終幕
あの日、フォルティスから一足遅れて、ウラニスの兄イリオスとソフィアの兄ノア、オスカーがララ達の元に到着すると、ピンク色の閃光が走り、爆音が響いた。と思った瞬間『魔獣』が消え去った。
ほのかに明るくなった空の下、ハリーの側でくすぶる、焼け焦げた王立騎士団の騎士服が、彼等の目に止まった。
「フォルティス?なのか!?」
彼等は、血の気が引く思いで、その焼け焦げに駆け寄った。
「違う。あのブレスレットをしていない……」
フォルティスは、オリビアとお揃いのブレスレットを、いつも身に付けていた。
「義兄さんは、フォルティス殿は、『魔獣』にやられました。あちらに飛ばされました」
ハリーは棒立ちのまま、フォルティスが消えていった方向を指差した。
そんな彼等の元に
「ねぇ!見てた? 私、すごくないですか?」
ララが、走り寄る。
状況が分からないまま、イリオス達は、ララとハリーを保護して侯爵邸へと戻った。
侯爵邸に戻ると、エントランスにはヴァルトス侯爵を始め、有力貴族達が集まっていた。
彼等に向かって、ララは大声で叫んだ。
「みなさぁーん! あの『魔獣』はララがやっつけました!もう大丈夫ですよぉ」
拍手喝采を浴びたララは、今度は涙を浮かべながら
「でも、ララを庇って、騎士団の方達が……」
と、泣き崩れた。
※
翌日、目を腫らしたオリビアは兄の友人達とイザニコスメンバーと共に、フォルティスの行方を探した。
「フォルティスが『魔獣』ごときに殺られる訳がない」
「龍貴姫の加護があるのに、殺られる訳がない」
という、イリオス達の言葉を支えに、一面まっさらになっている焼け野原を捜索した。
フォルティスの騎竜の鱗一つ見付からない中、ニョロが、なにかを咥えてオリビアの元に来た。
戸惑うような様子を見せながら、ニョロはオリビアの手のひらに、咥えていたものを乗せた。
そこには、オリビアとお揃いのブレスレットがあった。 すべてを察したオリビアは、泣き崩れた。
エレやソフィアに肩を抱かれ、スクトゥム達が見守る中、ひとしきり泣いたオリビアは、静かに歌い始めた。
(確かこの歌は『鎮魂歌』だったかしら? ―――兄様……安らかに……)
※
数日後、ヴァルトス領では、ララの貢献を讃えパレードが行われていた。
真っ白な六頭立ての馬車の上で、ハリーの隣でハリーの髪色に合わせた真っ赤なドレスに身を包んだララが、領民に笑顔で手を振っている。
あの時ララが討伐した『魔獣』は、伝説の魔獣クノクだった。
ヴァルトス領の文献の上では、浄化士が数十人がかりで討伐し、犠牲者の数も三桁を越えた。と書かれていた。
それを、ララ一人で、それも犠牲者が三名。素晴らしい功績だ。と、褒め称えられた。
ヴァルトス領騎士団は、きちんと対策をして王立騎士団と共に『クノク』に立ち向かう手筈になっていた。 なのに、ララ嬢の勝手な行いで王立騎士団員が死亡し、領内に甚大な被害をもたらした。
と、ララに対しての懲罰を申し立てていたが、認めてもらえなかった。
王立騎士団でも、王国に対してララ・クロニエ男爵令嬢とハリー・ヴァルトス侯爵令息のあの日の調査を申し立てたが、却下されていた。
ララの行為は『ヴァルトス領民を救った』事となり、ララ嬢の勝手な行為による、王立騎士団員の犠牲は、致し方ない、とされた。
そして、王立騎士団員の騎士団葬と同日に、ヴァルトス領でララ・クロニエ男爵令嬢のパレードが開催された事により、より一層、王立騎士団員の反感を買った。
そのような事もあり、ハリー・ヴァルトス侯爵令息とオリビア・ウェントス伯爵令嬢の婚約は、国王、教皇の許可の元、白紙となった。
―――ここに、オリビア・ウェントス伯爵令嬢の転生物語は断罪されることなく、幕を閉じることとなった。
明日、21時で完結です。
お付き合いありがとうごさまいました。




