断罪
「オリビア・ウェントス。貴女との婚約を今、この場で破棄させてもらう」
国王夫妻、王立魔法高等学校の生徒と保護者、そして有力貴族も来賓として参加している卒業パーティーが、宮殿ホールで行われていた。
そのホールの真ん中で、白いドレスに赤いルビーのネックレスが目立つ、ララ・モラレス男爵令嬢を片手に抱きながら、テイルコートのハリー・ヴァルトス侯爵令息は、オリビアに婚約破棄を突きつけた。
「謹んでお受け致します」
四方八方から好奇の目で見られている中、オリビアは、完璧なカーテシーを披露して、後方へ下がる。
(とんだ茶番劇だわ)
胃のムカつきと氷龍のニョロと共に、イザニコスメンバーの待つ一角へ戻ろうとした。
すると
「待て! これまでのララに対して行った、数々の悪行の責任を負え!」
ハリーが叫ぶ。
悔し涙を浮かべながら振り返り、キッとハリーを睨むオリビアを
「ララは気にしてませんよぉ。だって、大好きなお兄様が死んじゃったのに、これ以上イジメちゃ可哀想ですよぉ」
嘲笑ながら、オリビアを見下す。
(すべてお前達の仕業なのにっ)
オリビアは、唇を噛み、跡が付く程に自分の腕を握った。
なぜ、とうの昔に、といっても先月だが、国王陛下と教皇様の前で、婚約破棄の書類にサインをしたのに、わざわざ卒業パーティーで、皆の前で発表されないといけないのか。
悪役令嬢の断罪シーンは必須なの!?
口腔内に、血の味が広がる。
兄様の命だけでは飽き足らず、私の命も必要なの?
なぜ、物語は執拗にオリビア・ウェントスを貶めるの?もう、婚約破棄したじゃない。終わったでしょ?
イザニコスメンバーがオリビアに駆け寄り、エレとソフィアがオリビアに寄り添った。
「エーリオン国王陛下」
スクトゥムの声が、静まり返ったホールに響き渡る。
「発言を許す」
国王陛下の声が響く。
スクトゥムが、一礼して続ける。
「ハリー・ヴァルトス侯爵令息とララ・モラレス男爵令嬢が言う、オリビア・ウェントス伯爵令嬢の悪行について、申し上げたい事があります」
スクトゥムは、ハリーとララに向き直り
「ハリー・ヴァルトス侯爵、オリビア・ウェントス伯爵令嬢の悪行とは?」
「ノートを破ったり、教科書を隠したりだ」
「他は?」
「あぁ、階段から、つき落とした事もあった。それに、ドレスに飲み物もかけた」
「それで、全部?」
「他にもあるかもしれないが、罰するには十分だろ」
「国王陛下、ここに私の影を呼んでも?」
クルリと陛下に向き直ったスクトゥムが、陛下に許可を求める。
「いいだろう」
スクトゥムは、オリビアに影を付けていた事を伝えた。
影は、少なくともこの二年、オリビアは自らララに近付いていないこと、階段の一件もララの自演自作だと証言した。
ドレスに飲み物をかけた疑惑に関しても、側にいたボーイは自分で、ララが自分で自分のドレスに飲み物をかけ、グラスを割った。と事細かに証言した。
ハリーは、彼はスクトゥムの影なのだから、オリビアに有利な証言をするのは当たり前だ。と反論したが、陛下は、影は公の機関なので、証言には信憑性がある。と、一笑した。
「陛下。『クノク』の襲撃で命を落とした騎士団員ですが、禁止魔法が使われた形跡がありました。そして、団員達の魔力の痕跡が、ララ・モラレスから感じられると王立魔導師団の証言があります」
宮殿ホールが驚きに包まれる。
「エーリオン王国、第五王子スクトゥム・エーリオンの名の元に、ララ・モラレス男爵令嬢の拘束を要請します」
「許可する」
国王陛下の許可と共に、近衛騎士団員がホールになだれ込み、唖然としているララを拘束に向かった。
「何これ? 聞いてないんけど! ハリー!助けて!」
近衛騎士団員に拘束されながら、ララはスクトゥムをにらみ、左手をかざそうとした。
すぐさま、スクトゥムは防御魔法をかける。
「王族殺人未遂罪も追加かな?」
いつの間にか隣にいた兄ビエントが、オリビアの顔を覗き込む。
「これで、オリビア・ウェントス伯爵令嬢の『ざまぁ』展開は上手くいったのかな?」
「ようやく悪役令嬢から、普通の令嬢に戻れるわね」
サルビアは、オリビアに頬擦りをした。
「兄様!姉様!」
オリビアは、二人に抱きついた。
私は幸せだ。こんなにたくさんの人達が、私を守ってくれている。私は、なんて幸せなんだろう。
オリビアの頬を、嬉し涙が伝っていった。
いったん完結します。
続編を書きたいな。とは思ってます。




