パーティー
年末が近づき、王都での社交シーズンが始まった。
オリビア達は卒業後を見据え、王立学園と合同で三年生だけのパーティーを、授業の一貫として行う。
男性側から女性に、パートナーの申し込みをするのだが、特に希望がなければ、クラス内でくじ引きをして決める。
婚約者がいる者は、そちらが優先されるはずだった。
動向が注目されている、ララの選んだパートナーは、ハリーだった。
「騎竜クラスは、忙しいだろ?パーティーなんて来れないと思ったから」
もっともらしい、言い訳をしてきた。
他の二人の取り巻きは、婚約者とではなく、一人で参加するらしい。正しくは、ララと共に。だが。
校内で『魅了』の気配は、まったく無い。なので、三人の令息は、本当にララに心酔してしまっている。
何が彼女を惹き付けているのだろう。
噴水の前のベンチに並び、仲良く腰かけているハリーとララを、教室の窓から眺めつつ、オリビアは考えている。
(やっぱり、物語の力なのかしら?)
視線に気付いたらしいララが、上を見上げ、オリビアと目があった。
ニヤリと笑ったように見えた。と、思っていると、ハリーに抱きつき、こちらを指差す。
こちらを睨みながらハリーは、オリビアの視線からララを隠すようにして、奥のガゼボの方に消えた。
(ララは、庇護欲を、掻き立てるのかしら?)
オリビアは、二人が消えていった小路を、ボンヤリ眺め続けた。
※
模擬パーティーは、年末の王宮パーティーに合わせ、王立学園の講堂で開かれた。
王都の街道は、明るく照らされ、たくさんの馬車が行き交っている。
宮殿の辺りの丘が、街灯と馬車の灯りとで、昼間のよう明るく照らされている。
王立学園のエントランスには、きらびやかな馬車が列をなしている。
馬車の窓から、王宮へ向かう馬車の列が、光の道になっているのを、オリビアは、ぼんやり眺めていた。
「呑気なもんだな」
脚を組み、片頬を付いているウラニスが、正面に座っている。
オリビアがハリーに誘われなかったのを受けて、スクトゥムが一存で、パートナーを決めた。
オリビアとウラニス、エレとスクトゥム、ソフィアとユリウス。なかなか上手くまとめたと思うぞ。と、ご満悦だった。
「なんで、ウラニスだったのかしら?」
「領地が隣だからだろ?隣同士で婚姻を結ぶ事が多いし、だからじゃないか?」
「なるほどねぇ。ちゃんと、考えてるんだ」
オリビアは一人感心する。やっぱり王子は何でも知っているもんだ。
※
名前を呼ばれ、扉が開く。高い天井から釣り下がるシャンデリアが眩しい。
床に引かれた赤い絨毯の上を、ウラニスに手を取られ歩いていく。
学園長の前に進み出て、一礼する。本番では、国王になる。
大仕事を終えたような気持ちで、ウラニスと微笑み会う。いくら練習とはいえ、注目を浴びるのは緊張する。
誘導され、壁の方へ向かう。
「殿下達は、まだなのかしら?」
「王族だし、最後の方じゃないか?ユリウスも準王族だしなぁ。しばらく暇かもな」
クラスの友人達を見つけ、談笑していると、ハリーとララの姿を見付けてしまった。
ララの首元には、ルビーがきらめいている。考えたくはないが、ハリーが贈ったのだろうか……まさかね……。
最後にスクトゥムとエレが入場し、パーティーが始まる。
軽やかな音楽が流れ始めた。スクトゥムがエレの手を取り踊り始める。周りの生徒達も、それぞれのパートナーと踊り始めた。
オリビアもウラニスに手を取られ、踊る。ウラニスの肩越しに、ハリーを探してしまう。そして、楽しそうにララと踊る姿を見て、勝手に落ち込む。
「もうさぁ、落ち込む位なら、捜さないでくれる?」
笑いながら体勢を入れ替え、ハリーが見えないようにされてしまった。
曲が終わり、いつの間にか騎竜クラスで集まってしまった。
「すっかり忘れてたけど、スクトゥムは王子なのよね、本当に緊張したわ」
エレがどっと疲れたように、用意されている椅子に座り込む。
オリビアは、果実水をエレに手渡しながら「王妃めざしちゃう?」
と、からかう。
「冗談やめてよ。そういうのは、ソフィアの方が似合うわ」
「私は、恋をしてみたいわ。雷に撃たれたような衝撃があるんですって」
「雷に撃たれた事あるの?」
不機嫌そうに、ユリウスが問いかける。
「あるわけないじゃない。そう、書いてあったの」
「オリビア、雷魔法使っていいぞ」
じゃれ合っているようにしか見えないソフィアとユリウスを囲み、笑い合っていると、スクトゥムがオリビアの肩を叩く。
叩かれた方に顔を向けると、ララとハリーがこちらに向かっているようだった。




