第3王女
オリビアは、ララを待ち受けながら、婚約者のはずのハリーに嫌味の一つでも、言ってやらないと気がすまない、と思った。
「ハリー様、パートナーのお誘いがなくて寂しく思ってました」
「ハッ、冗談だろ?楽しそうじゃないか」
「もう、ハリー。オリビア様は、焼きもちを焼いているですよぉ。婚約者なのに、誘ってもらえないんだから。ねぇ」
ララは、バカにしたようにオリビアを見る。
悔しくて、オリビアの握った拳に力が入る。
「こんな時くらい、オリビアと一緒にいてもいいんじゃないか?なかなか二人で会えないんだろ?」
「本気か?俺からオリビアを取り上げているのは、お前だろ?ウラニス」
「取り上げるって、何だよ?」
「そうだろ?いつも隣にはお前がいる」
「お前が、ララ嬢と一緒だからだろ?オリビアと一緒にいれば……」
「ハッ、俺は騎竜クラスには、いけない。オリビアとは一緒にいられないんだ」
「もぉ。ケンカはよくありませんよぉ。オリビア様が、ハリーを蔑ろにするのが、いけないんですからねっ」
ララは、キッとオリビアをにらむ。
「私は、蔑ろになんか……」
「キャッ、やめてください!」
ララの純白のドレスに、赤いシミが広がっていく。
床には、グラスが砕け散っていた。
(え、待って。私は、果実水を持っていたはず)
自分の手を見ると、果実水の入ったグラスを持っている。
何が起きているのか、呆気に取られていると
「オリビア様が、私のグラスを叩き落としました!」
「オリビア!何て事をするんだ。せっかくのドレスが、台無しじゃないか」
慌てて、否定するが、周囲から非難の視線を浴びる。
「ララ様、お疲れなのでは?キチンとグラスも持てないなんて」
「あちらで着替えいらっしゃいよ。侍女も呼んであるわ」
少し大きめの声で、エレとソフィアが助けてくれる。
ギャーギャー騒ぎながら、ララは侍女に連れられ、奥の休憩室に向かった。
ガラスの破片を片付けてくれているボーイに、お礼を伝える。
彼は「大丈夫ですよ。誤解は解けますよ」と、微笑んだ。
「そうやってお前は……男に媚びを売るんだな!」
驚いて振り向くオリビアの目に、蔑むような視線を送るハリーが写った。
「ハリー!お前……」
ウラニスが、オリビアの前に立った。その時、曲調が変わった。
中央を見ると、ユリウスとソフィア、スクトゥムと王立学園に通っている第3王女が踊り出していた。
とても優雅で、背中に羽が生えているかのように、軽やかに踊っていて、思わず見惚れてしまう。
先程までの、微妙な雰囲気だった講堂内の空気が、一変した。
ハリーは、ララを追って、奥の休憩室の方へ向かっていた。
「王族は、居るだけで雰囲気があるわよね」
エレが、踊るスクトゥム達を見ながらつぶやく。
一曲踊り終えて、拍手喝采を受けている彼等が、オリビア達を見付け、近寄ってくる。
先程の騒ぎが、まるで無かったようだ。
「いい目眩ましになったかしら?」
第3王女が、ニコニコしながら問いかけてくる。
「いつも、スクトゥムから、あなた達の話を聞いていたわ。会えて嬉しく思います」
オリビアの横にいるニョロに興味津々のようで「触らせてくれる?」とニョロに尋ねている。
その後、穏やかにパーティーは進み、スクトゥム、ユリウス、ウラニスの前には、一緒に踊りたい令嬢が列をなしていた。
「騎竜クラスは、学園で人気があるのよ」
ニョロを撫でながら、第3王女が教えてくれる。
「エリートだものねぇ……私達も騎竜クラスなんだねどなぁ……」
エレがすねていると
「あの……御一緒してもよろしいですか?」
学園の令嬢達が声をかけてきた。
「ほら、人気あるでしょ?」
第3王女が、ニッコリと微笑んだ。
※
着替えを終えたララが廊下に出てくると、待ち構えていたハリーが声をかける。
「ごめんな、ララ。オリビアが意地悪をして」
「気にしないで、オリビアは自分が一番じゃないと気がすまないのよ」
ララは続ける。
「私は、大丈夫。でも、ハリー、あなたが心配。本当は、騎竜クラスに入れる実力があるのに、オリビアに邪魔されてるんだから」
「騎竜に選ばれなかったのだって、オリビアが細工をしたに決まってる」
「本当にハリーを愛しているなら、婚約者なんだから、卒業後は、ハリーの家に入るのが普通よ。それなのに、王立騎士団に入りたいだなんて、おかしいと思わない?」
「そもそも、騎竜クラスを断って、ハリーと一緒のクラスに居るべきなのよ。婚約者なんだから、愛してるのなら」
「オリビアは、男好きだから騎士団に入りたいのよ。チヤホヤされたいのよ」
自分に都合の良い、耳障りの良い言葉を聞きながらウットリしていたハリーは、いつの間にか、休憩室のソファーにララと並んで座っていた。
そして、ララにされるがまま、なされるま、彼女の胸に顔をうずめてしまった……
次回は、金曜21時に。




