ララの開花
今年の花薫週間の討伐依頼も、ハリーのヴァルトス領だった。
討伐には、ハリーのクラスの選抜メンバーも徴収された。
なので、ハリーとララ、それにララの取り巻きの教会有力者の令息リュカ、近衛騎士団有力者の令息イーサンも一緒だ。
ゲートを通り抜け、ヴァルトス領内に入る。
例年、ヴァルトス領では『魔』が活発だが、今年はより成長スピードが早く、個体数も多いそうだ。
心してかかるように王立騎士団の部隊長に言われる。
「毎年、ヴァルトスに来てるわよね」
「王都に近いし、生徒が討伐するのに、手頃な『魔』なのかしら?」
「なんだかんだで、騎士団抜きで、ちゃんと討伐できてるものね」
オリビア達は、騎竜を操りながら、指定された地区へと向かっていた。
「殿下、この頃の『魔』の異常な様子の原因は、わかったんですか?」
ユリウスが、思い出したようにスクトゥムに尋ねる。
「さあな、周期的な物かもしれない、って話にはなっているようだ」
「早く落ち着くといいですね」
※
『澱み』を討伐していた頃が、懐かしくなるほど『総魔』しかいない担当地区を、上空からイザニコスメンバーは眺めていた。
「ねぇ『総魔』って、数年に一度の頻度とかいってなかったっけ? 」
眼下を見下ろしながら、ユリウスが唸る。
「そんな事、言ってたっけ?」
ウラニスは、首を傾げる。
「数が、多すぎるわ」
オリビアも、驚くほどの『総魔』の数だ。
「昨年、一匹で大変な思いをしたのに」
「もう、これ、『総魔』じゃなくて、ワームじゃない?」
エレとソフィアも、その数と姿に驚く。
「ワームなんだろうなぁ……」
いつも冷静なスクトゥムも、驚きを隠せない。
森の木々の間を、黄土色の『魔獣』ワームがウネウネと動いている。
ざっと数えても十体はいるように見える。
「とりあえず、一人二体……」
ユリウスが言い終わるからどうかの時に、真下からウラニスを目掛けて、ワームが首を伸ばし、跳んだ。
間一髪のところで、騎竜のイグニスが交わし、ウラニスが『炎槍』を撃った。
「ワームって、跳ぶの?」
「聞いたことないよ!」
先程より上空で待機して、今後の作戦を練る。
しばらく考え込んだスクトゥムが
「三人で一体を攻撃し、残り三人は警戒。でいこうか」
攻撃している最中に、ワームに飛び掛かられたら対処できないので、その作戦でいくことにした。
「真下にワームが来ないように、広域攻撃で散らしてくれ」
スクトゥムの指示を受け、オリビア、エレ、ソフィアがワームを威嚇する。
彼女達は、あわよくば討伐してしまえ。位の勢いで、様々な魔法を、撃ち込んでいた。
彼等も、的確に手際よく、一体ずつ確実に討伐していった。
見事なチームプレーで、担当地区の討伐を終えた頃、遠くの方から、すざましい爆発音が聞こえてきた。
何事かと、騎竜で近付くと、光線状に発射された魔法が円を描いて、一帯全てを凪払い、消滅させた。
「あの魔法は?初めて見るわ……」
オリビアを初め、皆が呆気に取られていると
「上級浄化特化魔法……文献で読んだだけだが……」
スクトゥムが、驚いたようにつぶやく。
「ララ嬢か……?」
「嘘でしょ?昨年は、たいした魔法じゃなかったわよ?」
ユリウスとソフィアも驚いている。
オリビアは、めまいを覚えた。
(ララが、本当の愛を見つけたって事よね……相手は、ハリーよね、やっぱり)
覚悟をしていたとはいえ、ショックは隠せない。それと同時に、これで世界は救われる、と安心した所もあった。
「殿下、あの辺りには『魔』を感じないのですが……」
ウラニスが、ララが上級浄化特化魔法を放っている一帯を指差す。
他のメンバーも、その一帯を凝視する。
「確かに『魔』を感じないな。これは、違反になる……」
スクトゥムは、騎竜ブレイブのスピードを上げ、ララがいるであろう場所へ急ぐ。
※
「きゃぁー見て見て!この一帯、まっさらよぉ。どぉ?すごい?」
ララが、はしゃぎながら魔法を放っている。
「ララは、すごいなぁ」
ハリーがララを持ち上げる横で、土魔法を使えるリュカが、土地を回復させていた。
ブレイブから降りたスクトゥムが、ララの元へと近付くと、自慢気に話しかけてきた。
「殿下ぁ!見てくれましたぁ?ララ、すごぉいのぉ」
「ララ嬢、学外で魔法を放つ時の、法律を覚えているか?」
オリビア達も、スクトゥムの側に騎竜で降り立った。
「うーん、なんだろぉ?ハリーわかる?」
ハリーの顔色が、みるみる青ざめていく。
「『澱み、魔、総魔、魔獣など』以外に、むやみに魔法を放たない事……」
消え入りそうな声で答える。
「この事は、学校と王立騎士団にも報告させてもらう」
スクトゥムが、冷ややかに伝えると
「ハリーの領地で、ハリーが許可しているんだから、いいじゃないか!夏だって……」
「黙ってろ!」
イーサンの言葉を、ハリーが遮る。
「へぇー夏ねぇ」
意味深にスクトゥムが答え、イザニコスメンバーに、騎士団の駐屯地に戻るぞ、と伝えた。
騎竜に乗り、飛び立つイザニコスメンバーの背中を見ながら、ハリーは舌打ちをした。




