殊に防御系の魔法において当世一というレベルで優れていたことから、いつしか「鉄壁クヌート」の異名で近隣諸国にまでその名を轟かせていた。
魔法剣士のジークリンデ、斥候のフィリーネ、錬金術師のローゼマリー及び神官戦士のソフィーとは幼なじみで、クヌートを兄のように慕っており、彼女たちがパーティー「永久の微風」(とこしえのそよかぜ)を組むときに請われてパーティーに加わることになった。
パーティー結成から3年、突如、王国郊外に大挙して現れた魔物を王国騎士団とともに退散させることに大きく貢献し、パーティーは国王への謁見を許され報奨金と勲章を賜った。
国王との謁見後、宿屋にて。
「クヌート、パーティーから出て行ってもらいたい。」
ジークリンデが突如切り出す。
「壁役として護りを一手に引き受けていたつもりだったが、俺は邪魔か?」
「他のメンバーとも話し合って決めた。これまでのお礼として国王様から賜った報奨金は全て渡そう。」
「新しい壁役のメンバーを加入させるにも金は必要だろ、持って行け。黙って出て行った方が良いだろうけど、他の連中に別れの挨拶はしなくて良いのか?」
「3人には私から伝えよう。今まで本当にありがとう。」
そんなやりとりが行われ、クヌートはそのまま宿屋を後にした。
「クヌート兄、行っちゃったの?」
「仕方ないよ。これ以上クーさんに無理させるわけにも行かないから。」
「私たちがどう思われても構いませんが兄さんには元気で生きて欲しいですわ。」
フィリーネ、ローゼマリー、ソフィーは涙をこらえるジークリンデに声を掛けた。
「本当はずっとずっと一緒にいたかったよ!別れたくなんてなかったよ!」
こらえきれずにジークリンデは涙を流した。
クヌートのスキル「鉄壁」は類稀なる防御力を一緒に戦うメンバーに付与するものであるが、代償として受けた攻撃の10分の1を身代わりに受ける、という諸刃の剣とも言うべきもので、クヌートは他のメンバーから見ても酷く無理を重ねていた。そのため、4人はリーダーのクヌートをパーティーから外すという苦渋の決断をしたのである。
「そういえば、ジーク、クヌート兄の背嚢に体力全快の護符を入れたでしょ?」
「フィリーネ、見てたのか?」
「そりゃまあ、斥候だから他人の行動は滅多に見落とさないよ。」
「そういうフィリーネも状態異常回避の護符と蘇生の護符を入れてた癖に。」
「あれはロゼとソフィーにも頼まれたから、っていうか、餞別にと言い出したのはロゼとソフィーでしょ。」
「クーさんには要らない物かも知れないけど・・・」
「パーティーで最初に宝箱から手に入れた護符だから思い出として渡したかったんですわ。」
「でも明日からどうしよう?ジーク、壁役やるって大丈夫なの?」
「フィリーネに心配されるほどではないと思うが・・・安全第一でなんとかするさ。」
翌朝、ジークリンデ、フィリーネ、ローゼマリー及びソフィーは宿屋を出て街外れに向かった。街から少し離れたダンジョンに向かうためである。
街の門外にて。
「よお。」
クヌートがそこにいた。
「どうして?」
ジークリンデは今にも泣きそうだった。
「パーティーは外れても、お前たちの護りまで外れた覚えはないからな。」
「それに魔物戦のレベルアップで「自動回復」のスキルが習得できたんだ。これは魔力の消耗なしに、1分間で全体力を回復出来るから、まさに「鉄壁」持ちが使うために作られたようなスキルだな。」
「それから「鉄壁」もパワーアップして全攻撃への反射機能が付いたからパーティーへの攻撃は完封できる。」
「それなら、ずっとクーさんと別れなくて良いの?」
「兄さん、これからも一緒にいてくれる?」
ローゼマリーとソフィーは目に涙をにじませながらも、期待するような笑顔でクヌートに問いかける。
「俺以外の誰にお前らの壁役やれるんだよ。」
「ジークがやるつもりだったみたいだけど。」
「おい、フィリーネ!」
「お前らの護りは誰にも任せられるか。ジークはもっと受け流しができるようになってからコツを教えてやるからそれまで黙って俺に護られておけ。」
「ありがとう、クヌート・・・」
とうとう我慢できずにクヌートの胸にすがりついて泣き出すジークリンデ。
「あと、ジーク、フィリー、ロゼ、ソフィー、護符ありがとうな。お前たちと一緒でずっと大切にするから。」
「クヌート兄には護符は要らないとは思うけどそう言ってくれるのは嬉しいな。」
「ところで、クーさんの壊れスキル、凄く興味がある。」
「兄さん、ますます人外になりましたわね。」
「何だよそりゃ。俺はれっきとした人間だ。」
これからの「永久の微風」の旅路はどうなるのか?それは別の物語で語られることがあるかも知れない。
最終的に追放される人がいない「追放物」というのは誰も不幸にならないので個人的には凄く好きです。
ジークリンデ、フィリーネ、ローゼマリー、ソフィーと、ほぼ無敵と言える存在にパワーアップしたクヌートの旅路が実り多いものであることを、作者も強く応援しています。